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スイセン・トリアンドルス

スイセン・トリアンドルス
品種‘Thalia


ヒガンバナ科スイセン属(ナルキッスス属)
学名Narcissus triandrus L.
英名Angel's tears
和名 
別名 
花言葉スイセン属の解説参照
メモ

 スイセン属の解説は、こちらをご覧下さい。形態の主な特徴や栽培についても、スイセン属のページで解説してます。
 「The Plant-Book」や「花の西洋史」によると、英名は、Angel Gancedoという人の名前に由来するそうです。この人は、スイセンの研究家であったピーター・バーの手伝いをしていたそうで、植物の採取か荷物運びに苦労したという逸話があるそうです。泣くほどの苦労だったんでしょうね。
 原産地は、スペイン、ポルトガルだそうです。「The New RHS Dictionary of Gardening」によると、フランスの南西部にも分布しているそうです。日本には大正時代の中頃に渡来したそうです。

 トリアンドルス種自体は園芸品種の分類では第13区分に属していますが、ここでは、トリアンドルス種が基になった園芸品種(第5区分)についても紹介したいと思います。
 トリアンドルス種の形態ですが、花茎は15〜30cm、1本の花茎に1〜6花が着き、副花冠はカップ状、花色は白か黄色で、花被片が反り返ると言う特徴があるそうです。1花茎当たりの花数は、原種は1花の場合もあるようですが、園芸品種の分類のトリアンドルス・スイセンの区分は2花以上の花が着くと定義されています。定義をした人が矛盾に気付いていないのか、それとも、原種と園芸品種との違いなのでしょうか?
 Kington氏によると、以下の2亜種(subspecies; subsp.)、4変種(variety; var.)があるそうです。

subsp. triandrus
   var. triandrus (異名:var. albus (Haw.) Bak.
   var. concolor (Haworth) Link
   var. loiseleurii (Rouy) A. Fernandes
   var. pulchellus (Salibury) Baker
subsp. pallidulus (Graells) D. A. Webb

 var. triandrus の異名は「園芸植物大事典」によります。また、同書によると、cernuus という変種(var. cernuus (Salisb.) Bak. ex Burb.)もあるそうです。
 写真の‘Thalia’は、園芸品種の分類に基づけば、「5W-W」(第5区分、花被片:白色、副花冠:白色)で表される園芸品種です。「最新園芸大辞典」によると、‘Thalia’は、1916年に品種登録されたそうで、1919年にオランダの HaarlemAward of Merit という賞を受賞したそうです。日本での品種名は、タキイ種苗の通販では‘タリア’とされていたり、「原色園芸植物図鑑」では‘ターリア’とされていますが、発音記号をチェックした限りでは‘セイリア’(女性の名前)か、‘サライア’(ギリシャ神話に登場する女神・タレイア)が良いように思いました。「最新園芸大辞典」でも‘サライア’とされています。
 トリアンドルス種の形質を持つ(第5区分の)品種として、‘Thalia’の他に、‘April Tears’(5Y-Y)、‘Ice Wings’(5W-W)、‘Tuesday's Child’(5W-Y)等があるそうです。

 スペインのアンダルシア西部に自生する7節9種のスイセン属植物を、香り成分を分析した結果を基に分類しようと試みた実験があります(節の解説はこちら)。これによると、トリアンドルス種の香りの主成分はモノテルペンで、camphene、α-ピネンとその誘導体、ボロニルピロフォスフェイトの誘導体が、種特異的に含まれているそうす。香りの主成分によって種を大別した場合、Bulbocodii節の N. bulbocodium とともに、「モノテルペンが香りの主成分で、trans-ß-ocimeneがない」という特徴を持つグループにまとめられるそうです。また、検出された香り成分に基づくクラスター分析の結果は、亜属の区分と一致しないことがあったそうですが、トリアンドルス種は他の節から独立している(縁が遠い)という結果に関しては一致したそうです。スイセンの受粉は虫媒によるそうですが、トリアンドルス種に訪花したのはハチ(マルハナバチ属、コシブトハナバチ属)で、チョウやガのような鱗翅目昆虫を引きつける香りはないそうです。


本棚以外の参考文献など
  • A. M. コーツ.花の西洋史・草本編.八坂書房.1989年.

  • 塚本洋太郎.原色園芸植物図鑑Vol.IV.球根編.保育社.1965年.

  • 松田徳一郎監修.リーダーズ英和辞典(初版・第21刷).研究社.1995年.

  • Kington, S. The International Daffodil Register and Classified List (1998). 2003.

  • Dobson, H. E. M., et al. Interspecific variation in floral fragrances within the genus Narcissus (Amaryllidaceae). Biochemical Systematics and Ecology. 25: 685-706. 1997.

コメント

 鱗茎の植え付けは一昨年の10月中旬、出芽は同年12月中旬、最初の開花は昨年の3月末です。無加温の温室内で栽培していました。昨年、他のスイセンが最初に開花したのは2月の始めでしたので、およそ2ヶ月ほど遅れて咲きました。通販で購入したものですが、5球植えた鱗茎のうち、まともに咲いたのは2株ほどで、後は病気に罹ったかの様に茶色くなってしまいました。咲いた株も、後になって鱗茎が腐って全滅してしまいました(T-T) (2004.1.24.)

 
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