コラム/インターネット論

◎大岡みなみの「HPジャーナリスト」


(7)「リンク自由」はネットの基本

 よく、個人のホームページのフロントページ(表紙)に、「このホームページはリンクフリーです」などという断り書きが表示されているのを見かける。これは、ホームページを作った人からの「だれが、どこからリンクを張っても問題ありません。ご自由にどうぞ」という意思表明である。ご多分に漏れず、僕も自分のホームページにその旨のコメントを掲載している。

 しかし、実を言えば「リンクフリー」などと、わざわざ断る必要はない。各ホームページの間でリンクを自由に張ることは、インターネットの世界を支える基本であるからだ。

 「リンクを張る」という行為は、単にホームページのアドレス(URL)を紹介しているだけであって、本や雑誌で言えば、書名や出版社名を紹介しているようなものに過ぎない。紹介するのは基本的に自由である。批評や評論が相手の許可を得なくても自由にできるのと同じように、リンク(紹介)も自由でなければならない。

 そもそも、リンクはインターネットの世界には必要不可欠な行為だ。ホームページにアクセスする際に、頼りになるのはURLだけである。無数にあるホームページの中から特定のページを訪問したり、訪問してもらったりということが気軽にできるのは、よそのページからリンクされているからだ。それでこそ訪問者の輪は広がる。もちろん、URLを一つずつ打ち込んでもアクセスできるが、そんな面倒くさいことをする人は少数派と言っていい。リンクを制約すれば、インターネットの世界は成り立たなくなってしまうだろう。

 それに、インターネット上に著作物であるホームページを開設した時点で、世界中に向けて「見に来てください」とURLを公開しているわけで、不特定多数の人々からアクセスされるのを前提にしているはずだ。それと同じように、リンク(紹介)されることも前提にホームページを公開していると考えていいだろう。

 では、法律的にはどうだろうか。リンクを張るという行為が、著作権法の「複製権」を侵害するかどうかということになるが、インターネットの問題に詳しい弁護士の山下幸夫さんによると「複製権の侵害には当たらず、問題はない」という。書籍や論文で言うならば、参考文献紹介や出典表示と同じわけだから、相手の許可を得なくても自由にリンクできると考えられる、という。

 だからと言って、どんなリンクの仕方をしても問題ないというものでは決してない。リンク先の意図をねじ曲げるような悪質な形でリンクを張ると、著作権とは別の法的問題(名誉毀損などの不法行為)が生じることは、胆に命じておいた方がいいだろう。

 リンクを張るのは自由である。とは言うものの、僕は自分のページからリンクを張る場合、リンク先のホームページの作者(管理人)にあらかじめ断って、許可を得てから掲載するようにしている。相手が公的性格を帯びていると思われるページだと、たまに連絡をしないこともあるが、個人のホームページを紹介する際には必ずメールで連絡する。

 「リンクしました」とか「リンクさせていただいてもよろしいでしょうか」などと、リンク相手に対して断りのメールを出すのは礼儀と言うか、エチケットの問題だろう。もちろん法律的にはやらなくても構わないが、できれば連絡した方がいいのは言うまでもない。近所の人に朝のあいさつをするようなもので、社会常識の範囲ではないだろうか。

初出掲載(「ニフティ・スーパーインターネット」1999年11月号)

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