ヒガンバナ科 キルタンツス属(キルタンサス属) |
学名 | 正名:Cyrtanthus elatus (Jacq.) Traub 異名:C. purpureus (Ait.) Herb.、Vallota speciosa (L. f.) T. Dur. et Schinz.、 V. purpurea (Ait.) Herb.、Amaryllis purpurea Ait.、Crinum speciosum L. f.、他 |
英名 | George Lily, Knysna Lily, Scarborough Lily |
和名 | バロータ(ヴァロータ) |
別名 | |
花言葉 | 忍耐 |
メモ | 属名のCyrtanthusは、ギリシア語の「kyrtos(曲がった)+anthos(花)」に由来し、花筒が曲がっていることに因みます。 英名は、前二者は南アフリカでの呼び方、後者はヨーロッパやアメリカでの呼び方だそうです。 原産は南アフリカのケープ地方で、日本に導入されたのは、明治末頃だと言われています。 常緑の植物で、鉢植え、あるいは、切り花として利用できます。
属は、クリナム属、アマリリス属、バロータ属、キルタンツス属を変遷していて、種形容語(種小名)も、「elatus(アマリリス属、バロータ属、キルタンツス属)」、「speciosus(クリナム属、アマリリス属、バロータ属、キルタンツス属)」、「purpureus(アマリリス属、バロータ属、キルタンツス属)」が付けられていたようです。これらは、学名の付け方に関する規則の新旧や、命名者の誤解などで生じたそうです。 和製の図鑑では、バロータ属にスペシオサ種(=プルプレア種)が1種のみ属するとされていますが、Hilliard は、1986年の報告で命名の変遷を説明した上で、Cyrtanthus elatusが正しい学名であるとしました。しかし、このページでは、日本での園芸上の名前にしたがって、バロータと呼ぶことにします。前述の通り、スペシオサ一種のみなので、種小名も敢えて省略します。なお、Vallotaは、フランスの植物学者であったPierre Vallota(16〜17世紀)の名前に因むそうです。余談ですが、キルタンツスの属名の由来は前述の通りですが、バロータは曲がっているようには見えませんでした。
キルタンツス属には常緑の種と落葉性の種がありますが、常緑種のほとんどは、栽培がさほど難しくないと言われています。バロータの栽培は、アマリリスに準じます。球根は春に植えますが、アマリリスと同じように、球根の頸部を土の上に出すようにして植えます。直接日が当たるところよりは明るい日陰の方がいいそうです。水遣りは、生育初期は少な目、生育が旺盛になったら多目に、冬は控えめに与えて乾燥気味にしますが、完全に乾燥しないようにします(本によってはほとんど乾燥気味に保つと良いようなことが書いてありますが、冬の間でも葉が枯れることがなかったので、私は、たまに水遣りしていました)。耐寒性はあまりないと言われていますが、水はけなどの条件が良ければ−5℃くらいまでなら大丈夫だそうです。しかし、霜よけをしたり、凍害に注意するに越したことはないようです。ただし、冬の間、温度が高いところにおいておくと開花しないとも言われています(具体的にどのくらいの高温か不明ですが、後述するように、花序の形成には温度はあまり関係しないようです)。生育期間中は、最低でも5〜10℃は保つと良いようです。 繁殖は分球か実生によりますが、分球の場合は、春に球根を植えると良いそうです。
南アフリカの首都・プレトリアの近郊で、一年間に渡って花序の形成と発達を観察した研究報告があります(観察期間中の気温は、夏の昼の温度が25〜27℃、夜の温度が17〜22℃、冬の昼の温度が14〜24℃、夜の温度が6〜16℃。ただし、南半球なので、夏・冬は日本と逆。降水量は〜564mm)。この報告によると、バロータの成長は仮軸分枝で、何枚かの葉(1側枝当たりの葉数は3〜6枚ですが、多くは4〜5枚だったそうです)と茎頂の花序で一つのユニットを構成しているそうですが、一年を通して花序を分化させていたことから、一つの球根の中に、齢の異なるユニットが4つ含まれていたそうです。12〜3月(夏以降)に形成された若いユニットの花序の多くは発育停止したそうですが、原因としては、水、養分、ホルモンの競合が起きたためと推測されています。なお、花序が地上部に出てきてから開花するまではおよそ3〜4週間だったそうです。 子球も一年を通して形成されたようですが、形成される数が多かったのは、冬季の7月だったそうです。子球が花序を作り始めるのは直径がおよそ30mmに達してからで、最低4枚の葉が形成されたときだったそうです。 なお、この研究論文が引用していた他の文献(オリジナルは手に入らなかったので、読んでいません)によると、10℃や17℃の低温処理をしても開花は促進されなかったそうです。
ネリネ属に新しい形質を導入することを目的として、Nerine sarniensisを種子親、バロータを花粉親として属間交雑を試みた結果、発芽可能な種子が得られたそうです(発芽後、開花に到ったかどうかは、分かりません)。 また、バロータとキルタンツス・サンギネウス(C. sanguineus Hook.)を属間交雑させて「キルロータ(C. hybridus)」がイギリスで作られ、1885年に発表されましたが、バロータがキルタンツス属に含まれた以上、種間雑種になると思います。
追記(2002.7.15.) 新しい文献が手に入ったので、それに従って、学名の変遷について説明を追記しました。
本棚以外の参考文献
Hilliard, O. M. et al. Notes on some plants of Southern Africa chiefly from Natal: XII. Notes from the Royal Botanic Garden Edinburgh. 43: 189-228. 1986.(バロータに関する記述は、190〜191ページ。)
Slabbert, M. M. Inflorescence initiation and development in Cyrtanthus elatus (Jacq. Traub). Scientia Horticulturae. 69: 61-71. 1997.
勝川健三他.Nerine の種間およびヒガンバナ科他属との交雑における種子形成と発芽.園芸学会雑誌.第68巻:900−902.1999年.
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コメント | 球根の植え付けは昨年の3月下旬、出芽は記録に残すのを忘れて不明、最初の開花は今年の7月上旬、開花までに1年以上かかりました。球根を植えてから秋までは露地で、それ以降現在まで、無加温の温室内で栽培しています。 またか、と言われそうですが、品種名に惹かれて買ったものです(^^;。咲き始めはサムネイルのようにクリーム色でしたが、完全に花が開く頃には、品種名のように雪のような白い色になりました。三つの花が着きましたが、二つがほぼ同時に咲き、やや遅れてもう一つが咲きました。一つの花の花持ちは、1週間弱でした。 他に‘サーモングロウ’と‘アイボリーワンダー’という品種も一緒に購入、別々の鉢に植えていましたが、‘サーモングロウ’は、越冬に失敗してこの冬に枯死、‘アイボリーワンダー’は、葉っぱは出ているものの、‘スノーホワイト’に比べたら小さく、開花の兆しはまだありません。とりあえず、本命が咲いてくれたので、まずまずの結果です。昨年、球根を植え付けてから芽が出るのが一番遅かったのは、‘スノーホワイト’でした。本命がその調子だったので、ずいぶんヤキモキしたものです。それがこうして立派に咲いてくれて、嬉しかったです。やっぱり、園芸に必要なものは、愛情ですね(^^) ・・・枯れちゃった‘サーモングロウ’には、愛情が足りなかったんでしょうかね( ̄▽ ̄;(2002.7.13.)
もう一言(2002.9.2.) 掲示板で、「‘スノーホワイト’以外も、咲いたら写真を見てみたい」と言うリクエストがあったので、予告通り、“こっそり”追加しました(笑)。‘スノーホワイト’は純白でしたが、‘アイボリーワンダー’は少しオレンジがかっていました。これが象牙色(アイボリー)と言えるかどうかは、ちょっとアヤシイですが(^^;。開花は8月下旬からで、1本の花茎に3つの花が咲きましたが、全てが咲き終わるのに1週間とかかりませんでした。 |
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