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イロマツヨイ

ゴデチア
品種:‘旭盃(きょくはい)’


アカバナ科クラーキア属(サンジソウ属)
学名正名:Clarkia amoena (Lehm.) Nels. & Macbr.
異名:Clarkia grandiflora Lindl.Godetia amoena (Lehm) G. Don
英名godetia, farewell-to-spring, satin flower
和名イロマツヨイ(色待宵)[イロマツヨイグサ(色待宵草)]
別名ゴデチア
花言葉変わらぬ熱愛
メモ

 クラーキア属の解説は、こちらをご覧下さい。
 異名のGodetiaは、19世紀に活躍したスイスの植物学者の Charles Henri Godet の名前に因みます。
 和名は、マツヨイグサに似て、花色が豊富、あるいは濃いことから付けられたそうです。また、英名の satin flower は、花びらがサテン(繻子)に似ていることから付いたそうです。
 原産は北アメリカのカリフォルニア州です。日本には明治時代に入ってきたそうです。

 現在、園芸種として利用されているゴデチアは、ここで紹介している C. amoenaC. grandiflora(異名:G. grandiflora、和名:タイリンゴデチア[大輪ゴデチア])、それと、これらや他の種が交雑して出来た雑種だそうです。
 ここで少し、学名の解説をしておきます。日本と海外で異なりますが、ポイントは
1.ゴデチア属をクラーキア属に含めるか。
2.交雑種の親である C. amoenaC. grandiflora は同一種か、異なる種か
の2点です。
 まず1つ目のクラーキア属とゴデチア属の関係ですが、複数のやや古い日本の図鑑では、ゴデチア属は、葉柄があることと、花弁の爪がないか、あっても短い、という点でクラーキア属とは異なるとされています。しかし、海外のD. J. Mabberley著「The plant-book. A portable dictionary of the vascular plants. 2nd edition (Cambridge University Press. 1997)」や「The New RHS Dictionary of Gardening (Macmillan Referance LTD. 1999)」、他何冊かの植物事典では、ゴデチア属はクラーキア属に含まれるとされています。そのため、かつてゴデチア属であったものは、クラーキア属にされ、学名も、例えば、ここで紹介している和名でイロマツヨイと名付けられている植物も、Clarkia amoena が正名、Godetia amoena が異名とされています。日本の図鑑でも、「Flower Oasis」のような比較的新しいものでは、「Clarkia amoenaGodetia amoena)」のように表記されています。そこで、ここでも、海外の事典に準じることにしました。
 2つ目の C. amoenaC. grandiflora の関係ですが、日本の図鑑では異なる種(ただし、属はクラーキア属ではなく、ゴデチア属ですが)、海外の図鑑では同一種で、後者は前者の異名とされています。このため、日本ではこれら2種間の交雑種が存在するとされていますが、海外では、C. amoenaElegans HybridsGrace Hybrids のような交雑品種があると紹介されているのみで、具体的に何を掛け合わせたものか不明です。なお、交雑種には G. hybrida hort. と言う学名が当てられているようですが、これを記している文献等は、私が調べた範囲では、タネが入っていた袋(タキイ種苗)、「農業技術大系・花卉編第8巻/1・2年草」、「原色園芸植物大圖鑑」、「園芸植物 庭の花・花屋さんの花」の4つのみです。

 園芸品種には、草丈60〜80cmの高性種と、草丈25〜30cmの矮性種があるそうですが、前者はC. amoena、後者はC. grandiflora の性質が現れているそうです。また、G. hybrida の代表的な品種として、写真の‘旭盃’の他、‘ミス長崎’(品種登録昭和48年)も挙げられます。
 耐寒性(−3〜−5℃)があり、秋播き一年草として扱います。直根性で移植を嫌うので、定植する場合は、幼苗の時に行ったり、根を傷めないように注意します。日当たり・水捌けが良く、冷涼なところが向いていて、高温・多湿には弱いそうです。連作すると立ち枯れ病が発生するので、避けるようにすると良いようです。

 C. amoena のF1交雑品種の‘Grace Rose’に、温度と日長(8時間の短日と16時間の長日)を組み合わせた処理を行った場合、32/27(昼/夜温)℃では枯死、27/22℃では日長に関わらず花芽が形成されたものの開花前に枯死、22/17℃では日長に関わらず開花、17/12℃では短日では栄養成長状態が続き花芽が形成されず、長日でのみ開花に到る質的長日性を示す、と言うことが明らかになったそうです。また、‘Grace Salmon’という品種を供試して同様の処理を行ったところ、22/17℃でも質的長日性を示し、品種間差異があることも分かったそうです。
 冬の間、サランネットをしたハウスの成り行き温度(人為的なコントロールをしない、自然の変温のこと。この場合、7〜22℃だったそうです)の条件で栽培した場合、自然日長(9.5〜10.5時間)でも長日でも(終夜照明)でも開花したそうですが、長日でおよそ3週間ほど開花が早まり、草丈が20〜50cm長くなり、低節位の側枝よりも上位での開花が集中し、品質が良くなったそうです。


本棚以外の参考文献
  • 原色園芸植物大圖鑑.北隆館.1984年.

  • Halevy, A. H. et al. Flowering control of recently introduced F1-hybrid cultivars of Godetia. Scientia Horticulturae. 46: 295-299. 1991.

コメント

 播種は昨年の10月上旬、発芽はその4日後、最初の開花は6月上旬でした(無加温の温室内で栽培)。冬から春先にかけて、先端の芽が枯れてしまう病気にかかってしまい、その分、開花が遅くなっていると思います。
 論文は少なかったものの、学名を調べるだけで思わぬ時間がかかっちゃいました(^^;。参考にした論文ですが、花成誘導に対して、日長が、温度によって量的に影響したり、質的に影響するところが、個人的に興味深かったです。(2002.6.16.)

 
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