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スイセン(園芸品種)

スイセンスイセン
スイセン
品種:左‘フォーサイト’、右の2品種は不明


ヒガンバナ科スイセン属(ナルキッスス属)
学名Narcissus sp.
英名daffodil, narcissus
和名スイセン(水仙)
別名 
花言葉スイセン属の解説参照
メモ

 スイセン属の解説は、こちらをご覧下さい。形態や栽培についても、スイセン属のページで解説してます。
 学名は、「原色園芸植物図鑑」と「園芸植物図譜」では、N. × hybridus hort. とされていましたが、クレマチスと同様の判断をしました。参考までに、sp.species の略で単数の種の場合に用い、spp.speciesplural)の略で複数の種に用います。このページで扱っている3品種は、種としては N. × hybridus一種としてまとめられるかもしれないので、単数形を用いました。間違っていたらすみません。
 英名について、「The New RHS Dictionary of Gardening」によると、カタログ等では、副花冠(副冠)が長い(トランペット)品種を「daffodils」、副花冠が短い(カップ)品種を「narcissinarcissusの複数形)」のように区別しているそうですが、中間の長さの副花冠を持つ品種が多く、理にかなった分類ではないことから、同書では、「daffodil」と「narcissus」を同義と見なしたそうです。

 原種は約30〜50種だそうですが、これらを交雑させて出来た園芸品種は20000種類以上にも上るそうです。現在、これらの園芸品種は、英国王立園芸協会(The Royal Horticultural Society [RHS])によって、基となった原種や花の形などを基準に、12の区分(原種を含めると13区分)に分類されています。ここでは、RHSが編集し、1999年に出版された「The New RHS Dictionary of Gardening」のペーパーバック版に記載されていた分類を紹介します(1992年に出版された同書のハードカバー版とは分類の方法が異なりますが、ここでは新しい方を参考にしました)。区分の和名は、既存の物は「園芸植物大事典」に従いました。なお、「園芸植物大事典」は古い分類を基にしているようです(英名が異なっていますが、「The New RHS Dictionary of Gardening」ハードカバー版と同じ分類です)。


Division(区分)※1特徴

1. Trumpet daffodil cultivars
(ラッパズイセン)

 花は単生。副花冠(トランペット)の長さは、花被片と同等かより長い。

2. Large-cupped daffodil cultivars
(大杯スイセン)

 花は単生。副花冠(カップ)の長さは、花被片の長さの1/3以上〜花被片の長さ以下。

3. Small-cupped daffodil cultivars
(小杯スイセン)

 花は単生。副花冠(カップ)の長さは、花被片の長さの1/3未満。

4. Double daffodil cultivars
(八重咲きスイセン)

 花は、1本の花茎に1花以上。花被片と副花冠のいずれかが、あるいは、両者が八重になっている。

5. Triandrus daffodil cultivars
(トリアンドルス・スイセン)

 N. triandrusの特徴がはっきりと表れている物。普通、1本の花茎に下向きの花が2花以上着く。花被片は反り返る。

6. Cyclamineus daffodil cultivars
(シクラミニウス・スイセン)

 N. cyclamineusの特徴がはっきり表れている物。普通、花は単生。花被片は反り返る。花には非常に短い花柄(neck)があり、鋭角に茎に着く。

7. Jonquilla or Apodanthus daffodil cultivars
(ジョンキラ、あるいは、アポダンサス・スイセン)

 Jonquilla節かApodanthiの特徴がはっきりと表れている物。普通、1〜5花が花茎を囲む。葉は幅が狭く、濃緑色。花被片は平開するか、反り返る。芳香がある。

8. Tazetta daffodil cultivars
(房咲きスイセン)

 N. tazetta群の特徴がはっきりと表れている物。丈夫な花茎に、普通3〜20花が着く。花被片は平開するが、反り返らない。芳香がある。

9. Poeticus daffodil cultivars
(口紅ズイセン)

 N. poeticus群の特徴のみを示すもの(他のスイセンの特徴が混ざらないもの)。普通、花は単生。花被片は純白。副花冠は、普通、円盤状で、中央部は緑か黄色で、縁は赤。芳香がある。

10. Bulbocodium daffodil cultivars
(ブルボコディウム・スイセン)

 Bulbocodiumの特徴がはっきりと表れている物。普通、花は単生。大きな副花冠に比べ、花被片は目立たない。葯の背の部分は、花糸に固定している。花糸と花柱は、普通、曲がっている。

11. Split-corona daffodil cultivars
(スプリットコロナ・スイセン)

 副花冠は、切れ込みが入っていると言うよりも裂けていて、普通、切れ込みの深さは副花冠の長さの半分以上。

12. Other daffodil cultivars(その他) 上記のどの区分にも当てはまらないもの。
13. Daffodils distinguished solely by botanical name(学名によって単独で区別されるスイセン)※2

※1 ここではdivisionの和訳を「区分」としましたが、もっと適切な訳があるかもしれません。
※2 第13区分は、恐らく、原種のことだと思います。
 参考までに、「The New RHS Dictionary of Gardening」のハードカバー版からの変更点としては、名称が変わったことと、第10区分が「Species, wild variants and wild hybrids(種、野生の変異体、野生の雑種)」から上記のように「Bulbocodium daffodil cultivars」に変更されたこと、第13区分が新たに設けられ、こちらに野生種などが移されたことなどが挙げられます。

 上記の区分は、花被片と副花冠の色によって細分されます。色は、「WWhite or Whitish;白か白っぽい色)」、「GGreen;緑)」、「YYellow;黄色)」、「PPink;ピンク)」、「OOrange;オレンジ色)」、「RRed;赤)」の6文字(カラーコード;colour code)を、「花被片の色−副花冠の色」のようにハイフンで結んで表します(ハイフンの前が花被片、後が副花冠)。2色以上の場合は、必要に応じて、花被片では「先端、中央部、基部」の順に、副花冠では「基部(目)、中央部、縁」の順に文字を並べます。八重咲きの場合、ハイフンの前の文字は、外側の花被片だけでなく、副花冠の裂片の間に散在する同色の花被片も表すそうです。
 カラーコードは、区分番号の後ろに付けます。具体例ですが、「3W-GYO」で表される品種があったとしたら、「第3区分で、花被片の色は白色で、副花冠の色は基部(目)は緑、中央部は黄色、縁はオレンジ」となります。写真右下の八重咲きの品種は、「4W-O」で表されると思います。

 Ajax亜属(詳細は分かりませんでしたが、ラッパズイセン等を含むようです)の栽培化に関連することなどについて少々説明します。
 Ajax亜属の野生種は全て2倍体で、染色体数は14本(2n=14)だそうです。野生では一部を除いて倍数化は珍しいそうですが、栽培された物では倍数化は比較的頻繁に起こり、3倍体や4倍体の物があるそうです。倍数化によって器官サイズが大きくなることがありますが、6倍体より4倍体の方が花が大きいと言うデータがあるそうです。
 Ajax亜属のスイセンの栽培化は、中世、16〜17世紀、19世紀後半の3つの時代に行われたそうで、時代時代によって特徴が異なることから区別することが出来るそうです。
 スペインからイギリス、フランス、フラマン(現在のオランダ、ベルギー)への球根の輸出は16世紀から盛んになったそうです。イギリスでは、この時以降にスイセンの栽培が行われるようになったそうで、それまでは見向きされることがなかったそうです。交雑が園芸品種の発達に意味のある役割を果たすようになったのは19世紀後半以降だそうで、それ以前の交雑種は人為的な物ではなかったそうです。
 色について、白、淡黄、バイカラー(2色)は近縁で、恐らく、単一の変異に由来すると考えられるそうです。また、色素に関わる特徴は、他の形態的特徴とは別個に発達したと考えられ、その発達は、さまざまな場所、時代で起きたそうです。
 八重咲きタイプは、スイセンの原産地であるスペインやポルトガルでは非常に珍しいそうですが、イタリア、トルコ、イギリスでは良く見かけるそうです。1597年には八重咲きの黄色いラッパズイセンが栽培されていたそうです。八重咲きは交雑が起源であるためか、多くが不稔性だそうです。

 スイセンは、自然に任せておくと南向きに咲いてしまうそうです。そのため、南側に庭がある住宅では花の裏側しか見ることが出来なくなってしまうそうです。そこで、スイセンを北向きに咲かせる方法について検討した研究があります。結論としては、花茎を北側に傾ければ北向きに咲くそうで、蕾は開花しようとするときに僅かな傾きを読み取ることが出来る、と推察されています。

追記(2004.1.18.)
 メモを全文改訂、写真を差し替えました。


本棚以外の参考文献
  • 塚本洋太郎.原色園芸植物図鑑Vol.IV.球根編.保育社.1965年.

  • Nuñez, D. R., et al. The origin of cultivation and wild ancestors of daffodils (Narcissus subgenus Ajax) (Amaryllidaceae) from an analysis of early illustrations. Scientia Horticulturae. 98: 307-330. 2003.

  • 原 周作.カップ咲スイセンの花向きを制御する研究.園芸学会研究発表要旨.昭和57年秋:336〜337ページ.1982年

コメント

 スイセンというと、ブラザーズフォーの「七つの水仙」という歌が思い浮かびます。 "I can show you morning on the thousand hills, and kiss you and give you seven daffodils." だったかな?

もう一言(2004.1.18.)
 サイトを開設して間もない頃に作って、内容が薄いものでしたので、更新しました。鉢植えしていますが、球根(鱗茎)を最初に植え付けてから、かれこれ5年くらいたったでしょうか。ここ数年は、葉っぱはたくさん出るものの、花着きが悪く、年に数輪咲く程度です。植え替えしなければならないのでしょうか。右下の八重咲きの物は私の職場に野生化しているもので、こちらは、毎年立派な花を咲かせています。

 
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