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リコリス・インカルナタ

リコリス・インカルナタ


ヒガンバナ科リコリス属(ヒガンバナ属)
学名Lycoris incarnata Comes ex K. Spreng.
英名 
和名 
別名 
花言葉悲しい思い出、追想、深い思いやり
メモ

 リコリス属の解説は、こちらをご覧下さい。
 原産地は中国です。

 耐寒性のある多年草です。ヒガンバナと異なり、花が終わった直後には出葉せず、翌年の春になってから出葉する春季出葉型に分類されています。
 栽培については、リコリス属のページをご覧下さい。

 染色体数は2n=30の二倍体ですが、不稔性です。これは、核型が2n=30(4M+3T+22A+1m)(※1)とヘテロカリオン型(※2)であることによるそうです。
 近年、切り花としての需要が高まっていることから、新しい形質を持たせることを目的として、種間交雑が試みられているそうです。不稔性であるインカルナタと稔性のある他のリコリスを交配させた研究によると、インカルナタが自家受粉した場合と、L. sanguinea(キツネノカミソリ)との交配でインカルナタを花粉親とした場合は、後代(progenies;この場合、平たく言ってしまえば「子」)が出来なかったことから、花粉に稔性がないことが示唆されたそうです。また、種子親とした場合は、L. sprengeriL. radiata var. pumila(シナヒガンバナ)L. aurea(オーレア)、キツネノカミソリとの間で交雑出来たそうですが、いずれの組合せでも、交雑個体は三倍体だったそうです。交雑個体の染色体数や核型を調べたところ、いずれの組合せでも、インカルナタ由来の配偶子(2n)と、花粉親由来の配偶子(n)との受精によって交雑個体が形成されたことが明らかになったそうです。なお、一般に三倍体の胚は発育停止を起こしますが、この研究では、胚培養(※3)したそうです。

※1 M(metacentric chromosome;中部動原体型染色体)、A(acrocentric chromosome;次端部動原体型染色体)、T(telocentric chromosome;端部動原体型染色体)で、それぞれ、動原体が染色体の中部にある、やや端に寄っている、端に片寄っているものだそうです。mは調べられませんでしたが、(small metacentric chromosome)なので、Mの小型のものでしょうか。

※2 ヘテロカリオン(heterokaryon、異核共存体)とは、遺伝子組成の異なる複数の核が同じ細胞内に共存しているような細胞や胞子などのことです。リコリス属の中には、種間雑種の種があるそうで、インカルナタもそのような種の一つなのかもしれません。

※3 植物の種間(あるいは属間)交雑の場合、受精が完全に行われても、交雑胚が正常な発達をしないことがあります。 正常な発達が出来ない原因としては、親ゲノム間の不調和、核と細胞質の不調和、雑種胚と周辺細胞との不調和などが挙げられます。 これらの不調和を回避するために、胚が発達する前に人工培地に移すのが、胚培養・胚珠培養です。胚珠は、子房の中にあり、発達して種子となる器官で、胚や胚乳などで構成されています。受精した胚は、球状胚、心臓型胚、魚雷型胚を経て、子葉、胚軸、幼根、幼芽などの器官を分化させます。胚培養ですが、初期魚雷期以上に発育した雑種胚に対して用いますが、この方法では胚のみを摘出します。アブラナ科、ナス科、イネ属、コムギ属、ユリ属などで行われているようです。胚珠培養は、球状期以上に発達した胚を持つ胚珠を培養する方法ですが、胚珠を培養するので、胚培養に比べて子房からの摘出操作が容易であるので、胚珠が小さくて雑種胚の摘出が困難な植物で利用されています。 胚珠培養によって、アブラナ属、ワタ属、タバコ属内の多くの組み合わせで種間雑種が得られているそうです。 受精後数日経った子房を試験管内で人工培養する子房培養という方法もあります。

参考文献

  • Ma, B. et al. Production of interspecific hybrids between Lycoris incarnata and four other Lycoris species through embryo culture. Journal of the Japanese Society for Horticultural Science. 70 (2): 697-703. 2001.

追記(2002.10.28.)
 メモを全文改訂しました。

コメント

 栽培方法、咲いた日にちなどはリコリス・オーレアとほぼ同じです。(2000.9.16.)

もう一言(2002.10.28.)
 インカルナタも、オーレアと同じく、咲いたり咲かなかったりします。栽培の仕方が悪いせいなのか(と言うより、ほぼ間違いなく悪いせいで( ̄▽ ̄ゞ)、咲くか咲かないかはオーレアと一緒で、昨年は咲きましたが、今年は咲きませんでした。
 一昨年はオーレアと同じ日に咲いて、昨年は8月下旬とオーレアより1週間早く咲きましたが、ヒガンバナのページを作るときに参考にした文献によると、秋季出葉型より、春季出葉型の方が1ヶ月くらい早く開花するとか。もしかしたら、栽培する地域によって差があるのかもしれません。葉っぱが出る時期については、気にしたことがありませんでした(^^;

 
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