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Senior Mania -foster mother-

其の弐

「まずこの写真を見て欲しい」
「写真…ですか?…これ…この子は誰です?…女の子?男の子かしら?」
老人の書斎で志乃は一枚の写真を手渡された。
そこに写っているのは志乃達からすればまだほんのお子様と思われる子供の姿だった。
ちょっと見では女の子とも男の子ともとれる中性的な顔立ちで、笑顔が眩いばかりに可愛らしい。
「それは男の子だよ。名をわたると言う」
「わたるちゃん……ですか?誰なんです?」
「それはな……私の孫なんだよ」
「えぇっ!」
あまりの出来事に思わず大きな声を出してしまった志乃だった。
「ま、ま、孫ですか?…そ、それってつまり…」
「あぁ、あの死んでしまったバカ息子の子だ。あのバカ息子はな、誰に似たのか女に手が早くてな。実は中学の頃、同じ年の女の子を孕ませてしまったんだよ」
「え?ほ、本当に?」
あなたに似たに決まっているじゃないですかと言いたい気持ちはあったが、それよりもその事実に驚き過ぎて声にならない。
「あれは確か、奴が事故で死んでしまう2、3年ほど前の話だったか。勿論、堕ろそうとしたのだが……私がそれを知った時にはもう手遅れでな」
「手遅れ?」
「ああ、もう産むしかない状態にまでなっていた。そして結局その女の子は子供を産んだのだよ」
「そ、そうだったんですか……私、その頃からあなたの会社の世話になっていたのに全然知らなかった…」
「そうだろうとも。言い訳になるが……あの頃は私も仕事が忙しくて、正直、面倒ごとを背負いこむのが嫌だったのだ。だから手切れ金を渡す形で…」
「…………」
女としては志乃にも少々言いたいことはあった。
が、確かにその頃のことを思えば、老人の気持ちも分からなくはない。
老人が会社の立て直しのため、実に苦労していたことを志乃は良く知っていたからだ。
「……で、この、わたる?…ちゃんは、今どうしているのですか?」
「ああ、実はある施設に入っている」
「え?施設?ですか?」
「ああ、身寄りのない子の面倒を見る施設にだ」
「身寄りのない…え?どうして?」
「実は、その女の子の家庭はあまり裕福では無かったようでな。女の子は一人育てると言っていたそうだが、中学生に何ができるわけもない。結局、施設に入れることに、な」
「そんな…なんて可哀そうな…」
思わず涙ぐみそうになってしまう志乃だった。
「ああ、可哀そうだ。そしてそんな可哀そうなことになってしまった原因こそ私なのだ。私が金で解決しようなどと下種な考えをしたばかりに…」
「…………」
まるで苦虫でも噛みつぶしたような苦悩の表情をする老人。
その苛立ちの矛先はだれあろう自分自身に向いていることは志乃にも良く理解できた。
「それで…あなたは、このわたるちゃんをどうしたいのですか?」
物分かりの早い志乃のこと。
正直、志乃は、すでに老人が何を言いたいのかは察していた。
その志乃の表情から老人も何かを感じたのだろう、安心したように言葉を紡いだ。
「ああ、わたるをこの家に迎え入れたいと思っている。そして、行く行くは私の全てをこのわたるに譲りたいと考えている」
「分かりました」
間髪を入れず志乃は応えた。
さすがの老人もこの志乃の対応には面食らったようだ。
「いいのか?本当に」
「あなたが決めたことですもの。それに……きっとあなたには贖罪の意味もあるのでしょう?」
「何もかもお見通しだな。まったくお前という女は」
「あなたの妻ですから。財産目当ての後妻ですけどね」
ペロッと舌を出して見せる志乃。
普段は凛としているのに、たまにみせるこの子供のような茶目っ気が老人は好きだった。
が、しかし……多分、ここまでは話の進み具合から志乃も想定できたことだろう。
また老人にしても、あまりの即答に面食らいはしたが、きっと志乃ならばわたるの受け入れには賛成してくれるだろうと思っていた。
しかし……老人にはまだ志乃への頼みが一つ残っているのだ。
果たして志乃は、それさえも受け入れてくれるだろうか。
愛らしい妻の姿を見つつ、老人はその頼みを中々言い出せずにいた。
そんな思案の表情を浮かべる老人の態度に志乃は首を傾げた。
「あなた…どうしたんです?」
「いや…別に…」
「まだ何か…言いたいことがあるようですね」
本当に察しの良い女だ。
老人はやれやれと一つ溜息を付いた。
「私は、わたるを後継ぎにしたいと考えている。お前のことを悪く言うあんな奴らには、この家の財産をびた一文分け与えたくはないのだ」
「…………」
「勿論、わたるには普通に学校に通ってもらう。ただ、それとは別に私が直々に後継ぎとして学ばなくてはならないことを教えていきたいと思っている」
「それは実に良いことだと思いますよ。大丈夫、あなたの血筋ですもの。きっとこの子は期待に応えてくれますわ。賢そうな可愛らしい顔をしていますもの」
志乃がニコリと微笑んだ。
最近どことなく元気のなかった老人の瞳に、また何やらやる気という炎が灯ったことが志乃には何よりも嬉しかった。
が、次の瞬間この微笑みがサッと消えてしまうような頼みを老人がしてくるとは、流石の志乃にも予想も出来ないことだった。
「そしてお前にも教育してもらいたいことがあるのだよ。志乃」
「え?教育?私が、ですか?そんな…私には後継ぎとしての教育など何も…」
「いやある。あるんだよ、志乃。お前にしかできないことが……お前にしかしてもらいたくない教育が一つあるんだよ」
「私にしか?…それは、どんな教育なんです?」
老人の言う意図が掴めずきょとんとした表情を見せる志乃。
そんな志乃に老人が静かに一言呟いた。
「お前に……わたるの性教育をお願いしたいんだ」
「……………………え?…………あ、あの…………い、今なんて仰ったんですか?」
いや、志乃にははっきりと聞こえていた。
老人は間違いなく『性教育』と言ったのだ。
しかしそれが信じられなくて、思わず聞き直してしまった志乃だった。
「性教育だよ志乃。つまり……お前にわたるの筆おろしをお願いしたいんだ。いや、それだけではない。筆をおろして男にした後も、お前の全ての性技を持ってわたるに女というものを教え込んで欲しいんだ」
「な!何を言ってるんですかあなたは!」
あまりのことに志乃は今日一番の大声を張り上げた。
無理もない。
夫である老人が、まだ年端のいかない女の子のような少年の性の相手をしろなどと言ってきたのだから。
老人の頭がいよいよ呆けてしまったか、あるいは気がふれてしまったのかと思ったくらいだ。
「いや、志乃、聞いてくれ。私は決して乱心などしていない。これには理由があるんだよ」
「ど、ど、どんな、り、理由があるというのですか!」
取り乱しているのはむしろ志乃のほうだった。
そんな志乃を落ち着かせるように、静かにゆっくりと老人は言葉を紡ぎ始めた。
「あいつらが私の跡目を狙っているは知っているな。お前に心無いことを平気で言うあいつらだ」
「は、はい。知っています。でもそれが、こ、この子の…わたるちゃんの、ふ……筆おろしの相手をすることと何の関係があるんですか!」
「わたるを跡目に、そう言ってあいつらが素直にはいそうですかと納得すると思うか。勿論、確かにわたるはあのバカ息子の子供だ。今ならばそれが紛れもない事実であることも証明することはできるだろう」
「な、なら、何の問題もないじゃないですか?あとはあなたが後継ぎとなるための教育を……」
「わたるが正当な後継ぎとなれば、次にあいつらのすることは決まっている。あの手この手でわたるを自分達側に取り込もうとするに違いない。あるいは脅迫のネタにするとか、な」
「そ、そんなことは…」
「現にバカ息子は……それはお前も知っているな」
「あ……そ、それは……」
老人の息子が事故で無くなる数か月前のこと、実は一つの事件が起きた。
親戚筋が高校生になったばかりの老人の息子を商売女を使って色仕掛けで篭絡し淫らな写真を撮らせ、それをネタに老人に社長の座を降りろなどと脅迫まがいの行為をしてきたのだ。
その時は、最悪の出来事ではあったが老人の息子の事故死によって有耶無耶になってしまった。
もっとも商売女が親戚筋に依頼されたという事実も掴むことは出来なかったのだが。
「私は、もうあんなことは嫌なのだ。私はこれから心血を注いでわたるを一人前の社長に育て上げたいと思っている。それをあんな形で汚されたくはないのだ」
「あ、あのことは私も覚えています。あなたが息子さんにもあの方達にもたいそうご立腹されていた事は……で、でも、だからと言って…」
納得のいかない志乃の言葉を遮るように、ゆっくりと老人は手を挙げ『待った』の手振りをする。
「お前の言いたいこともわかる。だけれども、だからこそお前なんだよ志乃」
「な、なにを言って…」
「男は本当にバカな生き物だ。女に肌を見せられて擦り寄られれば、大抵の男はその女の言いなりになってしまう。女の身体に興味を持ち始めた幼い少年ならば尚更のことだろう」
「そ、それはそうかもしれませんけど…」
「だが、それが信頼のおける身内の女ならばどうだ?そして普段から女の身体に免疫を付けておけば、バカ息子の相手をしたあの下品な商売女などに靡くことはないし、そもそもあんな馬鹿な事件は起こりはしない」
「そ、それは……」
「それに励みにもなる。わたるにはこれから非常に厳しい試練が待っている。普通の勉学に加え、私から仕事まで学んでいかねばならないのだ。ただそれだけではいつか心が折れてしまうだろう」
「…………」
「そんな時、お前のように優しく、美しく、豊満な身体の女が肌を与えてくれるのならば、一層勉学の励みになるに違いない」
「そ、そんな、わ、私など……あ、え?……こ、こほん…」
不意に始まった老人の褒め殺しに、話の内容も忘れ思わず満更ではない表情を浮かべてしまった志乃だ。
そんな思いを老人に見透かされたような気がして、志乃は気まずさを打ち消すようにコホンと一つ咳ばらいをしてみせた。
「私が鞭となり、そしてお前が飴となって二人で協力して少しでも早くわたるを一人前の男として育て上げたい。私はそう思っているのだよ」
「…………で、ですが…」
老人の言うことには納得できる部分もある。
しかしまだ踏ん切りを付けるまでにはいかないようだ。
「それが一つ目の理由」
「え?ひ、一つ目?ほ、他にもあるんですか?理由が…」
「ああ、ある。お前の問題だ」
「わ、私の?」
「そうだ。今更改めて言うことではないが、私のコレはもうお前を喜ばせてやることはできないようだ」
「ちょ、ちょ、ちょっとあなたったら…もう…いやだわ…」
老人が着ていた浴衣の裾を割り、股間を露わにして志乃に見せつけたのだ。
赤黒く少々グロテスクな巨大なナマコがボロンと姿を現わした。
もう見慣れたものだとは言え、ここは書斎だ。
場違いな場所で見せられるそれのなんとも卑猥な姿に思わず顔を赤らめて目をそらしてしまった志乃だった。
「すまん、すまん。ふざけているわけではないのだよ、志乃」
「もう…早くしまってください、その立派なの」
「わかった、わかった、許してくれ。だがな…さっきも言ったが、そんなお前が少々不憫に思えてな」
「そ、そんなこと…わ、私はあなたの妻ですから…」
「ああ、分かっている。私とてお前と一緒になってからは他の女に手を出したことなど只の一度もない。天地神明に誓って偽りは無い。だが…」
「だが?」
「私はお前と再婚するまでは多くの女を抱いてきた。だから今更女など……いや、もちろん、お前をもう一度抱きたい気持ちはあるのだが…」
「…………」
「けれどお前は女として今が一番脂が乗っている時だろう。そんなお前に私は申し訳なくて…」
「あなた…私も言いましたよ。気にしていない、と」
「ああ、だがな。すまん、私が気にするのだ。だからその相手をわたるに、と考えたのだよ」
「それが突拍子もないことだと言うんです。そもそもこんな坊やに私を満足させるなんて、そんな芸当が…」
「だからそれをお前に教え込んで欲しいのだよ。お前を満足させることができるような一人前の男に育てて欲しいのだ。ああ、お前の好きにしていい。なんならお前専用の慰み者でもいいとさえ思っている」
「あ、あなた、な、なんてことを…」
「いいから聞いてくれ志乃!」
老人が珍しく声を荒げた。
それは本当に滅多にないことのようで思わず志乃は口を噤ませた。
「本当なら私は……私の全てはお前に譲りたいと思っているのだよ、志乃」
「え?な、なんです急に…」
急な話の展開に志乃も思わずきょとんとしてしまう。
そんな志乃に構わず、老人は淡々と自分の思いを告げ始めた。
「二回りも歳の離れた私だ。お前にあのバカ息子のような事故でも起きない限り、間違いなく私のほうが早くあの世に行くだろう。その時、志乃、お前にこの家も会社も受け取ってもらいたいと思っているんだよ」
「あなたったら、あの世だなんて…」
とは言うものの、老人の言うことは多分事実であろう。
悲しいことだが、自然の摂理には抗えない。
「ですが……家はともかく、会社なんて…」
「わかっている。いくらお前は頭が良いからと言って、私の代わりに社を切り盛りすることなどいきなりは無理だろう。またそんなことをあのハイエナ達が指をくわえて見ているわけもないしな」
「そ、そうですよ……あ、あなた、何を仰りたいの?」
「私が言いたいのはな。あのハイエナ達には一銭もやりたくない、すべてはお前に受け取って欲しいということなんだ。その方法の一つが……」
「この坊やに女の身体を教えることだとでも言うのですか?」
「ああ、そうだ」
「…………」
はっきりと言い切る老人に、志乃は返す言葉が見つからない。
困惑の表情を見せる志乃に、老人は優しく微笑んだ。
「志乃。先にも言ったが、男はバカな生き物だ。女のためなら平気で財を投げ出そうとする。今の私もその一人だ」
「…………」
「そして、お前のようないい女に筆をおろしてもらったわたるも、きっとそのバカな男の一人になるだろう」
「もう…あなたったら、またそんなことを…」
どうも志乃は褒め殺しに弱いようだ。
何度も言われていることなのにそのたびに顔を赤らめてしまう。
「社はわたるが切り盛りする。絶対にそうできるように私が育てる。そのわたるを……お前が支配すればよいのだ」
「し、支配って…」
「ああ、すまん。言葉が乱暴すぎたな。要は社を切り盛りするわたるがお前の言うことに従うようになればよい。そうすることで私の願い……お前に全てを譲るという私の願いが叶うのだよ。志乃」
「あ、あなた…」
「話が長くなってしまったな。つまりはこうだ」
老人は姿勢を正し、目の前の志乃に面と向かい合った。
そんな老人の態度に合わせるかのように、志乃もピンと背を伸ばし老人の言葉を待つ。
「わたるの性教育の師となって欲しい。そして悶々とした欲求不満を解消して欲しい。わたるを自分のものとすることで私の全財産を受け取って欲しい。この3つがお前への頼みの全てなのだよ。志乃」
「…………」
しばらく沈黙の時間が続いた。
しかしその空気を重く感じたのか、志乃が大きく溜息をついた。
「はぁ〜まったくもう、あなたったら。一度言い出したら他の人の言うことなど耳も貸さないんですから…」
「志乃、それでは…」
良い返事の兆候に思わず老人は身を乗り出した。
そして志乃の顔をじっと見つめてみる。
志乃はと言えば何やらもじもじとした態度で、俯き加減に上目使いで老人を見返した。
「あなた……あなたから見れば私はまだまだ小娘かもしれませんが、この坊やにとってはもうお母さんみたいな歳なんですよ?はっきり言っておばさんです、おばさん」
「うんうん、それで?」
「そんなおばさんの私にこんな可愛らしい坊やの相手が務まると本当に思っているのですか?同年代の女の子を差し置いて私のようなおばさんの相手をこの子がするとでも?」
「勿論だとも。お前ならば精通を迎えたばかりの少年からもう役に立たなくなった私のような爺様まで、全ての男が虜になってしまうと思うよ、うん」
「また、そんなお世辞を言って…もう!」
本当に誉め言葉に弱い志乃だ。
そんな志乃をにこやかな表情で老人は見つめている。
「けれどあなた……見たところ、本当にまだ幼い坊やじゃないですか?まだその……お、女の身体に興味があるような歳には見えませんけど…」
「そんなことはないだろう?私はわたるの歳にはもう女を知っていたぞ」
「あなたは特別です!もう!」
むくれた表情が本当に可愛らしい。
老人の表情が更に綻んでいく。
「ふぅ……もう!はいはい、わかりました!この坊やの筆おろし、不詳わたくしめがしっかりと努めさせていただきます!」
「おお、そうか!お前ならばきっとわかってもらえると思っていたよ。ありがとう志乃。だが筆おろしだけだはないぞ?」
「はいはい、分かっていますとも。あなたに教わった手練手管の全てを使ってこの坊やを一人前の男の子にしてみせます」
「うんうん、ありがとう。ありがとう志乃よ」
子供のように満面の笑みを浮かべる老人に、やれやれと溜息交じりの苦笑いを浮かべる志乃だ。
「あ、ですけどあなた。条件がありますよ」
「ん?条件、とは?」
「まずこの坊やが女の身体に目覚めていること。全然興味を持っていないなら、興味を持つまでこの約束は延期とします。いいですね?」
「まぁ、そんなことはないだろうが……私はわたるの年には…」
「いいですね!?」
「はいはい、わかったわかった。女に興味が湧いてきてからで良い。了解した」
「あと、興味があったとしても……」
「うん?」
「私を受入てくれなかったら、その時はこのお話はなかったことにしてください。もしかしたら好きな女の子がいるかもしれないし……私はもうおばさんだし…」
「ぷっ!」
いったい何の心配をしているのか、思わず吹き出してしまった老人だった。
「あ、あ、笑いましたね、あなた。今、『ぷっ』って笑いましたね!」
「すまん、すまん。ちょっとお前が可愛らしくてな。大丈夫。さっきも言っただろう?その気になっているお前を拒絶する男などこの世にいるものか」
「本当にそうならいいですけど!」
ぷくっと頬を膨らませた志乃だ。
けれどそれも束の間、ふと真剣な表情に戻った。
そしてか細い声で、老人に囁くように話しかける。
「あの、あなた?……あなたは、何にも思わないのですか?こんな坊やとはいえ……私が他の男に触れられることに…」
志乃が何を言いたいのか、老人は十分承知していた。
志乃に近づきそっと肩を抱く。
「平気なことはないぞ志乃。お前が他の男になんて……そんなことは正直我慢できることではない。だがな……お前を本当に不憫だと思っている私の気持ちも分かって欲しいのだ」
「…………」
「25歳という若さでこの家に嫁いできたお前はろくに遊ぶことも出来はしなかったろう。この10年本当によくやってくれた」
「はい……はい…」
仕事では厳しい老人の優しい言葉に思わず涙がこぼれる思いの志乃だった。
「そして今やお前は女盛りだ。本来なら女としての喜びを最も享受できる時なのに……なのに私は……私ではお前の相手を努めることが出来ないのだ。だからせめて……せめて血の繋がった……」
「分かりました。あなた、もう分かりましたから」
涙声が混じり始めた老人の手にそっと自分の手を重ねる志乃。
老人の志乃に対する思いは確かにしっかりと伝わったようだった。
「けれど!知りませんからね、私がこのわたるちゃんに付きっきりになったとしても焼餅を焼かないでくださいね!」
「ああ、そうだな……そうだな…」
「わたるちゃんが立派に私の相手を務めることが出来るようになったら、あなたのことなんて放っておいて、わたるちゃんと……その……おかしなことばかりしているようになってしまうかもしれませんよ」
「その時は……ふふ……その姿を覗き見てせんずりでもさせてもらうさ……ははは…」
「へぇ〜使い物にならないモノで、ですか?」
蔑むような視線を老人に向ける志乃。
勿論、少々元気の無くなった老人を元気づける意味を込めての冗談だ。
「おいおい、やけに辛辣じゃないか。流石の私も少々傷ついたぞ」
「何を言ってるんですか、あなた。どんなにひどいことを私に頼んでいるのか、あなた分かっているのですか?」
「ああ、そうだった。そうだった。すまん、すまん、私が悪かったよ」
「わかればいいんです!……くす……」
「はは……あはははは…」
二人の間にいつもの仲の良い夫婦の雰囲気が戻っていた。
その時志乃が不意に立ち上がった。
「さてと、そうと決まれは…」
「ん?どうした志乃…お、おい、し、志乃、な、何を…」
老人は、まさかの光景を見た。
二人の前には本を読むための背の低い卓袱台のような机があるのだが、志乃はそこに腰掛けると、なんと老人の目の前で大きく足を開いていったのだ。
そして先ほど老人がしたように浴衣の裾を割っていく。
下着を履いていないため、黒々した艶やかな陰毛がその姿を現わしていく。
その下にはぱっくりと開いた陰唇さえも見て取れる。
「ぎょ、行儀が悪くてごめんなさい、あなた。で、でも今日は……今日だけは、心行くまで私のお相手をしてもらいますからね。さ、さっきの……お、お風呂の倍は……い、いえ3倍は可愛がってもらいますからね」
自分から霰もない格好をしたくせに、志乃の顔は滑稽なほど赤く染めあがっている。
勇気を振り絞って、恥ずかしい思いをこらえているのが良くわかる。
最初、志乃の行動に驚きはしたものの、老人はクスリと一つ笑みをこぼした。
「ああ、ああ、いいとも。私でよければ、是非相手をさせてもらうよ、志乃」
言いながら、左手をそっと志乃の股間に潜り込ませる老人。
慣れた手つきで、お核、蜜壺を探り当てると、緩々と猫の腹でも摩ってやるかのように優しくいやらしく撫で回す。
「は、はふぅ…あ、あ、あはぁん…」
ただそれだけのことでいとも簡単に艶声を上げさせられた志乃だった。
「なんだ、もう濡れているじゃないか。どうしたんだ志乃。ここはもうすっかり出来上がっているぞ。ほら、ほらほらほら」
風呂場の秘め事と同じように二本指を蜜壺に潜り込ませ、交互に動かす老人。
するとクチュクチュと湿った音が書斎に鳴り響く。
志乃のそこが濡れているのは明白だ。
「し、知りません。そ、そんなこと……あ、あん……わ、私……知りませんから……あ、あ、あぁ…」
「知らないはないだろう。こんなにぐじゅぐじゅに濡れているのに。ああ、なるほど……さてはお前……わたるの筆おろしでも妄想していたのだな。いやらしい女だ、お前は。ほれほれほれ」
「そ、そんなこと……あ!あぁん!そ、そんなことありません……よぉ……あん……あ、あぁん…」
「いつまで白を切るんだ。ほら、怒らないから、本当のことを言ってごらん。お核だって抉(くじ)ってもらいたいのだろう?」
「あ、あぁん……そ、そうですぅ……あ、あなたがあんなことを言い出すから……わたるちゃんの……こんな可愛らしい坊やの……あ、あそこってどんなのかなって……そ、想像しちゃって……あ、あ、あぁ!」
早く老人に気を遣らしてもらいたのであろう、志乃は素直に白状した。
「やはりな、そんなことだろうと思ったよ。わたるのチンポか……そうだな、この歳ではきっとこの私の指くらいではないのかな。ほらコレくらいの太さで、これくらいの長さではないのかな?ほれほれ」
老人は重ねた二本指でずぼずぼと志乃の蜜壺を突き回す。
そのたびにそこから愛液が滴り落ち、志乃の肛門にまでもテラテラと濡らしていく。
「こ、これが……これがあの子の、なんですか……こ、こんな可愛らしくて……あ、ああ……ち、小さいものなんですか…」
「わたるの歳ならばこんなものだろう。それに、まだ剥けてもいないだろうしな」
「あ、あぁん……む、剥けてない?……そ、それって……ほ、包茎?……あふぅ……ふぅ……ふぅ…」
「ああそうだ、小さい小さい包茎チンポだ。それがお前のこれを……ツンツン、ツンツン突き上げるんだ、こんな風にな……ほれほれほれ!」
「あ、あ、あ……で、でもぉ、あ、あなた……こんなぁ、可愛らしい小さな包茎のオチンチンで……ちゃ、ちゃんと筆おろしなんて……あん……できるんですかぁ……なんかいけないことをしてる気分になっちゃいますぅ」
「まぁ最初は無理だろうな。童貞のわたるなどきっとお前に触れられただけで達してしまうことだろう」
「え?……あ、あん……さ、触っただけで?……あふぅ……そ、そんなに簡単にぃ?…」
「ああ、童貞の初心なチンポなどそいうものだよ。いや、もしかしたら、お前のこの豊満な助平な身体を見せつけられただけで漏らしてしまうかもしれないぞ。童貞チンポは早漏だからな」
志乃の浴衣をはだけさせ、言葉通り豊満な乳房を露わにした老人だ。
そして乱暴ともとれる手つきでグニグニと志乃の乳房を揉みしだいていく。
「あ、あひぃ!見、見ただけでなんて……そ、そんな……そ、早漏のオチンチンだったら……ふ、筆おろしなんて……あふぅ……と、とても出来ないじゃないですかぁ」
「だから初めのうちはゆっくりと慣れさせてやるんだよ」
「はぁはぁはぁ…あん!な、慣れ…させるぅ?」
「お前に教え込んだ性技を駆使して何度も何度も射精させてやるんだよ。手で扱き、胸で擦り、口で吸い上げ、何度も何度もな。そうして女に射精させられることに徐々に慣れさせていくんだ」
「徐々に……あん……な、何度も何度も……ち、小さくてぇ……あふ……ほ、包茎で……そ、早漏のオチンチンを……わ、私がぁ?……あ、あ、あはぁん」
もしかしたら志乃はすでにその光景を妄想しているのかもしれない。
わたるの写真を見つめながら老人に股間を弄られる志乃の喘ぎ声が一層大きくなっていく。
「まぁ、そうしたところで、いざ筆おろしという時には一分も持たずに果ててしまうだろうがな」
「え?……た、たった一分で……ですかぁ?……あ、あん…」
それは志乃にとってはあまりに驚くべき早さだった。
この老人の相手を努めていた頃、志乃はいつもいつも30分は責め続けられていたからだ。
老人が一度射精する間に、自分は何度気を遣らされたことだろう。
もう身も心もくたくたになってしまった記憶しかなかったからだ。
「ん?もしかして私と比べているのか?それは童貞のわたるには酷というものだぞ志乃。それに私とて初めての時は……」
「そ、そ、そうなんですか?……あ、あぁ……わ、私はぁ……ど、童貞坊やなんて……よ、よく知らないから…」
「そうか……だが、事は簡単だ。逆を考えればいいのだよ志乃。つまり、あの頃の私がお前で、あの頃のお前がわたるだ、とな」
その例えは志乃にとってはとても分かり易いものだった。
あの頃の自分。
老人の手練手管に翻弄され、自分が老人を喜ばすことなどとても出来なかったあの頃の。
「あ、あ、そ、それじゃあ……き、きっとぉ……あん……わたるちゃんは、なんにもできませんよぉ……た、ただ、私に責められてぇ……はぅう……ぴゅぴゅって射精することしかできませんよぉ……あ、あ、あん!」
「だからお前が立派な男にしてやるのだろう?しっかりと包茎を剥きあげて、ここにずぼっと収めてやるんだ。ほら、ここだ。ここは何て言ったかな?志乃」
「そ、そこはぁ……あぁ……お、おまんこですぅ!わ、私のおまんこですよぉ……い、いいんですか?……い、いいの?……そ、そんな、ちっちゃな包茎チンチンを……ああ……包茎チンチンをおまんこ入れちゃうなんて…」
風呂場での出来事が志乃を開放的にしているようだ。
さっきとは異なり、いとも簡単に恥ずかしい四文字単語を口にした志乃だった。
そんな志乃の姿に、再びいやらしい笑みが老人の顔に浮かび上がった。
「ああ、構わないさ。この淫乱なおまんこにずっぽりと小さい包茎チンポをはめ込んでやれ、そしてわたるを男にしてやるんだ、いいな志乃」
「は、はぃ……あ、あぁん……わかりました……あ、あなた……わかりましたよぉ……わ、わたるちゃんのぉ……ほ、包茎のチンチンをぉ……ど、童貞のチンチンをぉ……しっかりと男の子にしてあげますよぉ!……あぁん」
「偉いぞ志乃……ならば、ほら、お前にご褒美だ。これを吸いたててやるから思い切り気を遣るんだぞ」
言いながら老人は、指を差し込みぐちゅぐちゅと蜜壺を掻きまわしたまま、徐々に志乃の股間に顔を近づけるとやおらに無防備なお核を吸い立てた。
「ひっ!ひぎぃぃっ!そ、そこは……あ、あ、だ、だめ!あ、あなたそ、そこはぁ……あ、あ、あ、だ、だめぇ…」
「チュッチュッーなんだほら、ダメなのか?こんなに気持ちよさそうにしてるじゃないか、どうする志乃止めるのか?それとも続けて欲しいのか?どっちなんだ?」
「あ、あ、あ、あ、や、止め……ないで…止めないでくださいまし!もっと、もっと吸ってくださいましぃ!あ、あ、あぁぁぁっ!」
「よしよし、わかったわかったそれじゃあもっと吸ってやろうな。だが、志乃。イクときはちゃーんとどこがいいのか言いながらイクんだぞ、いいな」
「は、は、はいぃ……わ、わ、分かって……分かってますよぉ……あ、あ、だ、だから……あ、あなた……もっと……もっとぉ!」
その言葉に老人の唇がまた志乃の陰核を吸い立て始めた。
チュルチュル淫靡な音を立てながら、グニグニと指を動かしGスポットを掻きむしるようにして。
やがて……
「あ、あ、あ、あなたぁ!わ、私、イ、イッちゃいます…お、おまんこ、い、いぃっ!お、おまんこ、ぎ…ぎ持ちよぐでぇ…あ、あ、あ、イ、イグ!お、おまんこ、イ、イグゥーーーーーーーーー!」
腰を跳ね上げながら再び絶頂を迎える志乃。
老人は志乃に感謝するかのように蜜壺から溢れ出した愛液を一滴も漏らさないよう優しくいつまでもいつまでも啜っていた。
実はもう一つある、志乃にわたるの性教育を頼むことの目的に思いを馳せながら。