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キキョウ

キキョウキキョウ
品種:‘五月雨(さみだれ)’Fairy Snow (フェアリースノー)’
キキョウ
‘五月雨’


キキョウ科 キキョウ属
学名Platycodon grandiflorus (Jacq.) A. DC.
英名balloon flower, Chinese bellflower
和名キキョウ(桔梗)
別名 
花言葉

誠実、変わらぬ愛

利用部
利用法薬用(桔梗湯、桔梗白散)
薬効去痰、鎮咳、排膿、鎮静、鎮痛、解熱、抗炎症
メモ

 属名は、ギリシア語の「platys(広い)」と「kodon(鐘)」の2語から成り、花の形から付けられたそうです。
 キキョウ一種からなる単型属です。種小名が「grandiflorum」とされていることがありますが、種の形容語(種小名)の語尾が「-um」となるのは、属名の性が中性の場合です。しかし、1993年8〜9月に横浜で行われた第15回国際植物科学会議において採択された「国際植物命名規約(東京規約)」によると、『「-codon」で終わる属名の性は男性になる(第62条2の(a))』ので、種形容語の語尾は「-us」とするのが正しいそうです。
 日本、朝鮮半島、中国東北部に分布しています。

 秋の七草の一つで、万葉集の中では「あさがほ」と詠まれています。「あさがほ=キキョウ」説には異論があるそうですが、キキョウが定説だそうです。

 宿根性の多年草です。栽培ですが、土質は特に選びませんが、耕土が深く、水はけが良く、有機質を多く含む土を好むそうです。種子は、秋播き、春播きが可能です。個人的には容易に育てられると思います。2年目は、ほったらかしにしていても、芽が出て(下のコメント・もう一言の右側)開花しました。耐寒性があり、−15〜−20℃くらいまで耐えられるらしいです。繁殖は、実生によるものと、芽を持った根茎を切り分ける方法があります。
 開花すると、始めに雄しべが成長し、後から雌しべが成長して柱頭の先が開きます。これは自家受粉を防ぐため工夫で、「雄ずい先熟」と呼ばれています。
 成長には、温度が特に影響を及ぼします。14〜29℃の間の5段階の温度で栽培した場合、29℃では温度処理を開始してから45日で開花したそうですが、温度が低くなるのにつれて播種から開花までの日数が長くなり、14℃では108日かかったそうです。草丈は19℃で最も高く、温度がそれより高くても低くても短くなったそうです。新鮮重・乾物重・葉面積は、温度が低いほど大きくなったそうです。花の大きさには温度の影響は認められなかったそうです。
 植物の中には、種子や株が一定期間低温に当たらないと、花芽分化が誘導されないものがあります。低温によって花芽分化が誘導されたり、促進されたりするようになることを「春化(種子春化、緑植物春化)」と呼んでいますが、キキョウでは、種子春化処理をしても、緑植物春化処理をしても、開花が促進されることはなかったそうです。
 また、日長(自然日長、遮光[8時間日長]、電照[24時間日長])が開花に及ぼす影響について調査した実験では、草丈、平均開花日、花蕾数などに差は認められなかったそうです。

 根にはサポニンやステロールが含まれ、薬草として利用されています(ただし、弱毒性があるそうなので、取り扱いに注意します)。かつては、platycodin が含まれていると言われていたそうですが、これは、数種のサポニンの混合物だそうです。根の外皮を削ったものは「晒桔梗(さらしききょう)」とか「皮去り桔梗」と呼ばれているようです。

 花に含まれている色素はデルフィニジン型アントシアニンの一種で、プラチコニン(platyconin)という、属名に由来する名前が付けられています。単離・構造決定したのは、日本の研究者です。プラチコニンの結晶にはマグネシウムや鉄などの金属元素や、フラボンなどの助色素などは含まれておらず、プラチコニンだけで青色を発色しているそうです。この原理については、プラチコニン分子の中の特殊な有機酸(カフェ酸)が、プラチコニン分子自身に一種のコピグメント作用を及ぼすためであり、一般には弱酸性〜中性の水溶液中では不安定なアントシアニンが、アシル化されたアントシアニンであるプラチコニンではその様な水溶液中でも安定しているため、色素本来の青色を発色していると解明されてます。
 なお、モリブデン(Mo)、鉄、アルミニウムなどの金属元素を吸収させると花色が変化するそうですが、Moでは、青味が増す効果が著しかったそうです。また、切り花をMoを含む溶液に活けるだけでなく、花弁に直接散布しても効果が現れたそうです。Moによる青色化については、アントシアニンが金属錯体を形成することによるものと推察されています。

追記(2002.7.20.)
 メモを全文改訂しました。

追記(2005.7.3.)
 ‘五月雨’の八重咲きの写真と‘Fairy Snow (フェアリースノー)’の写真を追加しました。


本棚以外の参考文献
  • 大橋広好訳.国際植物命名規約(東京規約)1994.津村研究所.1997年.

  • 平嶋義宏.生物学名命名法辞典.平凡社.1994年.

  • Park, B. H. et al. Temperature affects growth and flowering of the balloon flower [Platycodon grandiflorus (Jacq.) A. DC. cv. Astra Blue]. Hortscience. 33: 233-236. 1998.

  • 小杉 清ら.キキョウの花芽分化に関する研究.第2報.温度及び日長がキキョウの花芽分化ならびに開花に及ぼす影響.園芸学会雑誌.第26巻:201−204ページ.1957年.

  • 渡辺健二編集.漢方実用大事典.学習研究社.1989年.

  • 飯田 滋 編集.植物色素の生化学と遺伝学.蛋白質核酸酵素(PNE).第47巻第3号:197−230ページ.2002年

  • 前川 進ら.キキョウの花色に及ぼすMoの影響.園芸学会雑誌.第52巻:174−179ページ.1983年.

コメント

 播種は昨年の9月半ば過ぎ、発芽は同年9月末、オダマキと同じく紆余曲折の環境を経て(^^;、今年の7月上旬に最初の花が開花しました。一時期、温室に入れていたところ、4月頃に花芽が着きましたが、その後、温室から出したら、折り悪く低温に遭ってしまって、その蕾は開花しませんでした。ちなみに、キキョウの花芽分化や開花には、日長は影響を及ぼさないと言われています(そのことを示した論文は、40年以上も昔の1957年に発表されましたが、これを引用している本が何冊かあります。)。

 写真は、開花後1日以内に撮影したもので、メモで説明した通り、雌ずいは成熟していないため、柱頭(雌しべの先端)が開いていません。開く頃になると花弁の色が褪せてしまって、見栄えがしなくなっちゃって(^^ゞ(2001.7.14.)

もう一言(2002.7.20.)

 キキョウ キキョウ 

 メモの改訂のついでに写真の追加もしたので、その説明を追加します。
 左の写真は実生苗で、撮影は2000年11月上旬、発芽してからおよそ一ヶ月が経った頃です。右の写真は今年の3月半ば過ぎに撮影した芽の写真で、昨年、株が枯れ上がった後、無加温の温室に入れて、たまに水遣りしていたら3月中旬に生えてきたものです。たくさん出てきたので、6号鉢に3株くらいに間引きました。最初の開花は6月半ば過ぎです。なお、花の写真は、今までと同じものです。

もう一言(2005.7.3.)
 コレクションに加えるべく、‘Fairy Snow’を購入しました。最初は、ネットのオークションでタネを落札しましたが、残念ながら発芽した後に枯れてしまいました。その後、とある種苗会社のカタログに株での販売が紹介されていて、1株で十分なのに2株だったり、高かったりしましたが、背に腹は替えられないとばかりに思わず手を出しちゃいました(^^ゞ。最初の開花は6月下旬です。
 ‘五月雨’は、地上部が枯れた後に根茎を掘り上げて適当な大きさに切って株を維持しています。今年で5年目になります。八重咲き花は、少なくとも、昨年も咲いていたと思います。一つの株の中に、普通の一重の花と八重の花が混在しています。

 
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