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Yonemochi Tack 's Moonlight
「研究室2」 作:Yonemochi Tack


翌日、朝、カーテンを開けると、眩しいほどの陽射しを感じた。まだ夏には少し早いというのに、暑い一日になりそうだった。薄いチノパン生地のズボンをはき、Tシャツを着ながら、−こんな日は、川原さんも薄着に違いない−、そんな思いが頭をよぎると、急いで支度をして、研究室へと向かった。
しかし、研究室の扉を開けたとき、まず目に入ったのは、藤沢さんだった。
「おう、青山か。今日も早いな」
藤沢さんは、とても文系の院生には見えない。外見と言い、振る舞いと言い、どう見ても体育会系だ。
「この間のやつどうだ?読んでみたか?」
「あ、はい。ありがとうございます。今、読んでますが、僕にもわかりやすく面白くて、勉強になります」
「そうか、そうか、そうだろ、そうだろう。ぐふふふ」
そんな遣り取りをしていると、奥の方から川原さんが姿を見せた。
体にフィットしたオレンジ色のTシャツに、薄いベージュのキュロット。思った通りの夏服だったが、僕の想像をはるかに超えていた。バストが大きく張り出しすぎているため、胸の真ん中あたりにある筆記体で記されたTシャツのデザインが両脇に引っ張られ、少し不自然な形になっている。
「あ、おはよう、青山君。ちょうど良い所に来た。ねえ、藤沢君、青山君、朝から悪いんだけど、ちょっと雑用の手伝いをお願いしても良いかな?この本棚の本、隣の棟に持っていくよう言われてるんだけど・・・」
結構な量の専門書だ。
「えっ!?今すか。ちょっとまずいなー」と藤原さん。
彼は、筋肉質のマッチョな体つきをしているくせ、めんどくさい力仕事となると、すぐ、さぼろうとする。
「これからすぐ読書会なんすよ」
読書会なんて、ほんとかどうかわかったもんじゃない。でも、さすがに川原さんも「うそでしょ?」なんて聞くわけには行かない。
「僕、この後、特別、用事ないし、手伝いますよ」
「おお、そうか、青山。悪いな。まあ、朝の軽い運動に良いだろう。お前は、もっと運動した方がいい」
その運動して鍛えた筋肉も、こういうときに働かないのでは、何の意味もない。
「じゃあな。そのうち、飯でも喰いに行こう。おごってやるよ」
そのせりふは何度も聞いたが、藤沢さんがおごってくれたことは、ジュース一本としてない。
しかし、読書会というのは本当だったのかもしれない。隣の部屋にある机の上に広げていた本やらノートやらを手早くまとめ、藤沢さんは、そそくさと出ていった。
「まったく。彼はいつもこうなんだから。青山君、ごめんね。もう少し、誰か来るのを待ってからやっても良いんだけど・・・」
「いや、大丈夫ですよ。やってしまいましょう」
僕は、一方で、藤沢さんにも感謝していた。おかげでまた、川原さんと二人きりになれた。重い専門書を運ぶ肉体労働も、川原さんと二人なら、悪くない。

そう思ったのは、少し甘かった。小柄で華奢な僕に、その仕事はけっこうきつかった。全て運び終わり、隣接する棟を出たとき、汗だくになり、正直へとへとになってしまった。川原さんも汗をかいている。オレンジの色のTシャツは、汗で濡れ、下に付けたブラジャーの形がくっきりと浮き出てきた。
「ごめんね。朝からこんなこと頼んじゃって。お礼にもならないけど、自販機で何か飲み物でも買って来るから、そこのベンチで待ってて」
そう言うと川原さんは、僕を置き、小走りで去っていった。
5分くらい待っただろうか。ハンドバックを小脇に挟み、両手に紙カップのソフトドリンクを持ちながら、川原さんが、また小走りでやって来た。
「ごめんねー。自販機の前にめずらしく何人か待っていて遅くなっちゃった。あ、それと、何が欲しいか聞くの忘れてたから勝手にオレンジジュースに決めちゃったけどいいよね?」そう言いながら、僕の座るベンチの方へと近づく。
「あっ!」
僕の前まで来たとき、突然、彼女は姿勢をくずしてしまった。右手に持っていたカップジュースが、僕のズボンのちょうど中程にかかってしまった。
「ご、ごめん。本当にごめんね・・・」
川原さんは、紙コップをベンチに置き、ハンドバックの中からハンカチを取り出すと、チノパン生地のズボンの上にふりかかったジュースを拭こうとした。
「あ、だ、大丈夫ですよ、自分でやりますから」
間の悪いことに、ジュースのかかった部分には、股間のあたりも含まれていた。とっさに、僕は、彼女からハンカチを取ろうと手を伸ばした。
だが、彼女は僕の手を軽く払いのけ、ズボンにかかったジュースを拭き続けた。
「本当にごめんね。クリーニング代はちゃんと私が払うから」
彼女の手にあるハンカチは、ジュースの直撃した右太股のあたりから、徐々に上の方へとあがってくる。
しかし、僕は、もう完全に気が動転していて、何の反応もできなかった。
ついに彼女は、股間のあたりを拭き始めた。ハンカチと薄いチノパンの生地を通し、川原さんの手の感触が、僕のあそこに伝わる。幸い勃起してはいなかったが、こじんまりとした僕のそれの感触は、彼女の手にも伝わっているはずだった。
僕は、完全に固まってしまい、ただ、彼女がジュースを拭き終わるのを待つこしとかできなかった。
しかし、彼女は、ゆっくりと丁寧に拭き続けた。別段そこだけをゆっくり拭いたわけではなかったのかもしれない。しかし、僕には、それがとてつもなく長い時間に感じられた。ハンカチでジュースを吸い取ろうとしているのだろう、川原さんは、ハンカチの上から、手のひらを乗せ、軽くもみながら押した。しかし、そこは、ちょうど、僕のあそこ、はっきり言えば、ペニスと陰嚢の上だった。とにかく気がかりだったのは、そうして拭かれている内に、僕のものが反応してしまうことだった。
−お願いだから勃たないでくれ!
しかし、そう願えば願うほど、かえって意識してしまう。彼女に拭かれる中、僕のものが徐々に頭をもたげつつあるのを感じた。恥ずかしさで、もう泣きそうだった。
完全に勃起してしまう直前、彼女の手は、やっと左足へと移動した。
彼女の目の前で、僕のものが硬くなってしまったことにかわりはないが、それでも、上から触られるよりは、はるかにましだった。また、幸いなことに(?)、僕のテントは、小さくて目立たなかった。彼女も気がつかなかったかもしれない。ただ、そう願うだけだった。
「すぐに拭き取ったけど、このままじゃシミになっちゃうから、ちゃんとクリーニングに出すのよ。お金はちゃんと私が払うから」
「そ、そんな、そこまで・・・」
「いいから!」
ただでさえ気が動転していた僕に、それ以上反論することはできなかった。
僕が素直にうなずくと、彼女は、「大丈夫かしら」と、ジュースのかかったあたりに目を向けた。その時、彼女の顔がわずかに微笑んだように見えた。
しかし、彼女はすぐに真顔で顔をあげた。
「手伝ってもらったことのお返しがこんなことになっちゃって。なんて言ったらいいのかしら、本当に申し訳ないわ」
「い、いえ、そんなこと。じゃ、と、とりあえず、一度、家に帰って着替えてきますね。また、午後、荷物取りに研究室に来ますから」
居た堪らなくなり、僕はその場を離れた。

クリーニング代を出すと川原さんは言ってくれたが、汚れたチノパンは安物だし、その必要もないだろう、そう思い、汚れたズボンは、汗まみれになったTシャツと一緒に部屋の洗濯機で洗ってしまった。
正直言って、ズボンのシミなどどうでも良かった。とにかく気になったのは、ズボンとハンカチの上からとはいえ、川原さんに、僕のあそこを触られてしまったことだ。あの時、川原さんは、僕のそれ全体を手のひらで包み込むようにしながら、軽くもみあげた。
確かに、川原さんも、ちょっと気が動転していたかもしれない。しかし、川原さんの手に僕の小作りなそれの感触が伝わったことに間違いはない。しかも、拭かれている内、僕の貧弱なそれは、小さいなりに勃ち始めてしまったのだ。その後、川原さんは、すぐ、左足の方へと手を動かしたわけだが、それは、僕の勃起に気がついたからかもしれない。川原さんのかすかな微笑みが思い起こされる。あれは、どういう意味だったのだろう。
普通の、人並みのものなら、まだいい。ジュースをこぼしたのは川原さんだし、別に僕が何か悪いことをしたわけではない。しかし、僕のは・・・。
そう思い、川原さんがしたような感じで、下着の上からそれを軽く押さえた。男性としては小さな僕の手のなかに全部すっぽり収まり、なおかつ、まだ手の平に余裕を感じる。ペニスも短ければ、睾丸も小さい。
この情けないものが、川原さんの手に。そう思っていると、ゆっくりと硬くなり始めた。小さな突起物が、小さいなりに硬くなっていく感覚が手のひらに伝わる。そう。今、僕の手のひらで感じているこの感覚を川原さんも感じたのだ!
荷物を研究室に置いたままだったので、一度、研究室に戻らなくてはならない。しかし、今の僕は、とても川原さんを直視することはできなかった。だが、川原さんは心配して待っているだろう。このまま僕が行かないと、川原さんも帰宅できなくなってしまう。
午後もずいぶんと過ぎた頃、優柔不断な僕の決心もやっと決まった。似たようなノータックのズボンと少しサイズの大きい濃紺のポロシャツを着ると、研究室へと向かった。