このページ内の文章・画像の転載を禁止します


スイートピー

スイートピー
品種:‘Rosemary Verey


マメ科 ラティルス属(ハマエンドウ属、レンリソウ属)
学名Lathyrus odoratus L.
英名sweet pea
和名ジャコウレンリソウ(麝香連理草)
別名ジャコウエンドウ(麝香豌豆)
花言葉別離、仄かな喜び、繊細、優美
メモ

 属名は、ギリシア語の「lathyros」に由来しますが、これは、ギリシアのテオフラストス(アリストテレスの弟子で、植物学の祖)が、マメのある種(エンドウ?)に付けた名前だそうです。また、ギリシア語の「la(甚だしい)+thouros(刺激)」に由来するとも言われていますが、これは、古代人が、種子を刺激剤あるいは興奮剤として用いたことに因むそうです。
 原産はイタリアのシチリア島です。日本に導入された時期は明らかではありませんが、明治時代の末期には、ガラス温室で切り花用として栽培が始まっていたそうです。

 現在の品種は、開花時期により、冬咲き、春咲き、夏咲きの系統が分類されていますが、17世紀に発見された野生種は夏咲きだったそうです。冬咲き系統は、夏咲き系統から早咲き個体を選抜・交配することで、19世紀末に育成されたそうです。春咲き系統が作出されたのは20世紀の中頃で、夏咲き品種と冬咲き品種の交配によって開花期が両系統の中間のものとして育成されたそうです。原産地のシチリア島では、5月上旬に、自生種が開花のピークを迎えるそうです。
 花びらの形、花序当たりの花数によるタイプ分けでは、スペンサー系(Spencer type;夏咲き・波状弁)、グランディフローラ系(Grandiflora type;夏咲き・1花序当たり3〜4花)、アーリー・スペンサー系(Early Spencer type;冬咲き・波状弁・同4花)、アーリー・マルチフローラ・ギガンテア系(Early Multiflora Gigantea type;冬咲き・同6〜8花)、カスバートソン・フロリバンダ系(Cuthbertson Floribunda;春咲き・多花)、他、などがあります。
 また、草型から高性(2〜3m)、矮性(15〜30cm)、およびこれらの中間に分けることがあります。他に、アメリカで、自然突然変異で現れた巻きひげの無い‘スヌーピー(Snoopea)’と言う品種もあるそうです(犬のスヌーピーはsnoopyですから、たぶん、sweet peaとの合成でしょう(^^;。そう言えば、スヌーピーにはひげがありませんね)。

 開花は、種子春化(胚が活動している状態の種子が、低温に遭遇することによって、花芽形成が誘導されるようになること)と長日によって促進されますが、冬咲き系、春咲き系、夏咲き系によって、これらに対する感受性が異なるそうです。論文によって結果が若干異なりますが、最近(2002年)発表された論文では、種子春化処理を30日以上行った後に、様々な長さ(8、10、12、14、16、24時間)の日長条件で栽培した場合、冬咲き系では日長に関わらず、春咲き系では12時間以上、夏咲き系では16時間以上の日長で、開花が促進されたことが報告されています。
 この報告から、冬咲き系は、日が短くても開花可能だから、時期的に早く咲くことが出来るけれど、夏咲き系は、日が長くならないと花を咲かせることが出来ないから、開花時期が他の系統より遅い、と考えることが出来ると思います。

 日が当たらないところで育てたり、天気が悪い日が続くと蕾が落ちてしまいますが、これについては、光合成産物が植物の各器官に、どのように分配されるかが関わっているそうです。発達中の花序と茎頂部は、光合成産物をめぐって競合関係にありますが、日照不足で合成される光合成産物の量が少なくなると、茎頂部により多くの光合成産物が分配されるようになり、花序への分配量が減少するため、落蕾が誘発されると考えられています。この様なことから、スイートピーの栽培では、栄養成長(茎や葉っぱの成長)と生殖成長(花芽の成長)のバランスを適正に維持することが大切だと言われています。
 また、落蕾には、発生するエチレンの量の増大が関わっているとも言われています。これについては、光合成の低下が植物体内の糖含量の低下を引き起こし、ストレスを与えることになるためと推察されています。

 エチレンは花の萎れにも関わっています。鮮度保持剤の一種で、エチレンの作用を阻害するSTS(silver thiosulfate complex;チオ硫酸銀錯塩[チオスルファト銀錯塩])を処理すると、花持ちが2倍以上になるそうです。また、水1リットル当たりにスクロース(平たく言えば砂糖)を100g混ぜた砂糖水に16時間活けると、やはり日持ちが良くなるそうです。この原因については、エチレンの合成が抑制されることが推察されていますが、そのメカニズムについては不明だそうです。STSと砂糖水を併用することで、花持ちは3倍以上になるそうです。砂糖水には、この他にも、細胞壁合成と呼吸のための基質を供給することで、蕾が開くのを促進させる効果があります。なお、1リットルの水に混ぜる砂糖の量ですが、100g以下では100gほどの効果はなく、100g以上では100gと同じ程度の効果しかないので、100gが適切な量だろうと判断されています。また、殺菌剤も色々な花で花持ちを良くすることが知られていますが、スイートピーの場合、殺菌剤はほとんど効果がないそうです。

本棚以外の参考文献
  • 井上知昭.夏咲き、春咲きおよび冬咲き系スイートピーの開花に及ぼす種子春化と日長の影響.園芸学会雑誌.第71巻:127−132.2002年.

  • 札埜高志、他.スイートピーの開花期における光合成産物の分配.園芸学会雑誌.第70巻:102−107.2001年

  • 大川 清、他.スイートピーの落らいに及ぼすエチレンの影響.園芸学会雑誌.第60巻:405−408.1991年.

  • Ichimura, K., et al. Effect of silverthiosulfate complex (STS) in combination with sucrose on the vase life of cut sweet pea flowers. Journal of the Japanese Society for Horticultural Science. 68: 23-27. 1999.

コメント

 播種は昨年の5月半ば過ぎ、発芽はおよそ1週間後、最初の開花は今年の2月半ば過ぎです(無加温の温室内で栽培)。本来なら秋播きの方が良いそうですが、昨年播種した時点ではそのことを知りませんでした(^^;;;。後から知って、夏越し出来るかヒヤヒヤしましたが、昨年の夏は涼しかったせいか、無事乗り切ることが出来ました。秋播きにも挑戦していますが(昨年10月上旬播種、その後10日以上で発芽)、今のところ蕾はできていません。
 T&Mの通販で買った品種です。カタログには、この品種を育成した、国際的なガーデンデザイナー&ライターであるというおばあさんの顔写真が載っています。この人の名前がそのまま品種名になったのでしょうか? 6色をミックスしてあるらしいですが、今咲いているのは、写真のピンクの1色のみ。それでも、好みの色だったので、満足しています。香りも良いです。

 文献を読んでいたら、「National Sweet Pea Society(差詰め、『国立スイートピー協会』でしょうか?)」なるものが、1900年に設立されたことを知りました。物は試しと検索してみたら、サイトが見つかりました。

http://www.sweetpeas.org.uk/

イギリスのサイトですが、興味がある方は覗いてみてはいかがでしょう?参考までに、2001年にサイトが出来たらしくて、今のところ規模は小さく、内容は、「協会の説明」、「栽培の歴史」、「栽培方法」、「関連図書の紹介」等々です。あとは、まぁ、見てのお楽しみですかね・・・(^^;。今後の発展を祈りましょう。(2002.3.16.)

 
HOME   植物名一覧

このページ内の文章・画像の転載を禁止します