リズム音痴の証明2 致命傷編

 リズム音痴の証明の続編です。恥ずかしながら今回はかなり「えーっ!?」という感じの致命傷レベルのリズム音痴事例をとりあげましょう。


 まずはコントラバスを弾いていた友人のネタをジャブがわりに。下の譜面はベートーヴェンの交響曲5番の4楽章の一部です。聴いみてみればどの箇所かはすぐにわかると思います。



[ベートーヴェン5番]

 スフォルツァンドが1拍目と3拍目の裏拍についていますが、楽譜面でも聴いていても特に難しいリズムでもないと思うのですが・・・。彼は裏拍のスフォルツァンドの連続を聴くうちに拍の頭にスフルツァンドがついているように感覚がずれてしまうということでした。確かに強弱の交代がリズム感を狂わすことはままあることですが、この箇所でそれはないでしょう。この友人に半拍ずれた感覚をどう辻褄を合わせているのか尋ねたところ「弾ききって休みだから後は・・・(野となれ山となれ)、関係ないじゃん」だって。うーん。
 リズム音痴とは関係ありませんが、この箇所は弦楽器は高音域の楽器から低音楽器が参加するように書かれていますが、木管楽器では逆に低音楽器から始まって徐々に高音楽器が参加するように書かれています。(たたしコントラ・ファゴットはコントラバスと同じく最後に参加する。)こういうのは聴いているだけだとなかなか気がつかないんですよね。特にモダン楽器のオケだとここは弦楽器主体の響きに埋もれて木管楽器はきこえないし。音域が両側に広がっていく効果が得られるはずなのですが。


 さて、次は私のリズム音痴の証明の告白です。曲はご存知「未完成」です。次の譜面は冒頭のチェロとコントラバスによるメロディです。



[未完成冒頭]

 特に(リズム的に)何と言うこともない普通の3拍子の譜面です。事実、私のリズム音痴はこの箇所ではありません。敢えて言うなら譜面の2小節と5小節の3拍目の四分音符は感覚的にはもう少し長めにとりそうだなということと、最後のFisの3小節に渡るロングトーンでテンポ感を失ってしまうことでしょうか。
 この後ヴァイオリンによる印象的な伴奏が始まります。これにはヴィオラ・チェロ・コントラバスのピチカートが随奏されます。譜面は2小節ですが同じことがくり返されて4小節になります。

 ノスタルジックな不安と甘い期待に満ちた心のざわめきを音にしたような音楽で、”いかにも”なようでも見事な音楽だと思います。さて私の致命的なリズム音痴はこれが3拍子ではなく2拍子(8分の6拍子)に聴こえてしまうことなのです。この誤ったリズム感は続くオーボエとクラリネットの旋律が奏でられても続きます。

 このメロディの6小節と7小節目で8分の6拍子としては矛盾(とは言い切れないけど)が発生するのですが、頑迷な私のリズム感は不安定感を感じつつまた8分の6拍子に戻ってしまうのです。



[未完成 音痴部分]

 しかし、上の譜面の5小節目あたりから矛盾が顕著になってきてついに3拍子に交代します。もう何百回聴いたかわからない未完成ですが未だに冒頭は2拍子に聴こえてしまいます。うーむ、やっぱり致命的。


 次はブラームスの交響曲3番ですが、「未完成」とは逆に4分の6拍子が3拍子に聴こえてしまうケースです。4分の3拍子と8分の6拍子は音価的には同じですが、3拍子の場合には4分の3拍子、2拍子の場合は8分の6拍子と楽譜には記載されるのではっきりと判断がつきます。ところが楽譜に4分の6拍子が記載されている場合は3拍子(=2分の3拍子)の場合も2拍子の場合もあります。曲によっては明らかに2拍子と3拍子が交錯する効果を狙って書かれたとしか思えないような曲もあります。
 このシンフォニーの開始は二つの和音で始まります。1小節に1和音で2小節になるのですが、この2小節間にリズムを感じさせる要素が何もないので何拍子なのか見当もつきません。譜面には符点2分音符の二つの音がタイで結ばれているので2拍子であることがわかります。しかし聴いている分にはリズムがない上に、更に悪いことにテンポ感くらいは感じられそうなものですが、私にはまるでフェルマータが2つ並んでいて続くメロディの大きなアウフタクトのように感じてしまうのです。

[うーん 3拍子]

 このメロディですが2小節半まで(2分の)3拍子に聴こえます。どうも「未完成」の場合といいテンポ感を失った後に誤ったリズム感に陥ってしまうのかもしれません。この場合はすぐに2拍子に戻ることができるのですが、提示部の繰り返しや再現部以降のこのパターンの出現の度にそこだけ3拍子になってしまいます。

[2拍子に復帰]


[ブラームス3番冒頭]


 「未完成」もブラームスの3番のシンフォニーも1小節内の感じ方の間違いだったわけですが、シューマンの「ライン」にいたっては小節をまたいで勘違いを引き起こします。問題の箇所は1楽章の冒頭なのですが下の譜面のように聴こえませんか。



[ライン 冒頭]

 でも本当は3拍子で以下のような譜面になっています。小節の最初の拍が前の小節からタイで繋がっているために、2拍づつに強拍の認識がずれてしまい2拍子に感じられるのが原因だとわかっています。それに2拍子で感じていてもすぐに7小節目(下の譜面で2段目)で明らかな矛盾を感じてしまうのですが・・・

 シューマンのシンフォニーでは4番が一番好きなのですが、このラインの主題も適度に弾力感があってなかなか雄渾な感じがする好きな主題です。でもよく楽譜を見るとこの主題は17小節(素数!)であり、2拍子として見ても本来の4分の3拍子として見ても、西洋音楽の対称性から導かれる4小節で1フレーズという基本原則をはずしているのがわかります。どう聴いても何となく不安定で割り切れない腰の座りの悪さを感じるのは当然なのかも知れません。


 ということで、恥を忍んで私のリズム音痴ネタを公開いたしました。正直なところ私はかなりのリズム音痴なのでしょうか。それとも私と同じように感じる方が意外に少なくないのでしょうか。実はまだまだ情けないネタがあります。それらはまた次の機会に。

追記
 先日、友人の元太鼓叩きと飲む機会があって、ラインの冒頭はどう聴いったて2拍子なんかには聴こえないとばかにされました。うーん、やっぱり。

 


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