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ルナリア・アンヌア

ルナリア・アンヌア


アブラナ科ルナリア属(ギンセンソウ属、ゴウダソウ属)
学名正名:Lunaria annua L.、異名:L. biennis Moench.
英名honesty, silver dollar, penny flower, common moonwort, satinflower, satinpod, money plant
和名ゴウダソウ(合田草)
別名ルナリア、ギンセンソウ(銀扇草)、マネープラント
花言葉 
メモ

 ルナリア属の解説は、こちらをご覧下さい。
 一般に、ルナリアと言ったら、この L. annua(アンヌア種)のことを指します。
 和名のゴウダソウは、1901年(明治34年)にパリからルナリアの種子を持ち帰った東京美術学校教授の合田清氏の名前に因むそうです。また、「園芸植物 庭の花・花屋さんの花」と「Flower Oasis」によると、上記の他に、オオバンソウ(大判草?)や、カネノナルキと言う別名があるそうです。しかし、「金のなる木」と言ったら、ベンケイソウ科の Crassula portulacea(クラッスラ・ポルツラケア、園芸名:花月[かげつ])の俗称なので、ルナリア・アンヌアにカネノナルキという別名を当てるのは適切でないと、個人的には思います。
 英名の honesty の由来は分かりませんでした。他の英名は、果実や隔膜の形や色艶に因むものと思われます。
 原産地は南東ヨーロッパと西アジアで、北ヨーロッパや北アメリカの温帯地域にも分布しているそうです。

 耐寒性がある二年草です。茎は直立しています。葉には葉柄がありますが、上位の葉は葉柄が短かいか、無柄になります。葉の形は心臓形で、葉縁には細かい切れ込み(鋸歯)があります。花序は総状花序です。花はアブラナ型花冠で、萼片は4枚、花弁は4枚で十字型に配列し、長さが異なる6本の雄しべ(四強雄ずいで、長い雄しべが4本、花弁より短く外から見えない雄しべが2本)があります。花色は、写真のような紫色の他、白色もあるそうです。子房は2枚の心皮で構成され、上位です。果実は扁平な短角果で、ほぼ円形〜楕円形です(下の写真)。2枚の果皮の間には隔膜が挟まれています。隔膜と果皮の間に、扁平で翼がある種子が出来ます。果実の先端に付いている突起は、花柱です。
 「The Plant-Book」によると、真偽のほどは定かではないそうですが、若い根が食用になるそうです。同じアブラナ科のダイコンやカブに近いのでしょうか?

 左は成熟した果実の写真です。右端の果実の中に透けて見える物は種子です。写真の果実には果皮が付いていますが、果皮が剥がれた後に残る隔膜には滑らかな光沢があって綺麗なことから、ドライフラワーとして利用されています。ドライフラワーの作り方ですが、果実が茶色くなり始めたら収穫し、干して乾燥させ、果皮と種子が落ちるのを待ちます。
 最近は、種子に含まれるオイルについて、研究が行われているようです。

 繁殖は、実生か株分けで行います。播種は春か秋に行います。春に播種した場合は、翌年の春に開花しますが、秋に播種した場合は、翌々年に開花するそうです。直根性なので、直播きして間引くか、早めに移植するのが良いそうです。株分けは、春先に行うそうです。日当たりが良い所か半日陰の場所が向いていて、土質は特に選ばないそうです。多湿に弱いので、水は控えめが良いそうです。夏の高温に弱いので、この時期の移植や定植は避けた方が良いと言われています。緑色植物体春化型で、抽台・開花するためには苗が低温に遭遇する必要がありますが、幼若相が長いため、寒くなる前にある程度大きく育てておく必要があるそうです(このことについては、後述します)。必要な低温は、5℃の場合は、少なくとも10週間と言われているようです。耐寒性が非常に強く、オランダのワーゲニンゲンで行われた実験によると、系統によるようですが、−17℃の冬の霜にも耐えることが出来る系統があったそうです。

 播種時期(6、7、8月の一ヶ月おき)の違いが、ルナリアの成長にどのような影響を及ぼすかについて、イギリスで2年に亘って調査されています(病気に罹ったり、乾燥ストレスを与えてしまったりと、いくつか問題があったようですが)。この調査によると、6月と7月に播種した場合は、翌年の3月始めまではロゼットの状態だったそうですが、その後に急速に伸長し、4月上旬に開花が始まったそうです。これは、1年目の実験も、2年目の実験も同じ結果だったそうです。しかし、8月に播種した場合は、1年目と2年目で結果が異なったそうで、1年目は、開花開始が6月で、開花した個体は5%未満だったそうですが、2年目は開花開始が4月末で、ほとんどの個体が開花したそうです(ただし、草丈は、6月・7月播種の個体より小さかったそうです)。なお、1年目と2年目では、2年目の方が冬季の温度が高かったそうです(春化に必要な低温は、1年目の方が満たされ易かった、と言うことだと思います)。このことから、冬の低温に遭遇する前にどれだけ成長できているかによって春化に必要な低温の量が決まり、播種時期としては8月が限界であることが推察されています(これは、あくまでも、調査された地域でのケースで、地域によって限界が異なります)。なお、他の文献も交えて補足しますと、ルナリアの場合、個体が若いと、春化に必要な低温要求量が大きく、冬季に必要量を満たすことが出来ないそうです(幼若相であるため=低温に感応できるほどに成長していないため、ということとは異なるのでしょうか?)。また、十分に成長して齢が進んだ個体(6月や7月に播種した個体)では、若い個体と比較して、春化に必要な低温要求量が少なくて済むそうです。
 また、種子に含まれるオイルの量についても調査されていますが、年によって収量や種子に含まれるオイルの含有率に差があること、6月・7月に播種した個体より8月に播種した個体で収量が少ないこと、オイルの組成(含まれている各成分の含有率)は、播種した時期による違いはほとんどないことが明らかになったそうです。この他、品種(花の色)による差があったとも言われていますが(白花品種より、紫花品種の方が成長が旺盛で、オイルの収量が多い)、たった3品種(白1品種、紫2品種)で、そこまで言えるのかな?と思いました。

 最近は、種子に含まれるオイルやアルカロイドについて、調べられているようです。
 種子に含まれているオイルの含有率は30〜35%程だそうで、その内の約45%がエルカ酸(erucic acid;長鎖脂肪酸の一種)、約20%がネルボン酸(nervonic acid;長鎖脂肪酸の一種)だそうです。エルカ酸には血清長鎖脂肪酸値を低下させる効果があり、食用になるそうですが、長期の使用により心筋症になることがあるそうです。また、潤滑油として用いることもできるそうです。ネルボン酸は、脳に含まれるネルボンの主要な構成物質だそうです。潤滑油、添加剤として利用でき、最近は抗硬化薬の材料としての研究も行われているそうです。
 ルナリン(lunarine)というアルカロイドが含まれているそうです。これは、スペルミジン(ポリアミンの一種で、核酸の安定化などの生理作用がある)を含むことが示された最初の植物アルカロイドだそうです。ルナリンには、TryR (trypanothione disulfide reductase) と言う酵素を阻害する作用があるそうです。TryRは、トリパノチオン(trypanothione)という物質とともに、睡眠病などの深刻な病気を引き起こすTrypanosoma(トリパノソーマ)属の原生動物の酸化還元防御システムに関わっているそうで、TryRの機能を抑えると、トリパノソーマ属原生動物の酸化ストレスに対する感受性を高めることが出来るそうです。ルナリンは、種子でのみ生産され、他の器官には、全く含まれていないそうです。また、種子が形成される間にルナリンが合成されるそうで、発芽した種子の細胞を培養しても、ルナリンは合成されなかったそうです。


本棚以外の参考文献
  • Cromack, H. T. H. The effect of sowing date on the growth and production of Lunaria annua in Southern England. Industrial Crops and Products. 217-221. 1998.

  • Mastebroek, H. D., et al. Breeding prospects of Lunaria annua L. Industrial Crops and Products. 11: 139-143. 2000.

  • 今堀和友ら監修.生化学辞典第3版.東京化学同人.1998年.

  • Sagner, S., et al. Bis(p-coumaroyl)spermidine, the penultimate precursor of the alkaloid lunarine. Tetrahedron Letters. 38: 2443-2446. 1997.

  • Hamilton, C. J., et al. Benzofuranyl 3,5-bis-polyamine derivatives as time-dependent inhibitors of trypanothione reductase. Bioorganic & Medicinal Chemistry. 11: 3683-3693. 2003.(緒言のみ参考)

コメント

 播種は2002年4月末、最初の開花は2003年4月中旬です。無加温の温室内で栽培しています。発芽した日にちは、記録に残すのを忘れていました( ̄▽ ̄ゞ。播種してから4週目の双葉の写真があるので、少なくとも、それ以前には発芽していたはずです。昨年の秋は、こぼれ種からたくさん発芽していました。一つだけ残して様子を見ていますが、今のところ抽台しそうな気配はありません。
 開花期は春だそうですが、今年は1月から咲き始め、1月18日〜31日に花リレーで紹介しました。二年生とのことですが、管理の仕方にもよるかもしれませんが、私が育てているルナリアは、この4月に3年目となります。もう少し育ててみようと思いますが、アブラナ科植物は連作障害を起こしやすいと言われているのに鉢植えしているので、いつまで持つやら・・・。
 honesty という英名がありますが、ふと、ビリー・ジョエルの「Honesty」という歌が思い浮かびました。あれは、「正直」とか「誠意」とかという意味だと思いますが、まさか「ルナリア」なんてことは・・・。まぁ、あり得ませんね。(2004.4.3.)

 
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