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スプレケリア・フォルモシッシマ

スプレケリア・フォルモシッシマ


ヒガンバナ科/スプレケリア属
学名正名:Sprekelia formosissima (L.) Herb.、異名:Amaryllis formosissima L.
英名Jacobean lily, St. James lily, Aztec lily
和名ツバメズイセン(燕水仙)
別名 
花言葉 
メモ

 スプレケリア属(Sprekelia Heister)は、formosissima種(フォルモシッシマ種)一種から成る単型属なので、属についてもこのページで解説します。

 属名は、スプレケリア属植物の標本をリンネ氏(Carl von Linné、1707〜1778年)に送った、ドイツの植物学者のJohann Heinrich von Sprekelsen氏(1691〜1764年)の名前に由来します。「園芸植物大事典」では「シュプレケリア」と表記されていましたが(「人名などの固有名詞に由来する物については、極力その語本来の発音による」という、同書のルールに則ったものだと思いますが)、一般には馴染みがないと思いますので、ここでは「スプレケリア」としました。
 属名が人名に由来するので、属名の性は女性です。
 スプレケリア属には、フォルモシッシマ種の他に、cybister種も含まれていたそうですが、現在、この種は、園芸上のアマリリスが属するヒッペアストルム属(Hippeastrum Herb.に移されています。

 以下、フォルモシッシマ種の解説です。特に断りがない限り、単にスプレケリアと書いてある場合は、フォルモシッシマ種を意味することとします。
 フォルモシッシマ種は、当初は、リンネ氏によって、アマリリス属(Amaryllis)に含められたようですが、後に、William Herbert氏(1778〜1847)がヒガンバナ科植物を分類した際に、スプレケリア属に移されたようです。
 和名のツバメズイセンは、花の形がツバメのように見えることから付けられたそうです。
 原産地はメキシコ、グアテマラで、日本には、明治初期に渡来したそうです。

 半耐寒性の多年草で、開花期は春です。地下部は鱗茎で、黒色の外皮があります。葉は細長く、根生します。葉があるうちに花が咲きます。花茎は中空で、1本の花茎に着く花は一つです(単頂花序)。花被片は6枚で、反り返っています。花色は赤の他、縁が白くなるものもあるそうです。花被片の配列は等角ではなく、下側3枚は重なり合って間隔が狭くなっています。雄しべは6本です。子房は下位で、花柱の先端は三裂しています。
 ヒッペアストルム属とは近縁だそうですが、スプレケリアは、単頂花序であること、苞葉の基部が鞘状になることなどの違いがあるそうです。

 栽培は、アマリリスに準じると良いそうです。実生か分球で増殖させます。実生は、開花までに数年かかるそうです。鱗茎は、春に植えます。土は肥沃で水捌けの良いものが向いています。越冬は、秋に鱗茎を掘り上げて乾燥させるか、鉢植えの場合は灌水を控えるという方法でも問題ありません。7〜10℃に保つと良いそうですが、温暖な場合は、屋外で越冬させても良いそうです。個人的な経験では、冬に氷点下になるような無加温の温室内で、灌水を控えた場合は、鉢植えのままでも冬を乗り切ることが出来ました。

 先述の通り、ヒッペアストルム属と近縁で、育成の経緯は不明のようですが、ヒッペアストルム属植物を種子親、スプレケリアを花粉を親とした属間交雑により、ヒッペアスケリア(× Hippeaskelia)という属間雑種が作られています。
 また、同じヒガンバナ科のネリネ属(Nenine)を種子親、スプレケリアを花粉親とした属間雑種の作出も試みられています。結果は、N. filamentosa(フィラメントサ種)とは着果・種子形成までは至ったものの、その種子は発芽せず、 N. sarniensis(サルニエンシス種)とは着果もしなかったそうで、交雑は成功しなかったそうです。

 リコリン、プレタゼッチン、その他のアルカロイドが含まれているそうです。しかし、マツユキソウ、レウコユム・ウェルヌム(スノーフレークの一種)、ラッパズイセン、イスメネ・フェスタリス等の他のヒガンバナ科植物に含まれているガランタミンは、存在を示す活性が認められなかった(存在しない)そうです。
 その他、「最新園芸大辞典」や「園芸植物図譜」によると、嘔吐作用のあるアマリリン(amaryllin)という有毒なアルカロイドが含まれているそうですが、私が調べた限りでは、アマリリンについては、不詳です(調べ方が悪かったかもしれません)。似た名前の、アマリン(Amarin;ククルビタシンの一種。ククルビタシンB )、アマリリシン(amaryllisine;ヒガンバナ科アルカロイドの一種)、アマラリン(amaralin;セスキテルペンラクトンの一種)なら、存在するのですが。


本棚以外の参考文献
  • 勝川健三ら.Nerine の種間およびヒガンバナ科他属との交雑における種子形成と発芽.園芸学会雑誌.第68巻.900〜902ページ.1999年.

  • Marston, A. et. al. A rapid TLC bioautographic method for the detection of acetylcholinesterase and butyrylcholinesterase inhibitors in plants. Phytochemical Analysis. 13: 51-54. 2002.

  • Glasby, J. S. Dictionary of Plants Containing Secondary Metabolites. Taylor and Francis. 1991.

  • Harbone, J. B. et al. Ed. Phytochemical Dictionary. Taylor and Francis. 1993.

コメント

 鱗茎の植え付けは一昨年の3月末です。この年は開花しないで、葉っぱが生い茂るばかりでした。気温が下がってから葉っぱが枯れてしまい、だめかと思っていたら、今年の5月上旬に再び芽が出てきて、6月中旬にいつの間にか花茎が伸びていて、それに気づいた翌日に開花しました。2球植えたうち、一つしか開花しませんでした。(2004.9.12.)

 
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