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ホウセンカ

ホウセンカ
椿咲系(Camellia Flowered


ツリフネソウ科インパチェンス属(ツリフネソウ属)
学名Impatiens balsamina L.
英名Garden Balsam, Rose Balsam
和名ホウセンカ(鳳仙花)
別名ツマクレナイ(爪紅)、ツマベニ(爪紅)、ホネヌキ(骨抜き)
花言葉短気、他
メモ

 インパチェンス属の説明は、こちらをご覧下さい。
 別名の「ツマクレナイ」、「ツマベニ」は、マニキュアのように花で爪に色を付けたことに因み、「ホネヌキ」は、タネを飲めば、喉に刺さった魚の骨が取れると言う迷信に因むと言われているようです。
 原産は南西アジア(インド、マレー、中国南部)で、日本には17世紀以前に渡来したと考えられています。

 耐寒性がないので、春播きの一年草として扱います。種子は好光性なので、覆土は不要ですが、するとしたら薄くします。発芽適温は15〜20℃くらい、播種から発芽まで5〜10日くらいかかります。生育適温は15〜32℃だそうです。日当たりが良いところを好みますが、光が強すぎると花付きが悪くなるので、半日陰が向いているそうです。乾燥させないように水分を十分に与えると良いそうです。センチュウ(ネマトーダ)に弱いらしく、その対策が必要となることもあるそうです(例えば、マリーゴールドと一緒に植えるなど)。
 高性(40〜70cm)と矮性(20〜25cm)の品種があり、花は、一重咲き、八重咲き、椿咲き(カメリア咲き)などの種類があります。

 花芽分化に関しては質的短日性で、アサガオと同じように、日長時間が一定の長さ以下にならないと花芽が着かないと言われているようです。具体的にどれくらい短くなれば良いかは、分かりませんでした。
 また、実験上の話ですが、一度短日条件で花芽分化を誘導させた後、再び花芽分化できないような長日条件に戻すと、栄養成長(花を着けずに茎や葉だけを発生するような成長)に戻る性質があるようです。これを具体的に説明する前に、花器官の発生について簡単な説明をしますと、栄養成長していた植物体が花を作れる状態になると、萼片、花弁、雄しべ、雌しべ(心皮)のような花を構成する器官がこの順番で形成されますが、もともと、これらは葉が変形したものです。アサガオでは、一度の短日処理で花が作られることが知られていると思いますが、ホウセンカの場合、花芽分化を誘導する短日条件に何日か置いてから誘導しない長日条件に移すと、短日におく日数に依りますが、萼片、花弁、雄しべが出来た後に、普通なら雌しべが出来る代わりに葉が出来ることがあるそうです。

 「骨抜き」はともかく、実際に、漢方薬として「透骨草」の名前で利用されているようで、鎮痛、通経、消炎などの効果があるそうです。なお、ホウセンカの他に、ダイダイグサ、カキドオシなど、全部で10種類以上の植物が「透骨草」と呼ばれ、中国や香港で売られている(売られていた?)そうです。また、ホウセンカエキスを化粧品に混ぜていることもあるようです。その他、葉はアルカリ性なので、虫さされに効くとも言われているらしいです。
 ホウセンカの花弁や地上部からは、impatienolimpatienolatebalsaminolateのような薬効成分が抽出されていて、抗低血圧、testosterone 5 alpha-reductaseの阻害(5 alpha-reductase は男性ホルモンのテストステロンをジヒドロステロンに代謝する酵素で、ジヒドロステロンは前立腺肥大や毛の発育阻害に関わる)、アトピー性皮膚炎の予防と治療(マウスでの実験)、関節のリューマチ、痛み、腫れの治療などに有効であることが確かめられているようで、従来の漢方薬の有効性が確認できたと言われています。これらに関しては、論文の本文を手に入れることが出来ず、論文検索をしてヒットした要約を読んだ程度で具体的なデータについては不明です。

 植物の成長は、光質による影響を受けますが、エチレンの発生にも光質が関わっていると言われています。ホウセンカを含む14種の植物から採取した葉に赤色光を照射したところ、一部の植物(ヒマワリ、バラ、条件によってはダリアも)を除いて、エチレンの発生が抑制されたそうです。赤色光によってエチレン発生が抑制された植物の中でも、特に、ホウセンカについて詳細に調査したところ、赤色光を照射した直後に遠赤色光を照射した場合は、エチレンの発生抑制が認められなくなったそうです。このことから、ホウセンカのエチレン発生にはフィトクロムが関わっていることが推察されています。この研究では、赤色光なり、発生したエチレンによって、植物の成長がどう変わるかまでは調査されていませんでした。
 なお、イスラエルの Hebrew大学で行われた実験ですが、挿し芽の生産にエスレル(エチレンを発生する物質の一種)がどのように影響するのかを調査した実験はあるようです。もっとも、この実験で使われていたのは、学名を I. balsamina としつつ、Sultaniiアフリカホウセンカ?)と New-Guineaニューギニア・インパチェンス?)の品種のようなので、もしかしたら、ホウセンカとその他の種を混同しているのでは?と思われましたが。結果ですが、挿し芽を採取するための母株にエスレルを処理することでエチレンが発生し、母株の開花が抑制され(原因は、アフリカホウセンカやニューギニア・インパチェンスと同じように、落蕾のためだったようです)、収穫できる挿し芽の数が増加し(頂芽優性が抑制され、分枝が増えたことによるそうです)、挿し芽の根付きが良かったそうです(データを見る限り、品種によっては、あまり変わらないようにも思えましたが)。ただし、エスレルを処理したことによる影響で、母株のサイズが小さくなったり、挿し芽の長さが短くなってしまったようです。これについては、エスレルと一緒にジベレリンを母株に処理することで、サイズ以外の品質など(花を咲かせない、収穫できる挿し芽の数、挿し芽の発根の良し悪し)には影響することなく、解決したそうです。
 赤色光によるエチレン発生抑制と、エチレンによる伸長成長抑制を併せて考えると、不思議に思えることがありますが、それは、今後の課題になるでしょうかね。


本棚以外の参考文献
  • Batty, N. H., et al. Changes in apical growth and phyllotaxis on flowering and reversion in Impatiens balsamina L. Annals of Botany. 54: 553-567. 1984.

  • 難波恒夫.原色和漢薬図鑑(下).保育社.1980年.

  • Oku, H., et al. Screening method for PAF antagonist substances: on the phenolic compounds from Impatients balsamina L. Phytotherapy Research. 13: 521-525. 1999.(要約のみ参考)

  • Ishiguro, K., et al. Testosterone 5 alpha-reductase inhibitor bisnaphthoquinone derivative from Impatiens balsaminaL. Phytotherapy Research. 14: 54-56. 2000.(要約のみ参考)

  • Oku, H., et al. Antipruritic and antidermatitic effect of extract and compounds of Impatiens balsamina L. in atopic dermatitis model NC mice. Phytotherapy Research. 15: 506-510. 2001.(要約のみ参考)

  • Oku, H., et al. Cyclooxygenase-2 inhibitory 1,4-naphthoquinones from Impatiens balsamina L. Biological & Pharmaceutical Bulletin. 25: 658-660. 2002.(要約のみ参考)

  • Michalczuk, B., et al. The effect of monochromatic red light on ethylene production in leaves of Impatiens balsamina L. and other species. Plant Growth Regulation. 13: 125-131. 1993.

  • Tamari, G., et al. Effects of ethrel and gibberellin on impatiens plants. Scientia Horticulturae. 76: 29-35. 1998.

コメント

 播種は2002年4月下旬、発芽はそのおよそ10日後、最初の開花は同年9月上旬です。
 ヒマワリ、オシロイバナとともに、小学2年生の理科の教材として育てた思い出があります。刮ハ(もちろん、当時はこんな言葉は知りませんでしたが)に触れるとタネが飛び散るのが面白かったです(^^)。こぼれ種で毎年のように咲いていたくらいだから、栽培は簡単だろうと高を括っていたら、密植したせいで、見事に失敗( ̄▽ ̄;。開花が遅れて、花付きが悪かったです。種が弾ける前後の刮ハを撮影したかったのですが、その前に、寒さで株が枯れてしまいました。今年は予定していませんが、今後栽培する機会があったら、その時はちゃんと育ててあげて、写真を追加したいと思います。

 ホウセンカも関連する論文が多数ありました。特に、花芽分化に関しては以前から研究されているようで、最近は花器官形成に関わる遺伝子についての研究も行われているようです。もう少し時間をかけてまとめても良かったかなと思いつつ、趣味の範囲を超えてしまいますし、これをまとめるほどの時間や労力、そして、なんと言っても能力が全然足りませんので(^^;、割愛させていただきました。(2003.2.15.)

 
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