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Share MILF -島原 吉野-

其の拾壱

「はぁはぁ、はぁはぁ……よ、吉野……お、起きてる?…」
「……は、はい……お、起きてます…よぉ……はぁはぁ…」
息が整い始めたのか、ベッドにもたれ掛かるように身体を横たえていた二人が漸く身体を起こす。
「あ、いけない!……ちょちょ、ちょっと待ってください、高尾さん!」
「ん?…………あ、そうね…ふふ…」
何かと思って吉野を見れば、いそいそとチェストから替えのパンティを取り出していた。
そして高尾に背を向け、こっそりとパンティを穿く吉野だ。
「はぁ……しかし、参ったわ」
「え?何が…ですか?」
パンティを穿き終えた吉野が、高尾の隣に腰を下ろしながら小首を傾げる。
「ん……まさかイかされちゃうなんてね…」
「え?……それが…参っちゃうんですか?…わ、私なんて…に、二回も高尾さんにイかされちゃいましたけど?…」
「はぁ……あのね…私、後始末の時に相手の女の子にイかされたのなんて、これが初めてよ」
「後始末?……って、さっきもそう言ってましたけど…後始末ってなんのことですか?」
高尾の言葉の意味がよくわからない吉野。
あぁそうか、と説明を加える高尾だった。
「後始末っていうのはね、シェアメイドの…っていうよりナイトサービスを担当している女の子達ね。その子達との間で使っている隠語なんだけど…」
「い、隠語?…そ、その意味は?」
「そうね、簡単に言うなら……ナイトサービス提供後の悶々とした疼きを解消すること、かしらね」
「悶々とした疼きの解消って……つまり…」
高尾の言葉の意味を薄っすらと理解する吉野。
そんな吉野にコクリと一度高尾が頷いた。
「えぇ、シェアワイフやシェアミルフでセックスを提供した時、私達が満足することなんてまずないのよ。シェアワイフの場合は上手な旦那さんに当たる時もあるみたいだけど…そんなのは希の話。ましてやシェアミルフなんて…ねぇ?」
「…………」
ねぇと賛同を促されても、吉野には返事のしようがない。
ただ、高尾の話の際どさに顔を赤らめるばかりだ。
「でも相手はしつこく求めてきて、否が応でも身体は弄り回される……このサービスを受ける旦那様やお子様達は性の捌け口を求めてるから、ね」
「奥様が相手を出来ないとき、とか……子供達の性欲解消……」
ナイトサービスの説明を思い出した吉野だった。
「そう、それで好き放題に身体を弄り回されて、結局、私たちは満足させてもらえない、と……そんなことが続けば……」
「悶々とした……身体の疼き…」
「ホント、吉野は理解が早いわ。そう……要するに私たちが欲求不満になっちゃうのね」
「…………そ、それ、わかります」
「え?……あ、そ、そうよね……これも釈迦に説法だったかしらね」
確かにプロとして働いていた吉野なら、そんな経験は数え切れないほどしてきたのだろう。
特に晩年は『筆おろしの女神』などと呼ばれるほど相手は未熟な童貞ばかり…ならば悶々とさせられる機会は一層多かったことだろう。
独り納得する高尾だった。
「それで…うちで働いている子…ナイトサービスの担当者ね。この子達は恋人も旦那様もいない子達なの……だけど私はその子達にそこら辺のおかしな男達に引っ掛かって欲しくないのよ……だから私が、ね。その子たちの悶々を解消してるってわけ。これを後始末って呼んでるの」
「……そういうこと…なんですね。あはっ、私、高尾さんって女の子に興味がある人なんだって思っちゃいました」
「お生憎様、私はノーマルよ。っていうか、どちらもいけるから所謂バイかもね…ふふ…それにしても……貴女よ、吉野」
「え?…わ、私?……私が……な、なにか?…」
急に話を振られた吉野が、キョトンとした目で高尾を見る。
その素知らぬ吉野の態度に、ほんのちょっぴりだけ苛立ちを感じさせられる高尾だった。
「貴女はどうなのよ?そりゃあ相手が男なら私達なんかが太刀打ちできないほど『接客』が上手なのはわかるわ。だけど……な、なんで女の私を…あんなにも簡単に?……」
「そ、そんなに簡単に…でしたか?」
「はぁ…やっぱり自覚がないのね。あのね、さっきも言ったけど、私は後始末でイかされたことなんてなかったの。こんなこと初めてなんだから…貴女、なんで女性の扱いもあんなに上手なのよ?」
不本意に昇天させられたことが悔しいのだろうか?それとも恥ずかしいのだろうか?
やっぱり……この人は本当に可愛いらしい人なんだな、と高尾を優しい眼差しで見つめる吉野だった。
「えーっと……あの…わ、私は……ま、まったく経験が無かったわけじゃないので…」
「ん?どういうこと?」
「あ、あの…高尾さん?私の話を聞いても…その…ひ、引かないで…ください、ね…」
高尾の問いに、何やらばつの悪そうな顔をする吉野。
そんな吉野を安心させようと努めて冷静に応える高尾だ。
「大丈夫。私はもう……貴女の友達なんだから、ね?…勿論、言いたくないことは言わなくても構わないわ」
「え、えっと…そ、それじゃあ……こ、これはあのお仕事をしていた時の話なんですが……」
大丈夫とは言ったものの、高尾は数分後には開いた口が塞がらなくなってしまうのだ。
高尾にとって、それほど吉野の話は余りに奇想天外なものだった。
「常連のお客さんで、ちょっとおかしな人がいたんです」
「おかしな?…」
「人っていうか、人達、ですね。ご夫婦だったんです。ある時、何度か私を指名してくれていた常連さんがいきなり奥様を連れてきて、その奥様が私を呼べってお店の人に…」
「え?奥さんが貴女のお店に?……貴女に会いに?」
「はい。それで最初はお店の人が対応してくれていたんですが……暫くしたら私のところに来て、お二人の相手をしなさいって。もう私、意味がわからなくて…」
意味が分からないのは、聞いている高尾の方だった。
しかし、口を挟むこともできずただ黙って耳を傾けるばかりだ。
「それで二人を連れてお部屋に入って…よくよく話を聞いてみたら……ちょっとおかしな性癖の人達だったんですよ」
「おかしな…性癖?」
「はい、私に奥様の相手をしてほしいって。それで常連さんは……ただ私達を見ているだけでいいって。『寝取られ』っていうんですか?その常連さん、奥様が他人に感じさせられているところ見ると、凄く興奮する方だったみたいで…」
思わず目を丸くしてしまった高尾だったが、確かにそんな癖のある人種がいることは聞いたことがあった。
わざと連れ合いを他人に抱かせ、興奮を得るような変わった癖の持ち主が。
「でも……常連さんも奥様も相手が男性だと嫌みたいで…それで私に白羽の矢がたった、と……そういうことだったみたいです」
「なんとも……確かにおかしな人達ねぇ…」
呆れ顔で相槌を打つ高尾。
「はい、まったく。でも……私、女性を相手にしたのはその時が初めてでどうしたらよいかわからなくて……そしたら奥様が、ああしなさい、こうしなさいって事細かに指示をしてくれたんです……あは……今にして思えば、あの奥様が女性の接客方法を教えてくれた先生ってことになりますね」
「そ、そうだったの…」
「そのお二人は何度かお店に通ってくださいました。その時私は…確かあの仕事を初めて2年目くらいだったから二十歳前後ですね。四十代半ばのお二人からすれば娘みたいな年だったので、随分可愛がっていただきました。お店の方も実は二人分のお金をいただいていたみたいで……ちゃっかりしてますよね」
はにかむように笑う吉野に乾いた微笑みしか返せない高尾だった。
しかし、まだまだ吉野の話は始まったばかりだったのだ。
「そんなことがあって…次は…」
「え?つ、次?」
「はい、でもこれはあまり楽しい話ではなくて、私の教訓になった出来事なんです。さっきの話から…1年後くらいだったかな?別の常連さんのお話で…」
ほんの少し苦笑いを浮かべた吉野。
その表情は確かに楽しい話をする雰囲気ではないようだ。
「その常連さんは…当時20代半ばくらいの方でちょくちょく指名してくれた方だったんですが…ある時、接客中に急に泣き始めちゃって…」
「泣く?…」
「はい、もうポロポロ涙を流して…それで理由を尋ねたら、やはり奥様の話だったんです」
「風俗通いがバレて奥さんに逃げられたとか?…」
「い、いえ…そんな話ならよくあることなので…」
「よくあるのね…」
何の気なしに呟いた言葉への回答にもいちいち驚かされる。
高尾は黙って耳を傾けた。
「その常連さんが言うには、奥様が所謂マグロ?で全然自分の行為に反応してくれない、絶対に不感症に違いないって。それでこのままじゃあ自分はそのうち浮気してしまうかもしれないって…」
「吉野に会いに来てるのに、何をいまさら…」
「ありがとうございます、高尾さん」
「え?な、何が?…」
何故お礼を言われたのか見当も付かない高尾だったが、そんな高尾を見る吉野の目は何やらとても嬉しそうだった。
「私達をちゃんと女として…人として見てくれて、です。お客様から見ると私達はノーカウントらしいので…確かに女性からすればおかしな話ですよね…あは…」
「よ、吉野…」
ニコリと笑う吉野だったが、なぜかその笑顔を哀れに感じてしまった高尾だった。
「で、その時、私は……なんと言ってよいか返答に困って……つい、きっと大丈夫ですよ、なんて無責任なことを言ってしまったんです」
「む、無責任って…そ、そんなのそれくらいしか答えようがないじゃない。あとは…放っておくか、くらいでしょ?」
「あは…お客様ですので、ただ黙っているわけには……でも、そうですね。そうしていれば、あんなことにはならなかったかも…」
きっとそれが、楽しい話ではないことの理由なのだろう。
「その常連さんが…私はいつも感じてくれてるのだからやっぱり奥様がおかしいんだ、と。それで一度奥様に会ってみてくれないかって、とんでもないことを…」
「な、なんでそうなるのよ……それに、貴女がいつも感じて…っていうのは…」
高尾が言い終えるのを待たずして、吉野が申し訳なさそうに呟いた。
「……は、はい……演技です…だから、私、本当に困ってしまって…」
「困る必要ないじゃない。そんなことすら気付けないお馬鹿さんが風俗で遊ぶなんて10年早いわ!」
「た、高尾さん、こ、声が…」
「あ、ご、ごめんなさい」
吉野の話の中のお客に腹が立ってしまい、つい声を荒げてしまった。
吉野に諫められて、ばつが悪そうにフンっとそっぽを向いた高尾だ。
「それでお店の人に断ってもらおうとしたら、出張サービスってことにしてあげるから行っておいでって。そう言われた時はちょっと私も腹が立ったんですが、最後に小声で……この常連さんはもう放しちゃっていいからって……あとで聞いたんですが、実はこの常連さん、ちょっと言動が乱暴っていうか粗暴のところがあって…以前からお店のブラックリストに載ってた方だったんですよ…」
「なるほど……急に泣き出したり、粗暴になったり……感情を制御することが下手な人だったのね……」
「あ、そうか。そういうことなんですね。高尾さんに言われて今気づきました。確かにちょっとしたことで怒ったり、笑ったりってことが多い人でした。なるほどそうか…流石高尾さん」
「こ、こほん……い、いいから話を続けて……それで、会いに行ったんでしょ?」
急に自分を褒めだす吉野に思わず照れてしまう高尾。
高尾は、貴女こそ素直に気持ちを出し過ぎよと思いながら吉野に話を進めさせるのだった。
「はい。流石に今回は危険かもしれないと思ったのか、お店の人が念のため携帯の警報機…紐を引っ張ると大きな音が出るやつですね、それとスタンガンを持たせてくれて、それを鞄に忍ばせていつでも取り出せるようにして……万全の対策をして私は約束のラヴホテルに向かったんです」
「そ、それは厳重ね…」
「まぁ、結局、そんな危ないものを使う必要はなかったんですが…」
また少々吉野の表情が暗くなった。
「お部屋に入ると奥様が待っていらっしゃいました。私と同じ位の年齢の方でとっても大人しく清楚な雰囲気の人でした。だからあんまりラヴホテルの煌びやかな内装が似合っていなかった記憶があります」
空を見ながら、その時の様子を伝える吉野。
高尾は、吉野は案外状況を伝えるのが上手だなと感じながら耳を傾けた。
「すると部屋に入るや否や、常連さんが凄く横柄な態度に変わって……奥様に命令するように早く脱げなんて言い出したんです。私はそんな態度取られたことがなかったのでちょっとビックリしちゃいました」
「そいつ……」
頭に浮かんだ言葉を今は飲み込んだ高尾だった。
「それで奥様が全部脱いで…私が、奥様を感じさせることになったんです。だから私も全裸になって…なぜか常連さんも全裸になってましたが……」
「…………」
「それで奥様を愛撫し始めたんです。その時奥様は目を瞑ってベッドにジッと横たわっていたんですが、それがまるで眠り姫のようで……この奥様を感じさせることなんて私に出来るのかな?なんて思っていたんですけど、いざ胸や股間を愛撫したら……」
「その奥さんは、あんあんと喘ぎ始めた…」
「そ、そうです、そうです……凄い高尾さん、なんでもお見通しなんですね」
「話の流れでわかるわよそれくらい。それで?」
「私は、最初の奥様に教えてもらった方法や、私が…その…自分でする時のことを思い出しながら横たわった奥様を愛撫していたんですが、奥様は何をしても凄く可愛らしくあんあんと喘ぎ声を出してくれて……常連さんは呆気に取られたような顔をしてましたけど…5分もすると最初に感じた清楚な雰囲気なんて微塵も感じられないほど大胆に……その……お股をガバッと蟹股って呼べるくらい大きく開いて、私の指を受け入れてくれたんです……」
「ふふ……さっきの吉野みたいに?」
「も、もう!高尾さんの意地悪っ!」
年甲斐もなくぷくっと膨れ面をする吉野に、ぺこりと頭を下げる高尾だ。
「ごめんごめん、それで?…」
「何をしても感じてくれる奥様に私もなんだか嬉しくなってきちゃって……ここはどうですか?こっちはどうですか?なんて囁きながら奥様を……ただその時一つ気になったことがあったんです。その奥様は肌がとても綺麗な方だったんですが、ところどこに痣や擦り傷が…」
「やっぱり、ね…」
予想通り、と言った顔で高尾が呟く。
そんな高尾に吉野はコクンと頷いた。
「その理由は……最後にわかりました。10分近く経った頃、奥様がとっても気持ちよさそうな声をお出しになられて無事イかせることができたんですが、その時いきなり常連さんが……」
「奥さんに暴力を振るったのね」
「は、はい、そうです、そうです。気持ちよさそうに横たわっている奥様の頬をピシャリと殴って…お前、俺とやってるときは全然感じないくせにって大声を張り上げて……私、あまりに急だったから驚いて腰が抜けちゃって、ただ何も出来ずペタンとベッドに座ってたんです……けれど、もっと驚くことが……」
「?……な、何?…」
話の展開に思わず高尾も固唾を飲む。
そんな高尾を焦らすことなく、吉野が応える。
「奥様が枕をもって……はい、ダブルベットによく置いてある長いタイプの…それで常連さんに殴りかかったんです。あんたが下手糞だからでしょ!あんたが乱暴だからでしょ!って言いながら…」
「窮鼠猫を噛む、か…やるわね、その奥さん…」
「はい、まぁ、枕ですからそんなに効きはしないでしょうが、それよりもその奥様の行動に常連さんは大層驚かれたようで、頭を庇うようにしてジッと耐えてたんです…最初のうちは」
「危ないわね。やり過ぎると、そういう人は逆上してしまうから」
「は、はい、その通りなんです。急にいい加減にしろ!って大声出されて…私もその時はちょっと危険な感じがしたので、必死に常連さんにしがみ付いて…」
「吉野が?……あ、貴女も…やるわねぇ…」
ため息交じりに感嘆の声をあげた高尾だった。
「い、いえいえ、やっぱり凄いのはその奥様でした。私は常連さんの腰の辺りにしがみ付いていただけなんですが、奥様ったら常連さんをベッドに押し倒してしまったんです。それで両手を抑えながら…その顔の上にドンって腰を下ろして……そして私には常連さんの両足を揃えてその上に座る様に指示を…それでなんとか取り押さえたんです」
「な、なんだか凄いことになってきたわね」
「はい……でもその時は私はもう必死で……それで常連さんの身体の上で私と奥様が向かい合うような形になったんですが、その私達に……い、いえ奥様に向かって、俺が下手なわけないだろう!私はちゃんと感じてたぞって…」
「あらあら、情けないこと…」
「はい、奥様はその時はもう怯みもせずに、商売女の演技に決まってるでしょ!そんなことにも気付かないからあんたは駄目なのよ!って……」
「そう…商売女って言葉は酷いけれど……頑張ったのねその奥さん。もう限界だったのね……DVの…」
「はい、それは最後に謝っていただけました。酷いこと言ってごめんなさいって…それに私には正直に話してくれましたよ。いつもいつも何かにつけて暴力を受けてたって。行為の時も怖くて怖くて、乱暴で痛くて感じることなんてとてもできなかったって…」
「そうなの…………ん、それで二人でそいつを抑え込んで、それからは?二人の武勇伝はどうなったの?」
スカッと終わりそうな話の展開に安心したのか、高尾が先を急がせる。
吉野も満更でもなさげにその後の話を紡ぐのだった。
「二人の武勇伝なんて…もうそれからは奥様の独壇場でしたよ。まず奥様は、私に……本気でその粗末なのを弄ってあげてって…」
「ぷっ……確かに、凄いのね、その奥さん…うふふ…」
「はい、私もお店の人からこの常連さんは放しちゃっていいって言われてたし、奥様の意図もわかったので遠慮なく……あとこんな状況なのにも関わらず、その常連さんったらちゃっかり勃起させてたんですよ、それにもイらっとして……」
「あっはっはっは……なるほど、それは確かにムカつくわね」
憮然とした表情を高尾に向け、コクリと頷く吉野だ。
「それで容赦なく雁首周りの弱いところだけを狙ってシコシコ、シコシコって……それで、15秒くらいでピュッと」
「あらあら……貴女が本領を発揮すると、男はそんな情けないことになっちゃうのね」
「い、いえ、そ、その時は私も必死だったから……それに、きっとその奥様は呆気なく無様に射精させて欲しいんだろうなって思ったので……」
「はぁ……いくらそうしようと思っても中々できないわよ……流石ねぇ…」
やはり男の扱いに関しては、シェアメイドのナイトサービス担当者程度では吉野に敵うものはいないだろう。
わかってはいたことだが、吉野の技術の高さに改めて感心させられる高尾だった。
「それで?無様に射精させられて、そいつは大人しくなったの?」
「い、いえ、それを見た奥様が執拗に情けないとか見っともないとか揶揄ったので、それに反発するように今のは不意打ちだとかちょっと調子が悪かったとか…」
「無様ねぇ…」
「それに奥様の方もまだまだ終わらせる気なんかなくて……私に、遠慮なく搾り取って頂戴って。この人中学生並みに2、3発は連続で出せるからって…」
「あら凄い…性欲だけは旺盛だったのね」
「私もついその奥様に乗せられてしまって…常連さんの往生際の悪さにもイライラしてたので、そのまま手でお相手させていただきました。確かに中学生……のことは流石に知りませんでしたけど、童貞坊や並みに連続して射精してましたね、その常連さん。結局奥様の言う通り3発だったかな?…けどそれはきっと私だけの力じゃ無くて、奥様が凄かったから…」
「?……」
「奥様ったら、常連さんの顔に乗せたお尻をクイックイッって振り始めて……いえ、多分あれは…常連さんの顔で、その……」
「…オナニーしてたのね…」
高尾の言葉にコクリと静かに頷く吉野。
その時のことを思い出しているのだろうか、吉野の顔は赤らんでいた。
「奥様は股間を常連さんの顔に擦り付けているうちに次第に喘ぎ声を出され始めて……そしたら、それに応えるように常連さんの股間も元気になって……奥様の股間からはピチャピチャと猫がミルクを飲んでいるような音も聞こえてくるし……途中から、私なんでこんなことしてるんだろうって思い始めちゃいました」
「はは…本当は仲がよかったんじゃないの、その二人」
「それはどうでしょうか?……もっともその時は私もそんな印象を受けたので、なんでこんな二人に付き合わされてるんだろうってなんだか腹立たしくなってきて、普段あまりお店ではやらないことを……」
「何?…」
「亀頭磨きです。竿の部分だけキュッって握って亀頭だけを丸出しにして……その亀頭の先っぽに逆の掌をあてて尿道辺りをキュッキュッキュッて擦ってあげるんです。射精した後、これをやられると男性は凄く悶えちゃうんですよ」
呆気らかんと話す吉野に、少しばかり顔を顰めた高尾だ。
女性だってオルガスムスを迎えた後に触れられ続けると、気持ちいいのか擽ったいのか分からない感覚に腰をうち振るわせてしまうのに。
「お店の先輩から聞いたことがあったんです。亀頭を磨いていると男性でも潮を吹くって。それでやってみようと思って……奥様はもう自分のオナニーに没頭されてたので、これくらい試してみてもいいかなって」
「は…はは…は…」
聞けば聞くほど、どんどん点に近づく高尾の目。
この娘は怒らせると怖いんだなと思う高尾をよそに、吉野は最後の顛末を語り上げるのだった。
「やがて常連さんの見悶えがさらに激しくなりました。そこでさらにキューって力強く先っぽを擦ったんです。そしたら奥様のお股の下からまるで鳥が絞め殺される時のような…い、いえ、実際にそんな声は聞いたことありませんけど…そう思えるくらいの呻き声なのか悲鳴なのか分からないような声が聞こえてきて……その数秒後に精液でもおしっこでもない透明のさらさらした液体が……何ていうんだろ?……あぁ、まるで霧吹きで水を吹きかけた時のように先っぽからブバッて噴き出したんです。常連さんは腰をガクガク震わせて相変わらず気持ちの悪い奇声を発して……ちょっと心配になっちゃうくらいでしたね」
「そ、そそ、そうなんだ……」
確かに…これは引くかも。
吉野に済まないと思いつつ、そんなことを思った高尾だった。
「ただ最後の最後にビックリしたのは…」
「えぇ?まだ何かあったの?」
「あの…常連さんが潮を吹いたのとほぼ同時に奥様も達せられたようで……嬌声をあげながらまるでご自分の股間で常連さんのお顔を拭うように擦りつけ始めたんです。流石に窒息しちゃうんじゃないかって怖くなった私は、奥様の身体を抱きかかえるようにして常連さんのお顔から引きはがしたんですけど……」
「………………」
「奥様は中腰……っていうか和式トイレで用を足す時のような姿勢で常連さんの顔に股がってたんですが、ご自分のお股の下の常連さんの顔を覗き込みながら……あんたで気持ちよくなったのはこれが初めてね……なんて捨て台詞を言ってから最後に……これはお礼よって……」
高尾はゴクリと固唾を飲む。
そして、まさかもしや、と思った通りに吉野の口が開かれた。
「奥様はそのまま常連さんのお顔に……おしっこを……私は呆気に取られちゃって、奥様を支えたままただ黙ってその様子を見ているしかありませんでした。常連さんはうぷぷっとか言いながら顔を背けたりはしていたんですが、亀頭磨きが堪えたのかどうやら身体を動かすことは出来なかったみたいで……そのまま奥様のお、おしっこを…最後までお顔に浴びていらっしゃいました」
「……………………」
なんともはや、言葉を失うとはまさにこのことだろう。
高尾は小さく口を開いてただ吉野の顔を見つめいていた。
「た、高尾さん?……あ、あのやっぱり…い、嫌でしたか?こんな話…」
「え?……そ、そ、そんなことはないわよ。でも…ご、ごめんなさい。確かに少し驚いたわ…そ、それで……大丈夫だったの、その後は?」
開いた口が塞がらなかった数秒をごまかすように、吉野に質問を返す高尾だ。
「はい、でもその後は……実はよくわからないんです。奥様が私に、迷惑をかけたわね、先に帰っていいわよって言ってくださったので……私、ちょっと奥様が心配になって、常連さんにはもう何もしませんよね?って尋ねたんです……そしたら奥様は笑いながら、もう何もしないわって明るく仰られたので……私は独りで先にその部屋から……」
「そう……それは確かに心配になるわね」
「あ、で、でも…ほ、本当にその時は何もなかったようなんです。実はその後3、4か月くらい経ってから、その奥さんがお店を尋ねてきてくれたんです……無事、離婚が成立したって」
「まぁ、そうだったの。それは良かったわね」
「えぇ、確かに私も心配してたので安心しました。あ、だ、だけど…」
「まだ何か?」
まだ言い足りないことがあるのだろうか?吉野の顔を覗き込めば、何やら恥ずかし気な面持ちだ。
「その奥様が……しばらく私の常連さんになってしまって…何度かお仕事としてお相手させていただきました…あは…」
「あはって……ま、まぁ、大団円で良かったわね……あ、あはは…」
乾いた笑いをするしかない高尾だった。
「けれど夫婦の離婚に繋がってしまいましたから……それからは過剰な演技は控えよう。無責任なことは言わないようにしよう、と思うようになりました。そんな教訓になった出来事だったんですよ」
「なるほどね……それで、最初の寝取られ癖の奥様とその奥様の二人のお相手をしていたから女性の扱いも上手ってわけ、か…」
「あ、じょ、女性の相手は、そのお二人だけじゃないんです。むしろ数だけならその後の方が…」
「えぇっ?」
もう何度目かの驚きの声をあげてしまう高尾。
そんな高尾の表情を心配そうに伺う吉野。
「あ、も、もう…こ、こんな話は……い、嫌……ですよね…ご、ごめんなさい…た、高尾さ…」
「いいえ!」
「え?」
「ここまで来たら最後まで話して頂戴。貴女が何故あんなにも簡単に私をイかせることが出来るのかを。女性相手の武勇伝を」
「は……は、はいっ!」
高尾の言葉に、実に嬉しそうな表情で返事をする吉野。
奇想天外な吉野の話に驚かされる一方で、シェアメイドを訪れた時とは比べ物にならないほど明るくなった吉野の表情に心から安堵する高尾だった。