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エゾムラサキ

エゾムラサキ
品種:‘ブルームッツ’


ムラサキ科ミオソティス属(ワスレナグサ属)
学名Myosotis sylvatica Ehrenb. ex Hoffm.
英名garden forget-me-not, wood forget-me-not, woodland forget-me-not
和名エゾムラサキ(蝦夷紫)
別名ミヤマワスレナグサ(深山勿忘草)、ワスレナグサ(流通上の名称)
花言葉属の解説参照
メモ

 ミオソティス属の解説は、こちらを御覧下さい。
 ワスレナグサの和名が当てられているのは M. scorpioides L. (スコルピオイデス種)ですが、こちらは花が小さく鑑賞価値がないと言われています。これに対し、日本でワスレナグサとして流通しているのは、このサイトが準拠している「園芸植物大事典」によると、エゾムラサキ(M. sylvatica;シルウァティカ種)だそうです。また、同書によると、エゾムラサキは、誤って M. alpestris (アルペストリス種)、または、M. dissitiflora (ディッシティフロラ種)の名で栽培されることが多いそうです。しかし、「園芸植物大図鑑」より前に発刊された図鑑では、栽培されているのはアルペストリス種であると説明されています。このことの詳細については、ミオソティス属の解説ページを御覧下さい。
 写真の‘ブルームッツ’の形態的特徴を調べたところ、エゾムラサキに近いと判断されたので、このページではエゾムラサキの解説をします(もしかしたら、‘ブルームッツ’は、交雑種[M. hybrida hort.]かもしれませんが、このページでの解説は、あくまでも、エゾムラサキ[M. sylvatica]に関する資料を基にしたものです)。なお、エゾムラサキ、ワスレナグサ、アルペストリス種の異なる点は、ミオソティス属の解説ページを御覧下さい。
 命名者について、図鑑によって、「Hoffm.George Franz Hoffmann [1761〜1826年])」であったり、「Ehrh. ex Hoffm.Ehrh.Jacob Friedrich Ehrhart [1742〜1795年])」であったりしますが、ここでは、「The Plant-Book」と「CRC World Dictionary of PLANT NAMES」に従いました(Ehrenb.Christian Gottfried Ehrenberg [1795〜1876年])。
 ヨーロッパ原産で、北アフリカ、西アジアにも分布しているそうです。日本では、本州中部以北の高原の湿地に野生化していると言われています。

 二年草〜多年草ですが、暑さに弱いことから、園芸上は秋播きの一年草として扱います。葉はへら形・全縁で、互生しています。花は、花冠が5裂しています。花色は、ブライトブルー、紫、白っぽい青で、花喉に黄色い目があります。雄しべは5本、子房は4裂しています。種子は黒く、艶があります。
 写真の‘ブルームッツ’は、恵泉女学園園芸短大で育成された品種だそうです。その他の品種として、‘Blue Ball’、‘Blue Bird’、‘Carmine King’、‘Royal Blue’、‘White Ball’、ドワーフ・シリーズ、ヴィクトリア・シリーズ(青、桃、薔薇色、白)、ニーナシリーズ、バブルスシリーズ、他があるそうです。

 栽培ですが、繁殖は実生によります。春に咲き、暑さに弱いことから、普通、秋にタネを播きます。耐寒性がありますが、寒い地域では霜よけすると良いそうです。嫌光性なので、覆土が厚くならないようにします。直播きの他、幼苗なら移植も可能です。日当たりは、良いところか半日陰が向いています。土壌は、やや排水性が良いものを用いると良いそうです。

 モンゴルに自生している22属38種のムラサキ科植物のうち、5属9種について、種子に含まれているオイルの含量や脂肪酸の成分について調べられています。調査された9種の中で、オイルの含量が最も高かったのはエゾムラサキだったそうです(ちなみに、属のレベルでは、5属の中でミオソティス属が最も高く、調査された3種全てが20%以上だったそうです)。エゾムラサキの種子に含まれてる脂肪酸の中で、他種と比較して多く含まれていたのは、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸だったそうです。


本棚以外の参考文献
  • CRC World Dictionary of PLANT NAMES -Common names, scientific names, eponyms, synonyms, and etymology. CRC Press. 2000.

  • 本田正次.ワスレナグサ.世界の植物.360〜362ページ.朝日新聞社.1976年.

  • Nanzad, T. et al. Gamma-linolenic and stearidonic acids in Mongolian Boraginaceae. Journal of the American Oil Chemists Society. 73: 1681-1684. 1996.

コメント

 播種は2003年9月上旬、発芽はそのおよそ1週間後、最初の開花は2004年の2月末です。無加温の温室内で栽培しています。今年は、同じ株が1月末に、こぼれ種から育った株が3月下旬に開花しました。昨年は暑かった割には無事に夏を越したようですが、今年は残念ながら、枯れてしまいました。また、こぼれ種から育ってくれることを期待しています。(2005.8.17.)

 
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