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Seductive Madam(z) -rush-

其の伍

「……ひっ、ひっぃ〜!!」
先に口を開いたのはフリチン少年の方だった。
とはいえそれは、息を吸い込むような、極々小さな悲鳴だったが。
「あ、あ、あの…す、す、す、澄江さ…ん…あ、あ、あ、の…こっ、こ、こ、これは…そ、その…ち、ち、ち、違う…ち、違うんです!」
気の毒なほど慌てふためく少年だ。
それはそうだろう。
パンティを覗いていることを気付かれやしないかと、ふと澄江の表情をうかがったら、その澄江とバッチリと目が合ってしまったのだから。
自分の『悪さ』は間違いなく澄江に気付かれた、そう思ってしまったのだから。

けれどこの時、当の澄江もかなり気が動転していた。
精通は迎えているとはいえ、澄江から見ればまだまだあどけなさの残るほんのお子様程度の少年だ。
そんな無垢な少年の前で、あられもなく股間を開き、驚く少年の様子を口元に笑みを浮かべながら見つめいてる。
誰の目にも、澄江がわざと少年にパンティを見せ付けていることは明白だった。
きっとこの少年でさえ、少し冷静になればその事実に気付くだろう。
澄江は焦った。
それを許してはならない。絶対に少年に気付かれてはいけない。
何故なら、この少年との秘密の行為は、澄江にとって聞き分けの無い少年を納得させるための『仕方のない』手段でなければならなかったから。
二度と少年にパンティ泥棒などさせないための『仕方のない』奉仕でなければならなかったから。
澄江は、少年との秘密の行為を実は澄江自身も楽しんでいることを、この少年に知られたくはなかったのだ。
自ら股間を開きパンティを見せ付けるようなそんなふしだらな女だと、この少年に思われたくは無かったのだ。
だから…
「きゃあっ!どっ、どこを見てるの?!僕っ!!」
いかにも少年の視線にたった今気付いたかのように、少々大袈裟な仕草でスカートの裾を両手で押さえながら、芝居がかった悲鳴を上げた澄江だった。

「ど、ど、どっ、どこって…そっ、そ、その…い、いえ、ぼ、僕は…そ、その…ぼ、僕は、ど、どこも…」
可愛そうなのは、少年の方だ。
たとえ澄江のその慌てた様子や悲鳴がただの猿芝居だったにせよ、憧れの澄江のパンティを覗いていることを澄江本人に知られてしまうなど、それは少年にとって死刑判決のようなものだったから。
ただただしどろもどろになりながら、何か言い訳をと必死になって思考を巡らせる少年。
そんな少年の表情を、わざとらしく両手で股間の裾を抑えたまま、澄江が恨みがましい目で覗き込む。
すると少年はその視線に居た堪れなくなり、言葉を続けることも出来ずただ黙って俯いてしまう。
二人の間の空気が、なにやらピンッと張り詰めたものに変わっていく…………と思っているのは、少年の方だけだった。

(ご、ごめんね、僕、悪者にしちゃって。あぁ、これじゃあさっきの電話の時と同じ。おばさんが苛めているみたいじゃない…けど…けど、おばさん、こうするしかなかったの。ごめんね、僕…)
澄江は、良心の呵責に苛まれていた。
勿論それは自業自得のことであり、それすら理解しているからこそ、さらに良心が痛むのだ。
叱られた子犬のようにショボンと俯く少年を見る。
まるで寒さに凍えているかのように、肩の辺りや膝の上に握った拳がプルプルと震えている。
あの泣き虫の少年のことだ。
これ以上責めるような目で見続ければ、またワンワンと幼稚園児のように泣き始めてしまうかもしれない。
それは澄江としても本意ではなかった。
今となってはこの少年も、澄江がわざとパンティを見せ付けていたなどと思うことも無いだろう。
澄江の演技は既に成功しているのだ。
ならば…ならば、少年を慰めてあげなければならない。救ってあげなければならない。
パンティを覗かせたのは自分だ。
そしてその状況を楽しんだのは、憧れの澄江のパンティを覗くことが出来た少年だけではない。
少年の初心な視線に、股間をウズウズと疼かせポワッと火照らせてしまうほど、澄江自身だって楽しんだのだ。
出来ることならば、そのある種背徳的な行為をもっともっと続けたいと思ってしまうほどに、澄江だって我を忘れて楽しんだのだ。
詩織のことは笑えない、首を竦めた澄江だった。
(ごめんね、詩織…まさか坊やにパンティを見せるのがこんなに刺激的だったなんて…ちょっと癖になっちゃうのも仕方が……あ)
そしてその時、澄江は妙案を思いつく。
まるで少年のオナニーを『仕方なく』手伝うことにしたあの時のように。
それは、澄江のパンティを覗きみたい少年と、それによって快感を覚える澄江の両方を満足させるだけではなく、再び『仕方のない』理由を澄江に与えることの出来る一石三鳥のまさに妙案だった。

「……ねぇ、僕?…」
静かな、とても静かな声で澄江は少年に問いかけた。
少年の行為に腹を立てた怒り口調でもない、さりとて少年の行為を許そうという優しい口調でもない。
それはある意味、冷たささえ感じる無機質な、無感情な声だった。
その声にハッと顔を上げる少年。
「…ぁ……な、なん…です…か?……?……す、澄江…さん?…」
そこに見えた澄江の表情に、少しばかり少年は気後れしてしまう。
何故なら、澄江がこれまで見たことの無いようなとても真面目な、真剣な表情をしていたから。
いや、自分はこの表情の澄江を一度見たことがあるような気がする。
それはいつのことだったろうか?
その答えを、次の澄江の言葉が少年に思い出させることになる。
「………僕は、やっぱり…まだ興味があるの?」
「…ぇ?……な、なんです…か?…」
「やっぱり僕は…まだ、興味があるのかしら?おばさんの…………パンティに」
「…ぅ…ぁ…」
少年は思い出した。
やはり自分は、この雰囲気を纏った澄江と話をしたことがある。
そうだ、あれは確か…自分の『悪さ』を…パンティ泥棒を澄江に見つかってしまった時のことだ。
この澄江は、あの時の…『秘密の共有』を提案したあの時の澄江にそっくりなんだ。
それを思い出し、思わずプルッと身震いをしてしまう少年だった。

そして澄江は、少年が感じ取ったように、まさに今、更なる『秘密の共有』を提案しようとしていた。
落ち着きを取り戻した澄江の態度に、若干戸惑いの色を隠せない少年。
その少年に向かって澄江は、今度は努めて優しい口調で問いかける。
「ねぇ、僕?…おばさんの質問に答えて頂戴。僕は…やっぱり、おばさんのパンティが気になるのかしら?」
「そ、それは…その…」
「どうなの?おばさんのパンティ…そんなに見たいの?」
「…………」
問いかける澄江の視線から逃れるように、少年は再び顔を赤らめながら俯いてしまう。
無理も無い。
この美貌の人妻にパンティを見たいのかなどと聞かれたなら、誰だって答えに詰まるだろう。
(もう、僕ったら恥しがっちゃって。正直に答えればいいのに…どうせ、見たいに決まってるくせに…はぁ…まぁ、しょうがない、か。スケベな割りには気が小さいものね、僕ちゃんは)
そんな少年の態度に、やれやれと小さな溜息を溢した澄江だ。
けれど、澄江はどうしても少年の口からその答えを引き出したかった。
それこそが、澄江の妙案の第一ステップなのだから。
改めて目の前の少年に視線を落とす。
相変わらず俯いたまま身体をプルプルと小刻みに振るわせる少年は、まるで怯えたウサギのようだ。
今この少年から言葉を引き出すのは、少々難しいことかもしれない。
(小心者なのは分ってたつもりだけど…やれやれ、おちんちんも小さいけど、随分と気も小さいのねぇ、僕…仕方ないなぁ、あんまり苛めたくないんだけど…)
澄江の眉が若干吊り上がり、少しばかり険しい表情になる。
無論、それが澄江の演技であるなどと、少年は気がつく由も無かった。

「僕?…おばさん質問してるんだけどな。どうなの?僕は、まだおばさんのパンティに興味があるの?」
「…そ、それは…その…」
澄江の口調が若干強くなったことを敏感に感じ取った少年は、言葉に詰まりながらもなんとか返事をする。
けれど澄江の表情は見ることは出来ない。
股間を露にした恥しい姿のまま、ただ俯いてモジモジと身体を震わせているだけだ。
その光景は、あたかもオネショでもした幼児が母親に叱られているかのような、そんな光景だった。
「それは?何なの、僕?質問に答えて頂戴。やっぱり僕はまだ、おばさんのパンティが気になって気になって仕方が無いのかしら?おばさんのパンティを…こっそりお家に持って行っちゃた時みたいに」
「!!!…そ、そ、そんなこと…そ、そんなこと、ないです…ぼ、僕は、もう…そ、そんなことは…し、し、しないです。し、してないです!」
かつての悪さを取り沙汰された少年は、必死になって弁解する。
事実、もうそんな『悪さ』は、絶対にしてはいない。
それだけは、澄江に信じてもらいたい。
絶対に、澄江に嫌われたくない。
その一心で、つい意地悪な澄江の質問に嘘をついてしまう少年だった。
「そんなことないって…もう僕は、おばさんのパンティには興味が無いってこと?」
「は、はい…ぼ、僕は、もう…そ、そ、そんなこと…そんなこと…ないです。お、思ってないです!」
「嘘。だって、さっきおばさんのパンティ、こっそり覗いてたじゃない」
「しっ、し、し、してないです。ぼ、ぼ、僕は…そ、そんな、ヤ、ヤ、ヤらしいこと、してないです。しないですっ!」
「……………………」
しばし沈黙する澄江。
少年は、次の澄江の言葉を、藁をも掴む心境で待っている。
どうか信じてください。どうか僕のことを嫌わないでください。
そう表情で訴えながら。
けれど…少年の嘘は、意図も簡単に澄江に看破されてしまうのだ。

「やっぱり嘘ね、僕。僕はやっぱり、おばさんのパンティをこっそりと覗いていたわ」
勿論、それは事実。
少年の様子をずっと見ていた澄江には、少年が嘘をついていることなど最初から分っている。
けれど、澄江がわざとパンティを晒し少年の反応をうかがっていたなどと思いもよらない少年にしてみれば、その澄江の言葉は理不尽なそれにしか聞こえない。
「な、なんで…し、してないよぉ!ぼ、ぼ、僕は、す、澄江さんの、パ、パ、パンティなんか覗いてないよぉ!」
だから澄江に抗議する。
ウルウルと目を潤ませながら、必死になって自分の潔白を主張する。
「の、覗いてない。ぼ、僕は、パンティなんか覗いてない。し、信じて、信じてください、澄江さん!」
「……………………」
澄江は、そんな少年に憐れむような視線を向けると、努めて冷静な口調でついに少年に引導を渡すのだった。
「僕…」
「ぁ……は、はぃ…」
「それじゃあ、何で…」
「え?…な、何…で?…」
「それじゃあ、何で…僕はおちんちんを膨らませているの?」
「え?…えぇ?…あぁっ!!」
澄江の言葉にハッと自分の股間を覗き見る少年。
そこには、いまだ射精の名残をとどめた包茎が、ピンッと真上を向いてそのささやかな存在を精一杯主張していた。

「こ、これは…これは…」
実際、少年は、自分の股間の変化にまったく気付いていなかった。
澄江の太腿とそして陰毛を透かしたパンティが、あまりに刺激的で、あまりに悩殺的で、ペニスがすっかり固くなっていることなど少年に気付かせもしなかったのだ。
取り乱したため正座が乱れ、所謂女の子座りの姿勢で今更ながら丸出しの股間を両手で覆い隠す少年。
そんな無様な姿の少年に、澄江は容赦なく尋問する。
「さっき射精して、小さくなってたでしょ?坊やのおちんちんは。一杯、一杯射精して、ショボ〜ンて萎んでたでしょ?」
「…は…はぃ…」
「それなのに…何で、今、またそんなにピンピンになっているの?」
「ぅ…うぅ…そ、それは…そ、それ…は…ぅぅぅ…」
「おばさんの足を拭きながら…何かエッチなことでも考えていたの?」
「…ぃ、いえ…そ、そういう…わけじゃ…」
「じゃあ、どうしてなの?…エッチなことを考えたり、見たりしないと、それってピンピンにならないでしょう?」
「…ぅ…うぅ…」
これが例えば将棋なら、少年が詰むのはもはや時間の問題だった。
だから、せめて澄江は少年に自ら投了することを望む。
自分を大人だと主張するこの幼い少年に、せめて潔く、男らしく、自分の『悪さ』を白状することを望む。
「僕?…もう一度聞くわね?…僕は、おばさんのパンティを覗いていたのね?おばさんのパンティを覗いて、おちんちんを膨らませてしまったのね?」
「………………は…は、は…ぃ…」
蚊の鳴くような声で、漸くパンティ覗きの罪を認めた少年だった。

「そう…やっぱり、ね…」
「ごっ、ごめんなさい、ごめんなさい。み、見るつもりは…の、覗くつもりは、無かったんです。ご、ごめんなさい、ごめんなさい。ゆ、許してください、澄江さん!」
罪を認めるや否や、少年は深々と額を床に擦り付けるようにして土下座をし始めた。
そして、堰を切ったように、捲くし立てるように謝罪の言葉を連発する。
けれど、そんな少年の態度は既に一度見たことがある澄江だ。
特に驚きもせず、慌てることなく、あくまでも冷静な態度で少年に語りかけた。
「僕…少し、落ち着きなさい」
「……で、でも、でもでもでも…」
「言ったでしょう?おばさん、僕がパンティを覗いていたことなんて最初から分ってたんだから。今更、驚いたりしないわ。それに、今のおばさん、怒っているように見える?」
「え?…う、ううん…み、見えない…けど…」
少年の目に映るのは、いつもと変わらない優しい澄江だった。
もっとも、澄江が少年の『悪さ』を怒ることなど出来る道理も無いのだが。
「最初は…僕が、おばさんのパンティを覗いているって分った時は…ごめんなさいね、僕…おばさんも驚いちゃって少し大きな声を出してしまったけど…大丈夫。おばさん、別に怒ってなんかいないわよ」
「ホ、ホント?…です…か?…」
「えぇ、ホントよ…おばさんは、僕には嘘をつかないこと…知ってるでしょう?」
優しい笑みを浮かべながらそう伝える澄江に、少年の表情がパッと明るくなる。
現金なものだと澄江の微笑みに若干苦笑いが混じるが、その微笑みは一瞬のもの。
次の瞬間にはその微笑を一切消し、澄江は、何処と無く寂しげな表情を浮かべてポツンと呟いた。
「だけど、ね…おばさん、怒ってはいないんだけど…」
「え?だ、だけど?……な、な、なんです…か?…」
「怒ってはいないけど……ただね…う〜ん…」
「……………………」
急に暗い表情になった澄江に、少年は動揺を隠せない。
澄江は、自分の言葉にコロコロと表情を変える少年がとても滑稽に思え、つい噴出しそうになるが今は真面目な表情を崩すわけにはいかない。
何しろ、これからが本題なのだから。
これから、新たな『秘密の共有』を提案していくのだから。
「あのね…僕、気を悪くしないで聞いて欲しいんだけど…」
「は、はい…」
「結局、おばさんが僕にしてあげてたことって無駄だったのかな?って、思ってね」
「え?」
澄江の言葉の意味が良く分らなかったのか、少年の表情が訝しげなものに変わる。
それを見た澄江は、ふぅと小さな溜息を付く。
「僕?…おばさんが、僕にしてあげてたこと…おちんちんを弄ってあげること…そんなエッチなことをしてあげてたのは何故だっけ?理由、覚えてる?」
「え?…あ、そ、それは…」
「ねぇ、僕?おばさんはどうして坊やのおちんちんを可愛がってあげてたのかしら?」
「そ、それは…ぼ、僕が…お、おばさんの言うことを…聞こうとし、しなかった…から…」
流石にあの時のことは、この少年もハッキリと覚えているのだろう。
その時の自分を思い出したのか、少々顔を赤く染め、恥しがるそぶりを見せながら答えた少年だ。
「そう、僕が聞き分けの無いことばかり言うから…おばさんは『仕方なく』坊やのおちんちんを可愛がってあげることにしたの…」
「…う、うん…」
「そうしてあげれば、きっと坊やがもう『悪さ』をしなくなると思ったから…」
「…ぅ…ん…」
「坊やが、二度とパンティ泥棒なんてしないように、おばさん、恥しいのを我慢して『仕方なく』そんなエッチなことをしてあげてたの」
「…は、はい……ご、ごめんな…さい…」
別に少年を責めているわけではないのだが、余りに恩着せがましい澄江の言葉に、少年は思わず謝罪の言葉を口にする。
「だけど…だけど、やっぱり僕は、悪いことををしちゃうのね…」
「あ…そ、その…」
「ねぇ、坊や?女の人のスカートの中を覗くなんて…いけないことなのよ?分ってる?」
「そ、それは…は、はぃ…わ、わかって…ます…」
「本当に分ってる?…坊やはちょっとした悪戯のつもりかもしれないけど…女の人のパンティを覗くなんて、そんなの痴漢と同じなのよ?」
「え?ち、痴漢?…って、そ、そんな…」
少年でも知っている痴漢という具体的な猥褻行為の呼称。
それは少年に罪の意識を植え付けるには、十分な効果があったようだ。
「そ、そんな…ぼ、僕、そんな…ち、痴漢…痴漢なんて、そんな…ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…ぼ、僕、そんなつもりじゃ、ごめんなさい、澄江さん!」
「落ち着きなさい、坊や。おばさんは怒ってるわけじゃないって言ったでしょ?…ただ…ただ、坊やがそんな痴漢行為をするなんて、ね。おばさん、ちょっと悲しくて…」
「ご、ごめんなさい…ヒ、ヒック…ごめんなさい…す、澄江さん…」
少年の言葉に、泣き声が混じり始める。
そろそろ頃合のようだ。
「ねぇ、坊や?…坊やは、いつもこんなことしてるの?」
「え?そ、そんなしてないです。してないですよぉ…」
「女の人のパンティを覗いたのは…これが初めてなの?」
「は、はい…学校の友達とか…か、風が吹いて…た、たまに見えちゃったことはあったけど…じ、自分から、覗こうとしたのは…こ、これが初めて…です…」
「ふ〜ん、そう…じゃあ、ちょっと質問を変えるけど…そもそも坊やは、女の人のパンティを覗いてみたいの?」
「え?そ、それは…」
「ん?どうなの?女の人のパンティ、見たいの?見たくないの?…おばさん、正直に答えて欲しいな」
「あ、あの…ぼ、僕は…」
「うん、僕は?」
「そ、その…ほ、本当に、パ、パンティを覗いたのは…こ、これが、初めて、で…ふ、普段は、こ、こんなこと…し、してない…」
「うん。おばさん、坊やのその言葉は信じるわよ。でも、今聞きたいのは、そういうことじゃないの」
「…あ、ぅ…」
「パンティを覗くなんてとってもいけないこと。だから普段はしてないのよね?…けど、今、聞きたいのは、坊やがそもそも女の人のパンティを見たいのか、見たくないのか、なの」
「…ぅ…ぅぅ…」
答えの分りきった不躾な質問をする澄江。
けれど少年にしてみれば、そう素直に本音で答えられるような内容ではない。
嘘を言えば怒られそうで、けれど本音を答えたら嫌われそうで、少年は中々澄江の質問に答えることが出来ないようだ。
澄江には、そんな少年の葛藤が手に取るように分った。
だから澄江は、助け舟を出す。
恥ずかしがり家の少年が、素直な気持ちで答えやすいように。

「あのね…おばさん、本当に心配なの。僕が、いつかどこかで痴漢なんかして、警察に捕まっちゃうんじゃないかって…」
「そ、そんなこと…し、しないよぉ…」
「でも、心配なの。だって、現にさっき、坊やはおばさんのパンティを覗いてたでしょう?おばさんだったからいいようなものの…誰か知らない女の人だったら、もうとっくに坊やは警察に連絡されてるわ」
「そ、そんな…」
「そもそも最初のパンティ泥棒だって、おばさんのじゃ無かったら…とっくに坊やは逮捕されてるのよ?だから、おばさん心配なの」
「…あぅ…ぅ…ぅぅ…」
「ね?だから…おばさん、教えて欲しいの。坊やが、女性のパンティを見たいと思っているのかどうかを…………その答えによっては…」
「え?…」
澄江の言葉のトーンが少し変わった気がした。
何か含みがあるような澄江の言葉に、少年の心がざわめき始める。
「こ、こ、答えによっては…って?…」
「ん…答えによっては…………おばさんが、またお手伝いしてあげなきゃいけないのかな?…って」
「お、お、お、お、お手伝…ぃ?」
澄江のお手伝い…これの意味することは?
少年の心のざわめきは、徐々にときめきへと変わっていく。
「そう、お手伝い。坊やがどこかよそで『悪さ』なんかしないように…また、おばさんがお手伝いしてあげなきゃいけないのかなって…気は進まないけど、『仕方なく』ね…」
「ゴクリッ」
澄江に聞こえる程の音を立てながら、少年は唾を飲み込んだ。
自分の心に正直になり、素直に質問に答えさえすれば、また憧れの澄江がお手伝いをしてくれる。
その内容はまだ分らないが、パンティ泥棒の際のお手伝いを思えば、それが自分にとって魅力的でないはずがない。
自分のエッチな本音さえ伝えれば…。
すでに少年には、本音で答えることしか選択肢はなくなっていた。
そしてその少年の耳に澄江の声が再び届く。
あたかもポンと背中を押してあげるかのように。
「さぁ、坊や、もう一度質問するわね。坊やは、いつもいつも女性のパンティを見たいって思っているのかしら?」
「そ、そんな…い、いつも…だなんて…い、いぇ、その…そ、それは…その…」
そんなにいつも思っているわけじゃない。
そう言い返したかったが、今、少年にとって一番重要なのはそんなちっぽけな自分のプライドを守ることじゃない。
一刻も早く澄江の口からお手伝いの内容を聞き出したい。
その想いが、少年に本音を曝け出させた。
「あ、あの…ぼ、僕…僕は…その…ほ、本当のことを言うと…」
「うん、おばさん、坊やに本当の気持ちを教えて欲しいの」
「は、はぃ…ぼ、僕は…お、お、女の人の…パ、パ…パンティを…その…」
「坊やは、女の人のパンティを?」
「…………ぃ…です…」
「え?なんて言ったの、坊や?」
「…っ………み、み、見た…ぃ…ですっ! ぼぼっ、僕は、お、女の人の、パ、パ、パ、パンティを…みっ、見たいですぅ!」
俯き、目をギュッと閉じながら、少年はついに嘘偽りの無い気持ちを澄江に伝えたのだった。

「……………………」
澄江は、しばらくの間黙っていた。
とはいえ、それはほんの数十秒のことだったが、目を閉じたままジッと澄江の言葉を待つ少年にとってその時間はとても長く感じられたのだろうか。
結局、沈黙に耐え切れず、こっそり覗き込むようにして澄江の表情をうかがってきた少年だった。
そして、それを待っていたのかのように澄江は、いかにも呆れたといわんばかりに少々大袈裟な感じのする深い深い溜息を息をついた。
「……………………はぁ〜……」
無論、それは澄江の演技。
『仕方なく』新たな提案をしなければならなくなったことを印象付けるための、少々ずるい大人の演技だった。
溜息の後、一言澄江は呟く。
「坊や?やっぱり、キミは…」
「…は、はぃ…ぼ、僕は?…」
「やっぱり、坊やは……スケベな子ね」
「あ…ぅ…そ、それは…」
恥ずかしげも無く女性のパンティを見たいなどと言ってしまった今となっては、もはや澄江に言い返す言葉などあるわけも無い。
あまりに直接的な澄江の言葉に、真っ赤になって俯く少年。
そんな少年を見ながら、澄江は、首を竦めて今度はやれやれと軽い溜息をつく。
「ふぅ…いいのよ、坊や。何度も言ったでしょう?おばさんは怒っているわけじゃないって。それに…」
「そ、それに?…」
「坊やがスケベなのは、パンティ泥棒の時から分っていることでしょう?」
「ぅ…ぅぅ…ご、ごめんな…さぃ…」
「まぁ…オナニー覚えたての坊やが、いつもいつもエッチなことばかり考えてるのは、おばさんも分っていたつもりだけど…それでも…坊やは、ちょっとスケベ過ぎるかも、ね?」
「…ぁぅ…ぅぅ…」
少年にしてみれば、まさに穴があったら入りたいといった心境だろう。
女の子座りで股間を両手で覆いつつ小さな身体をさらに小さく縮こまらせて真っ赤になって俯くその姿は、滑稽なほどに無様で哀れだった。
けれど、そんな少年の反応も澄江の描いた筋書き通りだ。
(ごめんね、坊や。恥ずかしい思いををさせて。苛めちゃってごめんね…けれど、大丈夫。そんな気の毒な坊やのために…おばさんがイイことをしてあげるから…そう、坊やのために…『仕方なく』ね)
乱れたワンピースの裾をサッと直しながら、姿勢を正す澄江。
以前の…パンティ泥棒の時もそうだったが、秘密のお手伝いの話をする時は、さすがに大人の女である澄江でも少々緊張してしまう。
いや、大人の女だからこそか。
これからする話は、大人ならば誰だって眉をひそめてしまうような内容なのだから。
「ん…コホン…」
そして澄江は、意を決したように軽く咳払いをすると、目の前で縮こまる少年を見据えながらいよいよ話を切り出した。
「でも、仕方ないか…」
「え?…」
「今更そんなこと言っても…坊やのスケベが直るわけじゃ無し…坊やがいつもエッチなことばかり考えてしまうのも、今更どうしようもないことだもの、ね?…」
「そ、そんな、こ……」
そんなこと無いと言い掛けて、少年は口をつぐんだ。
友達と比べても自分がとりわけエッチな男の子だなどと思ってはいなが、澄江の身になって考えれば自分はそう思われても仕方の無いことをしてきたのだから。
そんな少年の思考もお見通しなのか、澄江の口元にクスリと軽い笑みが浮かぶ。
「クスッ…………でも、ね、坊や?」
「え?は、はぃ…でも?」
「さっきも言ったけど…おばさん、心配なの。そんなスケベな坊やが、どこかよそで痴漢みたいなことするんじゃないかって…パンティ見たさに誰か知らない女性のスカートの中を覗いたりしないかって……だから…」
「?…だ、だか…ら?…ゴクッ」
いよいよ待ちに待ったお手伝いの内容が澄江の口から話される。
それを感じ取った少年が固唾を呑む。
澄江にしても、いよいよ真の本題だ。
普段少年の前ではいかにも大人の女性らしい落ち着いた態度を崩したりはしないが、珍しく緊張に声を震わせながら囁くように呟いた澄江だった。
「ん……だ、だから、あのね?…坊や…が、我慢できないかしら?…お、おばさんので…我慢…できないかしら?…」
「へ?」
一瞬、なんのことか分らず、間抜けの声をあげる少年。
意を決して伝えたのにと、その少年の態度をほんの少し恨めしく思いながら、澄江は自分の言葉に補足を加えた。
「だ、だから…お、おばさんが、坊やに…スカートの中を…パ、パンティを見せてあげる…そ、そうすれば、坊やは、よそで『悪さ』したりしないでくれるかなって…ね?」
「…?…??……え?…えぇっ!?」
フリチン少年の驚きの声が部屋中に響き渡った。
それを窘めるように、慌てて口の前で人差し指を立てた澄江だ。
「シッー!いくらなんでも声が大きすぎるわ、坊や。少し、落ち着き無なさい」
「ぁ…ご、ご、ごめん…なさぃ…で、で、でも、い、今の…今のって…そ、そ、その…ほ、ほ、ほんと…に?…」
激しくどもりながら、澄江に言葉の真意を訊ねる少年
その慌てた態度が、徐々に澄江の緊張をほぐし、普段の大人の女性の態度を取り戻させた。
少年はキラキラと目を輝かせて澄江の返事を待っている。
(あらあら…坊やったら。そんなに期待されたら、今更、冗談では済ませられないわね。ふぅ…やっぱり…『仕方ない』のよね…)
澄江が満足する条件はすっかり整ったようだった。
「…えぇ、本当よ、坊や。坊やがそんなに女性のパンティを見たいのなら…そんなエッチなこと思ってるなら…『仕方ない』から、おばさんが見せてあげる」
「!!!…ゴクッ!」
「いつもいつも女性のパンティのことばかり考えてて、うっかりよそで知らない女の人のスカートの中を覗いたりしないように、おばさんがパンティを見せてあげる」
「す、す、澄江…澄江さんの…パ、パ、パンティ…を?」
「えぇ、おばさんの…パンティよ。あ、もっとも…坊やが、おばさんのパンティなんかで満足してくれるなら、だけど…」
「そっ、そ、そ、そ、そんなっ!も、も、も、勿論ですぅっ!じゅ、十分、じゅ、じゅ、十分、すっ、過ぎますぅっ!」
「クスッ…や〜ね、坊やったら、そんなに喜んで。こんなおばさんのパンティなんかで…ふふ…スケベな坊やは、女の人のパンティなら誰のでも嬉しいのね」
「ち、ちっ、違います、違いますっ!そっ、そんなことないですっ!ぼっ、僕は、す、す、澄江さんの…澄江さんのパ、パ、パンティだから、僕は……………け、けど…」
「ふふふ…ん?けど?…けど、なぁに、坊や?」
「けど…ホ、ホントに?…見せてくれる…の?…ス、スカートの中…澄江さんのパパッ、パ、パンティを?…け、け、けど、僕が覗いて…す、澄江さん、そ、その…後で、怒ったりとか…」
振って湧いたような幸運。
話があまりに上手すぎて、今ひとつ素直に信じられない様子の少年だ。
「くすっ…大丈夫よ。坊やがどんなに一所懸命おばさんのパンティを覗いても…おばさん、怒ったりしないわよ」
少年を安心させるようにそう呟く澄江の顔には、いつの間にやらいつもの優しい微笑が戻っていた。