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ハクチョウソウ

ヤマモモソウ、ハクチョウソウ


アカバナ科ガウラ属(ヤマモモソウ属)
学名正名:Gaura lindheimeri Engelm. et A. Gray、異名:G. filiformis var. munzii Cory.
英名clock weed, white gaura
和名ヤマモモソウ(山桃草)
別名ハクチョウソウ(白蝶草)、ガウラ
花言葉 
メモ

 ガウラ属の解説は、こちらをご覧下さい。「ガウラ」は属名ですが、ガウラ属植物で園芸種として栽培されているのは、主に、G. lindheimeri (リンドハイメリ種)であることから、リンドハイメリ種は、単に、「ガウラ」と言う名前で流通していることがあります。
 ヤマモモソウと言う和名は花の色に因み、食用になるヤマモモ科のヤマモモ(Myrica rubra)とは関係がありません。また、ハクチョウソウという別名は花が白い蝶のように見えることに因みます。なお、図鑑によっては、和名がハクチョウソウ、別名がヤマモモソウとなっていることがありますが、このサイトでは「園芸植物大事典」に従いました。このページの見出しを別名の「ハクチョウソウ」としたのは、写真が白花であるためで、今後、写真を差し替えて、見出しを替えることがあるかもしれません。
 原産地は、北アメリカのテキサス州やルイジアナ州だそうです。日本には、明治時代の中頃(1890年頃)に渡来したそうです。

ヤマモモソウ、ハクチョウソウ

 耐寒性、耐暑性に優れる多年生の草本ですが、耐寒性に関してはやや弱いとも言われています(詳細は後述します)。葉は葉柄がなく、へら形〜披針形で、縁はほぼ切れ込みがないか僅かに鋸歯があり、互生します。葉に斑が入る品種もあります。茎は直立し、分枝します。花序型は総状花序です。花は左右相称です。萼片は開花時に反り返ります。花弁は白色か桃色で、4枚あります。雄しべは8本です。雌しべは1本で、柱頭は4裂し、花柱は雄しべより長いです。子房は下位です。花は一日で萎れるので切り花に向かないと言われています。果実は刮ハです。

 品種として、‘Corrie's Gold’、‘Dauphine’、‘Siskiyou Pink(シスキューピンク)’、‘Whirling Butterflies’、‘夕映え’(花色が白から桃に変化する)、‘ホワイトヘロン’、‘コロナ’(二色咲き)などがあります。また、ハクサンインターナショナル(株)から‘ホワイトバタフライ’や‘シルキューピンク’が販売されている(販売されていた?)ようですが、後者は、もしかしたら、‘Siskiyou Pink’のことかもしれません。なお、‘Siskiyou Pink’は1994年にアメリカ合衆国オレゴン州の Siskiyou Rare Plant Nursery で発見されたピンクの花を咲かせる変異体から育成され、‘Butterfly’シリーズは‘Sisliyou Pink’から育成されたそうです。

 繁殖は、実生か挿し芽によります。アメリカでは、‘Siskiyou Pink’や‘Whirling Butterflies’を始めとする多くの品種は、現在、栄養繁殖されているようです(アメリカでの栽培方法は不詳ですが、参考にした文献では挿し芽で殖やしたような記述がありました)。実生の場合、発芽の適温は20〜30℃と言われています。品種によるかもしれませんが、春に播種すればその年に開花させることが出来ます。なお、‘Siskiyou Pink’や‘Whirling Butterflies’は花芽分化に春化(一定期間の低温[一般に、5〜15℃]に遭遇し、その低温の後作用として花芽分化する現象、または、作用のこと)は必要ないそうです。日当たりと水捌けの良い場所を好みます。乾燥に弱いので灌水は十分にしますが、遣りすぎには注意します。肥沃な土壌は向きませんが、肥料が少なすぎる場合は、葉が赤くなることがあるそうです。冬の間はロゼット化しますが、耐寒性が弱い品種の場合、寒地や根の張り具合によっては露地で越冬させることが出来ないそうです。

 1日当たりの光の強さ(Daily Light Integral , DLI。24時間で受光する光合成有効光量子[400〜700nm]の積算。正確な和訳は不明です。単位は、mol・m-2・d-1[日積算光合成有効光量子束密度]のようです)が、‘Siskyou Pink’の成長に及ぼす影響について調べた研究があります。これによると、温度を22±2℃、日長を16時間日長として、5〜20mol・m-2・d-1(実験が行われた温室の期待されるレベルであるが、日当たりを好む植物には低い値)で栽培したところ、18mol・m-2・d-1以上でないと商品価値のある品質にならなかったそうです。 詳細に見ると、5〜20mol・m-2・d-1で光が強いほど、茎が直立し(弱いと倒伏する)、分枝数が増え、花序数が約3倍になるなど品質が良くなり、開花が5日程度早くなったそうです。更に強い25〜40mol・m-2・d-1で栽培すると、5〜20mol・m-2・d-1で栽培した場合より花序当たりの花数が2倍になったそうです。なお、5mol・m-2・d-1でも開花したことから、開花しない限界の DLI はこれより低いことが推察されたそうです。
 参考までに、リンドハイメリ種の原産地に近い地域の5〜7月の DLI は55〜60mol・m-2・d-1、実験が行われたミシガン州を含むアメリカ北部(北緯42〜45℃)の温室の DLI は、11〜2月では 2.5〜10mol・m-2・d-1だそうです。また、植物の種(しゅ;species)や品種によるようですが、多くの多年草で、市場に受け入れられる最低限の品質を満たすのに必要とされる光の強さは10〜16mol・m-2・d-1、強い光を必要とする植物では、50mol・m-2・d-1以上が適しているそうです。
 なお、リンドハイメリ種の花芽分化の日長反応については長日性(参考にした文献では短くても14時間日長で栽培されていますが、日本の夏の日長はこれより十分に長いです)で、短日では節間が伸長しないと言われています。

 リンドハイメリ種は耐寒性がやや弱い(USDA Z5-6:−28.8〜−17.8℃。USDA Z は、植物耐寒ゾーンUSDA[アメリカ農務省]版)ことから、同属でより耐寒性がある G. coccinea (コッキネア種。USDA Z2-4:−45.6〜−28.9℃。草丈が短く、花色はピンク〜深紅。地域によって変異がある)との種間交雑により、USDA Z3-4 (−40〜−28.9℃)ほどの耐寒性のある雑種の育成を試みた研究があります。これに先立ち、リンドハイメリ種の自家不和合性の機構を解明したところ、アカバナ科で見られる配偶体型自家不和合性であることなどが示されたそうです。なお、この研究以前にもリンドハイメリ種とコッキネア種の種間雑種が育成されたことがあったそうですが、あまり普及しなかったそうです。


本棚以外の参考文献
  • CRC World Dictionary of PLANT NAMES -Common names, scientific names, eponyms, synonyms, and etymology. CRC Press. 2000.(英名のclock weed

  • Johnson, H., et al. Developing protocols for nursery based scheduling trials. Acta Horticulturae. 654: 133-137. 2004.

  • Fausey, B. A., et al. Daily light integral affects flowering and quality of greenhouse-grown Achillea, Gaura, and Lavandula. HortScience. 40: 114-118. 2005.

  • Peters, W. L., et al. Statistical discrimination between pollen tube growth and seed set in establishing self incompatibility in Gaura lindheimeri. Euphytica. 149: 237-250. 2006.

  • 塚本洋太郎.改訂版・原色園芸植物図鑑[II]宿根草編1.保育社.1972年.

コメント

 播種は2005年の10月中旬、発芽はそのおよそ2週間後、最初の開花は2006年の6月上旬です。無加温の温室内で栽培しています。冬の間はロゼット状でしたが、4月頃から新しい花序が伸びてきました。
 英名に clock weed と言うものがあるようですが、直訳すると時計草(とけいぐさ)とでもなるでしょうか? トケイソウぽいですけど、ハクチョウソウは花の形が左右相称なので、時計と似た感じがあまりしませんね(^^;(2007.5.14.)

 
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