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テンナンショウ属


このサイトで紹介している種

ユキモチソウ      
ユキモチソウ
sikokianum
     

サトイモ科Araceae
学名Arisaema Mart.
和名テンナンショウ属
英名 
分布東・中央アフリカ、アラビアから日本やマレーシアまでの温帯・熱帯アジア、北アメリカ東部、メキシコ
種数約150種(資料によって異なります)
属名の性別中性

属名の由来

 「Arum(同じサトイモ科のアルム属)」+ギリシャ語の「aima(血のような赤色)」で、ある種の葉に赤い斑点があることに由来する。
 「原色和漢薬図鑑」によると、「天南星」の名称は、宋の時代(960〜1279年)に書かれた「開宝本草」(973年)に初めて表れたそうで、明の本草家の李時珍(1529〜1596年頃。「本草綱目」の著者)は、「南星とは根が円く白く、形が老人星(竜骨座のカノープスのこと。南極老人星)のような形状だから名付けた」と記しているそうである。

メモ

名前について
 「原色和漢薬図鑑」によると、虎掌(葉の形に由来)や、由跋(ゆうばつ:テンナンショウの小さい物のこと)と言う名称もあったそうです。
 属名の性について、属名の語尾が「-a」となっているためか、女性と説明している文献があります。しかし、種小名の語尾変化が中性の物であることから、中性と判断しました。なお、「植物学ラテン語辞典」でも中性とされています。


形態・生態・栽培など
 多年草です。地下部は塊茎か球茎です。葉は、鳥趾状か放射状に配列した3〜20枚の小葉から成る複葉で、1〜数枚あります。茎のように見える物は実際は葉鞘が筒状に重なったもので、偽茎と呼ばれています。花序は肉穂花序で、仏炎苞に包まれています。花序の先端には付属体があります。花には花被がないそうです。雌雄異花で、雄花には1〜5本の雄しべがあり、2本以上の場合は合生しているそうです。雌花には雌しべしかないそうです。子房は1室です。果実は、朱色の液果です。染色体数は、基本的にx=14で、他に、x=12、x=13の種もあるそうです。

 A. flavum の2亜種は雌雄同株だそうですが、それ以外のテンナンショウ属の全ての種は雌雄異株だそうです。個体のサイズが小さいときは無性だそうですが、ある程度成長するとサイズ(球茎の新鮮重や偽茎の直径などで表されます)によって、雄、雌が決定します。一般に、雄株より雌株の方が大きく、成長に伴って雄株から雌株に転換するそうですが、球茎を小さく切り刻んだり、痩せた土地で育てることで個体サイズが小さくなった場合には雄性化が誘導され、雌株から雄株に転換することもあるそうです。また、雄株から雌株に転換する過渡期に、一時的に雌雄同株の個体を生じる種もあるそうです。なお、性転換を起こす限界のサイズは種によって異なるそうです。性差について、この他に、日本原産の種の中には、雄株の方が開花の始まりが早いものがあるとも言われています。

 温帯地方が原産の種は耐寒性があり、休眠するそうです。熱帯原産の種は常緑で、耐寒性がなく、休眠しないそうです。このように、種によって休眠性に変異があるそうですが、テンナンショウ属植物としての栽培方法はほぼ同じだそうで、土壌は中性〜やや酸性の黒土と粗い砂岩が適していて、日当たりは、直射日光を避け、半日陰が向いているそうです。乾燥に弱いらしく、生育期間中だけでなく休眠中も灌水する必要があるそうです。なお、熱帯原産の種は、気温が低いところでは温室内で管理することが奨められています。


種類など
 種数は上記の通りです。日本には30種以上あると言われています。和名が付いている種の一部を以下に挙げます。@が付いているのは、絶滅の恐れがあり、「レッドデータプランツ」に記載されていた種です。

・ヒガンマムシグサ(A. aequinoctiale Nakai et F. Maek.
・オオマムシグサ(A. amplissimum Blume
・アムールテンナンショウ(A. amurense Maxim.
  ヒロハテンナンショウ(var. robustum Engl.
・アマミテンナンショウ(A. heterocephalum Koidz.
@マイヅルテンナンショウ(A. heterophyllum Blume
・イシズチテンナンショウ(A. ishizuchiense Murata
  @カミコウチテンナンショウ(ssp. [あるいは、var.brevicollum Ohashi et J. Murata
・オモゴウテンナンショウ(A. iyoanum Makino
・ヒメウラシマソウ(A. kiushianum Makino
・シコクヒロハテンナンショウ(A. longipedunculatum M. Hotta
・シマテンナンショウ(A. negishii Makino
・ユモトマムシグサ(A. nikoense Nakai
  オオミネテンナンショウ(var. australe M. Hotta
・ツクシテンナンショウ(A. ogatae Koidz.
・ムサシアブミ(A. ringens (Thunb.) Schott
・ヒメテンナンショウ(A. sazensoo (Blume) Makino
・マムシグサ(A. serratum (Thunb.) Schott、異名:A. japonicum Blume)(
ユキモチソウ(A. sikokianum Franch. et Sav.
・ミツバテンナンショウ(A. ternatipartitum Makino
・ナンゴクウラシマソウ(A. thunbergii Blume
・ウラシマソウ(A. urashima Hara
・ムロウテンナンショウ(A. yamatense (Nakai) Nakai

:「園芸植物大事典」と「The New RHS Dictionary of Gardening」では、上記のように、A. japonicumA. serratum の異名とされていますが、「世界の植物」では、A. serratum の和名はカントウマムシグサ、A. japonicum の和名はマムシグサと、別種として扱われています。両種の違いは、カントウマムシグサは関東地方、マムシグサは西南日本に分布し、マムシグサの方が付属体がやや細いそうです。


分類
 分類には諸説あるようです。Murata氏によると、生態的・形態的特徴から、以下の11節(section。以下、sect.)に分類され、フデボテンナンショウ節は更に3つに分けられるそうです。各属に属する種は省略しました。なお、日本原産の種のほとんどは、マムシグサ節(sect. Pedatisecta)に属するそうです。
sect. Dochafa
sect. Trisecta
sect. Franchetiana
sect. Arisaema(テンナンショウ節)
sect. Pedatisecta(マムシグサ節)
sect. Tenuipistillata
sect. Tortuosa(マイズルテンナンショウ節)
sect. Clavata(アマミテンナンショウ節)
sect. Sinarisaema
sect. Decipientia
sect. Fimbriata 1(フデボテンナンショウ節)
   Fimbriata 2
   Fimbriata 3


利用など
 ヒマラヤ地方では、一部の種が食用にされているそうですが、有毒の種もあるそうです。また、球茎は漢方薬としての利用があるそうです。鎮静、去痰、除湿、鎮痛、消腫等の効果があるそうです。


本棚以外の参考文献
  • Richardson, C. R., et al. Sex-ratio variation among Arisaema species with different patterns of gender diphasy. Plant Species Biology. 16: 139-149. 2001.

  • 平嶋義宏.生物学名命名法辞典.平凡社.1994年.

  • 堀田満.テンナンショウ.世界の植物.2112〜2116ページ.朝日新聞社.1977年

  • Watanabe, K. et al. Cytology and systematics in Japanese Arisaema (Araceae). Journal of Plant Research. 111: 509-521. 1998.

  • Murata, J. Present status of Arisaema systematics. The Botanical Magazine, Tokyo. 103: 371-382. 1990.

(2004.6.13.)
 
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