このページ内の文章・画像の転載を禁止します


レディース・マントル[アルケミラ・ウルガリス]

レディース・マントル花レディース・マントル葉
レディース・マントル


バラ科 アルケミラ属(ハゴロモグサ属)
学名Alchemilla vulgaris hort. non L.
英名Lady's Mantle
和名セイヨウハゴロモグサ(西洋羽衣草)
別名 
花言葉

 

利用部

利用法

妊娠中は使用しない;乾燥させた物を成分抽出する

薬効

収斂(止血、創傷治癒、下痢、胃腸炎)、抗炎症、分泌物抑制、月経過多・不順、更年期障害

メモ

 属名は、この植物に付けられたアラビア名の「alkemelych(絹状の軟毛)」に由来するそうです。また、「Alchemy(錬金術)」に用いたことに因むとも言われているようです。
 ハゴロモグサ(羽衣草)は、牧野富太郎博士が英名を訳して付けた物だそうです。なお、ハゴロモソウと呼ばれている植物もありますが、ハゴロモソウは、キク科のノコギリソウ(Achillea alpina L.)の別名です。
 英名の Lady's Mantle は、A. vulgaris、または、A. xanthoclora Rothm.(クサントクロラ) のことを指すようです。起源は中世にまで遡るそうで、聖母マリアのマントのイメージから付けられたものと考えられているようです。また、婦人病に効果があることからその名が付いたとも言われています。

 A. vulgaris と言う学名は、かつては、アルケミラ属の複数の種に付けられていましたが、現在、それらの種は分類されます。しかし、写真のアルケミラについては種の判定が出来なかったため、便宜的に上記のようにさせていただきました。英国王立園芸協会の「The New RHS Dictionary of Gardening」(Macmillan Referance LTD, 1999)にも、『A. vulgaris は、ガーデンプラント(としてのアルケミラ)の多くを含んでいるが、納得できるように分別されていないので、集合名(?:原文では、aggregate name)として扱うのがベストである。』と書いてあります。上記の薬効・利用法等についても、図鑑に「レディース・マントル」として載っている植物の解説を参考にしたものであって、特定の種についての物ではありません。種によって若干の違いがあるようですが、共通点を抜き書きしました。ご了承下さい。
 A. vulgaris は、北半球(ヨーロッパ、アジア、北米)に分布しているそうです。牧野博士の「原色牧野植物大圖鑑・続編」(北隆館,1983年)によると、日本にも A. vulgaris(=A. japonica Nakai et Hara)が、本州中部地方・北海道夕張岳に自生しているそうですが、これも別の種とされ、異名であった A. japonica が正名[和名:ハゴロモグサ]とされたらしいです。

 アルケミラ属に属する植物は、世界におよそ250種(資料によっては300種)あるそうです。「花卉品種名鑑」(農山漁村文化協会、2002年)によると、これらのうち、日本で流通しているのは A. mollis (Buser) Rothm.(モリス)と A. xanthochlora の2種だけのようです(参考までに、「花卉品種名鑑」には A. xanthochlora Rothm.A. vulgaris L.] と表記されていました)。
 A. mollisについて、「ハーブ スパイス館」によると、日本で出回っているレディース・マントルのほとんどが A. mollis だそうです。「ハーブ スパイス館」に載っていた写真と、このページの物はよく似ているので、同じ種かもしれません。しかし、「The New RHS Dictionary of Gardening」に描いてあった A. mollis とは葉の形態が異なります。「The New RHS Dictionary of Gardening」には、一部の種について種の判定基準が書いてあります。また、アルケミラ属の植物は種によって葉の形態(多くの種は掌状浅裂、他に、掌状深裂や複葉)に特徴があるらしく、26種だけですが葉のイラストが描いてあります。A. mollis の葉の特徴として、葉身の、葉柄が付いている部分の切れ込みが浅いと言うことが挙げられます。A. xanthochlra を始めとして他の多くの種では矢尻のように深く、葉身全体としては扇形(カエデ形と言った方が近いでしょうか?)のような形をしています。それに対し、A. mollisでは、葉身全体の切れ込みが浅くて円形に近く、団扇形と言えそうな形をしています。このことから、少なくとも、このページのアルケミラは A. mollis ではないと判定しました。参考までに、「英国王立園芸協会 ハーブ大百科」によると、A. mollis には薬効がないそうです。
 A. xanthochlora については、「The New RHS Dictionary of Gardening」では、『野生で最も普通に見られる‘ウルガリス’のアルケミラの一つである』と説明されています。A. xanthoclora の写真は「園芸植物大事典」と「英国王立園芸協会 ハーブ大百科」に載っていますが、前者は葉の先端が丸いのに対し、後者は葉の先端が三角形で、別の種のように見えます。薬効がありハーブとして扱われている種ですが、A. alpina L.Aipine Lady's Mantle)の方がより強い効果があるそうです。
 なお、「The New RHS Dictionary of Gardening」やその他の文献によると、A. mollis と A. xanthoclora の、先述のこと以外の主な違いは、以下の通りです。

 A. mollisA. xanthoclora
葉の形態上位の葉の表面は有毛。大きさは15cm程上位の葉の表面の毛はない。あっても僅か。
草姿などがっしりしている小〜中型。高さ・広がりは、ともに50cm
花茎60〜80cm。有毛50cm未満。下位は有毛、上位は無毛
分布東カルパティア山脈、トルコ、コーカサス北・西・中央ヨーロッパ、スウェーデン、ギリシャ
用途観賞用(切り花、グランドカバー)。薬効はない薬用

 耐寒性のある多年草です。実生、株分けで繁殖させます。播種は春に、株分けは3〜4月、あるいは、10〜11月に行います。日当たりは、良いところか半日陰が向いているそうです。土壌は、弱酸性を好み、石灰分(アルカリ)を嫌うそうです。高温多湿に弱いので、夏は乾燥気味にすると良いそうです。花は夏に咲きます。花弁はなく、花びらのように見えるのは、副萼片(外側の4枚)と萼片(内側の4枚)です。


上記以外の参考文献
  • 堀田満ら編集.世界有用植物事典.平凡社.1989年.

  • A. シヴァリエ原著.世界薬用植物百科事典.誠文堂新光社.2000年.

  • 清水建美.ハゴロモグサ.世界の植物.1333−1334.朝日新聞社.1976年.

コメント

 写真を撮影したのは、5月下旬〜6月上旬です。職場のハーブ畑で育ててられているもので、私が育てているものではありません(^^ゞ。A. vulgaris として栽培していますが、種の判定はしていなかったので改めて調べてみたら、現在出版されている図鑑等はあまりあてにならないことが分かりました。簡単な解説で済むと思っていたら、資料の収集とまとめに予想外の時間がかかっちゃいました(^^;
 一番信用できそうな資料が、「The New RHS Dictionary of Gardening」です。これには先述の通り、器官の形態的特徴から種を判定する方法が書いてありました。葉っぱの形態だけで種の判定をするなら、一番近いと思われたのは、A. epipsila Jus. でしたが、日本で流通していないとなると、正体不明です(^^;。葉以外の器官も観察して種の判定ができればいいのですが、写真を撮影した時期ならともかく、このページを作っている現在は既に花茎はなく、葉もロゼット化して、判定出来ない状態です。また、「The New RHS Dictionary of Gardening」によると、『多くの種は、十分に成長した材料なら簡単に同定できるが、生育期後期の二次成長からは判断の誤りを起こし易く、同定に利用するべきではない。』そうなので、来年以降、改めて種の判定をしたいと思います。それでも、「やはり、分かりませんでした」と言う結論になるかもしれませんが(^^;(2002.11.16.)

 
HOME   植物名一覧

このページ内の文章・画像の転載を禁止します