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オニラ・ウングイクラタ

オニラ・ウングイクラタオニラ・ウングイクラタ
開花前日開花翌日
オニラ・ウングイクラタ


アヤメ科 オニラ属
学名正名:Onira unguiculata (Baker) Ravenna、異名:Herbertia unguiculata Baker
英名 
和名 
別名 
花言葉 
メモ

 手に入った資料は「The Plant-Book」、「CRC World Dictionary of PLANT NAMES」と参考にした2本の論文だけでした。これらのうち、学名の命名者であるRevannaの論文に詳述されていたので、これと併せて、Goldblatt らの論文や私が調べた形態や行った栽培方法を少々紹介したいと思います。
 なお、オニラ属(Onira Ravenna)は unguiculata 一種から成る単型属なので、属についてもこのページで解説します。

 Onira属は、アヤメ科ティグリディア連(Tigridiae)の植物だそうです。
 参考にした Ravenna の論文によると、属名は、「幻想、夢」を意味するギリシャ語に由来するそうですが、変わった模様の花に因んで付けたそうです。「CRC World Dictionary of PLANT NAMES」には「野生のケシ」を意味するラテン語の「oniros」に由来すると書いてありましたが、命名者自らの解説の方が信憑性があるでしょう。

オニラ・ウングイクラタ

 Onira unguiculata は、もともとはJ. G. Bakerという人が1877年に発表した論文や1892年に出版した本の中では Herbertia属とされていたそうです。具体的にどのような違いから Onira属に移されたのかは、分かりませんでした。
 原産は、ブラジルのリオグランデ・ド・スル州、ウルグアイの北東部だそうです。
 多年草だそうですが、耐寒性については、どの程度あるのか不明です。草丈(地面から花茎の先端まで)は12cmほどです。茎は短く地中にあります。葉は細長く襞があり根生しています。1株当たりの花茎の数は、現時点で7本まで確認しています。1本の花茎に着く花の数は、今のところ二つまでしか確認していません。

 花は一日花で咲いたその日の夕方から萎れ始めます。写真上段左は開花前日の蕾、同右は開花翌日の萎れた花です。花の形態ですが、放射相称花で子房は下位です。形や色が異なる外花被片と内花被片が、それぞれ3枚ずつあります。外花被片は大きく、薄紫色で、背軸側に反り返っています。内花被片は小さく、先端は白色で中央に青い筋が入り、一度向軸側に曲がってから背軸側に反り返っています。外花被片、内花被片ともに赤茶色の斑点があります。雄蕊は糸状で葯は花柱に巻き付いて密着していますが、ピンセットと柄付き針を用いれば、花柱から剥がすことが出来ます。花柱は3裂していますが、分岐点から先端までの長さが約20mmと細長く、この点が、フォーク状に短く3裂している他の近縁属と異なるそうです。雄蕊と花柱は、外花被片と同じ方向に着いています。花が萎れるときは、外花被片は雄蕊と花柱を包み込みます。私の推測ですが、これは、自家受粉を確実に行うための仕組みかもしれません。花は、萎れたその日のうちは、子房と合着していて力を入れないと折り取ることが出来ませんが、更に1〜2日経つと、自然に落ちてしまいます。開花前日の写真の中で、蕾の右側にある緑色の物は、花が落ちた後に残った子房です。
 染色体数は x=7だそうですが、何倍体なのかは分かりませんでした。
 Ravenna によると、草深いところ、あるいは、低木の中の石で覆われたような場所に自生しているそうです。自生地では、10月から11月にかけて花が形成され、12月末までに休眠状態になり、4〜5月に休眠が打破されるそうです。

 栽培ですが、私は鉢植えしていますが、水捌けの良い土を用いていて、日当たりが良い場所に置いています。水は土の表面が乾燥した時に与えています。花は、咲いたその日のうちに萎れ始めることは前述しましたが、気温が高いと早く萎れ始めるような気がします。今のところ、一つの株につき1週間に2花程咲いています。


本棚以外の参考文献
  • Ravenna, P. Catila and Onira, two new genera of South American Iridaceae. Nordic Journal of Botany. 3: 197-205. 1983.

  • Goldblatt, P. et al. Calydorea Herbert (Iridaceae-Tigridieae): notes on this new world genus and reduction to synonymy of Salpingostylis, Cardiostigma Itysa, and Catila. Annals of the Missouri Botanical Garden. 78: 504-511. 1991.

  • Quattrocchi, U. CRC World Dictionary of PLANT NAMES. Vol. III. CRC Press LLC. 2000.

コメント

 球根の植え付けは昨年の10月上旬、芽(葉)が出たのは同年10月下旬、最初の開花は今年の5月上旬です。無加温の温室内で栽培しています。球根を植え付けてから葉が出るまでの期間は短かったものの、その後の成長は緩慢で、ずいぶんヤキモキしたものです。このページを作るために関連文献を読んで、冬季に休眠することを知りました( ̄▽ ̄ゞ。成長しないのは、当たり前と言えば当たり前でした。花茎が伸びて最初の蕾が出てきたときは嬉しかったです(^^)。ところが、その翌日は出張のため開花しているところを見られず、その翌日に萎れた花を見たときは「病気になっちゃったのかなぁ?」と心配しました。2番目の花が咲いて一日で萎れる花だと知って、安心することが出来ました(^^;
 タキイ種苗の「花ガイド2002年夏・秋」に載っていたものですが、「新製品」と言う点に惹かれて栽培を試みました(笑)。このページを作ろうとして文献収集しようとした時になって、関連する資料がほとんどないことに気付きました。Ravenna は、19世紀末の Baker の論文を引用して、既にその頃に Herbertia unguiculata があると紹介しつつ、1959年に発見したと記しています。1959年に新しい属として認定したと言うことだとしても、論文の発表が1983年ですから間が随分空いています。いずれにせよ、比較的新しい植物で、余り知られていないと言うことなのかもしれませんね。気付いたこと等があったら、追記したいと思います。
 ちなみに、今年の「花ガイド2003年夏・秋」には載っていませんでした。販売されているうちに手に入れることが出来て良かったです。それにしても、植えた球根は5つでしたけど、まともに花が咲いたのは2株って・・・( ̄▽ ̄;(2003.5.31.)

 
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