「裁判官Who's Who」

紹介記事


「毎日新聞」1面/コラム「余録」

 百余人の裁判長を俎上(そじょう)にした「裁判官Who'sWho」(現代人文社)が、司法関係書としては記録的ベストセラーになっている。弁護士らの評判を集めた人物評がふるっているせいらしい▲判決は普通は素っ気ないのに、「こういうことで残念だけれど」と丁寧に説明して、敗訴側の弁護士を納得、感心させた裁判官がいる。「謙虚で物腰柔らか」といった形容もあるにはあるが、探すのが大変。酷評はズラリと並ぶ。「ひれ伏す人に寛大でも逆らう人には強権的」「弱い者への同情心がない」などなど。「人を見下す」との言葉がやけに目立つ▲取材チーム代表の池添徳明さんは「裁判官には当たり外れがあることを皆に知ってほしかった」と出版の狙いを語る。裁判は独立しているから、裁判官によって判決が異なるのは無理もない。だが、個人の資質や人柄で左右されるのはかなわない▲最近も難民申請中に強制収容されたアフガニスタン人9人をめぐって、5人は解放、4人は収容継続と明暗を分ける判断が示されたばかりだ。裁判部が違ったせいだが、条件が似たり寄ったりの当事者には当たり外れとしか言いようがない。裁判官は選べないのだから、やるせない▲同書の救いは、「ロス疑惑」の三浦和義さんが「裁判官たちはおおむね公平だ」とする一文を寄せていることか。マスコミを相手に500件もの名誉棄損訴訟を起こし、ほとんどで勝訴した経験に基づく。それでも「3人に問題があった」という▲ワールドカップでも、審判によってファウルの判定が微妙に異なる。試合の流れを変えることもしばしばだが、裁判官ほどに当たり外れが取りざたされないのは、大観衆を前に行われているせいだろう。司法改革の参考にはならないか。

 「毎日新聞」2002年6月10日付(1面/コラム「余録」)


【書籍データ】

『裁判官Who's Who/首都圏編』

池添徳明+刊行委員会/編著

現代人文社/発行、大学図書/発売

A5判、407ページ

2900円(本体価格)

ISBN4-87798-232-9

2004年12月16日発行

『裁判官Who's Who/東京地裁・高裁編』

池添徳明+刊行委員会/編著

現代人文社/発行、大学図書/発売

A5判、303ページ

2800円(本体価格)

ISBN4-87798-082-2

2002年5月1日発行


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