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キクザキイチゲ

キクザキイチゲ
品種:‘雪の精’


キンポウゲ科アネモネ属(イチリンソウ属)
学名Anemone altaica Fisch. ex C. A. Mey.、あるいは、A. pseudoaltaica H. Hara
英名Altai anemone
和名キクザキイチゲ(菊咲一華)
別名キクザキイチゲソウ(菊咲一華草)、キクザキイチリンソウ(菊咲一輪草)、ルリイチゲソウ(瑠璃一華草)
花言葉 
メモ

 アネモネ属の解説は、こちらをご覧下さい。
 私が確認できた和製の図鑑での学名と和名は以下の通りでした。

図鑑学名和名
世界の植物A. pseudoaltaica Haraキクザキイチゲ
原色和漢薬図鑑A. altaica Fisch.記載なし
原色牧野植物大圖鑑A. altaica Fisch.和名:キクザキイチリンソウ
別名:キクザキイチゲソウ、ルリイチゲソウ
最新園芸大辞典A. altaica Fisch.和名:キクザキイチリンソウ
別名:キクザキイチゲ
園芸植物大事典正名
A. pseudoaltaica Hara
異名
A. altaica sensu auct. jap. non Fisch.
キクザキイチゲ
世界有用植物事典A. altaica Fisch.記載なし
植物の世界A. pseudoaltaicaキクザキイチゲ

 出版年順で、下ほど新しい。

 参考までに、「The New RHS Dictionary of Gardening」や、「CRC World Dictionary of PLANT NAMES」のような海外の植物事典には、「A. altaica Mey.」に関する記述はありましたが、「A. pseudoaltaica」は載っていませんでした。
 和製の図鑑と海外の事典で、A. altaica の命名者名が違います(和製:Fisch.、海外:Mey.)。また、Feng氏の文献では、「Fisch. ex C. A. Mey.」とされています。これは、最初に命名したのは Fischer氏(Friedrich Ernest Ludwin von Fischer、1782〜1854年)だけど、何らかの理由で、発表したのは Meyer氏(Carol Anton Andreevic von Meyer、1795〜1855年)、と言うことです(参考までに、「ex」は、「〜より」という意味)。どれが正しいのか分かりませんが、ここでは、Feng氏の文献に従いました。
 また、A. pseudoaltaica の命名者名について、「園芸植物大事典」では、HaraHiroshi Hara、原寛氏、1911〜1986年)とされていますが、実際は、Hara と言ったら、Kansuke Hara氏(漢字表記?、1885〜1962年)のことを指します。両者を区別するため、原寛氏の方は、「H. Hara」と書きます。このページでは、これに従いました。
 「園芸植物大事典」の異名の後の「sensu auct. jap. non Fisch.」について、「sensu(意味、考え)」、「auct.auctorum([学名の]著者)」、「jap.japon(日本)」、「non([〜では]ない)」です。この場合、どのように解釈すれば良いのか分かりませんでした。ただ単に、「A. altaica auct. non Fisch.」であれば、「auct. non」は「(誤用名の引用に用いて)原著者の指定したタイプと異なる」という意味なので、「Fischer氏が言うところの A. altaica とはタイプが異なる」と言う意味になり、「A. altaica Fisch.」と「A. pseudoaltaica H. Hara」は別種と言うことになります。ちなみに、「pseudo」は、この場合は、「〜に似た」という意味です(他に、「偽の」という意味もあります)。
 仮に、A. altaicaA. pseudoaltaica が別種であるとすると、具体的にどのような違いがあるのか分かりませんでしたし、また、写真の植物がどちらの特徴を持っているのかも分かりません。A. pseudoaltaica の命名者である原寛氏がどのような理由で区別したのかについて記した文献があればいいのですが、見つかりませんでした。そこで、学名は上記のように、敢えて、正名と異名の区別をしませんでした。ご了承下さい。

 A. altaica は、日本とロシアの北極地方に分布しているそうです。A. pseudoaltaica は、近畿地方以北の本州と北海道の落葉広葉樹の林床に自生しているそうです。

 多年草です。地下部は根茎で、葉は根生します。花が着く茎(地上茎)には3枚の包葉が輪生しています。それぞれの包葉は、3枚の小葉から成る複葉で、小葉は、有柄の角卵形で深い切れ込みと鋸歯があります。花は茎に一つだけ着きます。花期は、春(4〜6月頃)です。アネモネ属の特徴で、花弁のように見える物は萼片で、白〜紫色で、10枚以上あります。写真のような園芸品種にはそれ以上ありますが、雄しべが変化しているようです。花の形がキクに似ていることから、「キクザキ」という和名や別名が付いたそうです。
 まだ栽培を始めて間もないので、栽培については、今後色々と確かめてみたいと思います。今のところ、堆肥を含む水捌けの良い土に植えて、半日陰(林床に自生しているらしいので)に置いています。

 「原色和漢薬図鑑」によると、根茎を乾燥させた物は「九節菖蒲(Jiujiechangpu)」と呼ばれ、鎮静、去痰、解毒、その他の薬効があるそうです。しかし、Feng氏の文献によると、「九節菖蒲」は、本来は Acorus tatarinowii)の根茎を乾燥させたものに当てられた名称(別名:Shichangpu:漢字表記?)だそうです。キクザキイチゲの根茎を乾燥させた物は Waichangpu(漢字表記?)と呼ばれ、これに含まれている精油について調べたところ、含まれている量が少なく、Shichangpu に含まれている成分とは異なることが明らかになったそうです。

 Acorus属(ショウブ属・サトイモ科)は、Acorus calamus L.(ショウブ)と Acorus gramineus Soland.(セキショウ)の2種から成るそうです。Acorus tatarinowii に関することは、分かりませんでした。


本棚以外の参考文献
  • CRC World Dictionary of PLANT NAMES -Common names, scientific names, eponyms, synonyms, and etymology. CRC Press. 2000.

  • 田村道夫.世界の植物.1618ページ.朝日新聞社.1977年.

  • 牧野富太郎.原色牧野植物大圖鑑.北隆館.1982年.

  • 門田裕一.イチリンソウ.植物の世界.第93巻:8-258〜262ページ.朝日新聞社.1996年.

  • Feng, Xuefeng. Analysis of constituents of essential oil from Anemone altaica Fisch. ex C. A. Mey. Zhongguo Zhongyao Zazhi. 23. 739-740, 765: 1998.(摘要のみ参考。「Zhongguo Zhongyao Zazhi」は、「中國中藥雜誌(Chinese Journal of Chinese Materia Medica)」だそうです。)

  • 大橋広好訳.国際植物命名規約(東京規約)1994.津村研究所.1997年.

コメント

 例によって、品種名に惹かれて、改良園の通販で買いましたが、届けられた時には、既に開花していました( ̄▽ ̄;。日持ちが比較的良く、3月下旬に定植してから萼片が全て落ちるまでに、おおよそ10日くらいかかりました。つきあいが短く、栽培しているという感覚がありません(^^;。今後、栽培していて何か気付いたことがあったら、書き足したいと思います。(2004.4.18.)

 
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