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Scanty Master -seaside memory-

其の玖

僕がまなみさんの家に帰宅したのは、日も暮れかけて、海が鮮やかに紅く染まった頃だった。何故そんな時間になってしまったかと言うと、なんだか家に一人でいるような気になれなかったから。みゆきさんがいなくなって淋しかったし、それに何よりも別れ際のキスで頭が混乱してたし…。じっとしていたら気が変になりそうだったんだ。とは言っても、別に何かしてたわけじゃないんだけど…。
(あ〜ぁ、何やってんだろ?僕…折角、まなみさんの家に来たのに、一人でぶらぶらしてるだけなんて…。海にでも行けば良かったな…)
切なさに、すっかり気を落としていた僕だった。でも入口のドアを開けた瞬間、そんな重苦しい気持ちが、嘘のように癒されていったんだ。
(あ!まなみさんが帰ってる!)
見覚えのあるパンプスがそこにあった。間違い無くまなみさんのものだ。白状するけど、僕、この時はホントに嬉しかった。嬉しいって言うよりは、ホッとしたって方が正しいかもしれない。迷子の子供が母親に逢えた時のような、そんな感じだ。
「ま、まなみさん!お、お帰りなさい!」
まなみさんは、リビングのソファに腰掛けていた。その姿を見つけた僕は、嬉しくて自然と大声を出してたんだ。
「あら、わたる?…お帰り、遅かったのね」
(あぁ…まなみさん…やっぱり、きれいだぁ…)
1日ぶりに見るまなみさんは、やっぱり素敵な大人の女性だった。涼しげな瞳、濡れたような唇。さっきまでの切ない思いは何処に行ったのか、暫くの間まなみさんに見惚れてしまった僕だ。
(そう言えば…みゆきさんが、僕はまなみさんのことが好きだって…そうかもしれないな…もしかしたら僕は、まなみさんを一人の女性として好きなのかもしれないな…)
昼間のみゆきさんの言葉を思い出しながら、僕はそんなことを思った。
「何よ?私の顔に何かついてる?」
「い、いや…な、何でも無いよ…ま、まなみさん、もう帰ってきてたんだ…」
「そう…2時間ぐらい前かしら?…わたるは何処に行ってたの?」
「ぼ、僕は、みゆきさんの見送りに…」
「そう…にしては、遅いわね。子供が遅くまで外にいたら駄目じゃないの」
「え?…」
この時(あれ?)って思った。まなみさん、なにやら虫の居所が悪いみたいだったんだ。
「…ど…どうした…の?…まなみ…さん?…」
まなみさんの顔色を覗いながら、恐る恐る尋ねる僕。でも、まなみさんは僕のその質問には答えてくれなかった。
「さてと、そろそろ夕食にしなきゃ。わたるは外で食べてきたの?」
「ううん…まだ食べてない…けど…」
「じゃあ一緒に食べようか。でも、今日は有り合わせの物よ。いいわよね、別に」
「う、うん…も、もちろん…な、何でもいいよ…」
まなみさんは、僕の返事も待たずにスタスタとキッチンの方に行ってしまった。やっぱり変だ。まなみさんの態度がどことなく冷たく感じるんだ。
(怒ってる…よな?…どうしたんだろう?…でも、とても聞ける雰囲気じゃないし…)
そっけないまなみさんの態度にとまどう僕。よく考えてみれば、まなみさんのこんな態度は初めてのことだ。
(取りあえず今はそっとしておこう…そのうち何か話してくれるかもしれないし…)
でもその考えは甘かった。暫くしてから僕達2人は、キッチンのテーブルに向い合せに座って食事をしたんだけど、やっぱりまなみさんの態度は変らなかったんだ。ムットしたような表情で、僕のことなんかまるっきり無視している。普通なら楽しいはずの2人きりの夕食なんだけど、それがちっとも楽しくない。とっても重苦しい雰囲気だった。
(はぁ〜やっぱりまなみさん、機嫌が悪いみたいだ…全然喋ってくれないや…)
黙々と食事をするまなみさんを見ながら、僕は溜息をついた。すると…。
「何よ?溜息なんかついて。食事、おいしくない?」
初めてまなみさんが口を開いてくれたんだ。とはいえ、いつもと違う、とっても冷やかな感じのする声だったけど…。
「え?そ、そんなこと無い…お、おいしいよ…。あ、あの…ま、まなみさん?…」
「ん?」
「ま、まなみさん…その…な、何を怒ってるの?…昨日、何かあったの?…」
「…別に」
「そ、そう…」
結局、夕食の間に僕達が交わした会話はこれだけだった。

「え?!」
驚いた僕は、思わず手にしたコーヒーカップを落としそうになってしまった。夕食の後、僕達はリビングでコーヒーを飲んでいたんだけど、突然まなみさんが変なことを言い出したんだ。向かいに座ったまなみさんの顔を見ると、さっきまでとは打って変わって穏やかに微笑んでいる。僕は困惑して思わず黙り込んでしまった。
「だって、今年は全然わたると一緒にいられなかったから…ろくに話もしてないしね。わたる、明日帰るんでしょう?」
「う…うん…」
「ね?だから最後の夜くらい、ゆっくり話しでもしようよ」
「…そ、そうだね…」
「聞きたいこともあるし…」
「え?…」
「決まりね。時間は…今9時か…じゃあ10時になったら私の部屋に来て頂戴」
「…あ、う、うん…わ、わかった…」
まなみさんは半ば強制的に僕にYESと言わせると、満足げに微笑みながら1階の自分の部屋に戻っていった。
(どうしたんだ…急に、明るくなって…それに…まなみさん…ホ、ホントに?…)
僕はこの時、すっかり有頂天になっていた。その理由は2つある。1つは、まなみさんの態度。さっきまでムスッとしていたのに、急にニコニコ顔になってるんだもの。あの綺麗な顔で微笑まれたら、誰だって嬉しくなってしまうに決まってるよ。そしてもう一つは、まなみさんの提案だ。なんとまなみさんたら、今夜はまなみさんの部屋で一緒に寝ようって言ってきたんだ。驚いたなんてもんじゃないよ。
(まなみさん…もしかして僕に気をつかって…そうか、きっとそうだ…昨日は家を留守にしたし、今日はずっと話もしてくれなかったし…何を怒ってたのか知らないけど、やつあたりなんかして、きっと僕に申し訳無いって思ってるんだ…そうさ…そうだよな、まなみさんは元々優しい女性だもの…あぁ…まなみさんと…や、やったぁ!)
突然現れた幸運に、ただ無邪気に喜ぶ僕。だって、あのまなみさんと同じ部屋で寝ることが出来るんだよ。そりゃあ僕だって馬鹿じゃない。別に、深い意味なんて無いことぐらい分ってるさ。まなみさんにしてみれば、単に、久しぶりに逢えた甥と雑談でもしようって思ってるだけなんだ。でも、僕にしてみれば、こんな幸せなこと無いよ。正直に言うけどこの時僕の頭の中では、ちょっとエッチな想像が渦巻いていた。まなみさんの寝るときの格好を想像しちゃってたんだ。
(パジャマかな?…いや、セクシーなまなみさんのことだから、ネグリジェとか…もしかしたら…下着だけなんて…って、何考えてんだ、僕…)
舌をぺロッと出し、自分で頭を小突いた僕だ。
(でも…まなみさん、僕がこんなエッチなことを考えてるなんて、思ってもいないだろうな…僕のことなんて、すっかり子供だと思ってるんだもの…昨日だって、スカートの裾とか全然気にしてなかったし……だから、一緒に寝ようなんて言ってくれるんだろうし…もし僕がエッチなこと考えてるなんて知ったら、どうなるだろう?…驚いて目を回して倒れちゃうかもしれない…部屋に行ったら気をつけなきゃ…あんまりジロジロまなみさんを見ないようにしなくちゃな…)
少し後ろめたく思いながらも、僕は期待に大きく胸を膨らませていた。
(そう言えば、まなみさん、さっき聞きたいことがあるって言ってたな…なんだろう?…まあ、いいか…行けばわかる…あぁ、早く時間が経たないかな…)
この時僕は夢にも思っていなかった。まさか、まなみさんを怒らせていた張本人が、実は、僕自身だったなんて…。

(コンコン…)
「いいわよ、入って」
パジャマに着替えた僕は、ピッタリ10時にまなみさんの部屋に訪れたんだ。まなみさんの寝室に入るのは、実はこれが初めてのことだ。なんだか緊張する。僕は一度深呼吸した後、震える手でゆっくりとドアを開けていった。
「お、おじゃま…します…」
「クスッ…なによ、あらたまって…フフ…変な子ね、早くお入りなさい」
「ま、まなみさん!」
そこに見えたまなみさんの姿に、僕は思わず息を呑んだ。だって、その時のまなみさんは真っ白なバスローブ姿だったんだもの。しかも、そのバスローブは、丈が少し短めなんだ。
(ま、まなみ…さ…ん…)
まなみさんのあまりの悩ましさに、僕は声も出せずに、ただただ呆然としてた。しっとりと塗れた艶やかな髪。胸元の合わせ目から見える深い谷間。惜しげも無く晒された、滑らかでふくよかな太腿。そのどれもがセクシーで、それでいて気品があって…まるでオーラでも放たれているみたいに、まなみさんの身体から女性の色気がムンムンと伝わってくるんだ。
「ん?何よ、おかしな子ね。ほら、ボーっとしてないで、早くお入りなさい」
「え?…あ、う、うん…ご、ごめんなさい…」
まなみさんの部屋は、およそ8畳位のフローリングの部屋だった。ベッド、ドレッサー、そして床に置かれた低いテーブル。お揃いの木製の家具で統一されたその部屋は、さすがに芸術家らしくセンスが良い。といっても、僕の目は相変わらずまなみさんに釘付けで、ホントはあんまり部屋を観察している余裕は無かったんだけど…。
「その辺に座って」
まなみさんは、僕にテーブルの側に置かれたクッションに座るように指示すると、自分はベッドの端に腰を下ろしたんだ。
(うわ!…ま、まいったな…)
僕はちょっと目のやり所に困ってしまったんだ。だって、僕達はテーブルを挟んで向い合せに座る形になってしまったんだもの。床に座った僕の視線とまなみさんの膝元の位置が丁度同じ高さなんだ。しかも、まなみさんは脚を組んでいる。肉付きの良い太腿が、かなり上の方まで露になってる。さりげなくバスローブの合わせ目に置かれた右手が、かろうじて秘密の部分を隠してはいるけど、それにしたって、あまりにもセクシーすぎるポーズだった。
(まなみさん…なんて格好を…いくら僕を子供扱いしてるからって…こ、困るよぉ…)
駄目なんだ。頭でいくら見ないようにって言い聞かせても、僕の視線は自然とまなみさんの太腿に吸寄せられてしまう。まずいよ。このままじゃあ、いくら僕を子供扱いしているまなみさんだって、僕の視線がいけないところに向けられていることに気付いてしまうに違いない。
「どうしたのよ?なんか、落ち着きが無いみたいだけど…」
よほど僕の態度がソワソワしていたんだろう、まなみさんが小首を傾げながら、訝しげな視線を僕に送ってきた。
(そ、そりゃあ、落ち着かないよ…まなみさんがそんな格好してるから…)
と言い返したいとこだけど、さすがにそんな勇気は無い。
「い、いや…そ、そんなこと無いよ…」
「そう?」
「そ、そうさ!」
「あら?何よ、むきになって…変な子ね」
この時まなみさんが不意に脚を組替えたんだ。
(あ!)
それは一瞬の出来事だった。右手を膝の上から外した瞬間、流れるようにしなやかな動作でスッと脚を組替え、そして何事も無かったように再び右手を膝の上に移動させる。その間僅か1秒。だけど僕の目は、その一瞬を逃しはしなかったんだ。
(い、い、い、今…今の…って…ま、ま、まなみ…まなみさんの…パ、パンティ?…)
確かに僕は見た。そうさ、見間違えなんかじゃない。僕は確かにこの目に捕らえていた。真っ白なバスローブの合わせ目の奥。少し影になった部分に、淡いピンク色をした魅惑のパンティを。
「ゴクッ!」
まなみさんに聞こえてしまうほどの音を立て唾を飲みこむ僕。頭の中では、先程の一瞬の出来事が、スローモーションで何度も何度もリピートされてた。
(ピ、ピンク!まなみさん、ピンクのパンティを履いてる!)
ムッチリとした股間に張りついたピンクのパンティが、生々しく僕の脳裏に焼きついた。今はもう見えるはずも無いのに、僕は、間抜けな顔をして、食い入るようにまなみさんの股間を見つめ続けていたんだ。その時…。
「ほらぁ、やっぱり変じゃない」
まなみさんの声が耳に入ったんだ。
「やっぱり変ね、わたる。ボーっとしたりして」
「あ、あ、あの…ま、まなみさん…ぼ、僕…そ、その…」
「どうしたの?さっきからソワソワしたり、上の空になったり」
「ご、ご、ごめんなさい…な、なんでも…なんでもない…です…」
「そうかなぁ?…なんかおかしな感じがするんだけどなぁ…」
尚も疑いの目を向けてくるまなみさんだ。僕の心を見透かそうとでも言うのか、ジッと僕を見つめている。
「そ、そ、そんなこと無いよ…な、何でも無いって…」
「ホントぉ?…けどやっぱりおかしいわよ…さっきはどこかを見つめてたような…」
「そ、そ、そ、そんなことないさ…そ、それより、まなみさん…あ、あのさ…」
「ん?」
「あ、あの…さ、さっき、僕に話しがあるって言ってたけど…い、一体どんな話?…」
疑いの視線から逃れるため、慌てて話題を変える僕。この場をなんとか誤魔化すために、もう必死だったんだ。
「話?…ああ、あれ…別に後でもいいんだけど…」
「え?な、なに?…い、今教えてよ…なんか、気になるじゃない」
「別にたいした話じゃないんだけど…そう?それじゃあ…ちょっと待って」
そう言ってまなみさんはスッ立ちあがった。そしてドレッサーに近づくと、備付の引出しを開けて、何やら探し物をしだしたんだ。一方僕は、まなみさんの行動を不思議に思いながらも、ピンチを凌いだ安堵感にホッと胸を撫で下ろしていた。
(ふぅ〜良かったぁ…一時はどうなることかと思った…まったく、冗談じゃないよな。まなみさんに知られるわけにはいかないよ…僕が、何でボーっとしてたのかなんて…はぁ〜、なんか緊張して疲れちゃった…)
この時僕は、完全に窮地を逃れたと思ってた。なんとか誤魔化すことが出来たって、うまく話しを逸らせることが出来たって、そう信じてたんだ。けどそれが…話しを逸らしたことが、更に僕を悪い状況に追いやることになってしまう。悪いなんてもんじゃない、僕にしてみれば、まなみさんに死刑宣告でも受けたようなものだった。それは…。
「あのね…話って言うのはね…コレのことなんだけど…」
「!!!!!!」
血の気が引いた。あまりの驚愕に、声を出すことも、瞬きすることさえも出来なかった。一瞬にして全身が凍りついてしまったんだ。そんな身動きの取れなくなった僕の頭の中では、ただ一言(なぜ)って言葉が何度も何度もこだましていた。
(…な…な…な…なんで…なんで、まなみさんが、そ、そ、それを…)
まなみさんがドレッサーの引出しから取り出したもの…小首を傾げながら、まなみさんが右手に摘んで差し出したもの。それは…それはまぎれもなく、あの白いレースのパンティだったんだ。昨晩、僕が脱衣所からこっそり持ってきた、あのまなみさんの白いパンティだったんだ。
「…な…な、な…なん…な、なん…なん…」
「クスッ…どうしたの?わたる…クスクス…おもしろい。まるで言葉を知らない九官鳥みたいじゃない…クスクスクス…」
満足に喋ることの出来なくなった僕を、まなみさんはさも可笑しそうに嘲笑う。
「クスクスクス…おかしな子…ねぇ、わたる?…コレ…何だか分るかよね?」
「そ、そ、そ…それ…それ…それは…その…」
「ん?な〜に?コレ?」
摘んだパンティをヒラヒラと揺らしながら、僕に問い掛けるまなみさんだ。僕は、拷問にも等しいこの質問に、身を震わせながら、おずおずと答えるしかなかった。
「そ、それは…その…し、下着だと…お、思う…」
「そう、当り。コレ、私のパンティなのよ。じゃあ次の質問。コレは一体、何処にあったでしょうか?」
「え?…」
「分らない?…コレはね、わたるの部屋に置いてあったのよ」
(しまった!)
今更後悔しても遅いけど…僕、すっかり忘れてたんだ。まなみさんのパンティを片付けることを。昼間、みゆきさんを駅に送る時、時間が無かったから取りあえずベッドの上に置いたままにしておいたことを。
「不思議でしょう?何故わたるの部屋に、私のパンティが置いてあったのかしらね?」
「そ、それは…その…」
内緒で持ち出したパンティをその持ち主に見せつけられて、そのうえ置いてあった場所まで指摘されて…何か言い訳したくても言葉なんか出てきやしない。僕に出来るのは、ただ黙って俯いていることぐらいしかなかった。そんな僕にはお構い無しに、更にまなみさんの拷問は続く。
「それにね、変なのよねぇ…」
「え?…」
「このパンティ何故か汚れてるのよねぇ…クスッ…ほぉら、こ〜んなに」
僕の目の前まで歩み寄り、何故か意味ありげな含み笑いをしながら、持っていたパンティを裏返すまなみさんだ。するとそこには、昼間みゆきさんに搾り取られた跡が…まだ乾ききっていない僕の精液がベッタリと付着していた。その部分が僕によく見えるように、まなみさんはパンティを広げていく。
「何かしらね、コレ?白くてぇ…ネバネバしたものは」
「…」
「クスッ…ねぇ、わたる?あなた、こんなもの持っていって、一体、何に使ったの?」
「う…」
「どうしたのよ、黙っちゃって…クスクスクス…ねぇ、私のパンティで何したの?…」
「うぅ…」
「一体、何をすれば、パンティがこんな風に汚れるのかしらねぇ?…クスクスクス…」
「う…うぅ…」
僕が答える必要も無いことだった。僕が何をするためにパンティを持っていったのかなんて、パンティの汚れは何なのかなんて、まなみさんには全て分っていることに違いなかったから。僕に向けられている蔑むような含み笑いが、まなみさんが全てをお見通しだということを物語っていたんだ。
「黙っていないで、正直に言ってごらん…ほらぁ、私の顔を見て」
「…う…うん…」
僕に向けられているまなみさんの瞳は、まるで僕の心を見透かそうとでもしている様に思えた。僕はもう観念したんだ。実際、まなみさんのパンティを僕の部屋で発見された時点で、もう僕の有罪は決まったも同然だったから。それに、全てわかっているにも関わらず薄っすらと微笑んでいるまなみさんを見ていたら、もしかしたら許してくれるかもしれないって思ったんだ。流石に「みゆきさんに射精させられて」なんてことは言えないけど、自分でオナニーして、まなみさんのパンティを汚したことにすれば、もしかしたら許してくれるかも知れないって。みゆきさんみたいに、まなみさんも、男の子のオナニーぐらいどうってこと無いって言ってくれるかもしれないって、そう思ったんだ。
「あ、あの…ぼ、僕…その…」
「ん?ぼく、どうしたの?」
「そ、その…オ…オナ…」
「オナ?」
「う、うん…オ…オ、オナニーしたんだ」
まさか憧れのまなみさんの前で、こんなことを告白するハメになるなんて、夢にも思ってもいなかったよ。けれどとにかく僕は、正座の姿勢で、手をギュッと握り締めて、恥かしさに身を震わせながら、自分の「わるさ」をまなみさんに白状したんだ。恐る恐るまなみさんの顔色を覗いつつ、まなみさんが許してくれることを期待しながら…。
「オナニー?」
僕が自白した瞬間、まなみさんの顔が一瞬曇ったような気がした。でもその後…。
「プゥーッ!プッ、プププププ…アハッ!アハハハハハハ…」
まなみさんが大笑いし始めたんだ。
「オナニーですって?…わたる、オナニーって言ったの?…アハッ!アハハハハ…」
「う…うん…」
「アハハ…へぇ〜わたる、オナニーしてるんだ。いやだ、中1の坊やが?…アハッ…」
「…う…ん…」
「わたるったら、子供の癖に生意気なのね…随分とオマセさんなのね…アハハハハ…」
まなみさんは左手を口に添えて、目を細めて愉快そうに僕を見てる。その瞳はまるで、子供の悪戯を見つけた時の母親のような瞳だった。
(やった!まなみさん、きっと許してくれる!)
僕はそう確信した。だってまなみさんの態度は、まさに僕のオナニーを目撃した時のみゆきさんのそれと同じだったんだもの。まなみさんはきっと、呆れながらも僕の「わるさ」を許してくれるに違いないって、そう思ったんだ。
「そ、そうなんだ…エヘ…エヘヘ…ご、ごめんなさい、まなみさん…」
片手でポリポリと頭を掻きながら、照れくさそうに笑う僕。もう僕はすっかり安心してたんだ。でも次の瞬間…。
(バッチーン!)
(え?…)
その瞬間、僕は何が起こったのか全然分らなかった。気がついた時には、僕は床に這いつくばっていたんだ。