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ストック

ストックストック
ストック
品種:‘キスミー チェリー’(左上下)、‘雪波’(右)


アブラナ科 マッティオラ属(アラセイトウ属)
学名Matthiola incana (L.) R. Br.
英名stock, gilliflower (gillyflower), imperial stock, Brampton's(Brompton) stock
和名アラセイトウ
別名 
花言葉永続する美、豪華、幸福、同情
メモ

 属名は、イタリアの植物学者であったマッティオーリに由来します。
 原産は南ヨーロッパで、栽培の歴史は古く、古代ギリシア人やローマ人は薬草として栽培していたそうです。
 日本には17世紀半ば頃に入ってきたそうですが、切り花生産用として導入されたのは大正以降だそうです。
 和名のアラセイトウは「葉ラセイタ」が語源という説がありますが、「ラセイタ(羅背板;ポルトガル語)」とはラシャ(羅紗)に似た布のことで、毛で覆われた葉が似ていることによるそうです(余談ですが、ラセイタソウというイラクサ科の植物もあります)。なお、漢名の「紫羅蘭花」は、正しくは「オオアラセイトウ(Orychophyragmus violaceus)」のことを指すそうです。

 ストックは、乾燥には強いが過湿に弱く、土のpHは酸性〜中性(およそ6〜7)が適しているそうです。日長条件は、長日で早く開花しますが、切り花品質は悪くなるそうです。

 系統としては、ブランチング(Branching;分枝)系とノンブランチング(Nonbranching;無分枝、または、一本立ち)系、それと、それぞれに高性と矮性があります。
 また、テン・ウィーク(ten weeks stock)と呼ばれる変種(var. annua Voss.;和名・コアラセイトウ)がありますが、現在は普通のストックとの交雑が進んで、区別が明らかでないそうです。
 葉に毛がある「並葉」と、毛がない「照り葉」というものもあるそうです。
 写真は、タキイ種苗のキスミー系の品種で、開花に低温に遭遇させる必要がない超極早生の性質があります。写真のように、八重咲きと一重咲きの株が現れます。矮性で、鉢植えや花壇に向くそうです。

 ストックの切り花には八重咲きが利用され、一重咲きは商品価値がほとんどない(文献によっては八重咲きの1/3以下)と言われています。このため、八重咲き鑑別法を確立したり、八重咲きの品種を育成することが必要とされてきました。
 八重咲きの鑑別方法は、苗の生育の旺盛さ、子葉の大きさ・葉色・形の差を見分けることによって行います(葉面積、葉幅、葉長は、八重咲きの方が大きい)。海外では、10℃以下で、八重咲きと一重咲きの葉の色が異なることを利用して識別する方法が実用化されているそうです。また、八重咲きの遺伝子と他の形質(例えば、種子の色、葉の形、照り葉など)の遺伝子を連鎖させて、識別を容易にした系統も育成されています。
 八重咲きの遺伝には、いくつかのタイプがあります。一つは単因子劣性によるもので、古い文献に記載されている八重咲きはこのタイプであると推察されています。もう一つは、エバー・スポーティング(eversporting)あるいはダブル・スローワー(double thrower)と呼ばれる、八重咲きと一重咲きがほぼ半々に現れるもので、現在の切り花の主流となっているタイプです。これらの他に、トリソミックス(三染色体植物、trisomics;染色体数が正常なものより1本多い植物体。ストックの場合、2n=14+1)を利用したものがあります。これは、過剰染色体上に八重因子を持たせたもので、この系統はトリゾミックハイダブルと呼ばれ、八重率が80%以上になると言われています。
 なお、八重咲きの花弁は雄しべ・雌しべが弁化した物なので、八重の花には稔性がありません。

 花芽分化させるためには低温を必要としますが、品種によって低温に対する感受性が異なり、極早生では低温に遭遇させなくても開花しますが、開化が遅い晩生の品種ほど長期間の低温に遭わせる必要があるそうです。また、花芽分化可能な限界高温は、極早生の品種で高く、晩生で低いことも確かめられています。
 花芽分化に長日と低温遭遇を必要とする植物では、植物ホルモンのジベレリンを施与することで、花芽分化や茎の伸長を促進させることが出来ます。ストックもその様な植物の一種で、ジベレリンを施与すると花芽分化・茎伸長が促進され、内生ジベレリン生合成の初期段階を阻害するウニコナゾールを施与すると、これらは抑制されます。ところが、内生ジベレリン生合成の後期段階を阻害するプロヘキサジオンカルシウム(PCa)やトリネキサパックエチル(TNE)などを濃い濃度で施与すると茎伸長が抑制されるものの、薄い濃度で施与すると開花と茎伸長が促進されるそうです。詳細は省きますが、このことに関するストックの内生ジベレリン代謝について調査した一連の研究で、(1)ストックでは、GA4と同じタイプのジベレリンが茎伸長と花芽分化に最も重要であることと、(2)PCaやTNEは、GA4を含む活性ジベレリンの不活性化を遅らせるために、成長は阻害されるよりも促進されることが推察されています。

追記(2008.1.7.)
 大きい写真とサムネイルを差し替えました。


本棚以外の参考文献
  • 伊藤秋夫.連鎖利用によるストック育種と1,2年生草花育種の局面.育種学最近の進歩.33:55−62.1992年.

  • Hisamatsu, T., et al. The role of gibberellin biosynthesis in the control of growth and flowering in Matthiola incana. Physiologia Plantarum. 109: 97-105. 2000.

コメント

 播種は昨年の10月上旬、発芽は播種から5日後、開花は今年の2月上旬です(無加温の温室内で栽培)。花の色は、咲き始め(写真左下)は綺麗な濃いピンクでしたが、だんだん薄くなっていきました。カタログに載っていた写真通りの色ですが、咲き始めの色が保たれればもっと良かったのにというのが感想です。
 ニオイアラセイトウ(チェイランサス)より強い香りがします。ニオイアラセイトウは、アラセイトウ(ストック)に似て、なおかつ香りが強いからその名が付いたのだと思っていましたが、そうでもないみたいです。知らないうちに、たまたま、香りが強い品種のストックと弱い品種のニオイアラセイトウを育ててしまったのでしょうか?
 前述の通り、一重咲きと八重咲きの品種は子葉の大きさで区別できるそうですが、タネの袋にも書いてあったその説明をすっかり忘れていて、子葉の観察をサボってしまいました。それでも、運良く、育てた4株のうち1株が一重の花を咲かせました(^^)。商品価値はないそうですが、ここの話のネタにはなります(笑)。縁がカールしちゃって、少々見栄えがしませんが(^^;(2002.3.4.)

もう一言(2008.1.7.)
 コレクションのために、‘雪波’のタネを購入し、栽培しました。播種は昨年の9月上旬、発芽は3日後、最初の開花は昨年の12月下旬頃です。八重咲きで、徐々に蕾が開いていって、開花日と決められる日はありませんでした。無加温のガラス室内で栽培しています。
 昨年の10月以降、新しいデジカメを使っていますが、それまでの機種と違って、レンズ部が回転しないので、下からのアングルの写真を撮るのが難しくなりました。でも、これは比較的よく撮れたと自画自賛しています(^^ゞ。右下に建物が写ってしまいましたが、ご愛敬と言うことで(^^;

 
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