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ローレンティア・アキシラリス[イソトマ・アキシラリス]

ローレンティア・アキシラリスローレンティア・アキシラリス
ローレンティア・アキシラリス
品種:‘スターゲーザー(Stargazer)’


キキョウ科 ローレンティア属
学名正名:Laurentia axillaris (Lindl.) E. Wimmer
異名:Isotoma axillaris LindleySolenopsis axillaris
英名Australian harebell
和名イソトマ
別名ローレンティア
花言葉優しい知らせ
メモ

 属名のLaurentiaは、17世紀のイタリアの植物学者でボローニャ大学の教授であったMarco Antonio Laurenti か、フランスの植物学者のJean Laurent の名前に因むそうです。Isotomaは、ギリシア語の「isos(等しい)+tome(分割)」に由来しますが、花冠裂片が、等しい大きさに分割していることに因みます。Solenopsisはギリシア語の「solen(管)+opsis(外観、〜に似た)」に由来します。
 原産はオーストラリアです。

 本によっては、「イソトマは旧属名のローレンティアとも呼ばれることがある」と説明されていますが、D. J. Mabberleyの「THE PLANT-BOOK −A portable dictionary of the vascular plants− 2nd edition (Cambridge University Press, 1997)」には「IsotomaLaurentia」、「SolenopsisLaurentia」、参考文献の園芸学会発表要旨は、和文タイトルは「イソトマ」ですが、英文タイトルの中の学名は「Laurentia axillaris」となっていたので、ここではLaurentiaを正名としました。間違っていたらすみません。

 本来は多年草ですが、半耐寒性で、二年目は花付きが悪くなることから、春播きの一年草として扱うそうです。条件にもよるかもしれませんが、秋播きも可能ですし、タキイ種苗は秋播きの種子として販売していました。鉢物や花壇に向いています。開花期は初夏から秋と言われていますが、秋播きすれば春からでも咲かせることができます。
 栽培ですが、種から育てる場合、発芽適温は20℃くらい、好光性なので覆土の必要はありません。発芽はおよそ15日かかると言われています。比較的乾燥を好み、耐暑性に優れるそうです。個人的なことを言わせていただきますと、水遣りは、土が乾いたらたっぷりやるくらいでちょうど良さそうです。耐寒性は前述の通りで、暖かかった今年の仙台の冬を無加温温室内で生き延びることが出来る程度にはあるので、霜に注意すれば、大丈夫かもしれません。なお、実験での話ですが、11月中旬以降8℃で加温したそうです(播種は8月、地域はたぶん鳥取、寒さ除けと言うより促成栽培を目的としたのかもしれません)。繁殖は実生によりますが、品種によっては挿し芽で増やすこともできるようです。
 樹液に触れると肌がかぶれることがあるそうなので、注意します(私はそれを知らずに、花殻を頻繁に摘んでいましたが(^^;)。

 同じキキョウ科のキキョウロベリアは雄ずい先熟しますが、ローレンティアも雄ずい先熟するようです。一身上の理由で同じ花ではありませんが(^^;、右の写真は咲いてから間もない花、左側上段の写真はその後花粉を出した花(一番下の花びらの上の花粉を目立たせるため、露出を低くして、花の色が少々濃くなるように撮影しています)、左側下段の写真は更に数日経って柱頭が出てきた状態です。雄ずい先熟は自家受粉を避けるための仕組みですが、ローレンティアの場合、柱頭に花粉がたくさん付いている花もありました。

 近年、自然光の中に含まれている赤色光(R)や遠赤色光(FR)の比率(R/FR比)を変える被覆資材を利用して、植物の成長をコントロールする技術について研究が進んでいます()。この技術を利用すれば、ローレンティアでも、花芽分化を抑制することによって開花を調節できたり、草姿を改善できる可能性があることが示唆されています。

 日の光は、実は何色もの色が混ざっていることは、虹を見たり、光をプリズムに通すと七色に分かれることから、良く知られていることかと思います。 そう言った光の中でも、植物の成長に大きな影響を及ぼすのは、赤色光(Red light;600〜700nm)と、それよりやや波長の長い遠赤色光(Far-red light;700〜800nm)の2種類の割合(R/FR比)だと言われています。赤色光の割合が高い(R/FR比が高い)と草丈は抑制され、遠赤色光の割合が高い(R/FR比が低い)と草丈は伸長することが分かっています。また、長日植物では、遠赤色光の割合が高いと、早く花芽分化が誘導されるものが多いようです。ローレンティアも、赤色光域抑制資材の下(R/FR比が低い)で栽培すると徒長し、遠赤色光域抑制資材の下(R/FR比が高い)で栽培すると、草丈が抑制されたそうです。また、ローレンティアの花芽分化の日長反応については分かっていませんが、遠赤色光域抑制資材の下では開花率が低下したそうです。
 余談ですが、森林の中で地面から生えている草がヒョロヒョロ伸びているのは、太陽の光が地面に届く間に赤色光が他の植物に吸収されて少なくなって、遠赤色光の割合が増えるためです。他にも、密植した植物と、粗植した植物では、密植した植物の方がヒョロヒョロしていると思いますが、これも同じ現象です。このような現象は、「shade avoidance responseshade avoiding response, shade avoidance reaction, shade avoidance syndrome;避陰反応、日陰回避反応)」と呼ばれています。


本棚以外の参考文献
  • CRC World Dictionary of PLANT NAMES -Common names, scientific names, eponyms, synonyms, and etymology. CRC Press. 2000.

  • 鷹見敏彦ら.赤色光/遠赤色光光量子束比を変化させる被覆資材がイソトマの生育に及ぼす影響.園芸学会雑誌.第68巻別冊2:391ページ.1999年.

コメント

 播種は昨年の10月上旬、発芽は約2週間後、最初の開花は今年の5月下旬です(無加温の温室で栽培)。蕾が目に見えるようになってから、花弁が開くまで、結構時間がかかったように思います。香りがありますが、好き嫌いが分かれるかもしれません(^^;

 「イソトマ」って和風な響きだなぁと思っていて、調べてみるまで、漢字なら「磯苫」とでも書くのかと思っていました(^^ゞ。実際は前述の通り、ギリシア語が語源のようです。
 関連する資料は、ほとんどありませんでした。「The New RHS Dictionary of Gardening」にも、LaurentiaIsotomaSolenopsis等の属の説明すらありませんでした。種子が入っていた袋には、Laurentia fluviatilis と記載されていましたが、こちらに関しても手がかり無しでした。(2002.7.20.)

 
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