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イトハユリ

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イトハユリ


ユリ科ユリ属(リリウム属)
学名正名:Lilium tenuifolium Fischer、異名:L. pumilum DC.L. linifolium Hornem.
英名Coral lily
和名イトハユリ(糸葉百合)
別名ホソバユリ(細葉百合)、イトユリ(糸百合)、スゲユリ
花言葉 
メモ

 ユリ属の説明は、こちらをご覧下さい。
 和名や別名の通り、細い葉が、茎の下部に密生しています。
 原産はシベリア東部、モンゴル、北朝鮮、中国北部、旧満州で、原産地では鱗茎を食用にしたり、中国北部では生薬の材料にしているそうです。ユリの園芸品種の一種である、アジアティックハイブリッドの親(野生種)の一種です。日本には明治末頃に渡来したそうです。

 某メーカーで「プミリュウム」という名前で売っていた物を通販で購入しました。この名前と形態の特徴から「イトハユリ」と判断しましたが、図鑑の説明と少々違う点もあり、もしかしたら、間違っているかもしれません。異なる点は、一つは蕾の毛の有無で、図鑑では「粗毛があるか綿毛が密生する」とされていますが、写真の物は無毛でした。もう一つは花数で、「一本の花茎に普通5〜6輪、草丈が1mになるものでは14〜15輪着ける」そうですが、写真の株は草丈が1m以上で、花数は30輪以上でした(下の写真に写っているのは一部ですが、これだけでも、開花している花と蕾をあわせて15輪あります。他の花に隠れて分かりにくい物もあるかもしれませんが)。
 むしろ、1m以上の草丈で、30花以上の花を着けるウィルモッティアエ(L. willmottiae E. H. Wils.)の、花に斑点がない変種(var. unicolor)に近いように思いますが、こちらについては、図鑑の説明だけしか資料がないので、これも判定出来かねます。
 もっとも、鱗茎を3個植えて一株しか開花に至らなかったので、この一株だけで、あれこれと判断ないと思いますが。
 18〜19世紀にフランスで活躍した花の画家・ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテの「The Lilies」と言うユリ科やアヤメ科などの植物をまとめた画集にも「Lilium pumilum」が描かれていますが、花の形は似ているものの、花や葉っぱの着き方は全く別の植物のように見えます。

 花は、子房以外は赤い色です。写真は露出のせいで朱色に近いですが、実物は赤らしい赤色をしています。香りは、甘ったるいような感じですが、あまり良い匂いとは言えません。日が経つにつれて、花柱が曲がってきます。小さくて分かりにくいかもしれませんが、サムネイルはその状態を撮影したものです。
 30輪以上の花が咲きましたが、そのうち2輪ほど、変わった花が咲きました。上段右の写真がそれで、通常花被片が6枚、雄しべが6つのところ、二つの雄しべの花糸が弁化していました。

 ハカタユリ、オニユリ、ヒメユリなどと共に、鱗茎の鱗片を乾燥させた物は「百合(びゃくごう)」と呼ばれる漢方薬になり、消炎、鎮咳、利尿、鎮静に利用されているそうです。
 ユリ属の中でもこの種に特異的な、テヌイフォリオサイドA(tenuifolioside A)と同Bという物質が単離されたそうですが(名称は、種小名に由来すると思われます)、ステロイド配糖体の一種(polyhydroxylated steroidal glycoside)であること以外は、これらがどのような物質であるのかは分かりませんでした。


本棚以外の参考文献
  • 渡辺健二編集.漢方実用大事典.学習研究社.1989年.

  • Mimaki, Y. et al. Lipid and steroidal constituents of Lilium auratum var. latyphyllum and L. tenuifolium. Phytochemistry. 28: 3453-3458. 1989.

  • Pierre-Joseph Redouté. The Lilies. Taschen. 2000.

コメント

 鱗茎の植え付けは昨年の11月半ば過ぎ、芽が出たのは3月上旬、最初の開花は4月下旬でした(無加温の温室内で栽培)。カタログには「8月中下旬に橙赤色の小型花を数輪下向きにつける。草丈1〜1.5mとやや高性」と書いてありましたが、草丈以外は、その説明とずいぶん違います。開花期は、カタログより早かったですが、図鑑には5〜6月に開花すると書いてあったので、その通りの開花です。でも、前述の通り、鱗茎を3球植えて無事育ったのは1株だけ。他の2株は芽が出たところで成長が止まってしまいました(--;。通販で届いた時から鱗茎の状態が良くなく、植え付け前に殺菌剤に浸けたのですが、効果はなかったようです。一緒に買ったオリエンタルハイブリッドの‘ゴールデン・スターゲーザー’にいたっては、2つの球根のうち一つは割れていて、もう一つはカビが生えていました(--;。今、こちらも、あまり成長していません。某質問系サイトでも、「通販で不良品が届いた時、どう対処しているか?」という内容の質問があったので、変な球根を売りつけられているのは私だけでないようですね。メーカーにはもっとしっかりして貰いたいです。(2002.5.18.)

もう一言(2002.6.8.)

 タネを採るつもりで花を摘まないでおいたら、下向きに咲いていた花が、花びらが枯れた後に、上に向きました。一部しか写っていない左の写真では分かりにくいかもしれませんが、花糸が垂れ下がっていることから、かろうじて、分かって頂けるでしょうか? これからタネが成熟して重くなると思いますが、なぜ重力に逆らって上向きになるのか、不思議です。

 
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