メモ | プリムラ属の解説は、こちらをご覧下さい。 キンポウゲ科ミスミソウ属(Hepatica)のミスミソウ(H. nobilis var. japonica)とその品種であるオオミスミソウ(f. magna)とスハマソウ(f. variegata)やケスハマソウ(H. n. var. pubescens)も園芸上はユキワリソウと呼ばれていますが、ここで紹介しているユキワリソウはサクラソウ科です。
従来、ユキワリソウは、セイヨウユキワリソウ(西洋雪割草、別名・ヨウシュユキワリソウ[洋種雪割草];P. farinosa L.)とは別の種(しゅ;species)とされていましたが、ここでは、ユキワリソウをセイヨウユキワリソウの亜種(subspecies; ssp.)とする、山崎氏が最近発表した文献に従いました。この文献によると、ユキワリソウには以下の変種(variety or varietas; var. )とその品種(ここで言う品種は、園芸品種[cultivar; cv.]ではなく、分類階級で変種の下のランクの品種[forma; f.])が含まれているそうで、変種は葉の形態によって区別されるそうです。
- ユキワリソウ(広義)(雪割草;P. farinosa L. ssp. modesta (Bisset et Moore) Pax)
- ユキワリソウ(狭義)(雪割草;var. modesta (Bisset et Moore) Pax)
- レブンコザクラ(礼文小桜;var. matsumurae (Petitom.) T. Yamaz., comb. nov.)
- f. alba (H. Hara) T. Yamaz., comb. nov.
- サマニユキワリソウ(var. samanimontana Tatew.)
- f. nivea (H. Hara) T. Yamaz., comb. nov.
- ユキワリコザクラ(雪割小桜;var. fauriei (Franch.) Miyabe)(※)
- シロバナユキワリコザクラ(白花雪割小桜;f. leucantha (H. Hara) T. Yamaz., comb. nov.)
- var. hannasanensis (T. Yamaz.) T. Yamaz., comb. nov.
- var. koreana T. Yamaz., var. nov.
※ 「原色牧野植物大圖鑑・続編」、「園芸植物大事典」、「The New RHS Dictionary of Gardening」(和名は載っていませんが)では、変種名のスペルが「fauriae」となっています。
分子系統解析を行えば、この分類とは異なる結果が得られる可能性があると思いますが、それまでは、上記の分類に従うことにします。 広義のユキワリソウに関する資料がほとんど見つからなかったため、このページでは、これらをまとめて紹介します。なお、写真は、ユキワリソウの変種であるユキワリコザクラの白花品種・シロバナユキワリコザクラです。
上記の変種のうち、和名が付いているものは日本(北海道、千島、択捉島、本州、四国。亜高〜高山地帯)に自生していて、var. hannasanensis と var. koreana は韓国に分布しているそうです。レブンコザクラは、その名の通り、礼文島や利尻島、北海道中部に分布しているそうですが、個体数が少ないことから、絶滅危惧II類に分類されています。
フェンダーソン氏のプリムラ属を細分する分類方法によると、ユキワリソウは、アレウリティア亜属(subgenus Aleuritia (Duby) Wendelbo)アレウリティア節(section Aleuritia Duby;英名・Bird's eye primulas)アレウリティア亜節(subsection Aleuritia)に属しているそうです。 耐寒性がある多年草です。葉は根生し、裏には黄色い粉が一面に着いています。葉の形態で変種を区別するそうですが、鋸歯や葉柄が明瞭か否か、葉身の形(卵形、広卵形、楕円形、長楕円形、他)等が、判断の基準となるそうです。花序型は散形花序で、2〜15輪の花が着きます。萼が深く裂け、裂片の先が尖ることが、広義のユキワリソウの特徴で、これによって、ssp. farinosa と区別するそうです。花冠は5裂していて、各裂片の先端は2裂します。花色は、碧、紫、ピンク、白です。果実は円筒状の刮ハで、萼より長くなります。変種や地域によって異なると思いますが、開花期は、5月下旬〜6月上旬です。 栽培の詳細は不明です。「The New RHS Dictionary of Gardening」によると、セイヨウユキワリソウは陽地のロックガーデンに向いていて、真昼には強い日差しを避けるため日陰を作ってやるようにすると良いそうです。土壌は、砂質で水捌けが良いものが良く、生育期間中は乾燥させないようにすると良いそうです。栽培していて気付いたことがあったら、随時書き足したいと思います。
ユキワリソウの種子発芽について詳細が調べられています。ここでは内容の一部を要約します。播種の前に、湿った状態で低温処理(4℃)を1ヶ月間行うと発芽率が上がるそうで、低温処理後に播種した場合は、12〜20℃で発芽率が約90〜100%に達したそうですが、温度が比較的高い場合は、2次休眠が誘導されたそうです。好光性で、光がある条件でないと、ほとんど発芽しなかったそうです。また、600〜700nmの赤色光を少なくした条件下では、発芽率が下がったそうです。
本棚以外の参考文献
山崎 敬.ユキワリソウ(サクラソウ科)の種内変異.植物研究雑誌.第78巻第5号:295〜299ページ.2003年.
牧野富太郎.原色牧野植物大圖鑑・続編.北隆館.1983年.
Shimono, A., et al. Seedling emergence patterns and dormancy/germination physiology of Primula modesta in a subalpine region. Ecological Research. 19: 541-551. 2004.
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