オーケストラの中のパート

聖徳太子は10人の話を同時に聞き分けたなんていいますが、オーケストラの演奏は中程度の編成でも10種以上の楽器の奏でる音を聞いているのですから、トゥッティの中で各パートを聞き取ることができたら聖徳太子とまでは言えないまでもなかなかの耳の持ち主といっていいかもしれません。モーツァルトなどは初めて聴いた曲をすぐに楽譜に起こすことができたとかいいます。しかし、それが音楽を楽しむ上で必要な能力かどうかは別として、私も含めて大多数の人は個々のパートを聞き取ることは不可能でしょう。

実際各パートでは完成した演奏からでは想像できない(聞き取れない)意外なパッセージを演奏していることがままあります。ここではブラームスの2番のシンフォニーからそんな例を取り上げてみます。

ブラームスの2番のシンフォニーは私のもっとも好きなシンフォニーの一つです。各楽章とも素敵な曲です。4楽章は弾力と前進力に富んだ若々しく快活な曲で、偉大・壮大なシンフォニーといった風情ではないけれど、華やかに加速して爽快に締めくくられます。

この4楽章のコーダで最も盛り上がったところでトランペットがちょっと意外なパッセージを奏しています。この部分の管楽器セクションをちょっと聴いてみましょう。

管楽器群
[管楽セクション]

どうですか。トランペットのパートが聞き取れたでしょうか。ちなみにトランペットだけのパートを聴いてみましょう。

トランペット
[トランペットのみ]

どうでしょうか。てっきり同じ音型を繰り返して吹いているとばっかり思っていたので、私はこのトランペットを(ソロで)初めて聴いた時には「エーッ」と思いました。音型的にはおかしくもなんともないのですが、トランペットだけ抜き出して聴いてみると妙に解決したパッケージに、なにかちょっと間抜けな感じがしませんか。少なくともあんなに音楽が高揚している頂点で・・・こんなパッセージを・・・

ここは聴いていても結構「熱血」するところなので聞き逃すと言うか補って聴いてしまうといか、してしまうのですが、演奏によっては注意して聴けば結構はっきりと(お間抜けなトランペットが)聞こえます。お手元のCDを一度聴いてみて下さい。

ちなみにこの部分をそれまでのテンポよりちょっと落として「堂々」といった風に演奏する指揮者がいますが、私はこの解釈は嫌いです。私が聴いたレコードのなかではマゼールがそれをやってました。近頃ではブロムシュテットの来日演奏会のCMでもそう演奏してました。これだとせっかくの快速感と爽快感が損なわれてしまうと思うのですが、いかがでしょう。先にも述べたように偉大・壮大なシンフォニーではない(と思う)のですから。

この他にも聞こえないけど変わったパッセージを演奏しているパートなど紹介していきたいと考えています。おもしろいパートをご存じの方はぜひ教えてください。

 

 


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