弦楽器パートの並び方

LPやCDのジャケット、レコード会社のカレンダー、コンサートのポスター、音楽雑誌、そして生のコンサート、TV放送。コンサートホールで演奏するオーケストラの姿は見る機会は結構あります。フル・オーケストラがステージに並んでいる姿はそれだけでちょっとわくわくするものです。ところで近頃ちょっと気になっているのが弦楽器の並びです。

私がクラシックを聴き始めたころはもっぱら左から1stVn、2ndVn、ヴィオラ、チェロ、右手やや奥にコントラバスというものでした。たまにヴィオラとチェロのポジションが交替することがある程度でしょうか。

文献ではこの形に落ち着くまでは地方やオケで様々だったようで、ストコフスキーなどは弦楽器と管楽器を左右に分けて並べたり、今からするとかなり無茶苦茶なことも試したようなことを読んだ記憶があります。また一時期左右に1stVnと2ndVnを振り分ける並び方もあったが、現在ではソビエトのオーケストラや一部の指揮者が採用しているだけとも書いてあった気がします。

冒頭で書いたようにステージ上のオケの姿を(静止画で)みる機会は昔もよくあったわけで、打楽器とホルン群の位置は結構様々ですが、弦楽器に関しては上記の文献を裏付けるものでした。ウィーン・フィルの廉価盤シリーズのLPのジャケットに、ムジーク・フェラインザールで打楽器群の後ろオーケストラ最後方にコントラバスが横1列にならんでのを見たときはちょっと驚いたけれど。

初めてこの左右にヴァイオリンを振り分けた演奏を聴いたのはクーベリック指揮のシューマンの交響曲全集でした。演奏自体も格好良かったが、左側から聞こえてくるチェロに「おぉ」と思ったものでした。

近頃はどうもこのヴァイオリン振り分けの並びを結構見ることが増えてきました。これは以前よりもローカル色の強く残ったオーケストラの姿をみる機会が増えてきたせいもあるとは思いますが、実際にこの並び方で演奏される機会も増えているようです。はっきりとした数字がある訳ではありませんが、古楽器による演奏の隆盛とこの並び方の増加がリンクしているような気がするのですがどうでしょう。従来の弦楽器中心の豊かな鳴り方よりも、管楽器を含めて各パートの線を重視するようなところが共通するのでしょうか?

最近聴いた演奏会でもサンクト・ペテルブルグ・フィルはやはりロシアらしくヴァイオリン左右振り分け型の並びでした。また、若杉指揮のミュンヘン・フィルのマーラー9番の演奏会もそうでした。しかし、コントラバスが左側にいる姿はなんか違和感があったなぁ。レコードでは気にならなかったけれど、演奏会では、聴いていたのが少し右側の席だったこともあるでしょうが、2ndVnのf字孔が客席とは反対方向に向いてしまうので、明らかにソフトフォーカスな音色になってしまうのが気になりました。

また、国内在京オケの演奏会でも、1曲目のシューマンの交響曲1番だけヴァイオリンを左右に振り分けていたけど、はっきりいって失敗だったような気がします。だってアンサンブルがガタガタだったもの。弦のなかでも合わない上に他のセクションとも「あれっ」という瞬間がそこらじゅうにあって、2曲目以降のノーマルな並び方では結構きちんとしたアンサンブルだったので随分損をしたのではないでしょうか。(アンサンブルがあわない原因が並び方にあったのかはわからないけど。)ただ、4楽章など1stと2ndヴァイオリンで主題が交互にいれかわるようなところでは、それなりの(掛け合うような)効果があったと思います。

ところでオーケストラの並び方というのは誰に決定権があるのでしょう。

さきほどの国内在京オケの演奏会ではシューマンだけ並び方をかえたというのは、指揮者の意図であろうと想像できます。サンクト・ペテルブルグ・フィル(旧レニングラード・フィル)はムラヴィンスキーの頃から振り分けていたようなのでオケの意見かもしれないし、そもそもロシアではオケも指揮者もそういうものかもしれないし。スヴェトラーノフ・ロシア国立響やフェドセーエフ・モスクワ放送響なんかも振り分けているみたいだし。クーベリックはバイエルン放送響の演奏しか聴いたことがないけれど、この組み合わせでは必ず振り分けているようです。他のオケでの演奏は確かめることはしていませんが、クーベリックにこの並び方に対する想いがありそうな気がします。クライバー(子)は両方並び方の演奏があるみたいですし、最近見たヴィデオではワルターが振り分けたオケを振っているのをみました。結局、客演の場合も含めて指揮者とオケの力関係で決まるのでしょうか。ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルが西側に演奏旅行に出た際のチャイコフスキーの録音はおそらくレコード会社の意向で通常の並び方で録音されたらしいという話もあるので指揮者とオケ以外にも関与しうるポジションがあるのかもしれませんが・・・

弦楽器の並び方ではないのですが、ムジークフェラインザールで日本のアマチュアオケがベートーヴェンの第9を演奏した際、ゲネプロでソリストをオケと合唱の間に立たせていたところ、外人さん(どういう関係の人かは不明)が指揮者にソリストをオケの前に並ばせるように言ってきたところ、指揮者が「そんな必要はない。(バランスなら)私の仲間(演奏者たち)がフォローしてくれる。」てなことを英語で言っていたのを思い出しました。

おまけに言っておくと並び方で奏でられる音楽が全く違って聞こえるほどの相違はないように思えます。プレーヤーにとっては、慣れているいつもの並びと違うとアンサンブルのやりにくさみたいなものはあるでしょうけど。

弦楽器の並び方についてはClassical CD Collectionsの掲示板でも話題となっていました。興味のある方はぜひこちらも見て下さい。

 

 


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