形態、生態、栽培について
耐寒性がある多年草です。秋に花が枯れた後に葉が出葉する秋季出葉型(ヒガンバナ、オーレア、シロバナマンジュシャゲ[アルビフロラ]など)と、冬から春にかけて出葉する春季出葉型(インカルナタ、キツネノカミソリ、ナツズイセンなど)に分類することが出来るそうですが、耐寒性は春季出葉型の方が強いと言われています。 葉は線状、あるいは、帯状です。花序は散形花序です。花は、6枚の花被片、6つの雄蕊、雌蕊で構成されています。子房は3室で、位置は下位です。球根は鱗片葉が密生した鱗茎で、デンプンとアルカロイドを含んでいます。分枝は仮軸分枝ですが、茎軸に付く葉には、薄膜状のりん葉、同化葉(参考文献中では全周りん葉と呼ばれています)、舌状りん葉の3種類があるそうです。全周りん葉の数は種によって異なり、ヒガンバナは4.7枚、オーレアは8.2枚、キツネノカミソリは9.3枚、インカルナタは10.0枚、ナツズイセンは10.4枚だそうです。分枝は、年に一度しかしません。茎軸の一番上の節には舌状りん葉が着き、それより下には全周りん葉が着きますが、全周りん葉の腋芽は子球に発達します。子球が母球から独立して花芽を作れるようになるまでに、2〜3年かかるそうです。 分枝と同じく、花芽の分化も年に一回だけで、地域にもよりますが、ヒガンバナでは4月前後に分化するそうです。自然条件下では秋季出葉型より春季出葉型の方が1ヶ月ほど開花が早いそうですが、これについては、前者より後者の方が花芽の発育が早いためであると考えられているようです。なお、大阪で行われたリコリス属の花芽形成について調べた一連の研究によると、以下のようなことが分かったそうです。
自然環境下での花芽の発育(1970年鱗茎植え付け、1971年調査)
| 秋季出葉型 ヒガンバナ、オーレア、アルビフロラ | 春季出葉型 ナツズイセン、キツネノカミソリ、インカルナタ |
総包形成 | 4月下旬(キツネノカミソリが、他の種より1〜2週間早い) |
小花形成 | いずれの種も総苞形成の1週間後 |
雌ずい形成 | 6月上旬〜6月中旬 | 5月下旬〜6月上旬 |
四分子形成 | 8月中旬 | 6月下旬〜7月上旬 |
開花 | 9月中旬 | 8月中〜下旬 |
稔性がある種は種子で繁殖できますが、ヒガンバナやインカルナタのような不稔性の種は子球で繁殖させます。鱗茎は肥沃で水はけの良い土に植えます。日当たりが良い場所を好むそうです。一度植えた後は、数年はそのままで大丈夫なようです。植え替えるときは、葉が枯れた後に鱗茎を掘り上げて、直ぐに植え付けると良いそうです。耐寒性は強いですが、秋季出葉型は、冬季に寒さ対策をすると良いそうです。
種類など
種数は上記の通りです。図鑑に記載されていた種や変種を以下に挙げます。
・シロバナマンジュシャゲ(白花曼珠沙華;L. albiflora Koidz.)
・ショウキズイセン(鍾馗水仙;正名:L. aurea (L'Her.) Herb.、異名:L. africana (Lam.) M. Roem.)
・L. chinensis Traub
・L. haywardii Traub
・L. incarnata Comes ex K. Spreng.
・ヒガンバナ(彼岸花;L. radiata (L'Her.) Herb.)
var. pumila hort.
・キツネノカミソリ(狐の剃刀;L. sanguinea Maxim.)
var. alba hort.
オオキツネノカミソリ(大狐の剃刀;var. kiushiana Makino)
ムジナノカミソリ(狢の剃刀;var. koreana Nakai)
・L. spery
・L. sprengeri Comes ex Bak.
・ナツズイセン(夏水仙;別名:ワスレグサ、マジックリリー;L. squamigera Maxim.)
・L. straminea Lindl.
・L. traubii
本棚以外の参考文献
(2003.12.13.)
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