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デルフィニウム属


このサイトで紹介している種

グランディフロルム ヌディカウレ    
オオヒエンソウ
[グランディフロルム]
grandiflorum
ヌディカウレ
nudicaule
   

キンポウゲ科Ranunculaceae
学名Delphinium L.
和名オオヒエンソウ属
英名delphinium, larkspur
分布北半球(アジア、ヨーロッパ、アメリカ)の温帯、熱帯アフリカの山地
種数200〜300種以上(資料によって異なります)
属名の性別中性

属名の由来

ギリシア語の「delphis(イルカ)」に由来するが、花の形が似ていることから。

花言葉変わりやすい、気まぐれ、移り気
メモ

和名について
 和名をヒエンソウ属としている資料があります。ヒエンソウは、かつてはデルフィニウム属でしたが(D. ajacis)、現在はコンソリダ属に移されているので(Consolida ambigua)、このサイトでは「園芸植物大事典」に従い、オオヒエンソウ属としました。なお、同書では、コンソリダ属の和名がヒエンソウ属とされています。


形態・生態・栽培など
 一〜多年生の草本です。茎は直立し、分枝することがあります。葉は有柄〜無柄で葉柄の基部が広がることがあります。茎の上位に着いている葉より下位の葉の方が大きいです。葉は三出複葉か掌状で、切れ込みが入りますが、種(しゅ;species)によって切れ込みの深さなどが異なります。花序型は、主に穂状花序か総状花序ですが、円錐花序もあります。花は左右相称で、花色は白、青〜紫、赤、黄色で、二色のこともあります。萼片は5枚あり、花弁状になっていて、一番上の萼片(上萼片)には距があります。

オオヒエンソウの花

花弁は4枚(左の写真では2枚しか見えていません)で蜜葉になっていますが、花弁がないこともありますし、雄しべが弁化して花弁が多数ある八重咲きになることもあります。花弁は、園芸上は「bee(ビー;ミツバチ)」、あるいは、「eye(アイ;目)」と呼ばれています。花弁が4枚の場合、大きさや位置から2枚ずつ2組に分けることが出来ます。上部の花弁には蜜を貯めている距があり、この距は萼の距の中に突入しています。雄しべは多数で、8輪に輪生しています。雌しべは3個か5個で、無柄です。果実は裂開性の袋果です。
 左の写真はオオヒエンソウ(グランディフロルム種)です。

 繁殖は実生、株分け、挿し木によります。発芽の適温は15℃で、高温は発芽を阻害するそうです。日当たりの良いところを好みますが、夏は部分的に遮光すると良いそうです。土質はアルカリ性であれば特に選ばないそうですが、肥沃で排水性が良いものが向いているそうです。高温・多湿を嫌うので、多年生の種の場合は、夏は乾燥気味に管理し、冬には過湿にならないように注意します。草丈が高い種や品種の場合、支柱を立てる必要があります。また、春に、育ちの良くないシュートを摘心すると花穂の品質が良くなるそうです。


種類など
 種数は上記の通りです。和名が付いている種と園芸上重要な種を以下に挙げます。現在はコンソリダ属に移されている種も一部含みます。

・ヒエンソウ(別名:チドリソウ;D. ajacis L.、正名:Consolida ambigua (L.) P. W. Ball et Heyw.
D. × belladonna hort. ex Bergmans
D. cardinale Hook.
D. cheilanthum Fisch.
・ルリヒエンソウ(D. consolida L.、正名:Consolida regalis S. F. Gray
D. × cultorum Voss.
D. elatum L.
D. formosum Boiss. et Heut.
オオヒエンソウ(D. grandiflorum L.
D. × hybidum Steven ex Willd.
D. nudicaule Torr. et A. Gray.
・キバナヒエンソウ(正名:D. semibarbatum Bien. ex Boiss.、異名:D. zalil Aitch. et Hemsl.
D. tatsienense Franch.


利用について
 D. dissectumD. excelsum、オオヒエンソウ、D. triste はモンゴルの伝統的な薬として用いられているそうです。あるデルフィニウム属植物を煎じた汁は、感染症によって起こった熱の解熱、胆汁症で起こった下痢を止める、歯痛を抑える、というような作用があるそうです。他に、D. elatum はロシアでは薬草や殺虫剤として使われていたり、D. staphisagria の種子を粉末にしたものは、かつて、シラミに対して用いられていたそうです。


色素
 デルフィニウム属植物の花に含まれる色素の研究は、1915年にウィルステッター(Willstätter)氏らがルリヒエンソウ(D. consolida、正名:Consolida regalis)の赤紫色の花弁からアントシアニンの一種であるデルフィニジン(delphinidin)を単離したのが始まりだそうです。デルフィニジンの名前は属名に由来しますが、現在、ルリヒエンソウはコンソリダ属(ヒエンソウ属)に移されています。
 植物では、一つの属の中に三原色(赤、青、黄色)が揃うことはあまりないそうですが、デルフィニウム属では揃っています。オオヒエンソウ等の青花の色素はデルフィニジン(シアノデルフィン、ビオルデルフィン、他)、ヌディカウレ種やカルディナレ種の赤花の色素はペラルゴニジンだそうです(キバナヒエンソウの黄花の色素については、まだ関連する資料を見つけていません)。濃い青色の花では、相当量のシアノデルフィンが含まれていなければならないことが示唆されています。
 主に栽培品種を用いた研究の結果によりますが、白色系(ピンク色系)の花にはビスデアシルプラチコニンやツリパニン、紫色系(淡紫色系)の花にはビオルデルフィン、青色系(淡青色系)の花にはシアノデルフィンが含まれているそうです。アシル基としてパラヒドロキシ安息香酸をいくつ結合しているかによって色が異なるようで、ツリパニンは0個、ビオルデルフィンは2個、シアノデルフィンは4個付いているそうです。このことから、デルフィニウムの花色の青色発現には、パラヒドロキシ安息香酸によるアシル化アントシアニンの蓄積が関わっていることが明らかにされたとのことです。なお、色素の合成は、ツリパニンを前駆物質として、ビオルデルフィン、シアノデルフィンの順でアシル化が進むことが推察されています。
 青い花を咲かせるオオヒエンソウと赤い花を咲かせるヌディカウレ種やカルディナレ種を交配して作られた雑種の色素には、デルフィニジンが含まれていたもののペラルゴニジンが含まれていなかったことから、デルフィニジンを発現する遺伝子はペラルゴニジンを発現する遺伝子に対して優性であると推察されています。


本棚以外の参考文献
  • Batbayar, N. et al. Norditerpenoid alkaloids from Delphinium species. Phytochemistry. 62: 543-550. 2003.

  • Hanelt, P. Mansfeld's Encyclopedia of Agricultural and Horticultural Crops. 155. Springer. 2001.

  • Hashimoto, F. et al. Characterization of cyanic flower color of Delphinium cultivars. Journal of the Japanese Society for Horticultural Science. 69: 428-434. 2000.

  • Hashimoto, F. et al. Changes in flower coloration and sepal anthocyanins of cyanic Delphinium cultivars during flowering. Bioscience, Biotechnology and Biochemistry. 66: 1652-1659. 2002.

  • Honda, K. et al. Analysis of the flower pigments of some Delphinium species and their interspecific hybrids produced via ovule culture. Scientia Horticulturae. 82: 125-134. 1999.

(2006.2.19.)
 
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