このページ内の文章・画像の転載を禁止します


ゼラニウム

ゼラニウム
品種:‘Marverick Star


フウロソウ科 ペラルゴニウム属(テンジクアオイ属)
学名Pelargonium × hortorum L. H. Bailey
英名Geranium, Bedding Geranium, Zonal Pelargonium
和名 
別名 
花言葉偽り、詭計、真の友情、器用、他(種によっていろいろあります)
メモ

 属名は、ギリシア語の「pelargos(コウノトリ)」に因み、果実の形がコウノトリのくちばしに似ていることに依るそうです。
 P. × hortrum は、P. zonale(モンテンジクアオイ;紋天竺葵)とP. inquinans(テンジクアオイ;天竺葵)、および、南アフリカ原産の他の種を交配して作出した雑種の総称です。

 ペラルゴニウム属は、もともとは、ゼラニウム(Geranium)属(和名:フウロソウ属)でしたが、1787年に、L'Heritierによって新しい属として新設されました。しかし、園芸上で、単に「ゼラニウム」と言う場合は、P. × hortrumとその育種親のことを指します。一方、ゼラニウム属の植物は、園芸上は「ゲラニウム」と呼ばれ、区別されているそうです。参考までに、ペラルゴニウム属とゼラニウム属の主な違いは、以下の通りです。

 ペラルゴニウム属ゼラニウム属
花弁の形上の2枚と下の3枚が区別される5枚全て同じ
萼に、小花柄に合着したものがあるない
分布主に南アフリカの半乾燥地。いくつかの種は、熱帯アフリカ、オーストラリア、中東世界の温帯地方

 また、ペラルゴニウム属は、以下の4つの群に分けられるそうです。

ゼラニウム
Zonal Pelargonium
このページで紹介しているものです。ゾーナルゼラニウムとも呼ばれているらしいです。開花は四季咲き性です。
ペラルゴニウム
Regal Pelargonium

園芸上のペラルゴニウムは、P. cucullatumP. grandiflorum(オオバナテンジクアオイ;大花天竺葵)、P. agulosum、ならびに、これらの種を交配して作られたP. × domesticumのことです。リーガルペラルゴニウムとも呼ばれているようです。自然条件下では、4月から7月にかけて開花する一季咲きです。

アイビーゼラニウム
Ivy-Leaved Pelargonium

草姿がアイビーに似ていることからその名が付いたゼラニウムで、アイビーリーフペラルゴニウム、ツタバゼラニウム、ツルテンジクアオイなどとも呼ばれています。四季咲き性で、臭いがないそうです。P. peltatum(ツタバテンジクアオイ;蔦葉天竺葵)、P. lateripes、ならびに、その交配種です。

ニオイゼラニウム
Scented-Leaved Pelargonium

ニオイバゼラニウム、センティッド[センテッド]ゼラニウム、香料ゼラニウムなどとも呼ばれているそうです。P. odoratissimumP. graveolens、他数種とそれらの交配種の総称です。ハーブとして扱われています。主に香料の原料とされ、花の観賞価値はあまりないと言われています。


 以下は、園芸上のゼラニウムの紹介です。
 繁殖は、実生か挿し芽で行います。実生系は、現在栽培されている品種は、いずれもF1(一代雑種)ですが、これは1950年代にアメリカで育種されたのが始まりで、日本でも1970年代から広まったそうです。播種は生産現場では周年可能だそうですが、一般には、高温を避け、4〜5月、または、9〜10月に行うのが良いそうです。13℃くらいに保つと良いそうです。発芽は数週間、場合によっては数ヶ月かかることがあるそうです。種子の寿命は短く、一年未満で発芽率が著しく低下するそうです。しかし、‘Scarlet Eye Orbit’という品種を使った実験によると、貯蔵温度を15℃、相対湿度11〜52%を保った場合(この時の種子の水分含量は6.4〜9.0%)と、貯蔵温度を25℃、相対湿度11〜32%に保った場合(種子の水分含量6.8〜7.3%)、12ヶ月貯蔵した後の発芽率は約90%と比較的高かったそうです。
 挿し芽をする場合、およそ5〜10cmくらいの長さの挿し芽を使いますが、茎は節の下辺りを切り、下葉を取り除きます。挿し芽後は十分に水を与え、湿度を保つようにしますが、過湿にならないように注意する必要があるそうです。20℃前後で発根し易いそうです。時期が良ければ、2〜3週間で発根するそうです。
 生育適温は12〜20℃で、高温多湿に弱く、耐寒性がありません。乾燥に適していて、用土の過湿は根腐れの原因になります。日照が不足すると、葉が大きく、節間が伸びて軟弱になるそうです。
 種子系のゼラニウムは、花弁が脱離し易いことが知られていますが、これには内生エチレンが関わっていると言われています。エチレンの作用を阻害するSTSを茎葉に散布すると、離脱を抑制できるそうです。最近の研究では、ジベレリン(GA3)にも離脱抑制効果があることが確かめられています。ただし、この場合、品種によって適切なジベレリンの濃度が異なるようで、濃度が濃いと花弁の離脱が促進される品種もあるようです。また、花殻を放置しておくと腐敗して病気の原因になるので、こまめに取り除くと良いようです。
 ゼラニウムの花芽の形成と花序の発達に関して、15℃、20℃、25℃で栽培すると、15℃で小花数が多くなりますが、これは、花床部の細胞分裂活性が、高温で栽培された場合と比較して、長く維持されやすいためであると推察されています。日長は、花序の発達にはほとんど影響を及ぼさないそうですが、長日によって開花が促進されるそうです。遮光処理や摘葉・摘蕾処理を行った結果より、花序の発達には、同化産物の量が影響を及ぼしていることが明らかにされています。
 生産の現場では、コンパクトな苗を作るために、矮化剤を利用したり、昼と夜の温度差を利用して草丈の伸長を抑制することも行っているようです。


本棚以外の参考文献
  • Carpenter, W. J., et al. Evaluation of temperature and moisture content during storage on the germination of flowering annual seed. Hortscience. 30: 1003-1006. 1995.

  • 新井紀子.ジベレリン処理が種子系ゼラニウムの花弁離脱に及ぼす影響.園芸学会雑誌.第65巻別冊2:70−71.1996年.

  • 林 孝弘ら.花卉の花序および複合花序の構成と発達並びにその制御.(第7報)ゼラニウム花序の分化・発達について.園芸学会研究発表要旨.昭和63年春:428−429.1989年.

  • 林 孝弘ら.ゼラニウム花序の発達制御要因.園芸学会雑誌.第61巻別冊2:580−581.1992年.

コメント

 播種は昨年の5月半ば過ぎ、発芽はおよそ10日後、最初の開花は今年の2月上旬でした(無加温の温室内で栽培)。今年の冬は暖かかったせいか、真冬に咲いてしまいましたが、開花した直後くらいから冷え込みが厳しくなり、花序の中の2〜3花程度が咲いた後は花芽が枯れてしまいました。他の花序も全滅でした(T-T)。その後、暖かくなってからは、無事に咲いてくれました(^^)。写真は、4月下旬に撮影したものです。一つの花序に、たくさんの花が着きました。面倒だったので、いくつ着いたか数えていません(^^ゞ。5号鉢に1株植えていますが、花の重さのせいで、株が傾いてしまいました(^^;。参考文献によると、品種による違いがあるかもしれませんが、15℃の条件では、最大で135輪の小花が一つの花序に着いたそうです。
 この‘Marverick Star’という品種は、T&Mの2001年の新品種で、咲き始めの花弁は白色で中央と周縁がピンクですが、日が経つにつれて白いところが徐々にピンクに変わります。葉っぱのニオイは、あまり良くありません。

 種子発芽関連の論文を読みましたが、25℃と比較的高い温度で貯蔵できることを知って、ちょっと驚いています。普通なら、種子を保存するなら冷暗所ということで、冷蔵庫を利用すると思いますが。ゼラニウムの種子は寿命が短いと書いてある本もありましたが、保存時の湿度がポイントなのでしょうか?(2002.4.28.)

 
HOME   植物名一覧

このページ内の文章・画像の転載を禁止します