植物画

花空庭園
荒俣 宏平凡社1992年7月17日5,631円(税抜き)

内容
31章から成るボタニカルアート(植物画)の博物誌。一章につき一冊の植物画集の紹介とそれにまつわる話を紹介している(植物にまつわる話だけの章もある)。巻末に書名索引、人名索引、植物名索引、参考文献付き。

コメント
先ず、目を引くのがレイアウト。本文中にイラストがデンと居座って、文字が避けているような感じ。読み難いと言ったらそれまでですが、見る楽しみも考慮するなら、イラストは片隅に追いやって文章の引き立て役になるよりも、この本のように配置されることで目立って存在を主張しているかのようで良いと思います。エピソードも面白かったです。


花の図譜 ワンダーランド
荒俣 宏八坂書房1999年9月10日7,800円(税抜き)

内容
植物の図譜の歴史について。図版は、カラー80葉(64ページ)、モノクロ195葉。荒俣氏が今までに色々な本に書いた解説を編集し直して一冊にまとめた本のようである。巻末に、人名索引、書名索引、事項索引、掲載図版一覧付き。

コメント
収録されているカラーの図譜が鮮明で奇麗です。内容としては、図の見方(寓意の読み方)から始まっており、博物画を「読む」ための教科書にもなりそうです。それと、内容にも書いたとおり、著者が今までに書いた解説をまとめたものであるため、既に絶版となったり、入手が困難になった本に書いてあった解説も再録されているのも嬉しいです。


アラマタ図像館4「庭園」
荒俣 宏小学館・小学館文庫1999年10月1日733円(税抜き)

内容
小学館文庫のアラマタ図像館(全6巻)の第4巻。「フローラの神殿」の文庫版だが、初版も収録されている。見開きの右側が初版、左側が第2版になっており、どのような変更があったのか比較できる。荒俣氏による解説は「フローラの神殿」の解説に加筆・改訂され、本の後半にまとめられている。また、「フローラの神殿」に納められた植物画だけでなく、東洋と西洋の植物画の比較(荒俣氏の図像画入門)、「薬用植物事典(ショームトン他編;フランスでリンネ分類学を喧伝した図鑑)」も収録されている。

コメント
文庫本サイズなのが物足りないですが、充実した内容の割に手頃な値段であることを考慮するとかなりお得です。

このシリーズの第6巻「花蝶」には、エーレトの「花蝶珍種図録」、メーリアンの「スリムナ産昆虫の変態」、ハリスの「オーレリアン」が納められていますが、絵の説明が昆虫に偏っているので、このページでの紹介はここまでに留めたいと思います。


花空庭園
荒俣 宏平凡社・平凡社ライブラリー2000年4月15日1,500円(税抜き)

内容
1992年に発刊された同タイトルの単行本の文庫版。

コメント
単行本版の特徴であったくねくねしたレイアウトが単純化されている点は残念です。


植物図譜の歴史 芸術と科学の出会い
著者/ウィルフリッド=ブラント
訳/森村謙一
八坂書房1986年6月10日9,800円(税抜き)

内容
1951年に刊行された‘The Art of Botanical Illustration(植物画の芸術)’第2版の翻訳本。古代から現代に至るまでの、植物画の進歩の歴史について24の章に分けて解説している。付録として「W・H・フィッチの植物画入門(「園芸通信(1869年)」からの再録)」、「イギリスの主要植物図譜一覧」、「参考文献一覧」が収録されている。カラー図版は65葉(48ページ)で、他の図版はモノクロ。

コメント
オリジナルが発刊されてから半世紀が経とうとしていますが、ボタニカルアートの歴史を辿る上で欠かせない本だと思います。


蘭花譜
加賀正太郎同朋舎出版1995年4月8日1,942円(税抜き)

内容
ニッカウヰスキーの創設者である加賀正太郎氏が育成したランの花譜。描かれているランはカトレヤ系、シンビジウム、デンドロビウム、パフィオペディルム、その他。図版の他、加賀氏自身が執筆された蘭花譜を作るに至るまでのいきさつと、中山禎輝氏による加賀氏の略歴などが書かれている。

コメント
木版が主のようですが、緻密で奇麗です。手元にある花譜の中では一番のお気に入りです。


フローラ逍遙
澁澤龍彦平凡社・平凡社ライブラリー1996年10月15日1,456円(税抜き)

内容
1987年に発刊された同タイトルの単行本の文庫版(単行本から改められた点がある。)。昭和59年7月から61年6月にかけて、雑誌「太陽」に連載された「弄筆百花苑」に一篇を加えて一冊の本にまとめたらしい。25種類の植物についての随筆。一つの植物につき3枚の植物画がカラーで収録されている。巻末に八坂安守氏による図版解説がある。

コメント
この本の植物画はあくまでも挿し絵でしかなく、植物画の本というよりむしろ文学です。澁澤氏の他の作品を知っていれば、他にもコメントのつけようがあったかもしれませんが。植物画とすれば、東西の様々な植物画が集められて見応えがありました。


ボタニカル・アート
編著/ノーマン&イヴ・ロブソン
訳/染谷清一郎
監修/岩佐亮二
千毯社1991年5月3,398円(税抜き)

内容
17世紀から20世紀に西洋で活躍したボタニカルアーティストの作品をそれぞれの作者に付き1〜4葉ずつ、計40葉集めた作品集。28cm×38cmと大型。編著者の注釈(主に制作者のこと)は巻頭に6ページだけあり、他の説明(制作者名、初出、出典等)は、作品の裏に書かれている。

コメント
絵を本から切り離して飾ることが出来るようにという配慮(?)からか、とにかく大きいです。説明が簡単ですし、各制作者の代表作が収められているのかが疑問ですが、この本を読めば(見れば?)、近世から現代に至るまでのボタニカルアートの歴史を一瞥できると思います。


植物画の描き方 新しい余暇の楽しみ
林 炎星マール社1981年3月18日2,200円(税抜き)

内容
ボタニカルアート(一般の絵画のモチーフと異なり、いかに植物学的に正しく描くかに重きが置かれている植物画)の入門書。アクリル絵の具を中心にした解説の他、透明水彩絵の具での描き方についても紹介している。続編もある。

コメント
植物画の描き方を紹介した本は他にもありますが、私が描きたいと思っている画風に最も近いということでこの本を購入しました(画材が水彩とコンピュータという違いがありますが。しかも、私の絵はボタニカルアートなんて言えそうもないです。)。CGで植物画を描きたいという人にも、第2章の「基本技法」は役に立つと思います。


美花選(春)、同(夏・秋)
ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ学習研究社春・1986年5月28日
夏・秋・1986年7月24日
絶版
各28,000円

内容
18〜19世紀にフランスで活躍したルドゥーテの作品「美花選」の復刻版(「植物図譜の歴史」や「ボタニカル・アート」の中では「名花選」として紹介されている。)。大きさは、約27cm×約36.5cm。「美花選」の全144作品が、花の咲く季節に併せて、春編と夏・秋編にそれぞれ72葉ずつ分けて紹介されている。各巻の巻末に、荒俣 宏氏の解説付き。

コメント
既に絶版になっていたため、古本の通販で手に入れました(ちなみに古本での価格は全2巻セット・ケース入りで、本自体は38,000円、消費税と送料を加算して41,000円でした。)。ボタニカルアート関連の書籍を読んで購入を決めたのですが・・・。率直に言ってしまうと、「花の図譜 ワンダーランド」に載っている同じ作品と比べたら汚れたように見えます(特に背景は茶色に変色してます)。「花の図譜 ワンダーランド」は色調補正のような何らかの加工を施したのに対して、「美花選」はオリジナルに忠実なのかもしれませんが。望再販。
各巻末の説明は、「花の図譜ワンダーランド」に再録されています。

国立国会図書館にオリジナルがあるようです。ホームページで作品の一部が公開されています。


バラ図譜I、同II
ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ
Pierre=Joseph Redouté
学習研究社I・1988年9月
II・1988年11月
復刻版・2003年7月7日
各28,000円(税抜き)

内容
 「美花選」と同じルドゥーテの作品で、バラを集めた作品。オリジナルは「Les Roses」の第一版(1817〜1824年)。図版の解説は、クロード=アントワーヌ・トリー(Claude-Antoine Thory)の物を鈴木省三氏が抄訳、手を加えている。オリジナル全169図のうち、I巻に1〜85図、II巻に86〜169図が収録され、更に、オリジナル第三版の扉絵が加えられている。また、I巻の巻末には大場秀章氏の解説(「I バラの歴史」、「II バラの特徴」)、II巻の巻末には荒俣宏氏の解説(「ルドゥーテ薔薇物語」)と索引がある。レイアウトは、見開き2ページの左が解説で右が図版。大きさはA3版よりやや大きめ。I巻191ページ、II巻189ページ。
 1988年に出版され絶版になっていたが、2003年に復刊した。このページで紹介している物は復刻版であるが、基本的に復刻前のものに手を加えていないそうである。
 なお、概要については、荒俣宏氏の「花空庭園」と「花の図譜 ワンダーランド」、大場秀章氏の「バラの誕生」の中で触れられており、これらの本の中に作品の一部がカラーで掲載されている。

コメント
 緻密で繊細なルドゥーテのバラには溜息が出るばかりです。高かったですが、良い買い物をしました。
 これまでこのページでは、絶版されていたために番外扱いで紹介していましたが、復刻版が出版されたお陰で、解説を加えることができました。復刊をお知らせ下さった、通りすがりの薔薇好き様、H. T.様、ありがとうございました。


The Roses
Pierre=Joseph RedoutéTASCHEN1999年39.99USドル

内容
 海外版「バラ図譜」。英、独、仏語の3カ国語併記。解説(「ルドゥーテとバラの栽培」、「ルドゥーテ:テクニックと印刷の方法」)、図版、用語解説(主にバラに関すること)、索引(学名、英・独・仏)から成る。学研の「バラ図譜」と比較して、図版が小さい、色が微妙に違ったり、背景のシミや汚れが目立たない(画像に何らかの処理をしているのか?)、8・Rosa muscosa に果実が描かれている、28・R. carolina と41・R. bifera officinalis に果実が描かれていない、43・R. centifolia mutabilis の花弁に病気に罹ったかの様なシミが描かれている、116・R. gallica latifolia の背景にバラの図を反転した様なシミがある、クロード=アントワーヌ・トリーの解説がない、等の違いがある。ほぼA3版。255ページ。

コメント
 洋書ですが、図版を見るだけなら差し支えはないと思います。でも、図を交えた解説は日本語版より詳しいので、読んでみると面白いと思います(バラの植物学的解説、美術の中のバラ等なら、和書でも事足りるという意見もあるかもしれませんが)。値段も、日本語版と比べて、手頃なのも長所かもしれません。
 参考までに、私は行きつけの本屋で、5000円で購入しました。


鈴の鳴る道、あなたの手のひら
星野富弘偕成社鈴・1986年12月
あなた・1999年4月
各1,400円(税抜き)

内容
事故で体の自由を失って以来、筆をくわえて詩や絵を描いていらっしゃる星野富弘氏の詩画集。

コメント
花びらの一枚一枚が丁寧に描かれていていますし、詩も印象的です。私にとっては、初心に返るための本でもあります。富弘美術館の web site はこちらです。


フローラの神殿/TEMPLE of FLORA (復刻版)
ロバート=ジョン=ソーントン
編著/荒俣 宏
リブロポート
倒産
1985年4月20日8,500円(税抜き)

内容
「フローラの神殿(原題:‘TEMPLE of FLORA’)」は、リンネ分類学を広めるために制作された図版集「新図説リンネ氏雌雄蕊分類体系」の第3部に当たる。制作したソーントンの発案で、植物の博物画としては画期的に、演出を目的とした背景が描かれているのが特徴。植物学的価値はないが芸術的価値は高く、植物図譜の至宝と評されている。
この本は、1812年に刊行された第2版の復刻版であり、前半が荒俣氏による解説(1:「フローラの神殿」が制作されるきっかけとなったリンネ分類学について、2:制作者のロバート・ソーントンの生い立ち、3:「フローラの神殿」の成立、の3部構成)、後半が「フローラの神殿」本体で、見開きの左ページが荒俣氏による図の解説、右ページが植物画になっている。

コメント
インパクトが強烈です。色々なボタニカルアートを紹介している書籍の中でも際立っており、すぐに「フローラの神殿」からの引用だと分かるのは背景などが描かれているためですが、その演出の巧みさには感嘆してしまいます。このような絵をCGで再現できたらなぁ、などと思っています。

噂では出版社が無くなったらしいのでこの本を入手するのは困難かと思われますが、1999年に小学館から発刊された「アラマタ図像館4「庭園」」に再録されています。こちらは文庫版ですが、初版の絵も掲載されています。また、カラー図版は5葉しかありませんが、「花の図譜 ワンダーランド」にはA5版のサイズで、初版の絵が納められています(「アラマタ図像館4「庭園」」で見る限り第2版より初版の方が鮮明です。「花の図譜 ワンダーランド」の絵はさらに奇麗です。)。




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