home>story>

Share MILF -島原 吉野-

其の拾弐

「これは私があの仕事をしていた頃の……中盤から終盤にかけての話なんですが…」
「『筆おろしの女神』時代…ね」
「も、もう!高尾さんったら、またそんな言い方して……で、でも、そ、そうですね…その頃の話なんです」
こうして高尾と会話出来ることがよほど嬉しいのだろう。
高尾の言葉に頬を膨らませながらも、まるで懐かしむように過去の出来事を高尾に語る吉野だった。
「さっきの話の後……た、多分、私が相手にした女の子は……ろ、6、7人くらいだったと…思います」
「そ、そんなに?……それに…女の……子?…」
高尾が目を丸くする様にも慣れてきたのか、静かにコクリと頷いた吉野だ。
「ですけど…実は、数は多いかもしれないですけど、その子達とそうなってしまった理由…経緯って言った方がいいのかな?……それは全部同じなんですよ」
「理由が同じ?」
話の内容が掴めない高尾に、吉野は恥ずかし気にその意味を語り始めた。
「私が、その……筆おろしをしてあげた男の子達のうち何人かは、その後も何回かお店に尋ねてきてくれて私を指名してくれたんですが…」
「よほど吉野との初体験が心に残ったのね……流石は『筆おろしの女神』ね」
「も、もう、それはいいですから……それで、その子達は大体みんな同じことを………そ、その……も、もっと…セ、セックス…が上手になりたいって…」
「まぁ、童貞を捨てたらそう思うようになるわよね……それで、吉野がその坊や達のセックスの先生になってあげたってわけ?」
「そ、そんな先生なんて大げさなものじゃないです…た、ただ、童貞を卒業したといってもまだまだ女の身体に慣れていない子達ばかりでしたから…ど、どうしても興奮し過ぎて力加減が分からなかったりとか…だから、もっと落ち着いてとか、もっと優しくとか、もっと丁寧に…なんて言ってあげただけなんです…よ?」
恥ずかし気に、それでいてどこか満更でも無さ気な吉野。
それが先生ってことでしょう?と、クスリと笑みを零した高尾だ。
「それでその子達が、そのうち報告してくれたりして…」
「報告?」
「はい。吉野さん、彼女が出来ましたって……私、その子達のお相手をしているうちになんだか母親にでもなったような気がしてたので…それが本当に嬉しくて…おめでとう、良かったねって…」
きっとその坊や達は、日々を懸命に生きる吉野の心の安らぎとなっていたのだろう。
また、もしかすると、吉野の息子の父親である家庭教師先の少年のことを、その坊や達に重ねて見ていたのかもしれない。
何やら感慨深い思いが込み上げる高尾だった。
「だけどしばらくして……その子達が神妙な顔をしてお店に来て……あ、当然バラバラで、ですよ?その子達は友達ってわけじゃなかったし…」
「ええ、分かってるわ…そういう坊やが何人もいた、ってことでしょ?」
「は、はい、そ、そうです、そうです。それで、彼女もできてお店にくる必要もなくなったし、もしかしたらこれが最後の指名になるのかなぁ?寂しくなるなぁ、なんて思いながら話を聞いたんです……そしたら……」
「何?」
何やらもじもじと話し難そうな態度の吉野。
けれどここまで話したのならとでも思ったのだろう、申し訳なさそうな表情で続きを語る吉野だった。
「急に抱き疲れて…吉野さん、失敗しちゃった!って……もう泣きそうな顔をして…」
「失敗?……失敗って、もしかして…」
童貞を卒業したての坊やが…失敗。
なんとなく予想がついた高尾だった。
「は、はい…か、彼女さんと…その…う、うまく出来なかったって……い、いえ、うまくっていうか……中にはその……」
「セックス自体、出来なかった坊やがいた、と」
高尾の言葉に気まずそうに吉野が頷いた。
「まぁ、でもそれは仕方ないわよね。いくら童貞じゃなくなったとはいえ、吉野以外とは経験が無いセックス初心者の坊や達ばかりだったんでしょう?」
「そ、それは…ま、まぁ、そ、そうですけど…………で、でも、わ、私…せ、責任を感じちゃって…」
「な、なんでよ?!」
非があるわけがないのに真面目な顔でそんなことを言う吉野に、つい口を挟んでしまう高尾だ。
「だ、だって……その…い、一応、私が……お、お、教えてあげたわけだし……そ、それでうまく出来なかったなんて聞いたら……や、やっぱり、私のせいで…」
「やれやれ、お人好しなこと」
「で、で、でも……や、やっぱり私が……」
なんて生真面目な…高尾の口からはぁと小さい溜息が零れた。
「はぁ……ごめん、ごめん……別に吉野のことを馬鹿にしたわけじゃないのよ。やっぱり、吉野は吉野だなって思っただけ」
「私は…私?」
高尾の言葉につい訝し気な表情を浮かべる吉野。
そんな吉野を好ましく思いつつ、話の続きを催促する高尾だった。
「言ったでしょ?お人好しだってことよ。あぁ、勘違いしないでね。私はそのお人好しの吉野が気に入ってるんだから……それで?責任を感じてどうしたの?」
「?……え、えっと……私から何かしたってわけじゃないんです……そ、その……こ、これは、い、一番最初の子の話なんですが……」
「一番最初に吉野に失敗しちゃったって言ってきた坊やね。その坊やがどうしたの?」
「お、お願いされちゃって……その……か、彼女とする時に……わ、私に……き、来てほしいって…」
「はぁ?」
まさか彼女とセックスする場に、筆おろしをしてくれた女を呼び出そうとは。
呆気に取られて開いた口が塞がらない高尾だった。
そんな高尾に、さも申し訳なさそうな顔をして吉野が小声で呟いた。
「……た、高尾さんが…ぉ、驚くのは無理もない…ですよね…………だ、だけど、わ、私……」
「はぁ…やれやれ………行ったんでしょ?吉野は」
高尾には全てを聞かずとも、その時の吉野の行動が手に取る様に分かった。
そんな高尾に吉野は、やはり気まずそうに黙ってコクリと頷くのだった。
「またお店の人に出張サービスってことにしてもらって…あ、流石に今回は一人分の料金にしてもらいましたけど…それでラヴホテルで待ち合わせして…彼女さんには事前に話を付けていたみたいで……そ、その…わ、私のことも…」
「もう何を聞いても驚かないわ。で、僕の筆おろしをしてくれた吉野さんですって紹介されたわけね」
「そ、そんな、高尾さん…そんな意地悪な言い方…………ま、まぁ、実際、そ、そんな感じだった…んです…けどね……」
おかしなことを話している自覚はあるのだろう、消え入りそうな小さな声で呟く吉野。
高尾が何度目かの溜息を吐く。
「そ、それで…わ、私も、さすがにちょっと…彼女さんには嫌な顔をされるだろうなって思ってたんですけど、ぜ、全然そんなことは無くて……そ、その子は本当に真面目な子で…見た目も私なんかより地味なくらいで……き、きっと彼とうまくいかなかったことを気に病んでいたんだと思うんです。真剣な顔をして…今日はお願いします!なんて言われちゃって…」
「なんとも不思議な光景ね……でも大体、話が見えたわ…」
「え?」
なるほど顔の高尾をキョトンと見つめる吉野だ。
「ねぇ、吉野……筆おろしをしてあげた坊や達の彼女って、みんなヴァージンやそうでなくても経験の少ない子達ばかりだったでしょ?それで性格はみんな生真面目な子ばかりだったんじゃない?」
「そ、そ、そ、そうです、そうです!す、凄い凄い、高尾さん、な、なんで分かるんですか?」
ずばり言い当てた高尾に、取り乱した様子で吉野が尋ねる。
そんな吉野にふっと軽く微笑みながら、高尾が答えた。
「簡単な推理よ……彼氏とのセックスがうまくいかなくて悩んでしまう。そんな子は真面目に決まってるじゃない。それに吉野みたいに経験豊富なら…そもそもどんなに彼氏が下手糞だってセックスくらい何とか出来るでしょ?」
「そ、そうか…な、なるほど…」
そんな吉野を温かい目で見守りながら、真面目なのは貴女もね、馬鹿正直なくらいね……と密かに思う高尾だった。
「そ、それで…いつまでも3人でお見合いしてても仕方ないので、じゃあ、やって見せてって言ったんですが、……最初二人はずっと恥ずかしがっていて、服も脱ごうとしていなかったから仕方なく私が全裸になって……そしたら、彼女さんも凄く恥ずかしがってましたけど全部脱いでくれて…それを見た、男の子が最後にいそいそと服を…」
「やれやれ…ホントそういう時は、男が一番腹が据わってないのよね」
「そ、そうです…ね」
何かそんな経験があったのかしらと思いながら、苦々しく呟いた高尾に相槌を打った吉野だ。
「で、二人とも裸になって男の子が女の子に近づいていったんですが……そこで驚いちゃって」
「な、何?」
吉野がまた申し訳なさそうなというか、がっかりした表情でその理由を語り始めた。
「お、男の子は、もう…か、彼女さんの裸を見ただけで、あ、あそこの準備が整ってたんですけど……その……ベッドに仰向けで寝ている彼女さんに近づくやいなや、突然足首をもってガバッとお股を開かせて…いきなり挿入しようと…」
「……………………」
片手で両目を覆うようにして首を2、3度横に振る高尾。
「ほ、本当に驚いちゃって……何してるのって必死に男の子を止めて、メッて……その時の私、本当に悪戯っ子を叱るお母さんみたいでしたよ……はぁ…」
その時のことを思い出しているのか、両肩をがっくりと落とし深々と溜息を吐いた吉野だった。
「けど……その時ハッと気付いたんです。思い返せば私が教えてあげたのは……行為中の愛撫の仕方だったりとか、腰の動かし方だったりとか……そこに行きつくまでのことなんて教えてなかったよなって」
「それは貴女のお店なら当たり前……吉野が気に病むことじゃないと私は思うけど……」
「だ、だけど、私…セ、セックスが上手になりたいって言われてたのに…セックスって前戯を含めて、ですよね?だ、だからそれじゃあやっぱり私に手抜かりが…」
「はいはい、でしょうね。当然吉野はそう考えるんでしょうね。それで?」
すでに吉野のお人好し加減には、諦めの境地の高尾だった。
「ちゃんと女の子の準備もしてあげなくちゃ駄目よって……まぁ、これもよくよく考えたら仕方無かったのかも……お店でする時って私も男の子もローション塗れになってるから……きっと女の子には簡単に挿入できるものだって思わせてしまったのかな?って……」
「……………………そうね…」
もう吉野のこの話には、何も反論せず全てを聞き遂げようと思った高尾だった。
「それで私は女の子の背後に回って大きく足を開かせて、後ろから手を伸ばしてあ、あそこを愛撫してあげたんです。女の子も凄く恥ずかしがってましたけど、そのうちに声を出し初めて……ここでは本当に最初の二人の奥さん達から学んだことが役に立ったと思います」
えへへと、照れ笑いを浮かべる吉野。
高尾は吉野の話を促すように、沈黙を守ったまま一度頷いた。
「それで漸く、挿入できるくらい女の子のあそこが濡れてきて…だから私、男の子に今よって合図したんですけど……そこで、また男の子に驚かされちゃって…」
「?…どうしたの?」
言葉の止まった吉野を見ると、何やらいままでの申し訳なさそうな表情とはまた違った顔つきをしていた。
頬を赤らめたそれは、どことなく怒っているようにも見える。
「男の子の方を見たら……そ、その子ったら……と、とんでもないことを……そ、その……じ、自分で…」
「あぁ…………これ、ね?」
言いながら右の掌で作った筒を自分の股間の中央にあて、ユラユラと上下に動かす高尾だった。
「そ、そうなんです!ほ、本当にもう、そ、その時は、頭に来たっていうか、情けないっていうか……思わず、何やってるの!ってその子のお尻をパシンって叩いちゃいましたよ」
「あっはっはっは……まぁ、大好きな彼女があんあん喘がされているところを間近で見て興奮しちゃったのね…うふふ…可愛い」
「あ、あれ?高尾さん、男の子のそういうところには寛容なんですね?わ、私は、それからその子に対しては、ちょっと鬼教官みたいになっちゃいましたけど…」
「まぁ、シェアミルフでそういう坊や達は何人も見てきたから……けど、鬼教官?吉野が?」
「はい…って言っても、ちょっと言葉がきつくなっただけですけどね。そんなことしてる暇があったらさっさとゴムを付けておきなさいとか、今日は私がしてあげたけど次からはちゃんと自分が女の子の準備を手伝ってあげなきゃ駄目よ、とか…」
「ふふ……確かに、吉野にしては、ね……うふふ…」
少しばかり怒った表情の吉野も、高尾の目にはとても好ましく映る。
やはり本来の吉野はとても可愛い女なんだな、と改めて思う高尾だった。
「それで男の子のゴムの付け方もチェックして、いざ本番……ってところだったんですけどね。そうは簡単に進まずに…」
「暴発でもしちゃったの?」
何の気なしに答えた高尾だったが、どうやら正解だったらしい。
吉野はまた目を丸くして、尊敬の眼差しを高尾に送っていた。
「そ、そ、そうです、そうです、そうなんです!凄い、高尾さん、何でもあてちゃっうんですね。その時……男の子が女の子のお股の間に膝をついて何回か挿入しようとしたんですが、そのたびにツルツル滑って……落ち着いてって声をかけた瞬間……男の子が情けない声で、あーって」
「あらあら、可哀そうに」
「そ、そうですよね…私も失敗しちゃった男の子は何人も見てきたし普段なら大丈夫よって優しく声を掛けたりするんですけど……その時はちょっと鬼教官になってたので、つい、駄目な子ねって叱っちゃって……可哀そうなことをしました」
「吉野を怒らせると本当に怖いのね。覚えておくわ」
「そ、そんなこと……で、でも、その時、お、女の子が凄く優しくて……吉野さん、そんなこと言わないでくださいって……その言葉を聞いて私ハッと我に返って……二人にごめんなさい、って謝りました……あは…」
「ふ〜ん、確かに出来た娘ね、その子」
「はい、本当に。それで…次はその女の子から質問されたりして…こういう時はどうすればいいですか?って。それで手で扱いたり、口で咥えたりして、元気にしてあげればいいのよって答えて……あはは……なんだか私、今度はその女の子の先生みたいになっちゃって……」
楽し気に女の子との出来事を話す吉野だ。
きっと吉野もその女の子のことは随分と気に入っていたのだろう。
「それで、なんとか男の子を元気にしてあげて……もう一度挑戦して……やっと無事繋がることが出来たんです。私、なんだ嬉しくなっちゃったっていうか、感動しちゃったっていうか……凄くホッとしたのを覚えてます。でも実は……折角繋がることができたのに、男の子ったら一分も持たなかったんですよ…でも女の子の表情を見たら……薄っすら目に涙を浮かべてて……恥ずかしいけど、私その時もらい泣きしちゃったんです……あは…お、おかしいで…」
「少しもおかしくないわよ」
「え?」
吉野に被せるように高尾が呟く。
見れば、高尾の表情がいつになく真剣なもののように感じられた吉野だ。
「私は……日々を頑張る女性達のその顔が見たくて、シェアメイドを立ち上げたのだから」
「あ……」
『働くミセスを応援する』……シェアメイドのスローガンが頭に浮かぶ。
なにやら感極まる吉野だった。
「や、やっぱり……やっぱり、た、高尾さんは……高尾さんは、凄いです……ほ、ホントに…ホントに凄いです…」
「や、やめてよ。もう、本当にこの娘は……友達同士の褒め合いなんて格好悪いわよ。それに、そんな言葉をかけられたらお尻がむずむずしちゃうわ…」
吉野は、ほんの少し高尾の頬が赤らむのを見逃さなかった。
こんな女性と友達なんて……改めて嬉しさが込み上げる吉野だった。
「こ、こほん!……そ、それで……そんな子達が6、7人いたのね」
「は、はい……も、勿論、状況はそれぞれ少し違いますけど、大体がそ、その……セ、セックスがうまくいかなかったっていう相談を受けて、相手の女の子と……っていう経緯でした」
「なるほどね……つまり吉野は、介添女をしていたってことなのね」
「か、か、かい…ぞえ?……え?…なんですか?」
聞きなれぬ単語に思わず首を捻った吉野だ。
「介添女……昔、この国にはね、新婚さんの初夜が失敗しないようにその世話をする女性がいたのよ。童貞と処女の初夜なんて…分かるでしょ?だからその世話を生業とする女性がいたのね。吉野がその坊や達にしたのは、まさにその介添女の仕事だなって思ったの」
「そ、そんな職業があったんですか?……な、なるほど…た、確かに、私がしたのはそれと同じようなこと…ですね」
高尾は物知りだなぁと思いつつも、自分のしたことを思い返し納得の表情をした吉野だ。
「そう、ね……ただ、吉野?でも、それって数は多いって言っても6、7人…つまりは6、7回ってことでしょ?それだけであんなに女の扱いが……」
「あ、か、回数はその女の子達の数と同じってわけじゃないんです……」
「?…どういうこと?…あ!…まさか…」
高尾の脳裏に、最初の二人の奥様達の話が浮かんだ。
そして、またしても高尾の想像通りだったのだろう恥ずかし気にコクリと頷く吉野だった。
「は、はい……その子達とは……それからも何回か……そ、それに……その……な、中には……その……お、女の子だけが…も、もっと色々教えて欲しいって言ってきて…」
「…………な、なるほど……ねぇ…」
吉野の話では、最初こそ先の高尾の言う介添女的に恋人同士のセックスの面倒を見ていた吉野だったが、そのうちに女の子が二人で会いたいと言ってきたらしい。
そして男を喜ばせる方法を吉野に教わるとともに……自分も吉野に気持ちよくして欲しいと頼まれた、ということだった。
「やっぱり……よっぽど上手だったのね、吉野……女の子にもリピーターが付くなんて、ねぇ」
感嘆の溜息を吐いた高尾。
その高尾の言葉に吉野は耳までもが赤く染まっていった。
「そ、そ、そんなこと…ないですよぉ……わ、私も…お仕事としてなら、こ、断ることもできないし……な、なんだか、その女の子達も、じ、自分の子供みたいに思えてきて……め、面倒見てあげたくなっちゃって……時々は男の子を交えて色々実践して見せてあげたり……あ、あれ?……な、何言ってるんだろ、私」
しどろもどろに返事をする吉野は、もはや手足までもが赤く染まり出していた。
そんな吉野の様子を、微笑まし気に高尾は見つめていた。
そして……
「うん、吉野が私を簡単にイかせる手練手管を持っている理由は良くわかったわ。前の仕事の一環としてそんな沢山の女性を相手していたなら……それはそうよね、納得したわ」
「あ、は、はい……あの……やっぱり、ごめんなさい、高尾さん……こんな話……き、気持ち悪く感じませんか……わ、私のこと…」
高尾の顔色を窺うように、もじもじと高尾を見つめる吉野。
高尾と会話することが楽しくて、ついあの頃の話を武勇伝さながらに話してしまった。
こんな話はきっと普通の人なら敬遠したいものだろう、折角お友達になれたのにもう嫌われてしまったんじゃないか、と思った吉野だった。
けれど高尾はそんな吉野をクスリと笑い飛ばす。
「クスッ…何言ってるの?とっても有意義な話だったわ。気持ち悪く感じるわけないじゃない。えぇ、貴女とお友達になれたこと、誇らしいくらいよ」
「……た、高尾……さん…」
また吉野の瞳に涙が滲む。
そんな吉野の隣に座った高尾は、まるで男同士がそうするように吉野の肩に手を回した。
キョトンとした表情で肩を組まれる吉野。
見れば高尾は真剣な顔で吉野の顔を見つめていた。
「た、高尾…さん?……ど、どうしたん…ですか?」
「ん……あのね、吉野……貴女に、一つ提案があるの……い、いえ、これはお願いね……シェアメイドの代表としての、ね」
「え?て、提案……お、お願い?……シェ、シェアメイドの代表として?…って?」
話の意図が見えない吉野は、ただ鸚鵡返しをしつつ高尾の顔を窺いみる。
すると、いつになく緊張した面持ちの高尾の口から、吉野にとって驚愕の提案が語られたのだった。
「吉野、貴女……シェアメイドに入らない?……勿論、ナイトサービスの担当として、よ」
「…………ぇ……ぇ?……!!!……ええぇぇっっー−!!!」
今日一番の大声を出してしまった吉野だ。
高尾は、そんな吉野の口を肩を抱いていた手で抑え込んだ。
「シッーッ!ちょ、ちょ、ちょっと…こ、声が大きすぎるわよ、吉野……こほん……つまり、スカウトよ。貴女の話を聞き、私はシェメイドの代表として貴女にうちのメンバになってもらいたいと心から思ったの。けれど、やっぱり……ナイトサービスは抵抗があるかしら?貴女の過去を考えると……つらい思いをさせてしまうかしら?だけど……だけど私は、貴女と一緒にお仕事をしたいと思ったの。貴女ならきっと女性の力になってくれると思ったの。どうかしら?私と一緒に……シェアメイドでお仕事してもらえないかしら、吉野…」
「…た、高尾さん……」
「勿論、いまのパートの仕事もあるでしょうしすぐにとは言わないわ。でも、シェアメイドのナイトサービスなら、多分今のお仕事の半分のお時間で倍のお給料は出せると思うの。そうすれば、きっともっと坊ちゃんと過ごす時間も増やせると思うわ。それに…も、もしシェアワイフが嫌ならばシェアミルフだけでも……ううん、ナイトサービス自体が嫌なら、表のサービスだけでもいい。どうかしら、吉…」
「高尾さん!」
マシンガンのように喋り続ける高尾を制する吉野。
初めてシェアメイドで高尾に会った時のことが思い出される。
応接で待つ吉野の前に現われたエレガントな淑女・高尾。
その高尾がこんなにも必死になって……高尾の思いが吉野の心に突き刺さる。
「あ、ご、ごめんなさい、ちょ、ちょっと性急すぎたわね。勿論、すぐに答えは出さなくていいのよ。しばらく考えてから……え?よ、よ……吉…野?…」
高尾の言葉が止まる。
何故なら、肩に乗せられた高尾の手をそっと外した吉野が、姿勢を正し正座に座りなおしたかと思った瞬間、深々と高尾に向かって土下座をしたからだ。
それは勿論、謝罪の意味ではなく、吉野なりに高尾に礼を尽くした行為だった。
「よろしくお願いいたします、高尾さん。是非、シェアメイドで働かせてください。勿論、ナイトサービスの担当で構いません」
「よ、吉野ぉ!」
吉野の身体を起こし、思わず抱きつく高尾だった。
「わ、私……高尾さんに言われて思ったんです。い、いえ、気が付いたんです。過去を卑下さえしなければ……結局、私が出来ることって、私が得意なことって……セックスなんだろうなって。勿論、他人に自慢できることではないけれど……もしそれが高尾さんの言う『働くミセスを応援する』に繋がるのなら、とっても嬉しく思います」
「吉野……も、勿論よ、貴女の技術は……きっと……」
「あ、だけど、一つだけ条件が……」
「な、何?」
突然真顔になった、と思った瞬間、悪戯好きの少女のような表情でどこか恥ずかし気にニコリと微笑む吉野。
そして、そっと高尾の耳に口を近づける。
「また……後始末……つけてくださいね、高尾さん」
「えぇ?……クス……お互い様よ、こちらこそお願いするわ。私を満足させてくれるのは、吉野だけだもの」
「はい……うふふ……私と高尾さん……セックスフレンド、ですね」
「クスッ……そうね……クスクスクス……」
しばし笑いあう熟女二人。
この瞬間吉野は、ここ数年の間感じたことのない幸福に包まれていた。

「さてと……それじゃあ、そろそろお暇するわ。お仕事の話は、また別の日に……もう随分坊ちゃんを待たせてしまったから…」
「あ、そ、そうですね……」
しばらく取り留めのない話をしていた二人だったが、時計を見ればすでに夕方と呼べる時間に差し掛かっていた。
慌てて、身繕いをする吉野だ。
「あ、そうだ」
その時、高尾が一言呟いた。
「どうしたんですか?高尾さん」
「大事な報告を一つ忘れていたわ」
「報告?」
「えぇ、坊ちゃんの、ね」
「あ……」
あまりに高尾との話が楽しすぎて、すっかり息子のことを忘れていた吉野だった。
そう言えばまだ息子の初体験の話は聞いていなかった、吉野の顔が緊張の面持ちに変わる。
けれど…
「吉野の坊ちゃんね……まだ、童貞よ」
「……………え?」
カクンと体勢を崩しつつ思わず間の抜けた返事をする吉野。
そんな吉野に、ニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた高尾だった。
「私達がああ言うときは…そう、筆おろしは私達の判断に任せてって言う時ね。もう最初からそんなことはしないって決めてるのよ」
「そ、そうだったん……ですね、私……実はちょっと後悔してて…」
「分かってる。そういうお母様達、何人も見てきているからね。母親の気持ち、こんな私でもちゃんと理解しているつもりよ。あ、だけど……吉野に一つお願いがあるの」
「な、なんですか?」
「私のパンティ。坊ちゃんのそそうを洗い流してから、坊ちゃんのお部屋に干してあるの。あれは置いていくから……吉野、気付かないフリしてあげてくれない?」
意味ありげにウィンクする高尾。
苦笑いを浮かべながら、了承する吉野だった。
「は、はい、分かりました…ボクの大切な宝物ですもの。取り上げるなんてそんな野暮なことはしませんよ…………でも、なんか悔しいなぁ、ボクったらしばらく高尾さんのこと考えながら…」
「あらあら、焼きもち?だったら、吉野はこれを坊ちゃんの目につくところに置いておけばいいんじゃないの?」
高尾が手にしたもの。
それは先ほどまで実際に吉野が穿き、高尾が剥ぎ取った吉野の愛液をたっぷりと含んだパンティだった。
「や、やだ!高尾さんったら、か、返してくださいっ!」
「あはははは…」
「も、もう…た、高尾さんったら…」
ひったくる様に高尾の手からパンティを奪い取る吉野。
高尾にふくれっ面を見せる一方で、ボクがこっそり持っていき易いのはどこかしらとパンティの置き場所をあれこれと考える吉野だった。