◆このコーナーは、池添徳明(=大岡みなみ)が大学で受け持っている講座「現代ジャーナリズム」の受講生と、ジャーナリズムに関心のある一般の皆さんを対象としたページです。
◆ここには「現代ジャーナリズム」の講座で学生に配布している講義レジュメを掲載しています。授業に参加できなかった学生や授業内容に関心のある方は、このページをプリントアウトするなどして参考にして下さい(ただし授業は必ずしもレジュメ通りに進行しているとは限りません)。
◆掲載したレジュメは2003年度版のものです。2004年度以降はこれに加筆修正したものを配布しています。授業全体の流れは前年度とほぼ同じですが、授業の中で例示する時事問題に関するエピソードやトピックスなど細かな部分は、前年度とは大きく異なります。
◆なお、2008年度からは、講義全体の構成を2007年度以前のものから少し改編し、2011年度からはさらに大幅に改編しました。講義回数も正味で全15回となっています(定期試験は、最終講義15回目の翌週に実施)。
◆実際に授業で使っているレジュメには、池添徳明(=大岡みなみ)の略歴や本サイトのアドレスなども明記していますが、このページではそれらの情報は除いて、レイアウトも一部変更して掲載しています。また授業では、レジュメのほかに参考記事や関連資料などを毎回配布していますが、ここではそれらの掲載は省略しました。
2013/03/02(加筆修正)
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現代ジャーナリズム(1) 2003/9/24(池添徳明)
●イントロダクション
・過去の出来事を活字(映像)で確認 → 納得・満足・安心 → なぜ?
・「伝えること」→「瓦版」→「報道」→「ジャーナリズム」
・宣伝・PR・アジテーション・広報との違い
・憲法第21条[集会・結社・表現の自由、通信の秘密]
1. 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2. 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
●この授業の狙い
報道・ジャーナリズムの役割とは何か、報道・ジャーナリズムは何のために存在しているかを理解し、その課題や問題点を考える。その上で、メディアを主体的に見る目を養うとともに、「伝える」ことの大切さ・意味・意義を学ぶ。
●この授業の流れ
1)ガイダンス/新聞記者・ジャーナリストの仕事
2)取材の実際(流れ)…記事はどのように作られていくのか
3)「記者」って何だろう…どこを向いて何のために伝えるのか、視点と切り口
4)被疑者の人権、被害者の人権…だれのために伝えるのか、判断基準、公益と法と報道
5)整理部記者って何?…見出しとニュースの価値判断と問題意識
6)記者クラブって何?…記者クラブは必要か、実態と課題、発表と独自取材
7)新聞社を去る記者たち…制約の多い新聞記者、辞める理由、「社畜」でない記者に
8)ネット社会の光と影…個人が主役、世界へ情報発信、怖さと楽しさと人権と
9)新聞だけじゃない(1)…テレビ、ドキュメンタリー、映画、NHKニュース、雑誌
10)新聞だけじゃない(2)…「反人権」週刊誌とワイドショー、オウム、冤罪
11)言論・報道の自由とは…盗聴法、個人情報保護法、言論活動と報道
12)組織から離れてみたら…フリージャーナリストと組織内ジャーナリスト
13)報道の役割と使命とは…国益と公益、批判精神、判断材料、民主主義社会
14)「伝えること」と問題意識…「伝える」のは記者だけか、情報の受信と発信
15)まとめと試験
※授業の節目で、随時リポートを書いてもらうことがあります(不定期)。
●新聞社の一般的組織(編集局)
■本社(編集局長、部長、デスク、記者クラブキャップ、記者)←指揮命令系統
■支局(支局長、デスク、キャップ、記者)←指揮命令系統
■政治部、経済部、外報部(外信部)、社会部、学芸部(文化部)、科学部、運動部
■遊軍、特報部、企画編集部、編集委員、論説委員、写真部(映像センター)
■整理部、校閲部
■支社、支局、総局=全国県庁所在地、主要都市、海外(総局)
■取材網・人員・取材力・蓄積・ノウハウ
■通信社(共同通信、時事通信、AP、UPI、AFP、ロイター、タス、新華社)
→記事・写真を配信
■テレビ局の報道部
■出版社(雑誌)の編集部
●用語
■1面トップ、社会面アタマ、社会面カタ、社会面ヘソ
■ベタ記事、○段見出し
■締め切り時間と降版時間
■記事の差し替え
■版替え、最終版(各社で違う、輸送体制)
■出稿(新聞社)、入稿(出版社)
現代ジャーナリズム(2) 2003/10/1(池添徳明)
●新聞記者(取材記者)の一般的仕事
■本社=記者クラブ、遊軍
■支局=警察(事件・事故)、行政、議会、選挙、街ダネ、高校野球
■記者発表と独自取材
■決まりもの・言われてやる仕事・ルーティーンワーク
■省庁(警察・都道府県庁・市役所)記者クラブ詰め、広報連絡
■宿直、警戒電話、警察(サツ)回り、夜回り朝回り(夜討ち朝駆け)
■捜査本部事件、記者会見
■調査報道
■連載企画、ルポ
●記者クラブ
・団結して権力に対抗、権力監視、情報を引き出す
・知る権利
・権力と癒着、閉鎖性、特権意識
・情報操作、一方的な情報の垂れ流し
・情報の洪水、裏付け取材のプロセス、締め切り時間、限られた人数
・公益性(←根拠)
●客観報道
・客観報道とは何か
・不偏不党、公正中立
・事実とは何か
・伝える「主体」はだれか
・事実のどの部分をどう選択して伝えるのか
・何を何のためにどのように伝えるのか
・報道・論説・解説・主張
・いろいろな立場と考え方と見方を知る…判断材料を提供
・匿名と署名
●組織取材
・多角的な視点、議論
・圧力や妨害に対抗して言論・報道の自由を守る
・生活の保障
・サラリーマン化した組織の弊害
・横並び、個性を排除
・編集方針という形の圧力
●ジャーナリズムの在り方
・独自の視点、切り口
・さまざまな意見を紹介
・弱い立場にいる人々の声を代弁
・権力批判、批評、論評
・問題提起
現代ジャーナリズム(3) 2003/10/08(池添徳明)
●具体的な事例から
1)「ナチ式敬礼」に疑問
第一報の問題提起で高校総体のナチ式敬礼は激減
→「激減の数字を出すのは魔女狩りだ」と続報はボツに
2)朝鮮人学校生への嫌がらせ
全国で100件以上、神奈川でも嫌がらせや脅迫電話
→「記事を出すと真似する者が出る」とボツに
3)県議が県議会委員会で差別発言
「部落差別はない」と発言、取り消し
→県から圧力、「会社と議会の関係に配慮」とボツに
●記者って何だろう
◆どこを向いて何のために伝えるのか
・タブーと言うより自己規制、当たらず触らず、事なかれ主義
・波風立てず、時流には逆らわず、賛否両論避ける
・「発表ジャーナリズム」のまん延
◆特ダネって何だ/一日早く発表を書くのが特ダネか?
◆掘り下げ、問題提起し、隠されているものを引き出すことこそ記者の仕事
◆何が問題なのか、考える材料を市民に提供することこそ記者の仕事
◆人権感覚の欠如
◆社会的弱者、取材対象者への共感性を
◆大切なのは喜怒哀楽、感動、感性、センス
◆そして、記者の視点、切り口、問題意識
◆記者の主張/何を訴えたいのか、何を伝えたいのか、何を書きたいのか
◆何のために記者をやっているのか、なぜ記者になったのか
●校長たちの苦悩と葛藤
◆原点は「こいのぼり」を揚げ続けた校長
◆「人間の生き方」「民主主義の在り方」テーマに
・割り切れないから苦悩する
・「変節」を恥じない人々
・信念を持った組合活動だったか?
・組織の中で「役割を演じた」だけなのか?
◆学校、会社、組合、司法、マスコミでも…
・波風立てず、楯突かず、逆らわず、従順に
・「沈黙」「保身」「思考停止」
●エスカレートする「強制」
◆「国旗」と「国歌」を決めただけなのに…
◆「異論」「異質な存在」「例外」を許さない雰囲気
●何が問題とされるべきか
◆たかが「日の丸・君が代」か
◆民主主義の成熟度を計るモノサシ
◆発言・議論しない空気や風潮(〜教室・職員室・組合)
…………………………
◆「しるし・記号・標識」→「存在」が分かればいい
◆「新しい旗と歌」ならいいのか?
◆問題の本質は「強制すること」「全員を一律に従わせること」
●全体の8割は無関心層〜訴えるべき対象はここ
※【配布資料】・「無自覚?ナチ式敬礼」(新聞記事)
・「国旗・国歌法から5年目の学校現場」(「週刊金曜日」ルポ記事)
現代ジャーナリズム(4) 2003/10/15(池添徳明)
1)被疑者(被告)の人権
・「◯◯容疑者」「◯◯被告」(←呼称、敬称)
・「◯◯の疑い」(←容疑事実)
・「〜〜したという」(←伝聞であることの明示)
・連行写真を載せない
・手錠姿の写真の不掲載
・推定無罪の原則(疑わしきは被告人の利益に)
・リンチ(私刑)まがい報道の反省
・当番弁護士〜被疑者の言い分
◆ロス疑惑報道(三浦和義さん)
◆松本サリン事件(河野義行さん)
2)被害者の人権
・犠牲者の顔写真や氏名掲載の是非(→事件、事故、火事…)
・顔写真の入手取材の在り方(→遺族の許可は…)
・聞き込み取材による噂の吹聴
・遺族取材、葬儀取材の非常識
・のぞき趣味、興味本位の報道
◎雑誌広告掲載の新聞社の責任(→顔写真、興味本位…)
◆女子高生コンクリート殺人事件
◆つくば母子殺人事件
◆東電OL殺人事件
◆神戸・酒鬼薔薇事件
◆日航機墜落事故
3)山積している課題や問題
→人権は等しく守られているか
→何のため、だれのため、何を伝えるために取材し掲載するか
→判断基準は「公益性」があるか
●客観報道
・客観報道とは何か
・不偏不党、公正中立
・事実とは何か
●判断基準(ものさし)
・ニュースの価値判断(8要素)
・新奇性(新しい、初めて、突発)
・人間性(事件、事故、戦争、人権)
・普遍性(一般、多数、著名)
・社会性
・影響性(広がり、問題化)
・記録性
・国際性
・地域性(身近)
・独自の「ものさし」
●ジャーナリズムの在り方
・独自の視点、切り口
・さまざまな意見を紹介
・弱い立場にいる人々の声を代弁
・権力批判、権力監視
・問題提起報道
■配布/参考資料「受講生諸君のリポートから」【メディア・ジャーナリズムに言いたいこと】1回目の授業で書いてもらったリポートの中から、いくつかの意見や疑問をピックアップしてまとめました。便宜上、テーマごとに大ざっぱな分類をしましたが、それぞれの問題意識は複数のテーマに関連しています。(以下、掲載省略)
現代ジャーナリズム(5) 2003/10/22(池添徳明)
●整理部記者の一般的仕事●
■「整理」=原稿の交通整理
■レイアウト(紙面割り付け)=ニュースの価値判断(→扱いの大小判断)
■見出し、写真、イラスト
◆見出し→限られた文字数と時間で、正確・的確な表現を考える
→できれば面白く、人目を引き付けるような言葉で
→見出ししか読まず、見出しだけ見て記事全部を読んだ気になる人も多い
→記事の中まで読ませるキャッチコピーが最適
●整理部記者の本当の仕事●
■どこを、何を主見出しに取るか
→訴えるものが全然違ってくる
→問われる「記者の姿勢、視点、問題意識」
●整理部記者の苦悩と葛藤●
■原稿以上の見出しは作れないはずだけど…
◆「歳末商戦ピーク」「駅ビルオープン」などがトップに
→原稿が足りないと無理やり「仕立て上げる」ことも
◆横浜ベイスターズ優勝の日の紙面展開
→重要ニュースを押し退け、ベイスターズ一色に(紙面の大半を割く)
◆人権侵害の原稿、行政や企業のちょうちん原稿、問題のある原稿
→できるだけ無難な部分から見出しを取る
→できるだけ扱いを小さくする。それくらいしか対抗手段ない…
(デスク、部長の指示で、そうもいかないことがある)
※問題原稿を出稿側に差し戻していると、時間内に処理できなくなってしまうので、なかなか差し戻せない。締め切り時間(降版時間)との戦い
◆事件報道
→容疑者、被害者の人権(顔写真や連行写真の扱い)
●整理部記者の隠れた問題●
■整理部は新聞製作の中核。ところが実際は…
→下請け、職人になりがち。主体性と問題意識の発揮を
→上司に文句を言う記者の左遷部署に
●整理部記者の今後の問題●
■一人組版(簡易組版)の導入
■サテライト編集の導入
◆進む合理化(雇用問題)
◆整理部記者の労働強化、負担増
→画像処理、見出し打ち込み、カット見出し作成(伝票処理)
→制作部、画像部のオペレーターの仕事の肩代り
◆整理部記者本来の仕事に対するしわ寄せ
→ニュースの価値判断、的確な見出しをつける時間の圧迫
※校閲部門廃止の方向
→印刷物の編集発行に、校閲は不可欠の存在のはずだが…
→紙面の質の低下を危惧
※【配布資料】・「甲山事件検察控訴」(新聞記事)=2つの新聞見出しを比較
2003/10/29(池添徳明)
●記者クラブは必要か、実態と課題、発表ジャーナリズムと独自取材
●記者クラブの実態は…
◆本来あるべき姿
・親ぼく団体〜実際には取材組織〜「取材拠点」
・「取材・報道のための自主的な組織」(日本新聞協会編集委員会)
・団結して権力に対抗
・権力監視、情報を引き出す、情報公開を迫る
・言論統制←「報道の自由」を確保
・知る権利
・市民の駆け込み寺
・公的機関・権力機関の一角に食い込んで存在することの意味
◆さまざまな問題点
・権力と癒着、もたれ合い、なれ合い
・情報操作、統制、一方的な情報の垂れ流し
・効率的・効果的な情報提供(広報)システム、売り込み
・懇親会、忘年会、送別会、定例会見の弁当 〜官報接待
・記者クラブ室、専従職員、光熱費、電話代、暗室使用 〜税金
・横並び意識、談合、黒板協定(しばり)、規制、解禁、出入り禁止(制裁)
・閉鎖性、排他性、既得権、情報独占、特権意識
◆記者側の事情と言い分
・便宜供与?〜公益性(←根拠)
・情報の洪水、裏付け取材のプロセス、締め切り時間、限られた人数
・時間と労力、紙面を埋める、効率性
・行政情報・発表情報は紙面の8割以上も?
・掘り下げた記事、独自取材は…
●記者クラブ「改革」って…
◆鎌倉市〜「広報メディアセンター」(1996.4)
・竹内謙市長の発案〜「開かれた場所に」「なれ合いをなくす」
・閉鎖的で問題のある記者クラブだったか…むしろ市民に開かれていた?
・登録制〜選別?
・政党・宗教の機関紙は排除?
・記者会見の主催、情報管理、統制
◆長野県〜「脱・記者クラブ宣言」(2001.5)
・田中康夫知事の発案
・「表現道場」〜「すべての表現者」に資料提供や発表
・「表現者同士が切磋琢磨する場」(田中知事)
・権力者に言われることか?〜報道統制、権力監視
・行政側主催〜管理・運営〜恣意的な会見?
・「取材・報道活動」と「表現活動」は同じか?
◆東京都〜「記者室使用の有料化」(2001.6)〜その後、白紙撤回
・「都政情報を一定以上報道すること」を使用条件に
・権力による選別、情報格差
・石原慎太郎知事のメディア対応、記者対応
◆埼玉県〜インターネット広報(1998.10)
・報道資料を記者発表と同時にインターネットで情報発信
・情報洪水の中で〜取捨選択、価値判断、分析
・情報の意味、背景、何が問題か、隠されているものは
・独自の視点、切り口、問題意識
●取材の在り方、記者の在り方
◆記者発表
・広報文の確認、補足取材
◆記者クラブの外にこそ…
・生の声を拾う現場取材
・背景取材、独自取材
2003/11/12(池添徳明)
●新聞記者を志望した理由
・土足で人の生活に踏み込んで…
・根掘り葉掘り興味本位の質問をして…
・プライバシーを外にまき散らし…
・態度はでかい、せこい…
↓
・ドラマで描かれる記者像、ワードショーに登場する記者(リポーター)
↓
・「嫌な奴ら」…認識が変化 ←ルポ『アメリカ合州国』(本多勝一、朝日文庫)
↓
・差別される側・殺される側からの視点、事実の積み重ね、本質を描く
・社会の矛盾を検証、問題提起、弱い立場の人を守る
・「こういう仕事ができるのか」「新聞記者の本当の仕事なんだ」
↓
・記者のあるべき姿 〜面白さ、やりがい、社会的意味
●制約多い新聞記者
・やりたい取材を好きなようにやれたら…
・好き勝手に自由に飛び回っている?
・いつも忙しい、自由がない
・誌面を埋めるため、決まり事(ルーティーンワーク)
・記者発表を処理
・番記者(政治家の追っかけ)、サツ回り(夜討ち朝駆け)、整理部(編集作業没頭)
↓
・やりたい取材が自由にできるのは一握り
↓
・勤務時間内では無理… →休日、勤務時間外を使って…
●原稿が載らない
・ニュースを握りつぶす編集幹部(←3回目の講義参照)
●何のために記者に?
・タブー、自己規制、権力に媚びる、ちょうちん記事、垂れ流しする記者
・特権意識、権力と癒着する記者
・人権感覚の欠如、問題意識を持たない記者
・保身、出世、波風立てず、もの言わぬ記者、サラリーマン記者
・無気力・無感動な記者
●新聞社批判は公益にかなう
・多い「社畜」記者、自浄作用働かず
↓
・社外に向けて情報発信
・悪口?…内部告発?…正当な批判! <読者(市民)の支持と信頼あってこそ
・読者への背信行為…実態を知る権利
・社会全体の利益に、会社の利益にも
●辞める理由
・自己退職者42人のうち、中堅・若手記者が26人(ある全国紙の事例)
・低賃金、人手不足、加重労働、家庭の事情…
・「書きたい記事が書けない」
・「やりたくもない無意味な取材をさせられる」
・「現場の感性や問題意識を上司が摘み取ってしまう」
・意欲と志ある記者ほど…
・不満と我慢の限界に達して退社決意
●「社畜」でない記者に
・企業内ジャーナリスト、組織の歯車
・「上司の命令でやった」…不正の言い訳
・会社の利益、社会(市民)の利益
※【配布資料】・「隣人たち/国際化の中で」(新聞連載記事)=外国人労働者の実情ルポ
・「教育の曲り角/ある少女の転校」(「週刊金曜日」ルポ記事)
2003/11/19(池添徳明)
●こんなにも簡単●
■ホームページは「ミニコミ」や「同人誌」のようなもの
■印刷・製本・発送の手間不要
■紙面をプロバイダーに送信するだけ
■ホームページ作成ソフトがあれば難しくない
●だれもが発信者●
■個人が主役、だれでもできる
■世界へ向けて情報発信
■「東芝事件」では大企業の社長が謝罪した
■既存のマスコミとは別の大きな力
■影響力ある「もう一つのメディア」に?
●便利だし楽しい●
■いつでもどこでもメール
■掲示板やチャットで情報交換・交流
■メーリングリストは「会員制掲示板」
■検索エンジンで目当てのページに到達
●個人情報は自分で守ろう●
■無防備な家族紹介のホームページ
■アメリカでは幼児誘拐多発〜顔写真公開は論外
■住所や電話番号は安易に公開しない
■パスワードは「家のカギ」
■設定は人任せにしない
■ストーカー(元恋人、友人)にメール内容が筒抜けに
●注意だけで防げないことも●
■無法地帯の掲示板は「便所の落書き」状態
◆誹謗・中傷・嫌がらせ・いたずら・名誉毀損・デマ
◆どこにでもいる「掲示板荒らし」
◆個人情報の流出(住所・電話番号・学校名・会社名)も
◆酒鬼薔薇事件〜少年の顔写真や電話番号、周辺情報まで公開
■迷惑なDM(ダイレクトメール)
■人騒がせなチェーンメール
■チャットは密室ではない
■「みんなが見ている」を前提に
●賢く安全に使いこなそう●
■信憑性ある情報か「見極める力」を
■被害者にも加害者にもなる危険性
■ネット社会(仮想空間)は特別ではない
■マナーとモラルは現実社会と同じ
■人権侵害に注意、自由と責任を自覚しよう
■利用者を守るプロバイダーの責任
■ネットの世界も例外ではない盗聴法
■政府・警察が情報管理?
■中国ではアクセス制限 ←反政府運動を規制
●草の根からの情報発信●
■「インターネット新聞」「すべての市民が記者」
■大きな世論展開、多様な言論・情報発信のきっかけに?
■問題は採算性、情報の信頼性
■検証作業、取材(裏付け、掘り下げ、公正さ、分かりやすさ)=信頼性
※【配布資料】・「大岡みなみのホームページ・ジャーナリスト」(ニフティ連載コラム)
・「広がる『草の根ネット新聞』」(新聞記事)
2003/11/26(池添徳明)
●映画「生きる」
■監督:黒澤明(1952年、東宝。143分)
■出演:志村喬、小田切みき、中村伸郎、日守新一。
■民主主義の在り方と公務員の本来あるべき姿勢を分かりやすく描く。
◎無気力、無感動な人生を送ってきた定年間際の地方公務員の男が、自分の余命があとわずかだと知ってから、公僕としての自分の仕事に目覚める。
◎人間として自分は何をすべきかに目覚める。「本当に生きる」ことに目覚める…。
◎市役所の市民課長は、たらい回しにされてほこりをかぶっていた公園造成の陳情書を引っ張り出す。「そんなの無理です」と言う市民課員を激励し、先頭に立って「やればできる」と動き出す。5カ月後、完成した公園で課長は一人寂しく死ぬ。
◎助役の尽力で完成したことになっている公園に、新聞記者から疑問の声が出る。焼香に詰めかける地元住民。いたたまれず通夜の席から早々と立ち去る助役。「政治の力で完成した」「役所というのは何もしちゃいけないところなんだ」とうそぶく役人たち。
●映画「チャイナシンドローム」
■監督:ジェームズ・ブリッジズ(1978年、アメリカ。122分)
■出演:ジェーン・フォンダ、マイケル・ダグラス、ジャック・レモン。
■米・スリーマイル島の原発事故を予見するかのように製作された。
◎女性テレビキャスターが原子力発電所を見学中に、振動が起きて警報サイレンが鳴り響く。制御室内部の一部始終をカメラマンが撮影していた。原子力発電所の工事・検査に手抜きがあり、「炉心が露出して大爆発を起こす寸前の事故」(チャイナ・シンドローム)だったことが分かる。
◎「運転を継続すると大事故になる」と気付いた発電所主任は、会社に再検査を進言するが、「操業を休むと損害を被る」と拒否。
◎証拠書類の提供を決意した発電所主任を、力づくで阻止しようとする会社。
◎主任は発電所の制御室に立てこもり、キャスターは制御室から生中継を始めるが…。
■だれのための発電所か。。資本の論理優先の電力会社の姿勢
■何を伝えるべきか。。ジャーナリストの姿
●「人らしく生きよう/国労冬物語」
■企画・制作:ビデオプレス(2001年、100分、劇場公開版)
■取材・撮影・構成:松原明、佐々木有美
■国鉄の分割民営化(1987年4月)の背景、国鉄労働者、家族の生活を描く。
◎リストラ、差別と選別と排除(組合つぶし)
◎相次ぐ組合脱退者
◎当局による傷害事件でっちあげ・逮捕・処分・懲戒免職(横浜)←完全無罪判決
◎「国労組合員は仕事をしない人間」のレッテル
◎「職場とくらしと権利を守る」〜労働組合の原点
◎国鉄改革法(国鉄→JR)〜不採用者の大半が国労組合員〜国鉄清算事業団へ
・地方労働委員会(組合差別を認め全員の職場復帰を命令)
・中央労働委員会(差別は認めたが採用やり直しを命令=復帰命令ではない)
・東京地裁判決
(国鉄とJRは別会社〜責任なし〜労働委命令を取り消し〜差別には触れず)
・4党合意(JRに責任なし)
●テレビ報道と視聴率
◎テレビ報道は「ジャーナリズム」〜「娯楽」「バラエティー」とは違うはず
◎ニュース価値〜基準は視聴率?〜放送されず?
◎視聴率優先の報道姿勢はジャーナリズムの自殺行為
・良質のドキュメンタリー番組の衰退
・社会的問題、重いテーマ、真相深層に切り込む番組の衰退
・深夜帯からも駆逐〜「NNNドキュメント」の軽薄化
●テレビ朝日のダイオキシン報道訴訟(最高裁差し戻し判決)
◎発表報道ではない調査報道〜正確さ、綿密な裏付け取材の重要性
◎最高裁「判断基準」のあいまいさ〜「印象」。。制約、委縮を危惧
◎報道の社会的役割、意義
現代ジャーナリズム(10) 2003/12/3(池添徳明)
●「指導力不足等教員」「不適格教員」という名の排除
◇「自分の頭で考え判断する授業」→「指導力不足教員」のレッテル
・学習指導要領から逸脱?
・子どもたちを扇動?
・授業監視、事情聴取、議会、地域
・「偏向授業」〜情報操作・うわさ・デマ・扇動
●逮捕・懲戒免職された「金髪先生」
◇「不適格教員」のレッテル
・授業外し、研修命令、逮捕・起訴、懲戒免職
・管理教育、体罰、「日の丸・君が代」
・「従軍慰安婦」「沖縄」「アジア」
・背景に市教委や校長との確執
・恣意的・意図的な判断、排除の論理
◇楯突く教師は徹底排除
・市教委、学校、PTA、市議会ぐるみ
●意図的な週刊誌とワイドショー
◇週刊新潮(悪意と糾弾)
◇フジテレビ(面白おかしく非難)
◇警察発表と一方的な学校情報
◇「最初に結論(方向)ありき」
●新聞(地元記者)も
◇警察発表を鵜呑み
◇朝日〜警察以外の「独自取材」がさらに決め付け拡大
◇なぜ「公安三課」が逮捕?。。疑問に思わない?
●異様な逮捕劇と裁判
◇ワゴン車に衝突?。。ビデオ録画、録音、写真撮影…
◇千葉地裁
・2001年5月逮捕〜2002年2月保釈(9カ月の身柄拘束と接見禁止)
・懲役1年2月の実刑判決(2002年3月)
◇東京高裁
・懲役1年2月、執行猶予3年(2003年7月)
●「憲法」「教育基本法」の基本理念は?
◆まるで「戦前」→治安維持法の「拡大解釈」と同じ
◆強まる国家主義・排外主義
◆教育基本法「改正」、愛国心、「日の丸・君が代」
◆「国民あっての国」か「国家のための国民」か
◆一人一人が尊重され、大切にされる社会の大切さ
※【配布資料】・「不適格教員にされた金髪先生の言い分」(「週刊金曜日」ルポ記事)
・「逮捕・懲戒免職された金髪先生の無念」(「週刊金曜日」ルポ記事)
現代ジャーナリズム(11) 2003/12/10(池添徳明)
●逮捕・懲戒免職された「金髪先生」(=前回の補足)
◇「公安三課」について
◇記事が裁判証拠に
◇証人出廷の要請
●「指導力不足等教員」という名の排除
◇「自分の頭で考え判断する授業」→「指導力不足教員」のレッテル
・学習指導要領から逸脱?
・子どもたちを扇動?
・授業監視、事情聴取、議会、地域
・「偏向授業」〜情報操作・うわさ・デマ・扇動
◇報道する義務と責任と自由
◇東京都人事委員会の公開口頭審理
・記事のどこの部分がどのように「事実と違う」のか?
●テレビ朝日のダイオキシン報道訴訟(最高裁差し戻し判決)(=前々回の詳説)
◎発表報道ではない調査報道〜正確さ、綿密な裏付け取材の重要性
◎最高裁判決〜「判断基準」のあいまいさ〜「印象」とは?
◎報道の制約、委縮の危惧
◎報道の社会的役割、意義
●盗聴法(通信傍受法)
・電話、ファクス、電子メール
・だれが、何を、どのように情報収集して管理?
・際限なく広がる盗聴範囲〜自分は無関係か?
・映画「エネミー・オブ・アメリカ」(1998年、米)〜時代を予見
・発信機、盗聴機、監視カメラ、衛星カメラ…ハイテク技術を動員
・情報機関が総力を挙げて弁護士の生活と行動を徹底的に把握・監視
・トンネル、コンビニ、高速道路に設置されたカメラ、電話回線からキャッチ
●住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)
・氏名・住所・性別・生年月日にとどまるか?
・さまざまな個人情報が集約
・国家が個人を番号で一元管理
・NHKニュース〜「便利になるからいいと思う」と答える市民の声だけ放送
●個人情報保護法
・名簿流出による迷惑な勧誘電話、ダイレクトメール対策
・個人情報の漏えい
・行政機関による人権侵害こそ
・「報道」の定義は?〜あいまい、恣意的
・「取材」が規制される?〜情報開示?〜「情報源」の秘匿(記者倫理)は?
・市民の理解と支援は…?
●ジャーナリズムの使命
・権力を監視する
・民主主義、人権を守る
・戦争を止める、平和を守る
※【配布資料】・「偏向授業と決め付ける多摩市教委」(「週刊金曜日」ルポ記事)
・「ダイオキシン報道訴訟/知る権利の制約危惧」(新聞記事)
・「ダイオキシン報道訴訟/番組全体の『印象』重視」(新聞記事)
2003/12/17(池添徳明)
●組織内記者のメリット
・広範な取材網を利用
・チーム取材で総合力発揮
・多角的な視点を共有、議論
・圧力や妨害に対抗して言論・報道の自由を守る
・生活の保障
●組織内記者のデメリット
・サラリーマン化、歯車の一つ
・横並び、個性を排除、社畜
・ルーティーンワークによる制約
・編集方針という形の圧力
・企業内の「言論の不自由」
●記者クラブ
・閉鎖性〜加盟社以外を排除?(←最近はそうでもないところも…)
・記者発表の処理をしなくていい
・定点観測による情報量の差
・インターネット上で進む情報公開
・官公庁取材
・「看板」の大きさは?
・「名刺」「肩書き」で取材?
●生活パターンの変化
・時間を自己管理
・仕事内容は自由(命じられた仕事をこなす必要なし)
・取材に専念・集中
●これまでの仕事
・新聞、雑誌、単行本
・ルポルタージュ
・依頼と持ち込み(独自企画)
・取材活動と営業・宣伝活動(出版社、編集者、読者)
・取材の仕方は変わったか
・教育、人権、司法、メディア
・ナショナリズム、愛国心、民主主義(「日の丸・君が代」)
・司法(裁判官)の問題点を取材
・『裁判官Who's Who』の意義と反響
●影響力と記事掲載と
・影響力は大きいが、書きたい記事が書けない
↑↓
・影響力は小さいが、書きたい記事が書ける
・「影響力」にもいろいろな側面
・「知りたい、伝えたい」が基本
※【配布資料】・「東電OL殺人事件で上告棄却」(「週刊金曜日」記事)
・「裁判長の訴訟指揮って何?」(法学セミナー増刊「カウサ」連載記事)
・『裁判官Who's Who/東京地裁・高裁編』(単行本)=一部抜粋
2004/1/7(池添徳明)
●ジャーナリズムの在り方、意義、存在価値
・独自の視点、切り口
・さまざまな意見を紹介
・弱い立場にいる人々の声を代弁
・権力批判、批評、論評、監視
・問題提起
●「国益」ってなんだ?
・国家益?政府益? < 公益?国民益?市民益?
・北朝鮮報道
・湾岸戦争
・戦争報道
・9・11
・国籍〜「どこの国の新聞」
・危険な「愛国心」
・「国益」と「知る権利」
●何のために「報道」「メディア」は存在するか?
●判断材料、考えるための材料を提示
●権力批判・権力監視こそジャーナリズムの最大の役割
・なくて困るのは「市民」
・民主主義社会の発展
●事実を伝える、客観報道、公正な報道
・事実の羅列ではない
・事実の背景
・裏側
・意図、狙い
・意味、問題点
・「発表ジャーナリズム」とは違う
●記者のジレンマ〜悩んで迷うのが当たり前
・どこまで伝えるべきか
・知っていて書く or 書かない
・実名を出すか出さないか
・人権、冤罪
・事件報道〜捜査報道〜推定無罪
・興味本位への加担を反省 <公益性
※【配布資料】・「教育基本法『見直し』東京公聴会」(「週刊金曜日」記事)
■配布/参考資料「課題リポート/対象記事一覧」課題テーマ「最近一カ月で関心を持った新聞記事を一つ取り上げ、記事内容(ニュース)を論評するとともに、取材・執筆の在り方を考察せよ」(昨年11月提出)。。。学生諸君が書いたリポートから、対象記事のタイトル(内容)の一部を抜粋しました。(以下、掲載省略)
2004/1/14(池添徳明)
●伝えるのは記者だけか
・メディアを読み解き、伝える力を養おう
・新聞・テレビだけがメディアではない
・新聞(全国紙、ブロック紙、地方紙、専門紙)
・雑誌(週刊誌、月刊誌、季刊誌、機関誌)、書籍
・ミニコミ、地域紙誌、会報(町内会、PTA、社内報、組合機関紙)、広報
・テレビ、ラジオ(AM、FM)、地域FM
・映画、ビデオ、アニメ、マンガ、写真、美術
・芝居(舞台)、ドラマ、小説、エッセイ、音楽、パフォーマンス
・インターネット(ホームページ、メールマガジン)
・伝える舞台はたくさんある(表現)
●情報の受信と発信
◆ニュース(記事)の見極め
↓
・「8つのポイント」を押さえて読む
↓
・「ジャーナリズムのあるべき姿」が見えてくる
↓
・事実、背景、判断材料、問題提起
◆分かりやすい文章を書く
↓
・背景や問題点を理解している
↓
・論点整理と問題提起と主張展開(まとめ)
↓
・会議、討論、話し合い、説明、説得。。。
●事実を知ることの大切さ
・単なる「事実の羅列」ではなく「真実」「背景」を知る
・疑問に感じる、問題意識を持つ。。。<知的好奇心
●判断できる、表現できる、主張できる
→ 社会的に独立・自立した「市民」「個人」に
→ 何を切り取り、どういう立場(視点)でとらえるか、伝えるか
※【配布資料】・「防衛庁、自衛隊幹部の記者会見打ち切り通告」(新聞記事)
・「防衛庁、自衛隊イラク派兵の取材自粛要請」(新聞記事)
・「陸自幹部、さっぽろ雪まつり協力『撤収も』」(新聞記事)
・「自衛隊イラク派兵」「報道自粛」(新聞4コマ漫画、1コマ漫画)