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Kamuri Prominent 's Moonlight
「Fitting room 1」 作:かむりプロミネント


「あのー」

小さな声がカーテン越しに聞こえた。

マナーとして、こちらからカーテンを開けるわけにはいかないんだけどなあ

お客様。

「あのー、すみません、あの、ひっかかっちゃって。」

細めに開かれたカーテンから、今にも泣き出しそうな声と共に

さらさらとした髪が現れた。

女の子のような髪の毛、膝に乗せてゆっくりブラシを入れたくなる。

「どうかなさいましたか。お客様」

「あのう、ひっかかって、とれなくなってしまって」

消え入りそうな声をつかまえようと、カーテンを全開にしてしまった。

私の予想が当たってたら、きっと声の一つもあげてしゃがみ込んじゃうかも

「ひっ」案の定、そのこは鏡に背中をつけてしゃがみ込もうとしながら、

膝をすりあわせてもじもじしていた。

「どうかなさいましたか、お・きゃ・く・さま」

片足を中に差し入れる。

普通なら2人ではいることのないこの空間。だから片足を踏み込ませるだけでも

十分な威圧感があるわよ、ね、

やっと観念したのか

「あのーズボンのファスナーが引っかかっちゃったんです。それで取れなくなって。」

「あらーそれは大変。ファスナーが痛むと商品になりませんもの。」

下を向いてしまった。思った通りのタイプ。

体がジンジンしてくる。でもだめ。一気にほおばってもつまらない。