盤歴

<最初の1枚>

 近頃では,クラシックを聞き始めるきっかけになった曲が「春祭」だのマーラーやブルックナーの交響曲だのといった人がいたりするらしいけれど、「それはちょっとカッコ良すぎはしませんか。」と思ってしまう。自分はノーマルに「新世界」だった。(やっぱり表題付の(通俗?)名曲からってのが素直だよな。)

以下、簡単な私の盤歴を。

 4楽章の第1主題が格好良くて、レコード店にあった「新世界」で一番安いレコードを買った。廉価盤で指揮者は失念、オケは北西ドイツ放送交響楽団というような名称だったと思う。

 その後、当時の定番組み合わせ「運命」「未完成」(ミュンシュ、ボストン?RCAの廉価盤。これは今記憶をたどればかなり良い演奏だったように思う。)続いてショスタコーヴィッチの「革命」とプロコフィエフの「古典交響曲」(指揮者、オケは失念。フィリップスの廉価盤)と表題付シンフォニーを聴く。指揮者もオケも録音も関係なく、廉価盤のコーナーから、かっこいい表題のついている曲を探しては購入していた。

 この頃はとにかくよく聴いた。本当に盤面が白っぽくなった。 次から次へとレコードを購入するなんて訳にはいかず、NHKのN響のTV放送で新しい曲に触れていた。学校の図書館から「名曲解説」みたいな本を借りてきて、そこに載っている主題の譜面などをリコーダーで吹いてみたりもしていた。もう一人クラシックを聞き始めた友人とレコードを貸し借りしあってゆっくりと名曲をたどり始める。


<バーンスタインへの思いこみ>

 廉価盤ばかりを購入していたこの頃、レコード店でサービスでくれたCBSソニーのレコードパンフレットが、その後の自分の音楽の嗜好を決めてしまった。アーティスト紹介のバーンスタインについての「現代最高の指揮者の一人」という記述をみて「そうか。バーンスタインってのが一番偉い指揮者なのか。」と素直で少し愚かな少年は思いこんだ。少年は「・・の一人」という意味が全く分かってなかった。その後予算のゆるす限りなるべくバーンスタインのレコードを購入するように努める。バーンスタインの最初のレコードは「ツァラツゥストラ」と「ラプソディ・イン・ブルー」の2枚だった。「ツァラ」は正直つまらなかった。でも、現代最高の指揮者が振ってつまらないのだから、きっとつまらない曲なんだと判断した。ここら辺が、いまもってR.シュトラウスをなんとなく敬遠してしまう原因の根本にあるのかもしれない。


<マーラー>

 あるときN響のTV放送で「巨人」を聴き、感動した。今思えば前打音付のホルン(そう、ウルトラ7のテーマみたいなとこ)が凄く格好良く聞こえただけだったような気もするが・・。さっそくレコード(ワルター・ニューヨーク)を買い、はまった。その後

  • 5番(バーンスタイン・ニューヨーク)
  • 「大地の歌」(バーンスタイン・イスラエル、ウィーン)
  • 2番「復活」(バーンスタイン・ロンドン響)
  • 1番「巨人」(バーンスタイン・ニューヨーク)
  • 4番(バーンスタイン・ニューヨーク)

と立て続けにはまり、6番「悲劇的」(バーンスタイン・ニューヨーク)で「うーん。(なんかいまいち)」となるまでどっぷりとマーラー(そしてバーンスタイン節)につかった。6番でさすがに飽きてきた(そりゃもう毎日マーラーばっかり聴いてたんだから)のと、2枚組とういう金銭的な問題で一休み。しかし、時折「大地の歌」をバーンスタイン2種、ワルター2種、ショルティと聴き比べ、やっぱりバーンスタインはいいなぁなどと悦に入っていたりした。この後、しばらくいろいろな作曲家の交響曲を聴き、次第にワーグナー・ブルックナーへ興味の中心が移る。再びマーラーを聴くようになるのは、ブームとなってアバドやマゼールのマーラーが新譜で出始めた頃からだが、もうマーラーは数ある作曲家のなかの一人になっていた。今はマーラーはヘビーすぎて滅多に聴かない。


<マイルストーン:色々な意味で心に残る曲>

ラフマニノフ「晩檮

 初めてオーケストラ以外の曲をかったレコード。なぜかずっとお気に入りの曲。

ヴェルディ「レクィエム」

 初めのうちは組み物を購入できるのは正月のお年玉が入ったときか、誕生日くらいだった。そんな中の1組。いろいろな作曲家のミサやレクィエムなどの宗教曲への入り口になった曲。また歌(声)ってきれいだなぁと思った最初の曲かも。

ブルックナー交響曲8番

 当時なんとなく敬遠ぎみだったブルックナーの世界に入るきっかけとなった曲であり、いまでもブルックナーの中では一番好きな曲。一時期ブルックナーの交響曲を聴きまくることになった。とはいっても、当時は4・5・7・8・9番以外はほとんどレコードがなかったけど。カラヤン(羽のジャケットの奴)で入ってケンペ・チューリッヒ・トーンハーレの演奏に心酔し、ヨッフム・ドレスデンでピーク。ベーム、ジュリーニで「うーん。」となり収束する。今はヴァントの演奏が気に入っているが、この曲に限らずブルックナーを聴くことは滅多にない。当時評判の朝比奈のジャンジャン版が聴きたかったが田舎では入手できず、それ以来今や何種類もある朝比奈の8番は聴いたことがない。

ブラームス交響曲2番

 ごく私的な理由により大好きなシンフォニー。なのに「これは!」という演奏がない。ヨッフム・ロンドンフィル、バルビローリ・ウィーンなどが比較的気に入ったが決定打にならず。バーンスタイン・ウィーンは1・4番はいいが2番はやっぱり似合わない。現在はワルター・ニューヨークで我慢している。

バッハ無伴奏チェロ組曲

 今や聴く頻度は無伴奏ヴァイオリンの方がずっと多いが、いまでも気にはなっている曲。こんな少ない音数の曲をどうすればポリフォニックに演奏できるか、結構いろいろ考えた。これも好きな曲なのに「これだ」という演奏に巡り会えない曲の一つ。

シューベルト弦楽5重奏曲

 ベートーヴェンの弦楽4重奏、ブラームスの室内楽と聴いてきた室内楽の分野での一つのピークとなった曲。また、現在もっとも好きなシューベルトの最晩年の名曲群を聴くきっかけとなった。

マーラー交響曲9番

 結局マーラーのシンフォニーで一番好きなのがこの曲。バーンスタイン・イスラエルフィルの来日演奏は忘れられない。これも強烈な曲なのでほとんど聴かない。

プッチーニ「トゥーランドット」

 オムニバス映画「アリア」のなかでケン・ラッセルが3幕の冒頭から「だれも寝てはならぬ」までに映像をつけていて、これが結構面白かった。映画「イースト・ウィックの魔女たち」のなかでも「だれも寝てはならぬ」が使われていて、どんなオペラかしらなかったがこのアリアは気にいっていた。LDでメトの「トスカ」を楽しんだ後、このオペラをLDで見て初めてオペラって凄く面白いと思った。ゼッフィレリのスペクタクルっ気たっぷりの演出は、小難しいオペラ通ではないものにとって、映像的に格別に面白い。


<演奏家>

カラヤン

 バーンスタイン・ニューヨークでは聞けない重厚な音と精緻なアンサンブルに惹かれ一時期かなりよく聴いた。が、今にして思うとカラヤンを聴くのではなくベルリン・フィルに惹かれて聴いていたのだと思う。70年代の録音の新譜は、なんか音がカンカン・ギスギスしているような気がし、不自然な特定パートのクローズアップがあったりして興味を失う。カラヤン自体はバーンスタインの敵だから心情的に嫌い(ジョークです。ジョーク!)だが、R.シュトラウスに限ってはいいなと思う。しかし、実際のところカラヤンの演奏は何回か聴くとつまらなくなってしまうのはなぜだろう。「ミサ・ソレ」(EMI)、ヴェルディ「レクィエム」、マーラー9番(ライヴ)、ブルックナー8番など自分にとって重要な曲で最初に気に入ったのはカラヤンの演奏だったするのだが。ほんと最初は凄い演奏だと思ったのに・・・、曲が好きになるとすぐに別の演奏の方が良くなってしまう。私にとってマゼールも似たような指揮者。ラフマニノフの交響曲はどうもピンとこないと感じていたところ、マゼールの指揮で面白さに開眼。すると今までピンとこなかった演奏が俄然よくなってきてマゼールの盤はお蔵入りに。

ナヴァラ

 最初に聞き始めたチェリスト。一時期この人の新譜を追っていてバッハの無伴奏チェロ組曲を知る。ちょっと音程に難があったりした人だが、サン・サーンスの「アレグロ・アパッショナータ」とかフォーレの「エレジー」などの情熱的な演奏はお気に入りだった。一度ナヴァラの、アマチュア(半プロ)のチェリストに対する公開レッスンを見たことがある。その時教えながら弾いたショスタコーヴィッチのチェロソナタは格好良かった。

グールド

 それまでグールドといえばバッハという評判は知っていたが、モーツァルトのソナタぐらいしか聴いたことがなかった。バッハについては「ブランデンブルグ」、管弦楽組曲、ロ短調ミサ、「マタイ」「ヨハネ」無伴奏ヴァイオリンの為のソナタとパルティータなどは聴いていたが鍵盤楽器の為の音楽はあまり真剣に聴いたことがなかった。無伴奏チェロ組曲の演奏におけるポリフォニックについて無い脳味噌を絞っていた頃、知人のグールドのレコードで、「ゴールドベルグ」、パルティータ、イギリス組曲、フランス組曲など聴きあさる。しかし、グールドはかなりの腕達者で他のピアニストの真似とかが凄く上手かったらしいが、ピアノとしての音色的な魅力を感じられないのは自分だけだろうか?

トスカニーニ

 なにかの特典でリハーサル風景を録音したのを聴いた。ものの本などでは知っていたが凄い罵詈雑言。自分がオーケストラプレーヤーだったら、こんな風に言われたら絶対立ち直れないなと思う。が、このリハーサルで鳴っていた音楽が格好良かった。この人の音楽の強さとか勢いに魅せられて、集中的にトスカニーニの演奏を聴いた。音楽の強さとか勢いの魅力の「エロイカ」「第9」などがお気に入り。自分にとって以外だったのが「展覧会の絵」。この曲はラベル編曲のオケ版よりオリジナルのピアノの演奏の方が絶対いいと思っているが、これはなかなか聴かせる。逆に期待はずれだったのがヴェルディの「レクィエム」。あまり記憶に残っていないが荒っぽい演奏だったような気がする。が、今聴けばひょっとすると気に入るかもしれない。

 


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