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オダマキ(交雑種)

オダマキ(交配種)
品種:‘McKana's Giant


キンポウゲ科オダマキ属(アクイレギア属)
学名Aquilegia × hybrida hort.(「hort.」の代わりに「Sims」としている文献もあります。)
英名columbine
和名 
別名アクイレギア・ヒブリダ
花言葉別れた恋人
メモ

 オダマキ属の解説は、こちらをご覧下さい。

 オダマキ属の植物は種間交雑しやすく、園芸品種として利用されている交雑種は、A. caerulea、カナダオダマキ(A. canadensis)、キバナオダマキ(A. chrysantha)、A. formosaA. longissimaセイヨウオダマキ(A. vulgaris等を交配親として育成されたそうです。品種として、写真の‘McKana's Giant’の他、‘Bonnets’、‘Ruby Port’、‘Snow Qween’、‘Crimson King’、‘コロラド’シリーズ、‘ソングバード’シリーズ等があります。
 ‘McKana's Giant’は、1955年に A.A.S. (All-America Selections) を受賞した品種だそうです。T&Mのカタログでは‘McKana Giants’とされていましたが、ここでは、論文を含む各種資料に従い、「's」を含む方を採用しました。カタカナ表記は、‘マッカナ・ジャイアント’(「農業技術大系・花卉編/宿根草」、「花卉品種名鑑」、「原色園芸植物図鑑[II]」)、‘マッケイナズ・ジャイアント’(「園芸植物大事典」)、‘マッカナス・ジャイアント’(「最新園芸大辞典」、「原色・花卉園芸大事典」、「原色園芸植物大圖鑑」)がありますが、どれが正しいかは、不明です。
 私は、国内某社から「西洋おだまき(西洋小田巻)・マッカナジャイアント」として販売されていたものを通販で購入しました。「原色・花卉園芸大事典」によると、交雑種(A. hybrida)もセイヨウオダマキと呼ぶことがあるそうですが、セイヨウオダマキは原種であることから、交雑種と区別した方が良いと思います。
 また、「花卉品種名鑑」では、A. caerulea の和名が「西洋おだまき」とされ、この種に‘マッカナジャイアント’が含まれていましたが、「原色園芸植物図鑑〔II〕」によると、交雑種と A. caerulea は別に扱うのが正しいそうです。

 耐寒性がある多年草です。草丈は品種によるようで、高性の物は90cm、極矮性の物は10〜15cmほどだそうです。A. caerulea、カナダオダマキ、キバナオダマキ、A. formosa から育成されたロングスパー(スパー[spur];距)の系統は、距の長さが10〜12cmにもなるそうですが、セイヨウオダマキを交配親とした品種には、距が短いか、ない物があるそうです。‘マッカナジャイアント’は、萼片(花弁状の物)と花弁(距が付いているもの)の色が違うそうですが、私が育てた物は、同じ色でした。
 栽培については、オダマキ属の解説をご覧下さい。なお、交雑種の生育適温は10〜20℃と比較的低いそうです。

 開花のためには春化(5〜15℃の低温に遭遇し、その低温の後作用として花芽分化する現象、または、作用)が必要ですが、低温を感受できない幼若相があり、ある程度成長してからでないと、低温に遭遇しても花芽が分化しないそうです。例えば、‘マッカナジャイアント’に4.5℃の低温処理を12週間行った場合、低温処理開始時の葉数が7枚の株では、低温処理したうち半分の株しか開花しなかったそうですが、12枚以上の葉があった株では、低温処理をした全ての株が開花したそうです。また、品種によって、低温を感受することが出来る齢(この場合は、播種から経過した日数ではなく、低温処理開始時の葉数)が異なったり、花芽分化に必要な低温遭遇量が異なるそうです。また、Weddle氏が育成した Songbirdシリーズ(‘Bluebird’、‘Robin’、‘Dove’、‘Purple’、他)は、低温処理をしなくても、播種から1年未満で開花するそうです。これについては、Songbirdシリーズは、他の品種と遺伝的背景(育種親)が違うことが推測されていますが、具体的にどのような違いがあるのかについては、不明です。

 白色花のミヤマオダマキ(文献の中での学名はA. flabellata で、これは、本来はオダマキの学名ですが)と、白色花(正確にはクリーミーホワイト色)の‘マッカナジャイアント’を交配させて出来た、紫青色花の子(F1雑種)の色素とその代謝経路について調べた研究があります。アントシアニンの合成経路は以下の通りです。

クマロイル-CoAと3分子のマロニル-CoAの縮合

中略

ジヒドロフラボノール(dihydroflavonol:フラバノノール[flavanonol]:無色)
↓ジヒドロフラボノール4還元酵素
ロイコアントシアニジン(leucoanthocyanidin:無色)
↓アントシアニジン合成酵素
アントシアニジン(anthocyanidin:有色)

アントシアニン(anthocyanin:有色)

 ミヤマオダマキの白色花は、ロイコアントシアニン(無色)からアントシアニジン(有色)の変換は出来るものの、その前の段階であるジヒドロフラボノール(無色)からロイコアントシアニジン(無色)の変換が出来ないために白色を呈するそうです。また、‘マッカナジャイアント’の白色花は、ロイコアントシアニジン(無色)からアントシアニジン(有色)への変換が出来ないために白色を呈するそうです。しかし、2種の白色花を交配させたF1雑種では、ジヒドロフラボノールからアントシアニジンへの変換が正常に行われるために、花が紫青色を呈すると考えられるそうです。
 なお、ミヤマオダマキの白色花の花弁には、有機酸エステルが多く含まれているものの、フラボノイドが少ないという特徴があったそうです。‘マッカナジャイアント’の白花の花弁には、逆に、有機酸エステルが少なく、フラボノイドが多く、特別にロイコペラルゴニジンが含まれていることが分かったそうです。

追記(2004.7.4.)
 オダマキ属の解説を追加したのに伴い、内容の一部をそちらに移し、ほぼ全文を改訂しました。


本棚以外の参考文献
  • 塚本洋太郎監修.原色・花卉園芸大事典.養賢堂.1984年.

  • 塚本洋太郎.原色園芸植物図鑑〔II〕・改訂版.保育社.1972年.

  • 本田正次ら監修.原色園芸植物大圖鑑.北隆館.1984年.

  • Shedron, H. G., et al. Regulation of growth and flowering in Aquilegia × hybrida Sims. Journal of the American Society for Horticultural Science. 107: 878-882. 1982.

  • White, J. W., et al. Gibberellin, light, and low temperature effects on flowering of Aquilegia. HortScience. 25: 1422-1424. 1990.

  • Bessho, M. Two genes controlling the conversion from flavanonol to anthocyanidin in sepals of genus Aquilegia. Journal of the Japanese Society for Horticultural Science. 57: 462-466. 1988.

  • 飯田滋ら.植物色素の生化学と遺伝.蛋白質核酸酵素.第47巻第3号:197〜230ページ.2002年.

コメント

 播種は昨年の9月中旬過ぎ、発芽は昨年の10月上旬、その後、紆余曲折の環境を経て(^^;、今年の6月下旬に咲きました。大輪系の品種で、草丈は50〜70cmくらい、花径は8cmくらいになるそうですが、密植したせいか(6号鉢に3株)、栽培の仕方が悪かったのか、草丈は40cm足らず、花径は4cm強でした。交配種の中では最も花色が豊富だそうですが、写真に写っている色と、青の花しか咲きませんでした。花色が分かって間引きできればいいのですが、そう上手くはいきませんね(^^;

 花持ちが悪く、開花してから3日程度で花びらが散ってしまいました。同じキンポウゲ科のデルフィニウムは、エチレンを発生するために花持ちが悪いそうですが、似たようなものでしょうか? 同じだとすると、STS(silver thiosulfate anionic complex;チオスルファト銀錯塩…エチレンの作用を阻害する鮮度保持剤)が効きそうな気がします。(2001.7.1.)

 
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