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ニオイアラセイトウ

ニオイアラセイトウ
品種:‘ベガ クリームエロー’


アブラナ科 エリシマム属(エゾスズシロ属)
学名正名:Erysimum cheiri (L.) Crantz、異名:Cheiranthus cheiri L.
英名wallflower, English wallflower
和名ニオイアラセイトウ
別名チェイランサス
花言葉逆境にも変わらぬ愛(逆境の中でもくじけぬ忠誠、逆境の忠誠)
メモ

 属名の「Erysimum」は、ヒポクラテスが用いた古いギリシア名に由来するそうです。
 ニオイアラセイトウは、古い文献では、チェイランサス属に分類されていたそうですが、現在では、エリシマム属に分類するのが一般的です。
 和名の語源については、ストックのページをご覧下さい。英名の「wallflower(ウォールフラワー;壁の花)」は、古い土壁の上で良く生育していたことに由来するそうです。原産地のギリシアやエーゲ海では、野生の花が、壁、海岸の崖、岩上などで自生しているそうです。
 主に南ヨーロッパに分布し、日本には、明治の中頃に導入されたそうです。

 二年草、あるいは多年草ですが、暑さには弱いため、秋播き一年草として扱います。寒さには強いそうです。
 開花させるには一度低温に当てる必要がありますが、ベガ系のように、低温に遭遇させなくても開花できる品種もあり、そのような品種では、夏に種子を播いて秋に開花させることが出来ます。なお、ベガ系は、極矮性の品種で、咲き始めの草丈は12cm程度だそうです。

 中世の吟遊詩人や騎士が好んで身につけ、理想の女性に対する貞節を表したそうです。また、ロミオとジュリエットのような逸話があり、駆け落ちの合図にニオイアラセイトウを使ったとか、亡くなってしまった女性がニオイアラセイトウに生まれ変わったとかと言われています。花言葉はこの逸話に由来するとも言われています。

 前述の通り、開花には低温に当てることが必要で、低温によって花芽分化が誘導されることを春化(vernalization;バーナリゼーション)と言います。‘Roi des Feux’という品種を使ったある実験によると、ニオイアラセイトウの花芽分化誘導には5℃が有効だったそうです。しかし、5℃に置きっぱなしにしておくと、一度花が咲いたあとはずっと(少なくとも3年も!)花が咲かなかったそうです。それに対して、12℃(5℃ほどではないけど、花成誘導できる温度)に置きっぱなしにすると、一度花が咲いたらその後少なくとも5年間は花が咲き続けたそうです。

 花色は、主にカロテノイドによって発色しているそうです。花持ちが良いそうですが、これは、花弁に気孔があることから、低いレベルではあるけれども、花弁でも光合成が行われている可能性があることが指摘されています。花弁の向軸側(表側)の表皮細胞は円錐形をしていますが、これには、キンギョソウで発見されたMIXTAという遺伝子が関わっていることが推察されています。

参考文献
Diomaiuto, J. Periodic flowering or continual flowering as a function of temperature in a perennial species: The Ravenelle Wallflower (Cheiranthus cheiri L.). Phytomorphology. 38: 163-171. 1988.
Weston, E. L. et al. Developmental ultrastructure of cell and plastids in the petals of wallflower (Erysimum cheiri). Annals of Botany. 84: 763-769. 1999.

コメント

 播種は昨年の10月上旬、発芽は播種から4日後、開花は今年の2月上旬です(無加温の温室内で栽培)。昨年、秋播きした種子の中では一番始めに咲きました。前述の通り、極矮性の品種で、私は、6号鉢に4株植えていますが、15〜25cmと草丈が揃っていません(^^;。和名の通り、香りがしてポプリとして利用することが出来るようです。アブラナに近いかな、でも、もっと良い香りだなと言うのが私の感想です。数週間は花が持つそうですが、今週咲いたばかりなので、実際にどの程度咲いていられるのか、気になるところです。
 Diomaiutoの論文に、3年間も花が咲かなかった株の写真が載っていましたが、全く別の植物のようでした(^^;。果実の写真も載っていましたが、アブラナの果実みたいでした(アブラナ科同士、似ていて当然ですが)。それにしても、一つの実験を5年間も続けるなんて、今後の日本の研究機関では、絶対に出来そうにないですね( ̄▽ ̄)(2002.2.9.)

 
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