このページ内の文章・画像の転載を禁止します


デージー[ヒナギク]

デージーデージー
品種:タッソー系‘ストロベリーアンドクリーム’


キク科ベリス属(ヒナギク属)
学名Bellis perennis L.
英名English daisy, common daisy, true daisy
和名ヒナギク(雛菊)
別名エンメイギク(延命菊)、チョウメイギク(長命菊)
花言葉無邪気、平和、希望、美、他
利用部葉、花
利用法食用、薬用
薬効収斂、鎮痙、去痰、治癒
メモ

 ベリス属の解説は、こちらをご覧下さい。
 英名の由来はベリス属の解説をご覧下さい。デージーという名前が付く花は他にもありますが、特にヒナギクのことを指す場合は、上記のような言い方をするそうです。チョウメイギクやエンメイギクは花期が長いことに由来するそうです。
 原産は西ヨーロッパで、南・西・中央ヨーロッパ、西アジアに分布し、日本には明治時代の初め頃に渡来したそうです。

 変種として、var. fistulosa(八重咲き。花序は長い筒状花から成る)、var. ligulosa(八重咲き。舌状花が多く、筒状花が少ない)があるそうです。
 花弁の形からは、
平弁咲き:普通の舌状花弁が重なった咲き方。
管弁咲き:舌状花弁が内側に巻き、両端が癒合して管状になった咲き方。先端に穴が空いている。
巻弁咲き:管弁と同様に舌状花弁が巻くが癒合しない咲き方。花弁は針状で先が尖る。
の三つに分類されるそうです。また、花序の直径によって、大輪(7〜8cm)、中輪(4〜5cm)、小輪(2〜3cm)に分けられるそうです。
 また、「花卉品種名鑑」によると、日本で販売されている系統やシリーズとして、アーリー系、アーリーポンポネットシリーズ、エトナ系、エトナシリーズ、シベリウス系、タッソーシリーズ、タッソー系、チロリアンデージー、ハバネラ系、ハバネラシリーズ、マルチフローラシリーズ、メディチシリーズ、等々があるそうです。同じ名前に「系」か「シリーズ」が付いているケースがありますが、種子を販売している会社によって違うようです。この他、‘カーペットローズ’、‘白雪’等の品種や、サカタのタネから「イングリッシュデージー」という名前で原種が販売されているようです。

 多年草ですが、夏の暑さに弱いため秋播き一年草として扱うとか、栽培し続けると花の品質が悪くなるため二年草として扱うとかと言われています。耐寒性があり、−5℃で障害が出るそうですが、−15℃までは耐えられるようです。播種は夏から秋にかけて行います。暑さに注意する必要がありますが、8月に播種すると年内に開花することが出来るそうです。種子は微細で好光性なので、播種の際は土を掛けないようにします。発芽の適温は15〜20℃くらいだそうです。日当たりが良いところか半日陰の場所が良く、土は水捌けの良い物を用います。水を切らさないようにし、特に夏の乾燥に注意します。花殻をこまめに摘むと、花が咲いている期間が長くなるそうです。繁殖は、播種の他、株分けによっても出来ます。種子が出来ない品種では株分けで増やします。
 産業廃棄物のリサイクルを目的として、コーヒーの絞り粕を培養土として栽培する方法が試みられたそうです。デージーを栽培する際に用いた培養土は、バーク堆肥(木材の屑に鶏糞や牛糞を混ぜて堆肥化したもの)と赤土を1:1に混合したもの(対照区)、コーヒー堆肥(堆肥置き場でコーヒーの絞り粕を1年かけて堆肥化したもの)と赤土を1:1に混合したもの、コーヒー堆肥のみの3種類だったそうです。対照区と比較して、コーヒー堆肥:赤土区では花数が減少したそうですが、コーヒー堆肥区では葉数と花数が増加し、更に葉色が濃くなったそうです。このことから、コーヒー堆肥はバーク堆肥と同じような効果があることが示されたとのことです。なお、培養土の特徴としては、コーヒー堆肥:赤土区はリン酸(P2O5)とカルシウム(CaO)がそれぞれ対照区の1/6、3/4しか含まれていないこと、コーヒー堆肥区はpHが低い、窒素(NO3-N)、リン酸、マグネシウム(MgO)含量が高いと言うことが挙げられるそうです。デージー以外にもバーク堆肥で育てた場合と同等かそれより良い結果が得られた植物があることから、コーヒーの絞り粕は堆肥化することによって培養土として利用が出来ると推察されています。この実験が行われたのはおよそ10年前ですが、実用化されているのでしょうか? それにしても、赤土が混ざっているかいないかで成分に随分違いがあるようです。

 原種の花(花序)は白の一重だったそうで、花占いに使われていたことがあったそうです。八重咲きの花(花序)はエリザベス女王の時代(16〜17世紀)に作られるようになったそうです。現在、花色は白の他、赤やピンクなどもあります。舌状花の花弁は表より裏の方が色が濃いため、管弁や巻弁では花の色が濃く見えます。赤い花に含まれている色素はアントシアニンだそうで、紅色系の‘クリムソンジャイアント’という品種からは、2種類のシアニジンと1種類のペラルゴニジンが同定されたそうです。ペラルゴニジンは微量だったものの、朱赤色の品種を作れる可能性があることを示しているそうです。

 若葉、蕾、花弁はサラダに加えて食べることが出来るそうで、生食に用いたと言う15世紀の記録も残っているそうです。また、薬草として用いられた歴史があるそうで、リューマチや傷の治療や去痰薬として用いられたり、抗菌作用もあることが示されているそうです。葉と花から抽出されたエッセンシャルオイルには主にモノテルペンとポリアセチレンが、また、根にはサポニンが含まれていて、ポリアセチレンとサポニンについては新規の物質が単離されたり、構造が解明されているそうです。しかし、それらの成分がどのような症状に効くのかまでは分かりませんでした。また、「英国王立園芸協会 ハーブ大百科」によると、HIVhuman immunodeficiency virus;人免疫不全ウイルス)に対する効果についても研究中とのことですが、関連する文献は見つかりませんでした。


本棚以外の参考文献
  • 塚本洋太郎監修.原色・花卉園芸大事典.養賢堂.1984年.(伊藤秋夫.ヒナギク属.434〜435ページ.)

  • 小原廣幸ら.コーヒー抽出残渣を利用した花卉の生育.玉川大学農学部研究報告第32号:139〜150ページ.1992年.

  • 土岐健次郎ら.デージー(Bellis perennis)の花色発現.1.アントシアニンの分析.園芸学会発表要旨.昭和62年秋:490〜491.1987年.

  • A・M・コーツ著(白幡洋三郎ら訳).花の西洋史・草花編.八坂書房.1989年.

  • Schöpke, T., et al. Bellissaponins BA1 and BA2 acylated saponins from Bellis perennis. Phytochemistry. 30: 627-631. 1991.

  • Avato, P., et al. Acetylenes and terpenoids of Bellis perennis. Phytochemistry. 40: 141-147. 1995.

コメント

 播種は2001年10月上旬、発芽はその6日後、最初の開花は2002年2月下旬、今年(2003年)の最初の開花は2月中旬です。無加温の温室内で育てています。
 最初の開花から一年が経ってしまいました(^^ゞ。それというのも、カタログで見た通りの花(花序)が咲くのを待っていたからですが。タキイ種苗の「園芸新知識増刊号・花ガイド(2001年夏・秋)」に新製品として紹介されていたもので、カタログの写真の花は、管弁が多く中心の筒状花があまり目立ちませんでしたが、実際に自分で育ててみると、上の写真(左)のように筒状花が目立つ花や、筒状花の中に管弁がポツポツと混じった花しか咲かなくて、カタログの花とは随分違いました。もしかしたら、暖かくなったらカタログの写真のように咲くのかな?と期待に胸を膨らませて待っていたものの、結局昨年はダメで、弱いという夏もあっさり越して、そのまま年越しまでしちゃいました(^^ゞ。でも、一年待っても昨年と同じでした。お陰で、少なくとも2年目も花が咲くことを証明できましたが(笑)。タネによって管状花が多くなったり、筒状花が多くなったりするのでしょうか? 筒状花に混じる管弁の数は、今(4月上旬)よりも咲き始め(2〜3月)の方が多かったです。気温が低い方がそうなるのか(環境的要因)、それとも、早く咲く一番花、二番花と言った花でそうなるのか(生理的要因)、興味があります。

 色々と調べていたら、「タッソー」の他に、「タッソーシリーズ」というものがあることを知りました。「系」を付けるか「シリーズ」とするかは、種苗会社次第といったところでしょうか。品種名をどうするかは名前を付ける人次第ですから系統名も同じかもしれませんが、「系」と「シリーズ」で区別するなんてややこしいですね。更に、タッソー系には‘ストロベリーアンドクリーム’(写真の品種)、タッソーシリーズには‘ストロベリークリーム’という品種があるようです。品種名まで「アンド」が付くか付かないかの違いしかありません。紛らわしい名前を付けないで貰いたいと思いましたが、タネが入っていた袋に「生産地はドイツ」と書いてあったので、もしかしたら、タッソーシリーズも海外で育成された品種を輸入しているのかもしれません。ともあれ、同じ系(シリーズ)で同じ品種であるなら、名前を統一して貰いたいです。
 それともう一つ。カタログでは「矮性」と紹介されていましたが、「矮性品種」の誤りではないでしょうか? 「種」としてしまうと、「Bellis属に草丈の高い種や低い種があって、perennis種は矮性種」と言っているように思えますが。種苗会社には、そのようなことにも気を使って欲しいものです。(2003.4.5.)

もう一言(2003.5.4.)
 左の写真のサイズを変更し、右の写真を追加しました。
 このページをアップしてしばらくしてから、再び、筒状花の中に管弁が混ざる花が咲き始めました(写真右)。それでも、筒状花が目立って、思い通りの花は、未だに咲いていませんが。管弁の発生について、先に、環境的要因や生理的要因が関係すると推測しましたが、もしかしたら、遺伝的要因が一番関わっているのかもしれません。右の写真のような花が一時的に咲かなくなった原因については、不明です。

 
HOME   植物名一覧

このページ内の文章・画像の転載を禁止します