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Senior Mania -landlady-

其の肆

「…ん…んん…ん?…」
翌日、わたるが目を覚ましたのは、既に陽も高い正午のことだった。
(い、いけない!寝坊しちゃった…しまった…昨日、中々眠れなかったから…)
わたるは昨晩、夕食の時に受けた屈辱が忘れられず、なかなか寝付くことが出来なかったのだ。確か午前四時頃まで起きていた気がする。
(寝るの遅かったから…こんな時間に起きるのも仕方ないか…あ、でも…女将さんは?…)
わたるは、チェックアウトの時間が朝の10時であることを思い出した。
(でも…女将さんが起しにこなかったってことは…まだ大丈夫なのかな?…)
寝乱れた浴衣を適当に整えながら、わたるは部屋の外に出てみた。するとどうしたことだろう。宿の中はまるで自分以外誰もいないのかと思わせるほどシンと静まり返っている。
(あれ…だれもいないの?…女将さん、どこかに出かけたのかな?…)
けれど寝ぼけ眼を手で擦りつつ、キシキシと廊下を軋ませながら宿の玄関までくれば、そこはまだ鍵がかかっており、誰も出入りした形跡が無い。玄関に靴が無いことを考えると、あの無礼なデブ・ハゲコンビは昨晩のうちに家に帰ったようだ。
(女将さん…まさか、まだ寝てるんじゃ…)
昨日の酔っ払いかたからすれば、それも十分ありえることだ。わたるは女将の部屋に行ってみる事にした。
(確か…一階の奥の部屋って言ってたっけ…)

(トントン…トントン…)
「女将さん?…女将さん?…」
わたるは、女将の部屋の襖を軽くノックしてみた。しかし、いくら呼びかけても女将の返事はない。襖に耳をつけてみても、部屋の中から物音一つ聞こえず、誰かがいるような気配は全く無い。
「女将さん?…女将さん?…いないんですか?…入りますよぉ…」
出来る限りそ〜っと静かに、わたるは襖を開けていった。別に悪意があるわけではないが、なんとなく後ろめたいような気がしたからだ。
「女将さん?…ん?…あれ?…女将さん?…」
女将の部屋は、畳十畳の純和風の部屋だった。襖とは反対の位置に外に面した窓があり、そこから暖かな日差しが差し込み、部屋全体を明るくしている。女将はその部屋の中央にいた。きっと着替えるのも億劫なほど酔っ払っていたのだろう。女将は昨日の着物姿のままだ。しかし、彼女は目を覚ましていた訳ではない。部屋の中央に、さも柔らかそうな布団が敷かれており、そこで女将はスヤスヤと眠っていたのだ。
「!!!…お、お…お…おか…おか…み…さん?…」
女将の姿を見たわたるは、ヘタヘタと腰を抜かしたようにその場に座り込んでしまっていた。何故なら、女将の寝姿があまりに刺激的だったからだ。
(お…お、おか…女将さん…女将さん…な、なんて格好を…)
女将は、わたるに背を向けて横向きになって眠っている。その彼女が、まるで抱き枕でも抱くように、掛け布団に両腕と両脚を絡ませていたのだ。掛け布団を両脚で挟みこんでいるため、着物の裾は当然のように大胆に肌蹴られている。わたるの目に飛び込んできたのは、そこから曝け出されてた雪の様に真っ白な、つきたての餅のようにムッチリとした肉付きのよい女将の右の太腿だった。
(…ゴクッ…)
和室に着物を着た年増女の寝乱れ姿。まるで浮世絵のような妖艶なその光景に、雑誌でしか女の肌を見たことが無い童貞少年が興味をそそられない訳が無い。
(お、女将…さん…女将さん…)
気がつくとわたるは、四つん這いで畳の上をそろそろと這いながら、女将のすぐ側まで近寄っていた。これは紛れも無く、無意識のうちの行為だ。童貞少年は、捲くれあがった裾から見える悩ましい太腿に、思わず吸い寄せられてしまったのだ。
(ス〜…ス〜…)
女将の静かな寝息が聞こえる。向こうを向いた女将の顔をそっと覗きこんでみれば、間違い無く女将は眠っているようだ。
(寝てる…お、女将さん、ぐっすりと眠ってる…)
わたるの胸が高鳴った。今この家には自分と女将の2人きり。その女将は、自分の眼下でスヤスヤと眠っている。ムッチリとした悩ましい太腿をあられもなく剥き出しにした姿で。童貞少年の心に邪まな気持ちが沸き起こったとしても、この状況では仕方の無いことだろう。
(…ゴクッ…い、いまなら…お、女将さんの…女将さんの…か、か、身体が…身体が覗けるかも…)
いけないとは思いつつも、わたるは自分の気持ちに逆らうことは出来なかった。曝け出された女将の片脚に、舐めるような視線を這わせてみる。それはとても30代後半とは思えない色艶だ。触ってみたいところだが、さすがにそれは出来ない。その代わりと言わんばかりに、さらにわたるはじっくりと視姦を続けていく。
(…う…うぅ…も、もう少し…)
わたるの視線が、着物の裾と白い太腿の狭間で止まった。膝上30センチ程に捲くれあがった着物の裾は、白く悩ましい太腿をかなり大胆に曝け出してくれてはいる。けれどわたるが覗きたいのは、無論そのもっと奥なのだ。
(うぅ…み、見たいよぉ…もっと…もっと奥のほうが…も、もう少し…もう少しだけ捲くれ上がってれば…)
わたるは唇を噛んだ。その時だ。
「ん、ん〜ん…」
女将が突然寝返りをうったのだ。
(ヒッ!)
思わず声を出しそうになった口を、わたるは慌てて両手で押さえた。
「ん…んん…ス〜…ス〜…」
再び女将の静かな寝息が聞こえてきた。どうやら女将が起きた気配は無いようだ。わたるは、ほっとため息をついた。
(ふぅ〜…び、ビックリしたぁ…お、脅かさないでよ…女将さん…ん?…あ!!!)
またしても、声を上げそうになったわたるだ。何故なら、寝返りを打ち、仰向けになった女将の姿が、わたるにとって今まで以上にショッキングなものになっていたからだ。
(お、女将…女将さん…な、なんて…)
寝乱れた女将の着物は、胸元さえもが大きく肌蹴られていた。そこから胸の谷間がくっきりと見て取れるのだ。着物姿のため昨日は気付かなかったが、この胸の谷間の深さから考えると女将は相当の巨乳の持ち主のようだ。それだけではない。仰向けになったため、先程まで掛け布団に隠れていたもう片方の太腿もその悩ましい姿を現わしていた。
「ゴクッ!」
部屋に鳴り響くほどの音を立て、わたるは唾を飲み込んだ。ほんの少しだけ左足を「く」の字に曲げ、仰向けになって寝そべる女将。わたるの視線が、その女将の胸と股間を慌しく行き来する。童貞少年は、匂いたつような女の色気にすっかり魅了されていた。
(ふ、太腿が…き、着物…あ、あんなに…あんなに捲くれ上がって…)
衝動を堪えることが出来ず、わたるはそっと女将の股間に顔を近づけていった。そして着物の奥を覗きこむようにしてみる。しかし、残念ながらその奥はまだ見ることが出来ない。肉感的な二つの太腿と着物の裾で形成された暗い闇が、わたるの視界を遮っている。
(はぁ…はぁ…はぁはぁはぁ…お、女将さんの…女将さんの…あ、あ、あそこ…)
秘密の狭間から、なんともいえない良い香りが漂ってくる。香水の匂いなのか、成熟した女性の体臭なのか、それはわたるには解りはしない。けれどその香りは、確実にわたるの興奮を高めさせていった。
(はぁ…はぁはぁはぁ…)
実はわたるは、先程からすっかりペニスを硬直させている。画面や写真ではない生の女体に、皮被りのペニスを限界まで勃起させているのだ。普段ならペニスの先に引きつるような痛みを感じるはずだ。けれどわたるは、その痛みさえ感じていなかった。いや、痛みどころか自分が勃起していることにすら気付いていなかった。それくらい今のわたるの興奮は激しいものだった。
(…よ、よし、やろう!…き、着物…お、女将さんの着物…ま、捲くっちゃおう!)
わたるはついに意を決した。
(だ、だ、大丈夫…大丈夫さ…お、女将さん、ぐっすり寝てるもの…そ、それに、昨日、僕のことあんなに馬鹿にしたんだし…そ、そうだよ…こ、これは昨日のお返しだ…)
まるで自分が裾を捲くるのは女将のせいだと言わんばかりだ。昨日の屈辱をはらす…そう自分に言い聞かせ、わたるはついに着物の裾に手を伸ばしていった。息を止め、ゆっくりとゆっくりと…。
(し、し、し、静かに……はぁはぁ…そ、そ〜っと…そ〜っと…はぁはぁはぁ…)
心臓の音が部屋中に鳴り響いているようだ。さし伸ばす手はワナワナと震えている。
(お、お、落ちつけ…はぁはぁ…お、落ち着け…はぁはぁはぁ…)
とうとうわたるは、震える指でそっと目的のものを摘んだ。そして、恐る恐る着物を捲り上げていく。1センチ…2センチ…指先が進むにつれ、徐々にその悩ましい全容を現わしていく女将の太腿。眩しいばかりの白い柔肉が、わたるの視界に広がっていく。
(はぁはぁはぁはぁ…も、もう少し…もう少しだ…)
女将の生脚は、もうすっかり露にされている。あとほんの数センチ捲り上げれば、きっと股間の奥さえも見ることが出来るに違いない。
(はぁはぁ…お、女将さん…ど、どんな、パ、パンティを…い、いや、まてよ…着物を着る時、下着は着けないって聞いたことがあるぞ…ゴクッ!…も、も、もしかしたら…お、女将さんも?…あ、あ、あ、あそこ…女将さんの…女将さんのあそこが見れるかも?!)
まだ見ぬ女性の性器に思いをはせる童貞少年。息は乱れ、胸の鼓動がさらに激しく高鳴っていく。その時だ。女将が2度目の寝返りを打ったのは。
「う…ううん…ん〜ん…」
(ビクッ!)
着物の裾を摘みあげた姿勢のまま、まるで石のように固まってしまったわたるだ。額から、冷や汗がダラダラと流れ落ちてくる。
(な、なんだよぉ…び、びっくりさせないでよ、女将さん…ど、どうせ起きてなんか…)
どうせ目を覚ましたわけじゃないだろう。わたるはそうたかをくくっていた。硬直した姿勢はそのままに、目線だけを上へ上へと移動させ、女将の寝顔を確認してみる。すると…。
(……ん?…え?…な、なに?…)
するとなんとしたことだろう。眠っていたはずの女将の目が、薄っすらと開いているではないか。
「う…う〜ん…ふ、ふわぁ〜…」
しかも女将は、寝ぼけ眼を擦りながら、のそのそと身体を起し始めたのだ。
「ヒッ…ヒィッ!」
あまりの驚きに、思わず短い悲鳴を上げ50センチほど後方に飛び退いたわたるだ。実はこの時、女将はまだ半分眠っているような状態だったのだが、このわたるの悲鳴がまずいことに女将の覚醒を助ける結果となってしまう。
「な、な、何?!…だ、誰かいるの?!」
女が一人で寝ている所に、他人の気配。女性ならば誰だって恐怖を感じるはずだ。わたるの悲鳴が聞こえた瞬間、女将は身体をビクッと振るわせると、掛け布団を自分の胸に引き寄せ、身体を隠すような仕草をした。
(ま、ま、ま、まずい、まずいよ…ど、ど、ど、どうしよう…)
恐怖を感じているのは女将だけではない。わたるにしても、生きた心地がしていなかった。ただ黙って俯くわたる。
「だ、誰?…ん?…え?…ぼ、坊や?…」
やがて女将は、その侵入者がわたるだということに気がついた。
「あれぇ?…な、な〜んだ、坊やじゃないの」
女将の表情が、安堵のそれになった。
「あぁ〜ビックリした。坊やったら…もう!あんまり驚かさないでよ」
「あ…そ、そ、その…ご、ご、ごめんな…さい…」
小さな声で謝ったものの、わたるはそれ以上言葉を続けることが出来なかった。
「で…どうしたの、坊や?…なんか用なのかい?」
「い、いえ…あの…」
「ん?なんだい、坊や?…どうかしたの?」
「あ、あの…その…」
女将の問いかけにも、わたるは満足に答えることが出来ない。暫くの間、沈黙が流れた。今にしてみれば、それはほんの1分ほどのことだったと思う。けれどその時のわたるには、それが1時間にも2時間にも感じられていた。
(ど、どうしよう…な、なにか話さなくちゃ…な、なにか…)
わたるがあれこれといい訳を考えている時だ。それまでじっと黙ってわたるを見つめていた女将が、いきなり大きな欠伸をした。
「なんだい…まったくどうしたんだよ、坊や…ふ、ふ、ふわぁぁぁぁ〜」
突然の物音に、思わず女将に視線を向けるわたる。するとわたるの目に飛び込んできたのは、両腕を上げて大きく伸びをしながら欠伸をしている、胡座をかいた女将の姿だった。
「!!!」
わたるの視線は、またしても女将の虜となった。何故なら、大きく伸びをしたために女将の胸元が先程よりもさらに大きく肌蹴られたからだ。いまややっとのことで乳首を隠している程度ではなかろうか。しかも女将は、寝乱れた着物姿のまま胡座をかいているのだ。残念ながら股間の中心には掛け布団が掛けられており、喉から手が出るほど見たいと思っていた女将の股間の奥は覗くことが出来ない。しかし、2本のふくよかな太腿はわたるの視線を誘うようにあられもなくその姿を見せている。あまりに妖艶な女将の肢体に言葉もでないわたるだった。
「………」
「どうしたのさ?、坊や?…ポケッとしちゃって…ん?一体、どこ見てるんだい?」
そう言いながら女将は、わたるの視線のありかを探るように、自分の身体に視線を落とした。
「え?…い、いや…別に…」
どぎまぎとするわたる。この時何故かわたるには、女将が微笑んでいるように感じられた。
「どうしたんだい?可笑しな坊やだねぇ…それにこんな朝早くから…あたしに何か用があるんだろ?」
もう正午だと言うのに、女将はどうやらまだ朝だと思っているようだ。わたるは、この女将の一言から都合の良いいい訳を見つけ出した。
「あ、あの…女将さん…あ、朝早くなんか無い…も、もう…お昼ですよ…お、女将さん…な、中々起きてこないから…そ、そう…女将さんが起きてこないから…ぼ、僕、どうしたのかと思って…」
「ええ!本当かい?…あら、いやだ、すっかり寝坊しちゃったんだね、あたし…ごめん、ごめん、坊やお腹すいたろ」
「い、いえ…そ、それより…僕、もう行かなくちゃ…じゅ、10時でしたよね?チェックアウト…」
「いいよそんなこと。時間なんて気にしなくてさ。悪いのはあたしの方だし…あ、それとも坊や、帰りの電車の時間とか決まってるのかい?」
「い、いえ、特に…切符、買ってないし…」
「じゃあ、まだいいよね?すぐに食事の仕度するからさ。少し待っててよ」
「え?…う、うん…」
「ほら、坊やは食事が出来るまで、顔でも洗っておいで」
「は、はい…そ、それじゃあ…」
どうやらこの場をしのぐことができたらしい。ホッと胸を撫で下ろし、わたるはそそくさと女将の部屋を出て行った。
「ふぅ…ホント…ビックリさせるよねぇ…」
逃げるように部屋を出ていったわたるの後姿を見つめながら、女将は溜息混じりにそう呟いた。口元に意味ありげな微笑みを浮かばせながら…。