花色と色素

植物の説明で足りない内容を補足する予定です。このページは、随時、加筆・修正する予定です。ご了承下さい。
もし、内容に誤りがございましたら、お知らせ下さい。
最新の更新:2006年 2月19日

主な色素の分類です。全ての色素・説明等を網羅しているものではありません。足りないものについては追加していきます。
  1. カロテノイド系…黄〜橙、橙赤

    1. カロテン

      1. αカロテン

      2. βカロテン

      3. γカロテン

      4. リコピン

    2. キサントフィル

      1. ルテイン(アフリカン・マリーゴールド

      2. ビオラキサンチン

  2. フラボノイド系…白、黄、橙赤、赤紫、青など

    1. アントシアニン…アントシアニジン(色素本体)と糖が結合した色素配糖体

      1. ペラルゴニジン(Pg:色素本体の一種:ペラルゴニウム属に因む)…赤

      2. シアニジン(Cy:色素本体の一種)…赤紫

      3. デルフィニジン(Dp:色素本体の一種:デルフィニウム属に因む)

        • delphinidin 3-O-rutinosyl-7-O-glucosidebisdeacylplatyconin;ビスデアシルプラチコニン)

        • delphinidin 3-O-rutinosidetulipanin;ツリパニン)…ピンク

        • violdelphin (ビオルデルフィン)…紫(オオヒエンソウ

        • cyanodelphin (シアノデルフィン)…青(オオヒエンソウ

      4. ペチュニジン(Pt:色素本体の一種:ペチュニア属に因む)

      5. マルビジン(Mv:色素本体の一種:ゼニアオイ属[マルウァ属]に因む)

      6. 色素本体には、他にも数種類あります。また、植物の名前が色素の名前になった例が数多くあります。

    2. フラボン類…淡黄色

      1. フラボン

      2. フラボノール

    3. 微量フラボノイド類

      1. カルコン(キンギョソウ)…フラボン、アントシアニジンなどの前駆体

      2. オーロン(キンギョソウ)…フラボン、アントシアニジンなどの前駆体

    4. その他

  3. ベタレイン(betalain…ナデシコ科を除くナデシコ目(中心子目)植物に特徴的に含まれる色素で、分子内に窒素が存在する。

    1. ベタシアニン(betacyanin)…ベタニジン(betanidin)に糖が結合したもの、赤

      1. ベタニン(betanin)(リビングストン・デージー

      2. ゴンフレニン(gomphrenin)(センニチコウ

    2. ベタキサンチン(betaxanthin)…黄

  4. クロロフィル…緑

アントシアニンの青色発現

  1. pH説

    • ドイツの有機化学者であるリチャード・ウィルステッター(Richard Willstätter;独語の発音でリヒャルト・ヴィルシュテッター。1915年にクロロフィルに関する研究でノーベル化学賞を受賞)が1913年に唱えた説です。アントシアニン類は、酸性で赤色、中性で紫色、アルカリ性で青色を示すことから、花色の違いは細胞のpHの違いによるという考えです。

    • 現在、ソライロアサガオ‘ヘブンリーブルー’で立証されています。

  2. 金属錯体説

    • 日本の植物性生理学者である柴田桂太らが1919年(1916年?)に唱えた説です。花びらの青色は、アントシアニンと金属元素が錯体(原子価ではなく、配位結合して出来た化合物)を形成することによって発現するという説です。花弁の細胞のpHは、弱酸性から中性であることから、pH説に反論しました。

  3. コピグメント説copigment;助色素あるいは補助色素)

    • 分子間コピグメント:1932年にイギリスの生化学者のロビンソンが唱えた説で、花弁の細胞の中には、無色の助色素(コピグメント)が存在し、アントシアン類と複合体を作ると、その複合体は青色を示すと言うもので、助色素としてフラボン類の一種やタンニン類が挙げられています。

    • 分子内コピグメント:1972年に日本の斎藤らのグループが最初に発表したもので、キキョウのプラチコニンで発見されました。これによって発色する色素類は、分子内に多数の有機酸を含んでいます。
      例:ヘブンリーブルーアントシアニン(ソライロアサガオ

    • 青い花で、助色素が関係していると見られているものは、ライラック、サクラソウ、スイートピー、アイリス、アジサイ、他、非常に種類が多いそうです。

  4. 分子会合説

    • アントシアニン同士、あるいは、アントシアニンと他の分子が重なり合って結合することで青色が安定するという説で、1970年代以降に唱えられたそうです。

花弁の斑入り

  1. トランスポゾン(transposon

    • トランスポゾンとは、ある染色体から他の染色体に移動することが出来る遺伝子(DNA断片)のことです。トウモロコシの実の斑入りを研究していたバーバラ・マックリントック(Barbara MaClintock)によって1951年に「動く遺伝子(transposable genetic element)」の概念が初めて提唱されました。しかし、斬新な概念であったためか、発表当時は、研究者の間でも受け入れられなかったそうです。その後、分子生物学の研究が進んでトランスポゾンの実在が確認されると、その先見性から、マックリントックは1983年にノーベル医学生理学賞を受賞しました。マックリントックは1902年6月生まれらしく、授賞時は81歳という計算になりますが、その頃も研究に励んでいたそうです。

    • トランスポゾンによる花弁の斑入りは、色素を作るのに関わっている酵素をコードしている遺伝子にトランスポゾンが挿入することによって生じます。つまり、トランスポゾンが挿入された遺伝子は機能しなくなり、それによって色素を生合成する事が出来なくなり、花色は正常とは異なるものになります。しかし、トランスポゾンが抜けると、その遺伝子は正常な機能を回復し、再び色素を合成できるようになります。正常な機能が回復した遺伝子を含む細胞が多ければ大きい斑が生じ、そのような細胞が少なければ、斑の大きさも小さくなります。トランスポゾンの転移を制御する仕組みについては、まだ不明だそうです。

参考文献

このページを作成する際に参考にした本や論文です。植物ごとにまとめました。一般では入手しにくいものもあります(^^;;;
必要な部分をちょっと読んだ程度で、全て読んで理解したわけではないので、文献の内容に関するご質問は、ご遠慮下さい(^^;