このページ内の文章・画像の転載を禁止します


ハナニラ

ハナニラハナニラ
品種:‘ウィズレー・ブルー(Wisley Blue)’


ユリ科 トリスタグマ属
学名正名:Tristagma uniflorum (Lindl.) Traub
異名:Triteleia uniflora Lindl.Brodiaea uniflora (Lindl.) Engl.Milla uniflora R. C. Grah.
Ipheion uniflorum (Lindl.) Raf.Leucocoryne uniflora (Lindl.) Greene
英名spring star-flower
和名ハナニラ(花韮)
別名セイヨウアマナ(西洋甘菜)
花言葉恨み、別れの悲しみ(悲しい別れ)
メモ

 属名は、ギリシア語の「tri(3)+stagma(滴り落ちるもの〔例えば、蜜のようなもの〕)」で、子房に三つの蜜腺の孔があることに由来するそうです。
 異名がたくさんあることから分かるように、ハナニラは、Triteleia(トリテレイア)属、Brodiaea(ブローディアエア、ブロディエア、ブロディア)属、Leucocoryne(リューココリーネ)属、Milla(ミラ)属、その他を変遷したそうです(どの順で変遷したのか分からないので、順不同で並べています)。現在、多くの図鑑で、Ipheion(イフェイオン、アイフェイオン、イエイオン)属に分類されていますが、ここでは、「The plant book」にしたがって、Tristagma属にしました。
 余談ですが、Ipheion の和名をハナニラ属としているのをWEB上で見かけますが、「原色牧野植物圖鑑・続編」では、「ハナニラ・ハナニラ属『Brodiaea uniflorua Engl.(=Ipheion uniflorus Rafin.)』」と、Brodiaea の和名がハナニラ属とされています。この他にも、「最新園芸大辞典・第2巻」と「園芸植物図譜」でも Brodiaea の和名がハナニラ属になっています。基本種(ハナニラ)の属が変わるのに伴って、属の和名もその都度変わっているのかもしれません。
 和名は匂いがニラに似ていることから、英名は開花時期と花の形から付けられたそうです。種小名の「uniflora, uniflorum」は「単花の」を意味し、単頂花序であることから付けられたものと思われます。
 原産はアルゼンチン、ウルグアイ(資料によっては、メキシコ、ペルーも)で、日本には明治中頃に導入されたそうです。

 耐寒性があり、−10℃くらいまで耐えることが出来るそうですが、霜が長引くような所ではマルチで保護をした方が良いそうです。
 促成栽培の場合、5℃の湿潤条件で10〜14週間ほど貯蔵してから保温すると、商品性のある花がより早く咲くそうです。それより長い貯蔵期間でも、それ以上の効果は認められないので、無駄とのことです。

 国内の某メーカーの通販で買いましたが、球根の説明書に「ヒガンバナ科」と書いてありました。「広辞苑」やある誕生花の本や栽培条件の参考にしたArmitageの論文にも、Amaryllidaceae(ヒガンバナ科)として紹介されていましたが、国内外の図鑑を何冊か調べた限りでは、Liliaceae [Alliaceae](ユリ科〔ネギ科〕)でした。念のため、上記の、ハナニラがこれまでに変遷してきた属も調べてみましたが、全てユリ科(ネギ科)で、なぜ、ヒガンバナ科なのかは、分かりませんでした。参考までに、ユリ科とヒガンバナ科の区別は子房と花被・雄しべとの位置関係で付けられ、子房上位(子房が花被や雄しべより上にある場合)ならユリ科、子房下位(子房が花被や雄しべより下にある場合)ならヒガンバナ科です。観察してみたところ、子房上位でしたし、前述の牧野富太郎先生の図鑑に掲載されていたハナニラの花の断面図も子房上位に見え、子房の位置からはユリ科だと思われます。

 「ネギ科(Alliaceae)」というと、「ネギはユリ科じゃないか?」と思う方がいらっしゃるかもしれませんので、ネギ科について少々解説。
 分岐分類学という分類学の考え方がありますが、これは、「科などの分類群は、その科の出現以降に新たに獲得した派生的な特徴で定義されなければならない」というものだそうです。ユリ科は、現在も持ち続けている単子葉植物の祖先的形質によって定義されていますが、分岐分類学の考え方を導入すると、ネギ科、シュロソウ科、クサスギカズラ科などに、それぞれの特徴にしたがって細分されるそうです。これについては、ロルフ・ダールグレンが、1985年に「単子葉植物の科」という書物の中で発表したそうですが、ユリ科、ネギ科などのどちらを使えばよいかについては、研究者の間でも意見が分かれているそうです。
 また、ネギ科は、サポニンを含む点でヒガンバナ科と区別できるとも言われています。

追記(2002.2.23.)
 見落としていましたが、「原色園芸植物図鑑Vol.IV」のブロディア属の説明にヒガンバナ科について記載がありました。これによると、Hutchinsonという人が、上記の、子房の位置によるヒガンバナ科とユリ科の区別を無視して、散形花序であることで、ブロディア属を始め、アガパンサス属、アリウム属などをヒガンバナ科に移すことを提案したそうです。ですが、これにはやはり問題があるようで、少なくとも私は前述の属を実際にヒガンバナ科にしている図鑑を見たことがありませんので、Hutchinsonの提案は植物学者の間では受け入れられていないようです。また、同図鑑によると、ブロディア属は球茎、ハナニラは鱗茎を持つことから、ハナニラはブロディア属から他の属に変わったそうです。

追記2(2003.3.28.)
 属の和名に関する記述を訂正しました。


本棚以外の参考文献
  • 牧野富太郎.原色牧野植物大圖鑑・続編.北隆館.1983年

  • 塚本洋太郎.原色園芸植物図鑑Vol.IV.球根編.保育社.1965年.

  • 日本放送出版協会.趣味の園芸.2001年2月号.125ページ

  • Armitage, A. M. et al. Coldstrage and moisture regime influence flowering of Oxalis adenophylla and Ipheion uniflorum. Hortscience. 31: 1154-1155. 1996.

コメント

 球根の植え付けは昨年の9月中旬過ぎ、出芽は9月下旬、最初の開花は今年の2月上旬です(無加温の温室内で栽培)。品種名の通り、サムネイルのような青っぽい(むしろ紫色に近い)花を咲かせましたが、写真に撮った一輪だけ、白地に青の花を咲かせました。その花で一番良い写真が撮れたので、ここに採用しました。
 ハナニラというと、2年前の「ジャパンフローラ2000」でも咲いていたのを思い出しました。開催したばかりの3月末に咲いていた数少ない花のうちの一つとして覚えています。

 商品名は「ユニフロラム・ウィズレーブルー」でした。種小名と品種名は付いているのに属名が抜けてます(前述の通り、色々と変遷しているせいでしょうか?)。このページを作るまで、「ユニフロラム」が属名、「ウィズレー」が種小名、「ブルー」が品種名だと思っていました(--;。この会社とは別の国内某メーカーに至っては、学名を明示していない種子・球根を販売していますし。こういうのを見るに付け、日本のメーカーは、植物の名前(学名、和名、品種名などを明示したり、区別したりすること)を疎かにしているなと、感じます。

 植物の名前の話が出たついでに。私は品種名(正確には園芸品種名)にシングルクォーテーションマーク(‘’)を付けていますが、これは、「国際栽培植物命名規約」に基づくものです。NHKの「趣味の園芸」のテキストでも「‘’」が付けられています。個人的には、園芸品種名には「‘’」を付けることを推奨します。・・・・と、まぁ、今回は植物そのもののコメントと言うより、小言みたいなコメントでした。(2002.2.18.)

もう一言(2002.3.9.)
 花被片が5枚の花が咲いたので右の写真を追加しました。英名のように、本当の星みたいです(^^)

もう一言2(2003.3.28.)
 今年も1月下旬〜2月上旬頃から花が咲き始めました。鉢に植えっぱなしです。何となく、昨年より葉に勢いがないような気がしますが、もしかしたら、球根が増えて密植状態になっているのかもしれません。

 
HOME   植物名一覧

このページ内の文章・画像の転載を禁止します