形態、生態、栽培など
常緑または落葉性で、鱗茎があります。葉は線形で、長さが1メートル以上になる種もあるそうです。葉序は螺旋葉序だそうです。分枝は仮軸分枝(茎頂に花が着くことで主軸の成長が止まると、代わって側枝が発達して主軸のように成長する、という分枝様式)だそうです。数個から多数の花が散形花序を形成し、花序の基部には2枚の包葉があります。花は、6枚の花被片が基部で合着して筒状となり、この部分に6本の雄しべが付いています。子房は下位で、3室から成ります。種によって、放射相称であったり、左右相称であったりするそうです。花には芳香があることもあるそうです。果実は刮ハだそうです。種子は、海流に乗って分布するのに適した性質(肉質、水に浮く、耐塩性がある)を持っています。 クリナム属は、ヒガンバナ科で唯一の汎熱帯を原産とする属だそうで、ほとんどの種が熱帯または亜熱帯の沿岸地域を原産地としていて、耐寒性がなく、温帯地域では温室の中で栽培する必要があります。しかし、南アフリカ原産の C. bulbispermum と C. moorei や、これらの交雑種である C. × powellii には耐寒性があって、保護をすれば屋外でも栽培できます。耐寒性がある種は、水捌けが良く、なおかつ、保湿が出来、有機質に富む肥沃な土壌を好むそうです。生育期間中は、水をたっぷりと与えると良いそうです。温室内で育てる場合は、葉が十分に成長していないときは直射日光を避け、その後も部分的に日陰になるようにしたり、暗くならない程度に遮光すると良いそうです。花が終わった後は水遣りを控え、休眠期には葉が萎れない程度に保湿するそうです。なお、繁殖は実生か分球で行います。種によっては種子を付けないものがあるそうです。分球は春に行うそうです。移植に強くないらしく、場合によっては定着や花を着けるようになるまでに数年かかることがあるそうです。
種類
種数は、多くの図鑑で100種以上(120〜160種)と解説されていますが、Fangan氏らの文献によると、60〜70種ほどに見積もられるそうです(このことは、Meerow氏らの文献に引用されていたことで、入手して直接読むことは出来ませんでした)。一部の種を以下に挙げます。
・C. abyssinicum Hocht. ex A. Rich.
・C. acaule Baker
・C. americanum L.
・C. asiaticum L.
・C. bulbispermum (Burm. f.) Milne-Redhead et Schweickerdt
・C. campanulatum Herb.
・C. crassicaule Baker
・C. flaccidum Herb.
・C. humilis A. Chev.
・C. jagus Thomps.
・ハマユウ(別名:ハマオモト、正名:C. japonicum (Baker) Hannibal、異名:C. asiaticum var. japonicum Baker)
・C. kirkii Baker
・インドハマユウ(C. latifolium Andr.)
・C. macowanii Baker
・C. mauritianum Lodd.
・C. moorei Hook. f.
・C. pedunculatum R. Br.
・C. × powellii Baker
・C. variabile Herb.
・C. yemense Deflers
・C. zylanicum L.
分類
以下、Meerow氏らの文献をまとめたものです。 クリナム属は、Baker氏によって、以下のの3つの亜属に分けられたそうです。
Stenaster亜属:花形が高盆型で、放射相称、花筒が真っ直ぐで、花被片が線形。 Platyaster亜属:花被片が披針形であることを除いて Stenaster亜属と同じ。 Codonocrinum亜属:花形が漏斗型で、左右相称、花筒が曲がっている。
その後、Platyaster亜属は Stenaster亜属にまとめられたそうですが、基準種である C. americanum が含まれていることから、Crinum亜属と呼ぶべきであると提唱されているそうです。 Meerow氏らは、クリナム属の38種について、 nrDNA ITS や葉緑体の trnL-F を解析して系統発生について調べたところ、クリナム属は南アフリカを起源とすることや、以下の3つのクレード(clade:共通の祖先から進化した生物のグループ)に大別できることが明らかになったそうです。
南北アメリカ、熱帯アフリカ、北アフリカの種
南アフリカの種、C. flaccidum(オーストラリア固有種)
マダガスカル、オーストララシア(オーストラリア・ニュージーランドと近海の諸島)、ネパール、中国の種、南アフリカのC. buphanoides と C. subcernuum
その他、C. baumiiという種は、クリナム属よりも、Ammocharis属や Cybistetes属に近いことが明らかになったそうです。また、花形について、放射相称(Crinum亜属)は、左右相称(Codonocrinum亜属)から進化したものであること、放射相称は第1のクレードと第3のクレードに認められることから、それぞれのクレードで独自に進化したものであり、花の形で分類した亜属は同一の祖先から発生した種で構成されているのではないことが示されたそうです。
本棚以外の参考文献
Meerow, A. W., et al. Phylogeny and biogeography of Crinum L. (Amaryllidaceae) inferred from nuclear and limited plastid non-coding DNA sequences. Botanical Journal of the Linnean Society. 141: 349-363. 2003.
(2004.2.22.)
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