メモ | テトラデニア属の説明は、こちらをご覧下さい。 学名について、「最新園芸大辞典」、「園芸植物図譜」、「園芸植物大事典」では、Iboza riparia (イボザ・リパリア)となっていましたが、ここでは、「The Plant-Book」、「The New RHS Dictionary of Gardening」に従いました。和製の図鑑等でも、「日本花名鑑」、「Flower Oasis」、「花卉品種名鑑」のような比較的最近の物では、Tetradenia riparia (テトラデニア・リパリア)が正名となっています。 和名のフブキバナ(吹雪花)は、冬に咲く白く小さい花を吹雪に見立てたものと思われます。「日本花名鑑」によると、ハナフブキ(花吹雪)という別名もあるそうですが、他の文献では見つかりませんでした。 原産地は南アフリカのナタール、分布は南〜中央アフリカだそうで、日本には明治時代の末頃に渡来したと言われています。
非耐寒性の多年生の低木です。ベトベトして独特の匂いがあります。葉は広卵形、縁は円鋸歯状で、対生しています。花序は、全体としては円錐花序ですが、円錐花序を構成しているのは、シソ科の特徴である輪散花序です(上の写真左)。輪散花序がいくつか集まって複合花序を形成していますが、側枝の先端に近い花序より基部に近い花序の方が花序軸が長いため、円錐状になります(上の写真右)。円錐花序が、更に円錐花序を形成しています。
 | 萼は鐘状で、先端は、図鑑では3裂とされていますが、私が観察した限りでは5裂しているように見えました。花冠は、先端が5裂しています。花は白色ですが、老化に伴ってか、低温のせいか、淡いピンク色に変わりました。雌雄異株で、雄花の雌しべには稔性がないそうです。雌花には雌しべだけがあるそうです。雌花より雄花の方が大きいそうです。左の写真は、雄花です。雄しべは4本です。雌しべは1本で、花柱は2裂しています。雌しべの基部は、4つの米粒状のもの(子房?)に囲まれていました。なお、左の写真は、撮影時に黄色くなったものを色調補正しています。 |
繁殖は、挿し芽によりますが、新しく生えてきた枝を春か秋に収穫するそうです。暑さに強く、寒さに弱いです。また、過湿にも弱いため、水を遣りすぎないようにします。日当たりの良い場所を好みます。「The New RHS Dictionary of Gardening」によると、テトラデニア属の植物は、開花時に葉がないか、あるいは、ほとんどなくなることがあるそうです。病気には強そうでしたし、匂いのためなのか、虫が付くこともありませんでしたが、カイガラムシが付くと言われています。なお、フブキバナを掲載していたサカタのタネのカタログ(「園芸通信増刊・2003年秋」)によると、短日性だそうです。
ルワンダでは Umuravumba(ウムラヴムバ?)と呼ばれ、伝統的な薬用植物として利用されているそうですが、マラリア、狭心症、胃腸炎、淋病、下痢、発熱などに対して用いられているそうです。このためか、フブキバナに含まれる成分を抽出したり、構造決定したりする研究があり、イボゾール(ibozol)、α-ピロン、ウムラヴムボライド(?:umuravumbolide)とその脱アセチル化した物、ステロール、その他が単離されているそうです。ただし、これらの成分と、薬効との関係については、分かりませんでした。この他、乾燥した葉をメタノールで抽出した成分には抗菌性があると言われています。また、ルワンダでは、インゲンマメが伝統的な食糧だそうですが、貯蔵中に、ブラジルマメゾウムシやインゲンマメゾウムシが食害してしまうそうです。フブキバナは貯蔵に利用され、これらの昆虫の密度を減らして被害を軽減するそうです。
本棚以外の参考文献
CRC World Dictionary of Plant Names -Common names, scientific names, eponyms, synonyms, and etymology. CRC Press. 2000.(英名)
Van Puyvelde, L. et al. 1', 2'- dideacetylboronplide, an α-pyrone from Iboza riparia. Phytochemistry. 20: 2753-2755. 1981.
Weaver, D. K., et al. Oviposition patterns in two species of bruchids (Coleoptera: Bruchidae) as influenced by the dried leaves of Tetradenia riparia, a perennial mint (Lamiales: Lamiaceae) that suppresses population size. Environmental Entomology. 21: 1121-1129. 1992.
|