2003/6/19(木)くもり
漫画界始まって以来の大激震事件が起きています。
数日前、あるプロダクションの編集者から電話があり「渡辺やよいさんが困っているからなんとか助けてやってほしい。」とのこと。
私は、渡辺さんとは面識がなかったのですが、すぐに連絡を入れて話を聞いて仰天してしまいました。渡辺さんは、
「数日前、ヤフ−オークションで私の生原稿が売られているのを見つけました。
驚いてその売り主に連絡をとったところ、東京中野の某有名古書店で山積みにされて売られているとのこと。
仰天して駆け付けると、その原稿は、私がかつてさくら出版のアンクレットとアンビアン
という雑誌に描いた31作品、1000ページの生原である事が分かりました。
私は古書店の人に、これは盗まれたものだから売らないでほしいと頼みましたが、
古書店の人は、警察が来てストップかけないうちは売り続けると開き直られてしまいました。
警察へ行っても、証拠がないと言うことで動いてくれません。
古書店はなんと私の作品を、一作品(約40ページ)のものを千円で買いたたき、
店頭では三千円で売られているんです。どうしたら止められるのか、どうしたら原稿を取り戻せるのか。
古書店には売った人を公開する義務はないと開き直られましたが、
あきらかにさくら出版があずかっていた原稿を誰かが勝手に売ったんです。」怒りで体が震えた。
さくら出版はかつて、大勢の作家に原稿料未払いで訴えられている。
かくいう私もかなりの損失を受け、そんな関係から自分の原稿はすべてさくら出版から引き上げていたのだ。
私はすぐ、友人の作家に連絡をして、他にも原稿を売られているかもしれない新人さん達を救おうということになった。
さくら出版は他にもパインやホラー雑誌を出していて、そこに描いていた新人さん達の原稿もすでに売られてしまったかもしれない。
そして、渡辺さんには私の弁護士を紹介して「くやしいでしょうが、売られるのを止めるためと証拠を残すと言う事で、
その古書店に出ているあなたの原稿を自分で買っておくしかない。」とアドバイスした。けれど、、。
翌日渡辺さんが行くと、なんと彼女の原稿はすべて引き上げられていたという。
トラブルを嫌ったその古書店が奥に隠してしまったらしい。
(その証拠に6月18日にまた一部店頭に出てたことを渡辺さんは確認している。)
渡辺さんは、口惜しいと電話口で泣きながら言った。
「私の原稿はなかったけど、、そのかわり『課長島耕作』を描いた作家さんの初期作品の生原稿が山積みになってました。」
「えーーーっ!」「あの、弘兼憲史先生の初期作品が山積みにされている!?」
尋常なことではありません。そして私はピンときました。さくら出版はかつてビックネームの作家の初期作品をコミックシリーズとして50冊ほど出版したことがありま
した。
その中にも弘兼先生も13巻ほど入っていた。もしかしたらその原稿では、、!!!
私はすぐに先生に連絡を入れた。
「先生、、あの原稿が山積みにされて売られているのをご存じですか?」
「な、何ですかそれ!?信じられない!」弘兼先生は激怒され、自分の原稿が無断で売られそうになっていたことに、とても驚いておられました。
先生はすぐに弁護士に連絡をとられ、売られないように手配したようですが、私が連絡する前に売れてしまった作品についてはどうすることもできないかもしれません。
怒・怒!もしかしたら、あのコミックスを出された他のベテラン作家達も同じ被害にあっているかもしれない。
篠原とおる先生、影丸譲也先生、やなせたかし先生などががおられたはず。
すぐにベテラン編集者に頼んで、他の先生にもさくら出版にあずけた原稿が返ってきているかどうか調べてもらっています。
もし、、渡辺やよいさんが気付く前にその古書店で売られてしまっていたらその作家さんの作品は、本人の知らぬ間に、どこかの誰かのものになってしまっているのです。

正直言って、作家にとってこれほどの怒りと悲しみと、、不条理はありません。
さくら出版の人間はどこかに雲隠れしてしまい連絡できず、、古書店からは法的に何の負い目は無いと開き直られ、渡辺さんは「先生、、私はどうしたらいいのでしょう」と
毎日のようにメールをいただいています。
「弁護士さんも『どうしようもできない』と言う人と『何とか戦う方法がある』はず、という二つに別れていて、お金もかかって、、早くしないと自分の大切な原稿が消えてしまう」と、、。
私は、何人もの弁護士に話をして、一番いい条件と気力のある人に頼んだ方がいいとアドバイスした。
とくに、新人の作家達で被害にあってもどうしようもなく途方に暮れている人たちに、一人の弁護士の所へ連絡するよう連絡網を回した。
集まったほうが、、なんとかなる。
今この事件は現在進行形です。私は被害は受けていませんが、同じ作家達が困っている状況をどうしても放っておけません。
かって私は強引にさくら出版から1000ページほどの原稿を返却させましたが、私がそれをしなかったら同じ被害者だったのですから。
弘兼先生も、マスコミでこの件を話すと言ってくださり、今みんなが色々やっていてくれる。
そこで、、この件を読んだ読者の方にお願いです。
中野の古書店で諸先生方の生原稿を買って持っている方、、、どうかそれを描く作者に返してやってください。
(買い取りも可能です。)私たち作家にとって命の生原稿です。
不当に盗まれ、いつの間にか古書店に売られてしまったものです。
ハッキリ言って、さくら出版が作家からあずかっていた原稿のうち、返却してもらえなかった原稿は全て売られているものと推察されてます。
信じられない程の膨大な数になっています。売った人を許すことはできません。
作家は、自分の原稿を取り戻したくて泣いています。どうか返してやってくださいませ。

各作家のメールおよび私のメールでもかまいません。連絡をいただけましたら、私が作家に連絡網を回します。どうかよろしくお願いします。

6月19日    井出智香恵