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Senior Mania -landlady-

其の陸

「あのさ、坊や…」
女将はニヤニヤと薄ら笑いをしながら言葉を続けた。
「坊やに、聞きたいことあるんだけどさ…」
「な…なんです…か?…」
「坊やはさ…今朝、あたしの部屋でなにしてたんだい?」
(!…)
やはり…女将の質問に、わたるは目の前が暗くなっていく。
(や、やっぱり女将さんは…あ、あの時のこと…・い、いや…女将さんは…女将さんは、あの時寝ぼけてたはずだ…そ、そうさ…お、女将さんが目を覚ました時…ぼ、僕は、女将さんから離れていたんだし…ま、まだ…まだばれたって、決まったわけじゃ…)
わらをも掴む心境のわたるだった。
「な、なにって…そ、その…そ、それは…その…」
「ん?…なにしてたのさ?」
「そ、それは…その…お、女将さんを…女将さんを…お、おこ…起こそうと…」
これがわたるの最後の悪あがきであった。わたるの言葉を遮るように、女将のとどめの言葉が冷たく言い放たれた。
「チンポ、勃てながらかい?」
(!!!)
わたるは言葉を失った。見られていたのだ。女将の寝乱れ姿に興奮した自分の股間を。余りの興奮に自分でも気付いていなかったあの時の勃起を。
「ねぇ?坊や…クスッ…坊やはさ、人を起こすときチンポ膨らましちゃうのかい?…ねぇ?どうなんだい?…クスッ…クスクスクス…」
わたるを蔑むように含み笑う女将だ。もはや女将を見ることさえも出来ず、わたるはただ黙って湯の表面に映る情けない自分の顔を見つめるしかなかった。
「あたしもね…最初は、坊やの言葉を疑わなかったよ…ああ、起しに来てくれたんだ…ってね」
「……」
「アハッ…それにさ…坊やの言う通り、あたしは坊やのこと『まだまだ小さな子供』くらいにしか思ってなかったしさ…まさかね…ホ〜ント驚いたよ。坊やがチンポ勃ててるのに気付いた時はさ」
「……うぅ…」
「なんか様子が変だなぁとは思ったけどね。坊や、びくびくしてたし…そしたら…フフッ…よ〜く見たら、浴衣の前んとこ膨らましてるじゃないか。ビックリして自分の体見たら、不自然に胸だの裾だの肌蹴てるだろ?…その時、なるほどねって思ったよ」
勝ち誇ったようにわたるを見下ろしながら、淡々と朝の出来事について語る女将だ。女将の話しを聞いているうちに、わたるの心はいたたまれない気持ちで一杯になっていく。先程、妖艶な女将の半裸に膨らみかけたペニスは、既に無残なほど小さく萎れていた。
「フフ…でもさ、勃起してるって解っても、坊やみたいな子供がまさかってホント信じられなくてね…それで、ちょっと試してやろうと思ったんだよ。欠伸したふりしてさ、胡座かいて裾を肌蹴て…そしたら…アハハ…面白かったねぇ、あの時の坊やは…あたしの胸と股んとこキョロキョロ、キョロキョロ見てさ…アッハッハッハッハ…」
「そ、そんな…お、女将さんは…し、知ってて…ひ、酷いよ…」
既にあの時から自分は女将にからかわれていたのだ。悔しさに、思わずそう呟いたわたるだった。
「な〜に言ってだい、このスケベ小僧は。どっちが酷いんだよ…まったく、いい子だと思ってたのにさ…がっかりだよ。人が寝てんのをいいことにあんなこと…」
「…う…」
そう言われては、わたるに返す言葉があろうはずもない。シュンと肩を窄め俯いてしまったわたるだ。そんなわたるに、容赦のない女将の質問が続けられる。
「だからさ、覗きなんてするくらいだから、ハゲデブの言う通りセンズリくらいかいてんだろ?あたしにはわかってんだよ、坊や」
「………………ぅ…ぅ…う…ん…」
もはや言い逃れなど出来はしない。諦めの境地のわたるは、蚊が泣く程のか細い声で一言だけ返事をした。羞恥に全身を振るわせながら。
「は〜ん。やっと白状したね、坊や。で、どうなんだい?…ほら答えなよ、坊や。あたしはさっき、今日はもうセンズリかいたのかいって聞いたんだよ」
「い、いえ…そ、それは…」
それはしていない。嘘ではない、本当にしていないのだ。これだけは信じてもらおうと、女将の顔を真っ直ぐに見ながらわたるは訴えた。
「し、し、してない…です。ほ、本当に…本当にして…ないです。嘘じゃないんです」
「あらやだ、ホントにかいてないのかい?センズリ…」
わたるの真剣な態度が功をそうした。どうやら女将はわたるの言葉を信じたようだ。けれどそれは、どうやら女将には納得の出来ないことだったらしい。
「坊や、ホントにかいてないんだ…センズリ…へぇ〜驚いた。もうあたしの部屋を出てったら、すぐにチンポ弄り回すのかと思ってたよ」
「な、なんで?…」
「だって、あんなにチンポ膨らましてたのにさ」
「べ、別に…そ、そうなったからって…いつも…その…ア、アレをするとは…」
「けど坊や、すっごく興奮してたろ?…フフッ…おもらしまでしてさ…フフフフフ…」
「え?…」
なんのことだ?おもらし?自分が?わたるには女将の言葉が理解できなかった。困惑の表情で女将の顔を見れば、あいも変わらずニヤニヤと薄ら笑いをしている。
「なんだい?坊や。自分じゃ気付かなかったのかい?…アハッ…よっぽど興奮してたんだねぇ、スケベ小僧…ウフフフフ…あのね、坊や。坊やはさ、シミまで作ってたんだよ。浴衣にね」
「え?」
「クスッ…丁度、チンポで膨らんだ先っぽのとこ…シミの大きさは…そうだねぇ、直径4、5センチってとこかな?…フフフ…」
「……そ、そんな…」
「なんだい?あたしが嘘でも言ってると思ってのかい?なんなら坊やの浴衣、持ってこようか?」
「い、いえ…」
女将の言葉に嘘はないらしい。わたるは事実を知って愕然とした。
(そ、そんなことになってたのか…な、なんてことだ…そ、そんな恥ずかしいところを…お、女将さんに…)
この場から消えてなくなりたいと思ったわたるだった。一方、女将はさも満足げに薄ら笑いをしている。
「クスッ…やっと観念したようだね、坊や…ウフフ…だからさ、そのくらい坊やが興奮してたもんだから、あたしはてっきり坊やはシコシコと…って思ってたんだよ。けど、そうか…センズリ、かいてないんだ…大丈夫なのかい?坊や?」
「え?」
「あんまり溜めとくとさ、身体に悪いよ…フフッ…なんなら、あたしが手で出してあげてもいいんだよ…ウフフフフ…」
「え!」
女将の突飛な発言に、思わず声を上げてしまったわたるだった。女将の顔を見れば、どこか淫らに微笑んでいる。
(お、女将さんが…手で?…)
驚きと同時に、ふと淫らな期待をしてしまったわたるだった。これが童貞少年の悲しさだろう。けれど、女将は…。
「キャ〜ッハッハッハ…いやだぁ、なにホンキにしてんだよ、この坊やは…アッハッハッハッハ…そんなことしてあげるわけないだろう?…なんであたしがスケベ小僧のチンポなんか擦ってあげなきゃならないんだよぉ…キャハッハッハッハ…」
どうやらまたしてもわたるは女将にからかわれていたらしい。思わず期待してしまった自分も愚かだが、これはあまりにも酷い。わたるはキッと女将を睨みつけた。
「ひ、酷いよ!」
「はん。酷いのは坊やの方だって言っただろ?…ホントに解ってないねぇ、このスケベ小僧は…あ、そうだ」
「…え?…」
急に言葉を止めた女将を見て、わたるはまた不安な気持ちになった。何故なら女将がまたなにやらニヤニヤと含み笑いを始めたからだ。どこか意地悪な感じのする、それでいて淫らなあの微笑だ。
「坊やさぁ…フフ…昨日の約束覚えてるかい?…ウフフフフ…」
「え?…き、昨日の…やく…そく?」
「ほらぁ、言ったろ。坊やが夕食を食べ終わって部屋に戻る時…」
「部屋に…戻る…時?…え?…あ!」
わたるは夕べの女将の言葉を思い出した。驚きの表情で女将の顔に目をやれば、女将はさもおかしそうに微笑みながらわたるを見つめている。
「フフ…思い出したようだねぇ、坊や…ウフフフフ…そう、言ったよね、あたし…」
「あ、あの…」
「坊やが…フフフ…坊やがおもらしなんかしたら、お灸をすえるってさ…そう言ったよね?あたしはさ」
女将の微笑は、さらに一層淫らさが増したように思えた。少なくともわたるには。やがて女将のふっくらとした艶かしい唇がゆっくりと開かれ、少しトーンの低い女将の声が聞こえてきた。
「ぼうや、あがっといで」
「え?」
わたるは耳を疑った。何を言ったんだろう?不安げに女将を見詰めるわたる。そんなわたるに再び女将は催促の言葉をかける。
「お風呂からあがるんだよ」
「そ、そんな…こと…」
そんなことできるわけがない。自分は裸なのだ。それも文字通り一糸纏わぬ素っ裸なのだ。そのような姿を大人の異性の前に曝け出せる勇気など、無論この童貞少年には備わっていなかった。しかも一方のその大人の妖艶美人は湯具なるものを羽織っている。肩も太腿も露になるほど肌蹴られているとはいえ、大事なところ、肝心なところはしっかり隠されているのだ。
(そ、そんなこと出来るわけないじゃないか…いくらお風呂だからって…ぼ、僕だけ裸なんて…)
途方にくれてしまったわたるだった。言うことを聞かないわたるに業を煮やしたのか、女将は少しイライラした様子で催促の声をかけた。
「早くしなよ、坊や。早くあがっといで」
「で、でも…ぼ、僕…その…は、はだかだから」
「当たり前だろ。ここはお風呂なんだから」
「で、でも…」
「でもじゃないよ。約束だろ?坊や。あたしは坊やにお灸をすえるんだよ。解ってるよね」
「で、でもぉ…別に…別におもらししたわけじゃ…」
「あたしの言うことが聞けないのかい、坊や。しょうがないねぇ…それじゃあ、相談するしかないねぇ」
「え?…相談?…」
女将は、ついに完璧な王手をかけてきた。
「朝のこと…おうちのひとに連絡しようか?…おたくの坊や、こ〜んなことするスケベ小僧なんですけどってさ…フフ…さぁ、どうする?坊や」
わたるは絶句した。あのことをママに知られるなんてとんでもないことだ。
「そ、それは…お、お願い、女将さん…それは…や、やめて…止めてください」
「連絡されたくないのなら…とっととお風呂からあがっといでよ…ね?坊や…」
「…は…は…ぃ…」
有無を言わせない女将に力ない声で返事をするわたる。わたるは既に『蛇に睨まれた蛙』であった。全てを諦めた童貞の蛙は、腰から下を湯の中浸したままスゴスゴと妖艶な蛇の側に近づいていく。
「ほらほら…もたもたしないで」
「…は…ぃ…」
とうとう女将の足元にまで近づいたわたるだ。しかし、中々起ちあがることが出来ない。女性の前で裸を晒す。それも物心ついてからは母親にも見せたことが無い素っ裸の下半身を。風呂の中だというのに、恐怖にも似た感覚がわたるの全身を震えさせた。
「なんだよ、坊や。振るえてんのかい?はん、だらしないねぇ…それでも男かい?坊や」
「う…」
「裸見せるくらいでビクビクしてさ…股ぐらにちゃ〜んとチンポぶらさげてんのかね?…フフッ…え?坊や。どうなんだい?…ホントはチンポなんかついてないんじゃないの?」
「…つ…つい…ついてる…よぉ…」
「それなら坊や、男らしくビシッとお立ちなよ。間違っても、手で前を隠したりなんかするんじゃないよ…フフ…ちゃ〜んと手を身体の横につけてさ…『きをつけ!』って感じで立ちあがるんだよ。男らしくね…解ったね?坊や…ウフフフフフ…」
女将の執拗な催促に、わたるはつい意を決した。こうなったらやけくそだ。羞恥に全身を赤く染めながらも、ギュット眼瞑ると、わたるは勢い良く風呂の中で立ちあがった。
(ザッパッ〜ン)
水飛沫が勢い良く跳ね上がる。とうとうわたるは女将の目の前で自分の全裸を曝け出した。女将の言いつけ通りに身体の横につけた両手は、拳となってプルプルと振るえている。若干前屈み気味だが、それでもわたるはもっとも恥ずかしい部分を手で覆い隠したりはしなかった。眼を瞑り、ワナワナと全身を振るわせながらも『きをつけ』の姿勢を何とか保つわたる。童貞少年の精一杯のやせ我慢だった。
「……」
しばし沈黙が流れた。10秒くらい、それとも20秒くらいだったのか。静寂の中、全裸で湯船の中に立ち尽くしていたわたるだったが、眼を瞑っているとその静寂がやけに不気味に感じられるものだ。不安にかられ、わたるが薄っすらと目を開き掛けた時だった。
「キャッ〜ハッハッハッハッハッ〜キャハッ!キャハハハハハハ〜」
耳をつんざくような女将の甲高い笑い声が、檜一色の風呂場に鳴り響いたのだ。