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アネモネ・コロナリア

アネモネアネモネ
2003年3月撮影2002年3月撮影
品種:‘モナーク・ミックス’


キンポウゲ科アネモネ属(イチリンソウ属)
学名Anemone coronaria L.
英名poppy anemone, anemone
和名ボタンイチゲ(牡丹一華)
別名ベニバナオキナグサ(紅花翁草)、ハナイチゲ(花一華)
花言葉消えた希望、見捨てられた者、清浄無垢・無邪気、不撓不屈・辛抱
メモ

 アネモネ属の解説は、こちらをご覧下さい。
 「一華」は、「一花」と書くこともあるようです。
 原産は地中海沿岸で、日本には明治5年(1872年)に渡来したそうです。

 一般にアネモネと言ったら、この A. coronaria(コロナリア種)のことを指します。主な園芸品種として、写真の‘モナーク’グループ(八重咲き)の他、‘ド・カーン(de Caen)’グループ(大輪一重、ケシ状)、‘セント・ブリジッド(St. Brigid)’グループ(二〜三重;別名アイリッシュ・アネモネ[Irish Anemone])、‘モナ・リザ(Mona Lisa)’グループ(一重咲き、F1ハイブリッド)などが挙げられます。これらのうち、‘ド・カーン’は1870年にフランスで、‘セント・ブリジッド’は1888年にアイルランドで、‘モナ・リザ’は1983年にアメリカ・ニューヨーク州で育成されたそうです。

 栽培は、播種か塊茎(球根)を植えます。乾燥した塊茎は、植え付ける前に吸水させるか、地温が十分に下がってから植え付ける必要があります。そうしないと、急な吸水のせいで、塊茎が腐ってしまうことがあるようです。吸水は、湿り気のあるおがくずや砂などに塊茎を植え、冷蔵庫などの低温下で徐々に水分を吸収させるようにすると良いようです。こうして大きくなった塊茎を、地温が15℃以下になったときに植え付けます。塊茎には上下があり、尖っている方を下に向けます。冬季の最低温度を10℃に保ったガラス室内なら、3〜6ヶ月後に開花するそうです。
 花が終わった後、株は休眠します(夏休眠)。葉が枯れた後は、塊茎を掘り起こして乾燥させます。私の経験では、鉢植えの場合は、塊茎を植えっぱなしにして水を遣らないと言う方法でも、翌年に花を咲かせることが出来ました(後述・コメントのもう一言参照)。これらは、地中海原産の植物の性質(冬に活発に成長し、乾燥した暑い夏に休眠する)に合わせたものです。参考までに、原産地では、乾期の後の10月頃に最初の雨が降ってから葉っぱが生えて、12月から3月にかけて花が咲くそうです。
 休眠は、長日か高温によって導入されるそうですが、長日より高温の方が休眠導入に影響があり、温度が高いほど日長の影響がより小さくなるそうです。逆に、休眠を打破する条件については、関連する資料が見つかりませんでした。

 塊茎からの発芽は、0〜20℃の温度で起こりますが、温度が高いほど、植え付けてから発芽するまでの日数が短く、芽の伸長がより促進されるそうです。20℃でも発芽することから、発芽させるために、低温に当てる必要は必ずしもない(発芽に質的な低温要求性はない)と考えられるそうです。
 塊茎を吸水させた後、5℃の低温処理を4週間行うと、花芽の分化開始やその後の発育が促進され、低温に当てない場合より1ヶ月ほど早く開花に至るそうです。
 また、短日より長日で開花が促進されることから、相対的長日植物と考えられるそうです(花成誘導後の花芽の発達が長日で促進された可能性があるので、その点について考慮した方がいいと、個人的には思いますが)。逆に、栄養成長から生殖成長への転換には、温度とか日長のような環境要因は直接影響しませんが、長日条件で休眠が導入されることによって、花成が遅れることがあると報告している論文もあります。

 赤、マゼンタ、青色の花を咲かせる品種には、色素として、ペラルゴニジン、デルフィニジングリコシド、シアニジン等のアントシアニンが含まれているそうです。最近、南九州大学の土岐健次郎教授らのグループが、スカーレット色の花を咲かせる‘St. Brigid Red’から、新たに3種類のアシル化したペラルゴニジン(acylated pelargonidin 3-lathyroside; Anemone Red Anthocyanin)を単離、構造決定したそうです。

追記(2003.3.28.)
 栽培の解説に自分の経験を追記しました。

追記2(2004.4.18.)
 アネモネ属の解説を追加したのに伴い、内容の一部をそちらに移しました。


本棚以外の参考文献
  • 大川 清.アネモネの休眠程度と発芽可能温度域及び温度と日長が生育・開花に及ぼす影響について.園芸学会研究発表要旨.昭和60年度秋季大会:416−417.1985年.

  • Graham Ben-Hod, et al. Dormancy and flowering in Anemone coronaria L. as affected by photoperiod and temperature. Annals of Botany. 61: 623-633. 1988.

  • Toki, K. et al. Anthocyanins from the scarlet flowers of Anemone coronaria. Phytochemistry. 56: 711-715. 2001.

コメント

 塊茎の植え付けは昨年の11月中旬、芽が出たのは1月上旬、最初の開花は3月半ば過ぎでした(無加温の温室内で栽培)。一昨年は、9月下旬に、アネモネ・ブランダ(A. blanda Schott et Kotschy;ハナアネモネ)の塊茎を植えてみましたが、地温が下がっていなかったせいか、芽が出ることすらなかったです(--;。昨年は、その反省を踏まえて遅く植えたのが良かったようで、芽は無事にでました(^^)。もっとも、反省を踏まえるなら、塊茎を直接土に植え付けるのではなく、マニュアル通りに吸水させてから植えるべきでしょうけど(^^;;;
 だけど、その後が続きませんでした。10個前後の塊茎を2つの鉢に分けて植えたのですが、そのうちの一鉢は、左の写真の花が咲いた後に全滅(T-T)。葉っぱにナメクジかカタツムリが通った後のような物が残っていたのですが、その正体は分かりませんでした。もう一鉢は、葉っぱは元気に出たものの、花が咲くことなく、現在葉っぱが枯れつつあるところです。何が悪かったのやら・・・。ひょっとしたら、知らず知らず、過湿にしてしまったのか、温室で栽培していたせいで休眠に入ってしまったのかもしれません。何だか、アネモネとは相性が悪いようです( ̄▽ ̄ゞ
 でも、もう、これ以上は花が咲かないだろうと諦めて、このページの作成を始めた後に、蕾が一つ、土から顔を出しました(^^)。そこで、せっかくだから、その蕾が花開くのを見届けてからページをアップしようと考えていたら、開花までにかかった期間が1週間! 誤算でした( ̄▽ ̄;。3月に咲いた時に、確認していなかったのが悪かったです。予定では白花だけを公開するつもりでしたが、せっかく咲くのを待ったのだから、右の写真も追加しました。(2002.6.2.)

もう一言(2003.3.28.)
 今年も3月上旬から花が咲き始めました。昨年、花が終わって葉が枯れた後も塊茎を鉢に植えっぱなしにし、10月上旬まで水を一切与えませんでした。10月上旬に塊茎を掘り出したところ、購入した時みたいに乾燥していることはなく、水分を含んでいるような感じでした。掘り出した塊茎を再び鉢植えし、水遣りを始めたところ、10月下旬から葉が生えてきました。昨年乾燥した塊茎から育てた時よりも2ヶ月ほど早かったです。その後順調に育っていましたが、花茎が出始めた2月中旬頃、葉が全体の1/3ほど枯れてしまいました。もしかしたら、過密状態になって、土に近いところが過湿になったためかもしれません。それでも、残りからこれまでに10輪ほどの花が咲きました。昨年は咲かなかった青い花も咲きました。昨年花を着けることがなかった塊茎は、腐ってなくなっていたわけではなさそうです。
 このコメントを追加したついでに、写真とサムネイルを差し替えました。相性の悪さは少しくらい改善したかもしれません(笑)。お友達になれるのは、枯れないように育てられてからですかね(^^;。塊茎を鉢に植えっぱなしにしたのは、掘り上げて乾燥させるのが自然では起こり得ない人為的な行為に感じられ、少しでも自然に近い状態に出来たら、と言う考えからです。決して、掘り上げるタイミングを逸したとか、手抜きとかではありません。こう言っても、信じて貰えないような〜(^^;

もう一言2(2004.4.18)
 今年も、咲きました(^^)。昨年の秋頃、鉢から塊茎を取りだした際、誤って畑に落としてしまい、回収し損なった物からも花が咲きました。鉢植えの子より、直接畑から生えた子の方が生きがいいです。

 
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