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Share MILF -島原 吉野-

其の捌

再び暫しの静寂が訪れたが、それを破ったのはやはり高尾だった。
「さて、それでは次の『ご報告』に移らせていただきます」
「……っ!……は、はぃ…」
精通、自慰、と来たら次は……ついにその時が来たか。
きっと高尾の口から語られるのは……息子の童貞喪失。
覚悟を決めるかのように、大きく深呼吸をした吉野だ。
「2度の射精で坊っちゃんは大層お疲れのようで、暫くの間私の膝の上でクタッと寝そべっていらっしゃいました。私は膝から滑り落ちないよう坊っちゃんを支え、坊っちゃんの息が整うのを待っておりました」
「……ぇ?……は、はぃ……そ、そうですよね…つ、続けて2回なら……そ、そうなってしまいますよね…」
「それが……坊っちゃんは、まだまだ元気いっぱいだったんですよ……うふふ…」
何度目かの高尾の思い出し笑い。
まだまだ元気いっぱいの息子。
ならば……少々、じれったさを感じ始めた吉野だったが、最初に聞いた高尾の話を思い出す。
『多少回りくどく感じることもおありになるでしょうが、これもより詳細にサービス内容をお伝えするためと…』
「ふぅ……」
軽く一息入れる吉野だった。
が、高尾の話はまだ確信には至らなかったのだ。
「坊っちゃんは、精通し自慰も経験されました。ですので、次は露茎できるかを確認させていただきました」
「え?……ロ…ロケ?…」
「はい、包茎がしっかりと剥けるかどうかの確認です」
「あ……あぁ、そ、そうでした…ね…」
肩透かしを食らい思わずカクっと体勢を崩す吉野。
しかし、確かにそれは重要だ。
しっかりと剥けなければ、吉野が一番気になっている初体験もままならないのだから。
「実は…少し坊っちゃんに叱られてしまって」
「ボクに?……よ、吉原さんが…ですか?」
「はい。坊っちゃんがクタッと寝そべっている間ずっと私は右手で坊っちゃんの頭を撫でていたのですが、同時に左手で坊っちゃんのペニスも…待っている間、少々手持ち無沙汰だったこともありますが、何よりも柔らかくなった坊っちゃんのペニスはフニフニと柔らかく、スベスベと滑らかで……あまりの触り心地の良さについ。それで息が整い始めた坊っちゃんに、擽ったい、と叱られてしまったのです。本当に申し訳ありませんでした」
「い、いえ、その程度のこと…………で、でも、確かに小さい時のア、アレは……さ、触り心地いいですよね。わ、若くて経験の少ない子のは特に…………あ!……こ、コホン…な、な、な、なんでもありません!」
つい自分の好みを白状してしまい、慌てて誤魔化しの咳ばらいをした吉野だった。
そんな吉野を見て、高尾はニコリと微笑んだ。
「クスッ……ご賛同いただけて嬉しいです。さて『ご報告』に戻りますが、元気を取り戻された坊っちゃんは目をキラキラさせて、セイツウしてシャセイも自分で出来たからこれで僕も大人に近付いたよね、ママも喜んでくれるよねと私に尋ねられたのです。そこで、まだまだですよ、と」
「……も、もう……気が早いんだから…ボクったら……」
そうは言ったが、この手のことに関しては若い男性はとても性急だということは吉野も良く分っていた。
童貞を卒業したばかりなのにも関わらず、もういっぱしに女を知っているような態度を取る子が実に多いことも。
「まず、大人の男性はオチンチンが剥けているものですよとお伝えしたのですが、やはり坊っちゃんには私の言葉の意味することは分からなかったようで…そこで、大人になるとオチンチンの皮が捲れてきて、先っぽの膨らんだところ…亀頭がヒョコっと飛び出てくるんですよと教えて差し上げました。もっともこう言っても中々坊っちゃんには理解が難しかったようですが…」
「た、確かに、これまで剥けたことがないなら……わかりずらいことかもしれませんね…」
「はい、ですのでそれではやってみましょう、と。最初は坊っちゃん自身に剥いてもらおうと言葉で説明して…はい、ペニスの先っぽを摘まんで表皮を下に下ろすようにするんですよと。それでご自身で試してもらったのですが、やはり痛い、と……まぁ、痛がっているというより、怖がっているといった様子でしたが」
「あ、あれって…さ、最初の頃は本当にい、痛いみたいですよね…」
包茎を剥く時、確かに顔を顰める子がいた。
そんな子の多くは童貞だったように思う。
「それで、やはり坊っちゃん自身でペニスを剥くのは無理そうでしたので私が…はい、坊っちゃんを膝に座らせたまま背後から抱き竦めるように手を回して…左手で坊っちゃんのペニスの根元を支えるように摘まんで、右手で先っぽを。坊っちゃんはギュッと目を瞑っていました。相当怖かったみたいですね」
「あ、あの子……歯医者さんとか注射とか本当に苦手で……」
包茎ペニスを剥く痛みと、歯医者・注射の痛み。
それが言い得て妙だったのか、高尾がクスリと笑みを零す。
「クスッ……確かにそんな雰囲気でした。それで、少し痛いかもしれないけど我慢してくださいね。オチンチンが捲れたら大人の仲間入りですからね、と声をかけながら摘まんだ先っぽをマッサージするように少し揉みこんだんです。そうしたら…」
「?…そうした…ら?」
「坊っちゃんたら凄いんですよ。ほんの少し…4、5回クリクリッと揉みこんであげただけなのに、たったそれだけでペニスをピンピンにされて…」
「え?!……も、もう?…」
「はい、2度の射精などまるで無かったかのように元気一杯にピンピンに……それで痛がるどころか、すぐにあんあんと可愛い声をお出しになって……うふふ……坊っちゃんのペニスは、確かにまだまだ大きさも形も我慢も全てが未熟ではありますけど、もしかしたら物凄い絶倫ペニスなのかもしれませんよ。将来が楽しみですね、島原様」
「え?……えぇ……そ、そ、そうでしょうか……で、でもそれはきっと、よ、吉原さんが素敵だったから…」
こんな褒められ方をしてもどう答えてよいか分からず、思わず高尾のおかげにする吉野。
だけれども、2度の射精をものともせずすぐに勃起してしまうとは。
確かに若い子の回復力には驚かされることもあったが、まさかその日精通したばかりの息子のペニスが…
また湿ったパンティの奥で股間がジュンと熱くなる。
「それにとっても好都合でした」
「え?好都合?」
「はい、包茎ペニスを剥く時は…それも坊っちゃんのように初めて剥く時は、皆痛がりますので結構苦労するものなのです。しかし、坊っちゃんの場合は誤魔化せたので…」
「?…ご、誤魔化…す?」
首を傾げる吉野にニコリと微笑みながら、高尾はその意味を伝えた。
「つまり……坊っちゃんは痛がりながらもピンピンに勃起してらっしゃったので、少し包皮を剥いて坊っちゃんが痛がったらペニスをシコシコと……はい、そうです。つまり、露茎と愛撫を交互に行うことで痛みを和らげながら…誤魔化しながらペニスを剥き上げていくことが出来たのです」
「ろ、露茎と…あ、愛撫…を…」
「はい、少しペニスの包皮を下げると坊っちゃんは腰をピクっと振るわせて顔を顰めます。そうしたらペニスをシコシコと。すると坊っちゃんはすぐにあんあんと声を漏らしながら腰をモジモジさせ始めるので、その時にキュッと少し包皮を下げる。すると坊っちゃんがまた顔を顰めて…という具合に、交互に少しづつ包皮を下げていったのです」
「シ…シコ…シコ……あ、あそこを……シコシコと…」
高尾に背後から抱き竦められ、丸出しにされた包茎をシコシコと扱かれる息子。
高尾の腕の中であんあんと身悶える愛しい息子。
そんな姿が脳裏に浮かべば、股間から淫水が溢れパンティをグッショリと濡らしていく。
吉野の指先がまたスカートの上から股間を押さえつけるように撫で摩り始める。
「まぁ、坊っちゃんにしてみれば、ペニスに痛さと気持ちよさが次々と押し寄せてくるので、体力的には少し辛かったかもしれません。最後の方は喘ぎ声と言うより、はぁはぁと息を切らせていらっしゃったので……ですが、ペニスを露茎させることの痛みは随分和らげることが出来たと思いますよ」
「…ぁぅ……そ、そ、そうですか…そ、それは……よ、よかった……すみません、お手数をおかけして……」
「とんでもございません。無理に露茎させてペニスを痛めてしまっては元も子もありませんし……とはいえ……クスッ」
「え?…」
高尾がまたまた思い出し笑いをした。
キョトンとした表情で、高尾の言葉を吉野は待つ。
「あ、すみません、思い出し笑いなど。いえ、お手数といえば、ペニスの皮剥きよりもむしろ坊っちゃんを失敗させないことの方が難しかったかなと。えぇ、何度も何度も皮剥きとシコシコを繰り返したので坊っちゃんは射精寸前になってしまったようで……作業を初めてほんの2、3分程度のことでしたが、まぁ、精通したばかりの幼いペニスですし無理もありませんよね。なので坊っちゃんのペニスをシコシコする時は、かなり神経を使わせてもらったんですよ……うふふ……」
「……そ、そう…ですか……です…よね…」
確かに未熟なペニスは、射精させることよりもむしろ我慢させる方が難しい。
いざセックスとなった時に女性器に挿入する前に暴発してしまう童貞ペニスを何本見たことか。
「それで坊っちゃんに、射精しちゃだめですよぉ、もうちょっと我慢してくださいねぇ、と声をかけつつ作業を続けたのです。ペニスから溢れてきたお汁をお顔の出始めた亀頭に塗りこむようにして、時には包皮の淵を円を描くようになぞりながら、ゆっくりとゆっくりと押し下げるようにして…」
「……ぁん……」
息子の痴態を思い浮かべた吉野の指先にまた力がこもる。
クリトリスが的確に押しつぶされ、タラタラと淫水が滴り落ちる。
「ですが、坊っちゃんはしっかり最後まで我慢してくださいましたよ……あ、いえ、最後までというか…」
「?……な、なんでしょう?…」
「3分の2程皮が剥けて坊っちゃんの綺麗なピンク色の亀頭があらかた顔を出したところで、もう一気に剥いてしまおうと思ったのです。カリの一番太い部分でゆっくりと剥いてもその分痛みが長引くだけですし、それに坊っちゃんは、もう駄目もう駄目と……とてもこれ以上は我慢出来そうにない状況でしので…」
「…………」
それは吉野にも理解できる気がした。
絆創膏をゆっくりピリピリと剥ぐよりも、一気にピッと剥いだ方が痛みを一瞬感じるだけで済むことと似たようなものだろう。
「それで坊っちゃんに、オチンチン最後まで剥いちゃいますよ、ちょっと痛いけど我慢してくださいね、と声をかけてから、一息に…ピリッと」
「……ぁぅっ……」
高尾がまた右手を上げ3本の指で空を摘まむと、徐にクイッと下に動かす手振りをした。
あたかもそこに息子のペニスが摘ままれているように感じ、思わず息子に変わって顔を顰めてしまった吉野だった。
「そして坊っちゃんが小さくヒッと声を漏らした時、ペニスの表皮はクリンと捲れ、色鮮やかなピンク色の亀頭がプリンッとその姿を現わしたのです……けれど…」
「け、け、けれ……ど?…」
思わせぶりな高尾の言葉に、吉野はついつい息を飲む。
そんな吉野に、高尾は苦笑いを浮かべながら静かに答えた。
「その時、坊っちゃんの限界が訪れました。亀頭がプリンッと姿を現わすやいなや坊っちゃんの腰が、ペニスが、大きく跳ね上がりました。そして坊っちゃんはまた……」
「ま、ま…た?…」
ゴクリと唾を飲み込んだ吉野だが、これまでの報告を受けてきて次の高尾の言葉はわかるような気がした。
いや、きっと間違いないだろう。
期待に胸を膨らませ、股間を濡らしてその言葉を待つ吉野だ。
そして期待通りの言葉が高尾の口から告げられた。
「はい、その瞬間、坊っちゃんは…………『ママァ』と」
「ぁ…ぁぁ…ぁ、ぁあっ!!」
スカートの上からクリトリスを挟み込むようにして両手を股間に押し付けた吉野の口から嗚咽が漏れた。
いや、それはきっと歓喜の嬌声だったに違いない。
「坊っちゃんはその声と同時にその日3度目となる射精を……坊っちゃんのペニスを摘まんでいた私は、その瞬間がまさに手に取るように分かりましたので、左手で剥けた亀頭を包み込んで……坊っちゃんはその私の掌の中に実に元気よくピュピュッと精液をお出しになられたのです」
「…ぁ……ま、また……さ、3回…も……ボ、ボクゥ……ボクゥ…」
股間に両手を挟み込み、モジモジと腰を震わせえる吉野。
高尾はそんな吉野を暫しの間見守った後、露茎作業の終わりを告げたのだった。
「島原様、こうして坊っちゃんのペニスはしっかりと露茎いたしました。はい、まだまだ小さいけれど綺麗なピンク色をした形の良い亀頭がしっかりと顔を出したのです。えぇ、坊っちゃんのペニスに手術など必要ありませんよ。ご安心くださいませ」
「……ぁ、ぁぁ……あ、ありがとう…ござい、まし…た…」
びしょ濡れパンティの肌触りの悪さを股間に感じつつ、息子のペニスの面倒を見てもらった礼を口にする吉野だった。

精通、自慰、露茎……高尾が3種の『ご報告』を終えた時には、もう正午が近付いていた。
「さて、この辺で一息いれましょう。ブランチを食べたばかりですがケーキを用意してあるんです。坊っちゃんがお好きだと聞いていたので……実はこのためにブランチはかなり軽いものにさせていただいたんですよ」
高尾のその言葉で、『ご報告』は一時中断となった。
吉野としては早く聞きたいことがあったのだが、実は吉野にしてもかなり疲弊感を感じていた。
昨晩よく眠れなかったことが最大の原因ではあるが、高尾が何か報告するたびに股間を濡らしていてはそれも無理がないだろう。
自嘲気味に苦笑いをしつつ吉野は、高尾の提案を受け入れた。
再びリビングに戻り、リビングでテキパキと3人分のケーキと紅茶の準備をした後、吉野の息子に声をかける高尾。
こうして3人は少々早めのおやつを楽しむことになったのだが、その時高尾は不意に吉野の耳に顔を近付け小声で囁いた。
「これはお赤飯の代わりでございます……うふふ…」
「ま、まぁ……あ、ありがとうございます」
秘密めいたウィンクをする高尾に、吉野は思わず顔を赤らめた。
美味しそうにケーキを頬張る息子を見ていると、今朝感じた大人びた雰囲気は微塵も感じられない。
このまだあどけなさの残る息子が昨晩……精通し、男の子になった。
高尾に『ご報告』を受けたのだからそれは間違いないのだろう。
それに、きっとその先も……感慨深さを感じる一方で、また胸にモヤモヤが沸き起こり始める吉野だった
「さ、皆さんケーキを食べ終わりましたね。それでは……まだお母様とお話がありますので坊っちゃんはお部屋に……えぇ、大丈夫ですよ。私がお暇する時には、ちゃんと坊っちゃんにもご挨拶させていただきますからね」
高尾との別れを名残惜しむ息子を自分の部屋に戻らせ、また二人は再び吉野の部屋に向かうのだった。

先に部屋に戻った吉野が再び先と同じポジションに腰を下ろすと、それに少し遅れて高尾が部屋に入ってきた。
どうやら高尾はおやつの後片付けをしていたようだ。
「あ、すみません、私がすべきなのに…」
「いえいえ、今日の午後まではご契約の範囲ですのでその間は『表』のサービスもさせていただきます。どうかお気になさらないでください」
「そ、そんな……そ、それは申し訳ないです。べ、別に料金を…」
「島原様、私共シェアメイドはあくまでも働いた時間に対し料金をいただいております。サービス時間帯で単価は変わってきますが、契約時間の間は『表』『裏』関係なくサービスを提供させていただきますのでなんなりとご依頼くださいませ。それが私共のモットー『働くミセスを応援する』ことに繋がりますので」
「あ……ありがとう…ございます…」
毅然とした態度の高尾が、今の吉野には何やら神々しく見えた。
息子の世話を…それも下半身の世話をしてもらい、その上、普通の家事までも。
「た、確かに……せ、性風俗とは、雲泥の差ですね……あは…あはははは…」
「…………………………………………」
ナイトサービスの説明の時の高尾の言葉を思い出し、何やら自暴自棄に乾いた笑いをした吉野だった。
そんな吉野を哀れむような目で見つめていた高尾がそっと両眼を閉じた。
暫くの間何か考えているかのような素振りを見せた後、ゆっくりと目を開く。
そして……
「島原様!」
「ひっ!はっ、はい、な、な、なんでしょう?」
不意に高尾が、今までにない大きな声で吉野を呼びかけたのだ。
思わずビクリと身体を震わせた吉野だ。
「島原様にお伝えしたいこと、それとお尋ねしたいことが一つづつあるのですが、よろしいでしょうか?」
「お伝え?お尋ね?……え、えぇ、も、勿論、構いませんが……な、なんでしょうか?」
驚いた様子で高尾を見る吉野。
その吉野の対面に座していた高尾は、スッと立ち上がると吉野に近付きその真横に正座した。
どうしたのだろう?高尾の顔を見ればいつになく真剣な面持ちだった。
「まずお伝えしたいこと…いえ、お伝えしなければならないことです。島原様…………誠に申し訳ございませんでした!」
「ぇ……え?……ええぇ?!」
今度は吉野が大きな声を上げる番だった。
それはそうだろう、今の高尾を見ればその理由は分かる。
何故なら高尾は、謝罪の言葉を口にすると同時に吉野に向かって深々と土下座をしていたのだから。
「どどど、どうしたんですか?よ、吉原さん、や、止めてください…そんな…ほほ、本当にどうしたんですか?」
慌てた素振りで高尾の肩に触れ、身体を起こそうとする吉野。
そして高尾がゆっくりと顔を上げる。
「これは……私の失言に対する謝罪でございます」
「し、失…言?…」
高尾の言葉の意図が掴めず、ただ鸚鵡返しをする吉野。
するとさも申し訳なさそうな表情で、高尾が重い口を開いた。
「先程、島原様が仰られた『性風俗』でございます。あの日、ナイトサービスの説明をした際、私が島原様にお伝えしたこと…」
「え?…あ…」
「はい、私共が提供するサービスは低俗な性風俗とは違うなどと……そんな思い上がった発言に対する謝罪でございます」
「……………」
吉野もはっきりと覚えている。
その言葉も、その言葉に傷つけられた胸の痛みも。
けれど、何故高尾が……その疑問を尋ねようとするよりも先に高尾が言葉を重ねてきた。
「職業に貴賤は無い……そんな言葉も頭では理解しているつもりでおりました。にも関わらず低俗だなどと……これで働くミセスを応援するなどと良く言えたものだと後悔してもしきれない思いでございます。様々な理由でその業界に身を投じ働いておられる方もいらっしゃるっでしょうに……誠に……誠に申し訳ございませんでした」
再び深々と土下座する高尾。
その高尾を見る吉野の表情は、どこか怯えたものに変わっていった。
「よ、よ、吉原さん……あ、貴女…………ご、ご存じ…なのです…ね?…」
ゆっくりと身体を起こした高尾は、その問いには答えずジッと吉野を見つめていた。
それは、言葉通り後悔の念に駆られたような、それでいて吉野を哀れむようなそんな視線だった。
その視線が吉野にとっては雄弁に何かを物語ったのだろうか。
諦めにも似た表情で薄っすらと苦い笑みを零した吉野だった。
「それで……も、もう一つの…た、尋ねたいこととは……なんでしょうか?」
「はい、坊っちゃんの……いえ、島原様のことでございます」
「わ、私?」
「はい……坊っちゃんは、昨晩、精通し普通の自慰の方法も覚えました。これで島原様の悩みの種となっていた奇行は無くなることでしょう」
「は、はい……そ、それは…ほ、本当に、あ、ありがとうござい…」
「ですが」
「え?」
吉野の感謝の言葉を遮るように高尾が口を挟んだ。
吉野を見る目、それはやはり吉野を同情するかのような悲し気な瞳だった。
「ですが、それで本当に島原様のお悩みは解決するのでしょうか?」
「え?……」
「坊っちゃんがペニスをそこらに擦り付けるのを止め、島原様ではない…例えば私のパンティを使って一人で自慰をするようになれば、島原様のお悩みは解決するのですか?」
「そ、そ、それは……も、勿論…」
「私は、そうは思いません」
「ど、どうして!」
毅然と言い放つ高尾に、珍しく吉野が喰ってかかる。
少々声が大きくなった吉野を諫めるかのように、高尾が静かに答えた。
「島原様のお悩みの原因は、坊っちゃんにあるわけではないからです」
「っ!……」
「島原様のお悩みの原因は島原様ご本人に……正確には、島原様がかつて従事されていたご職業にあるのではないですか?『泡姫』というご職業に」
努めて静かに、だけれども吉野にとってはまるで鋭利な刃物のような言葉を投げかけた高尾。
そんな高尾に返す言葉が見つからず、怒ったようなそれでいて怯えたような表情でただジッと高尾を見つめることしか出来ない吉野だった。